だから1億円プレイヤーに返り咲けた…元ロッテ・里崎智也がYouTubeで成功するために必ず守ったこと
プレジデントオンライン / 2023年1月21日 13時15分
※本稿は、里崎智也『YouTube『里崎チャンネル』はなぜ当たったのか 再び1億円プレイヤーになるまでにしたこと全部』(徳間書店)の一部を再編集したものです。
■なぜ引退後に1億円稼げるようになったのか
タイトルにも掲げさせていただいた「1億円」。僕はこの数字を常に目標にしてきました。思い返せば、1998年。僕が千葉ロッテマリーンズにドラフト2位で入団したときの契約金も、1億円でした。
14年の引退時点での年俸は、1億6000万円。野球選手は会社員と違って、嘱託雇用などもありませんから、この翌年からは収入は自力で稼がなければなりません。もちろん、退職金などもありません(入団時の契約金が退職金の前払いだという人もいますけれども)。
■「なんか儲かるらしいじゃないですか」
そこで、僕がプロ野球選手引退後に始めた仕事の一つが「YouTuber」でした。引退から5年後の2019年3月、『Satozaki Channel(以下、里崎チャンネル)』(※)は産声を上げました。僕はここで堂々とこう言いました。
※文中の登録者数・再生回数等は書籍発刊時点のもの
〈私がですね、これからYouTuber、最近、YouTuber流行りじゃないですか、ね。プロ野球界でもですね、高木豊さんがYouTuberになったりとかですね(注:高木豊氏のキャプチャー入る)、先輩もやってるんでですね(注:中村紀洋氏のキャプチャー入る)、それに続いていこうっていうかたちですよ。
しかもなんか、YouTuber儲かるらしいじゃないですか(注:目元どアップに)。やっぱりですね、プロ野球生活でも億稼いでたんですけど、引退してでも億稼ぐぞっていうのがですね、ま、僕のやっぱ目標なんですよね。っていうところでですね、引退してから5年目、なかなか1億円稼げないということで、今回はですね、YouTuberになって、「1億円プレイヤーになろう!」っていうことでですね、YouTuberになりました。〉
(2019年3月26日「【祝】里崎智也、YouTuberになります!!」より)
この動画も今では12万回を超える再生回数をカウントしています。
おかげさまでチャンネル登録者数も55.6万人(以下、文中の登録者数・再生回数は2022年11月11日現在)にまで増えて、プロ野球系YouTubeチャンネルの中では、第2位にランキングしているようです。
YouTuberの収入だけでのことではありませんが(YouTubeは全体の半分以下)、僕が掲げた1億円の目標は、2021年度に無事に達成することができました。
プロ野球選手として1億円プレイヤーになれたのが入団から約9年、引退後再び1億円を達成するまでには約7年と、現役時代より早いペースでここまで来られたのです。YouTuberとして成功したと言っても、誇張した言い方じゃないですよね。
■ブランド確立のために強く意識したこと
YouTubeは「自分の価値を高める」ツールでもあります。簡単に言うと、発信した内容がバズって、「こういうことだったのか!」とか「やっぱ、里崎スゲー!」みたいな具合に、発信者の評価が上がることもあります。
僕の野球解説はたびたび「辛口」と言われます。自分としてはあえてそれを意識しているつもりはないんですが、好きに言わせてもらっていると、そういうことになるみたいですね。
だから、贔屓のチームのことが批判されたファンからは、「里崎のヤツ、また勝手なこと言いやがって!」と怒りをぶつけられることだってあります。でも、それで一向に構いません。むしろ、「里崎智也」というブランドを確立させるためには、他の解説者と区別化されたほうがいいんですから。
■佐々木朗希vs球審は誰がわるいのか
その例を挙げてみます。
2022年シーズンの4月24日、京セラドーム大阪で行われたオリックス対ロッテ戦。ロッテの佐々木朗希投手が球審の判定に不満を示したような態度を取ったと見なされて、球審が佐々木投手に詰め寄って注意するという場面がありました。これを巡って、さまざまな意見が飛び交いました。
「球審の詰め寄り方は、まるで佐々木へのイジメだ!」「佐々木はあまりにも不服な態度を出しすぎだ。あれじゃあ球審の印象も悪くなって当然だ」とか。
こういうときこそ、YouTubeの使いどころです。自分のチャンネルを持っている野球解説者たちが、侃々諤々の持論を発信し始めたのです。
ただ、この日、僕は別件の仕事があって完全に乗り遅れてしまい、肝心のシーンを見たのは当日の深夜になってからでした。こうなると、急いで発信しても他の人と代わり映えしない意見になってしまいます。それで、あえて皆さんの既出の意見や報道をすべて見てから、最後発として自分なりの見解を出すことにしたのです。
結局、『里崎チャンネル』での発信は2日後の4月26日でした。
「今話題の件について里崎が語る【白井球審】【佐々木朗希】」というタイトルで、「今回の件は本当のところ、誰が悪かったのか」にスポットを当てたのです。このとき僕が出した結論は、こちら。「今回の状況を作ってしまったのは、(キャッチャーの)松川(虎生)選手にも原因がある」
■キャッチャー出身ならではの分析
「えっ、そこかよ!?」と驚かれた人もいたことと思いますが、これには当然、僕なりの裏付けがありました。
僕は現役のとき、「球審に寄り添う」対応を心掛けていました。きわどいコースの判定を「ボール!」と言われたときなど、「いやいやいや、今のはストライクでしょうよ!」とあからさまに態度に出すピッチャーがいました。そういう態度を露骨に見せられれば、審判もヒートアップします。そういうときこそキャッチャーの出番なんです。「今のは、半分外れていますよね?」と球審側に立った声掛けをピッチャーに対してしていたのです。
味方のキャッチャーにそう言われれば、投手もそうそう感情的になるわけにはいきません。同様に球審も、癇に障るような態度を不問にしてくれるものです。松川選手にこういう気の回し方ができていれば、事態はそれほど大きくはならなかったんじゃないかと、YouTube内で発言しました。
松川選手は高卒ルーキーです。だから「そんなこと言っても、まだ1年目なんだから、プロのイロハを知るわけないだろう」という反論もあるかもしれませんが、僕はそういうふうには考えません。同じプロなら1年目のルーキーだろうと10年目のベテランだろうと、やるべきことはやらなければならないんです。
ただ、そう言いつつも、僕がどうにもこの一件について気になっていたのは、「これってそこまで騒ぐことなのかよ?」ということでした。よくあることと言えばよくあること。
なぜこのときばかりが騒動になったのかを考えれば、佐々木投手がその少し前の4月10日のZOZOマリンスタジアムで、同じオリックス戦で完全試合を達成していたから、メディアも取り上げやすかったんですね。
■後出しじゃんけんは反則ではない
もう少し言わせてもらうと、「審判が選手に意見することで批判されるのなら、選手が審判に意見することも批判されるべきじゃないの?」ってことなんです。
このような解説をYouTubeでしたのですが、SNS上では、「キャッチャーってそんなことまでやっていたんだ!」「キャッチャー目線で解説されているのを聞くと勉強になるね」といった意見が結構目につきました。それで「里崎の話には納得した」「さすがかつてWBCのベストナインに選ばれた男だ」などと評価が高まりました。再生回数も57万回視聴を記録し、間違いなくバズりました。
このようにYouTubeは、使い方次第で自分の価値を高めるツールになるわけです。そのためには、日頃から自分なりの視点での分析力を磨いておくこと。そして、やはりこれが教訓です。発信の順番が3番手、4番手になるくらいなら、情報を徹底して調べ尽くして、あえて最後尾に出すべし。YouTubeにおける「後出しじゃんけん」は反則じゃありません。
■守っている最低限のルール
テレビやラジオとYouTubeの最大の違いは何か。僕はこう答えます。
テレビやラジオはスポンサーに配慮しなければならず、場合によっては誰か謝らなければならない人が出てくることがある。
もしテレビやラジオで、出演者がある事柄に対してあることないこと暴言を吐き、それをきっかけに炎上してしまったとします。その番組のSNSには視聴者からの猛烈なクレームが押し寄せることでしょう。さらに放送している局側の電話も同様に痛烈な意見を伝える声が集中するはずです。
![里崎智也氏(写真提供=徳間書店)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/3/6/1200wm/img_365157b94721465dde312bd6c6757ca51658764.jpg)
ただ、本当に厄介なのは視聴者からのクレームというよりも、「あの発言はちょっと……貴局はどうご判断されますか」などとシビアな意見を言ってくるスポンサー筋です。番組はスポンサー企業からの協賛によって成り立っていますから。
局のお偉いさんたちは収拾のために先方への謝罪行脚に回ったりするのかもしれませんけれど、そうなると暴言の主もただでは済まされません。暴言を吐いたのが局の社員などであれば当分の間謹慎、外部のタレントであれば降板などの処分が下されることでしょう。
僕のことをテレビやラジオで好きに意見を言っているヤツと思っている人もいるかもしれませんが、こういう最低限のルールは守っているんですよ。
■「批判はしても誹謗中傷はしない」
一方、YouTubeはちょっと勝手が違います。少々過激なことを言って炎上してしまっても「再生回数が稼げるから全然OK」と、むしろ炎上商法を堂々と公言するYouTuberも珍しくありません。物議を醸そうがなんだろうが痛くもかゆくもない。こういう発想はテレビやラジオにはありませんよね。
![里崎智也『YouTube『里崎チャンネル』はなぜ当たったのか 再び1億円プレイヤーになるまでにしたこと全部』(徳間書店)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/b/1200wm/img_2be49f62e49cdd725b8a43dba634592d441209.jpg)
では、この件についての僕のスタンスはどうか。テレビやラジオで意図的に暴言や暴論を言う気は毛頭ありませんし、YouTubeで炎上商法を仕掛けるつもりもないです。
動画投稿で扱うテーマについて、批判はしても誹謗中傷はしないことをルールとしています。炎上商法なんてリスクばかりで長続きしませんし、理由のない中傷なんて僕の性に合いません。それに「YouTubeは緩いからなんでも言い放題だ」みたいなことをしていると、テレビやラジオの関係者は、きっとこう思います。
「あいつはYouTubeで過激なことばかり言っている。うちの番組に出演したときに同じようなことをされたらかなわない」危険人物のレッテルを貼られて、テレビやラジオに起用されることはなくなってしまうでしょう。だから僕は「テレビやラジオで守らなければならないコンプライアンスはYouTube上でも守る」というマイルールを作っています。
万が一、口が滑ってしまったら、すぐに前面に出て謝罪するのみ。もちろん、第三者に謝罪の意思を間接的に伝えてもらうようなことはしません。それ以前に、そういうことは過去に一度も起きてはいませんけどね。
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野球解説者
1976年、徳島県生まれ。鳴門工高(現・鳴門渦潮高)、帝京大を経て、1998年のドラフト2位で千葉ロッテマリーンズを逆指名。2014年に現役を引退。2019年にYouTubeチャンネル「Satozaki Channel」を開設。著書に『非常識のすすめ』(KADOKAWA)など。
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(野球解説者 里崎 智也)
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