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グーグルのクチコミはまったくアテにならない…「いい医師」を簡単に見抜くための"とっておきの質問"

プレジデントオンライン / 2023年1月20日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Natali_Mis

かかりつけのクリニックはどう選べばいいのか。千葉県で小児科医院を経営する松永正訓さんは「クリニックのホームページで医療の展望や考え方を確認するといい。逆に『健やかな未来を願って』などと書いている医師は何も言っていないのと同じだ」という――。

※本稿は、松永正訓『患者が知らない開業医の本音』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

■グーグルのクチコミがアテにならない理由

成人内科でも小児科でもクリニック選びは難しい。どのクリニックを自分のかかりつけにしたらいいのだろうか。医者との相性もあるし、クリニック全体の医療スタイルが自分に合うかどうかという問題もある。ぼく自身も自分の健康に関してクリニックや病院を受診する。自分の子どもが何かの病気になれば、やはりクリニックを探すことになる。うまいクリニックの見つけ方をちょっと考えてみたい。

まずもっとも参考にならないのは、グーグルのクチコミである。あなたの近所のクリニックをグーグルで検索すると、クチコミが載っているだろう。大抵は低評価で、5点満点を獲得しているクリニックなどほとんどない。

ぼくのクリニックの点数はどうだろう……どれどれ。3.5点である。低! 投稿しているのは14人。これが一体何の参考になるだろうか。うちのクリニックにこれまでの16年間に受診した患者数は延べで25万人を超えている。25万人の中の14人の意見なんてほんの一部に過ぎない。

■悪い口コミだけを消してくれる業者もいる

そもそも匿名で公開の場で人(クリニック)の悪口を書くなんて、その人の人間性はどうなんだろうかと思ってしまう。そういう意見が果たして参考になるだろうか。そして不思議なことに、クリニックによってはグーグルのクチコミが表示されていないことがある。投稿者がゼロなのである。これはどういうことだろうか。

開業医の仲間内では、このグーグルのクチコミを消す業者がいるという噂がある。いや、噂ではない。先日うちのクリニックに届いた郵便物の中に、まさに「グーグルのクチコミを消します」という業者からの手紙が交ざっていた。なんと料金は数十万円。この金額を支払えば、クチコミをきれいに消してくれるのだという。まさか、この業者がクリニックの悪口を書き込んでいるんじゃないよね? そんなわけで、ネットのクチコミは一切信用しないことにぼくは決めている。

■ホームページで医師の経歴と人となりを見る

ぼくはクリニックを作るときに、必死になってホームページを立ち上げた。自分なりに力を入れたつもりだが、最近になって少し内容が不十分なような気がしている。

ぼくがクリニックを選ぶときにまずチェックするのは当然ホームページである。まず何を見るか。院長先生の経歴と人となりをチェックする。経歴といえば、医師としてのキャリアも重要だが、ぼくはどうしても出身大学に注目してしまう。

偏見かもしれないが、偏差値の高い大学を卒業した医師は、一般的に優秀である。それは医師としての実力だけではなく、職業に対する責任感みたいなものも強いようにぼくには見える。

ただ、医療界には、医師国家試験に合格してしまえば全員同じ土俵に立つのであって、出身大学は関係ないという意見も根強くある。これも間違っていない。ぼくだって「どんじり」医学生だった。

昭和の時代、私立大学の医学部は寄付金次第で合格できるみたいなグレーゾーンの話がまかり通っていた。学費が極めて高額なので、その噂はあながち嘘とは言い切れなかったと思う。

■博士号の有無や海外留学の経験は関係ない

だが、私立の医学部はどこの大学も年々偏差値が上がり、簡単に入学できる医学部というのはもはや存在しない。医者を志す学生が増えたことが理由だろう。すべての医学部のレベルが上がったことは、患者にとって大変いいことだ。

ただし、2018年に某私立大学の裏口入学に関する贈収賄事件があったことや、入試において女性差別や浪人生差別があったという報道は本当に残念だった。こういう部分をクリーンにしていけば、私立大学医学部の評価はさらに上がるだろう。

それから、院長の経歴には博士号の有無とか海外留学の経験などが載っているが、これはまったくどうでもいい。医者はほとんど全員が博士号を持っているので、掲載する価値もない。留学はその人の人生の幅を広げたはずだが、臨床医としての実力とは何の関係もない。無視して構わない。

専門医という肩書きを見ると、その医師に任せてもいいような気になるかもしれない。だが、専門医という資格は、「その分野に関して最低限の知識がある」くらいの意味しかない。研修医の次のステップが、専門医の資格を得るための修練である。

■その医師の医療へのビジョンや考え方をチェックする

一人前と呼べるのは指導医という資格を持っている医師のことだろう。そして一流といえる医師とは、全国からセカンドオピニオンを求めて患者がやってくる医師のことである。これに関しては何の資格もないからホームページには書かれていないが。

松永正訓『患者が知らない開業医の本音』(新潮新書)
松永正訓『患者が知らない開業医の本音』(新潮新書)

ホームページで注目すべき点はもちろんほかにもある。それは院長がどういう診療を目指しているか、明確に述べているかどうかである。クリニックを運営していく上で最も大事なことはなんだろうか。目の前の患者をただ無難にこなしていくことではない。どういう医療を達成したいのか、そのビジョン(展望)とフィロソフィー(考え方)が重要である。そしてそれを実践するには具体的なストラテジー(戦略)が必要になってくる。

「子どもの健やかな未来を願って」とか、「希望と安心を目指して、いつまでも元気に」などというキャッチフレーズみたいなものは、何も語っていないのと一緒である。クリニックでできる医療には自ずと限界があるが、その範囲内でどういう医療を目指しているのか、そのためにはどういう医療を行おうと考えているのか、患者のみなさんには、ぜひそうした記述に注目してほしい。

■趣味欄も医師の人柄がわかる大事な要素

また、これから開業しようという医師や、起業しようとしている人には、ホームページを大切にしてビジョンとフィロソフィーを語ってもらいたい。空疎な美辞麗句は簡単に患者やカスタマーに見抜かれる。

患者に症状を説明する医師
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

最近になって開業する医師ほど、ホームページが充実しているようにぼくには見える。若い人にはしっかりとしたそういう意識があるのかもしれない。ホームページは分量(中身)が多ければ多いほどいいホームページである。みなさんには億劫がらずに隅から隅まで読んでもらいたい。

それから、院長の人柄が分かるような趣味のページも重要だとぼくは考えているが、どうだろうか。ちなみにぼくのクリニックのホームページはそちらの方向へ走り過ぎたような気がする。

■「ドクターショッピング」はやってもいい

ぼくが開業した年に3歳の子どもを連れたある母親が、うちのクリニックを受診した。子どもは普通の風邪だった。少しお母さんと雑談すると、「私、いま、いろいろなクリニックを順番に受診しているんです。どこが一番いいかなって」と言われた。なるほど、その気持ちは分かる。

ホームページを見て情報を得たら、次は直(じか)にその医者に当たってみることである。一般の人が医者の実力を見抜くのは容易ではないが、少なくとも自分との相性は分かる。説明が丁寧かどうかも分かる。一般的にドクターショッピングは慎むものだと言われているが、ぼくは必ずしも悪いことだとは思わない。ちなみにそのお母さんは、その後うちのクリニックに来なかったので、ぼくは落第点を出されたのだろう。

■「風邪を早く治すには?」と聞く

ぼくは、受診した子どもが人生で初めての風邪だった場合、「風邪とはなにか」「風邪薬の役割は何か」「自宅でできるケアは何か」「どういうものが再診した方がいい危険なサインか」をみっちり説明している。これはけっこう時間がかかるが、一般の人に対する教育という意味でも大事だと思っている。

だから、あなたがもし目の前の医師がどういう医療をする人なのか知りたければ、こう質問するといい。「風邪を早く治すためにはどうすればいいですか?」と。この質問に丁寧に答えてくれる医師は信頼できる医師だ。そういう質問がしにくかったら、そのこと自体がその医者がいいホームドクターではないことを示している。

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松永 正訓(まつなが・ただし)
医師
1961年、東京都生まれ。87年、千葉大学医学部を卒業し、小児外科医となる。日本小児外科学会・会長特別表彰など受賞歴多数。2006年より、「松永クリニック小児科・小児外科」院長。13年、『運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語』(小学館)で第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。19年、『発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年』(中央公論新社)で第8回日本医学ジャーナリスト協会賞・大賞を受賞。著書に『小児がん外科医 君たちが教えてくれたこと』(中公文庫)、『呼吸器の子』(現代書館)、『いのちは輝く わが子の障害を受け入れるとき』(中央公論新社)、『どんじり医』(CCCメディアハウス)などがある。

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(医師 松永 正訓)

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