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まったく悪気がないのに相手を激怒させてしまう…そんな人が無意識に使っている「厄介な否定語」とは

プレジデントオンライン / 2023年1月17日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/4x6

あなたはコミュニケーションで無意識に相手を「否定」してはいないだろうか。エグゼクティブ・コーチの林健太郎さんは「『でも』『だって』といった否定語を使っているだけでなく、態度や仕草で否定しているケースもある」という――。

※本稿は、林健太郎『否定しない習慣』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

■「否定していない」と言う人は、いつも無自覚

→否定には予想外のパターンがある

「いやちょっと待ってください。私は相手を否定しているつもりなんてないですよ」
「否定する人っているけど、私は違います」

私が否定するコミュニケーションの功罪を話すと決まってこのように言う人がいます。実際、「否定してくる人っているよね」と言ってはいても、それが「自分のこと」だと思っている人は少ないかもしれません。

「否定する人」というのは、「何を言っても『でも』『だって』と言って否定する人」に限りません。もちろん、そういう人も含まれますが、それだけではないのです。

皆さんは、普段のコミュニケーションで次のようなことをしていないでしょうか。

●相手が話している途中でさえぎって、話し出してしまう
●相手が意見を述べたときに、「それもいいけどさ」と自分の意見を言ってしまう
●相手の話を聞くとき、目を合わせないで、別のことをしながら聞いている

これらに共通するのは、「言葉上は否定していない」ということ。

これらのコミュニケーションは日常的に多く行われているはずです。たとえば、配偶者から話しかけられているのに携帯を見ながら話を聞いて空返事をしている、なんていう方もいらっしゃるのではないでしょうか。

これだって立派な「否定」なのです。

■案外怖い「否定」のエネルギー

→もっともやってはいけない「否定」の話

「否定せざるを得ないときだってある」
「間違っていることを指摘するなってこと?」

そんなことを思う方もいるかもしれません。おっしゃるとおり、当然ケースによっては「否定しない」が難しい場合もあるでしょう。とくにビジネスでは、合理的に判断をするため、相手が間違った判断や行動をしていれば、それを否定せざるを得ない場面も出てきます。ですから、否定がすべて悪いものというわけではありません。

しかし、「否定する」というのは、思っている以上に事態をマイナス方向に動かしてしまうエネルギーがあります。そして、さらに問題なのが、そんな「否定」の持つ力に対して多くの人が無頓着であることです。

ここで私から皆さんにひとつ質問があります。

「否定でもっともやってはいけないことは何か?」と聞いたら何を思い浮かべますか。

少し考えていただきつつ、私の答えをお伝えすると、「もっともやってはいけないのは、相手の存在そのものを否定すること」となります。

●会社からもうお前はいらないと言われたら……
●学校でいろいろな人から無視されるようになったら……
●何を言っても聞き入れてもらえなくなったら……

これらが「相手の存在そのものを否定する」ことです。

ビジネスマンの様々なリアクション
写真=iStock.com/4x6
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/4x6

存在そのものを傷つけられたとき、人としての尊厳を傷つけられたとき、心にも大きな傷を負ってしまうでしょう。もちろん本稿をお読みになっている方はそこまでの否定はしないかと思います。とはいえ、多くの人がやってしまいがちなのは、「意見」に対する否定だったりします。

そして、あなたが「意見の否定」をしたと思っていても、相手によっては「意見の否定=自分を否定された」と感じることもあるのです。

「必死で考えた企画のプレゼンで全否定された」
「会議で一生懸命に考えた意見に聞く耳を持ってもらえなかった」

否定した本人は「意見の否定」をしたつもりでも、否定された人からすれば、「私の存在が否定された」と受け取ってしまう傾向にあるのです。

つまり、意図的でわかりやすい否定ばかりではないということ。

「でも〜」「そうじゃなくて〜」という言葉を使うことや、相手のミスを責め立てる、といったわかりやすい否定ばかりではないのです。仮に誤解であっても、受け止め方によって「否定された」と感じてしまう人は多いと認識しておきましょう。

→悪気のないところに「否定」は存在する

■意図しない「否定」でトラブル発生の実例に学ぶ

ここで実際にあった、ある団体での話をご紹介しましょう。

その団体は、様々な企業の人事担当者を集めて定期的に勉強会を開いている業界団体で、勉強会の司会進行役はボランティアとして、とある会社の人事担当であるAさんが長年務めてきました。

あるとき、Aさんが団体を辞めることになり、「誰か代わりの人を選出しよう」という話になったことがありました。

その団体の事務局長の方は、比較的自由に担当者が物事を決めて進めることを好んでいたという背景もあり、Aさんは、事務局長の許可を得ることなく、「誰か、勉強会の司会進行役をやりたい方、いませんか?」と、メンバー全員に対して公募をかけてしまったのです。

結果、2カ月前に団体に入られたばかりで、勉強会にはまだ一回しか参加したことがなく、進行手順などをよくわかっていない方が手を挙げるということが起きました。困ったのは、その事務局長です。

いくら自由に決めていい文化があったとしても、「団体を代表するイベントの司会進行役」という大役を、事務局への確認もなく、メンバー全員に募集をかけるという乱暴な進め方をするとは思っていませんでした。

結果的に、団体のことやメンバー構成、勉強会の進め方などの理解が足りないと思われる人物が手を挙げてしまった。いささか不都合な状況になったな、と事務局長は感じていました。

そこで、事務局長はこの状況に対して、「介入しなければならない」と決断しました。慎重に慎重を重ねて、事務局長は、Aさんに次のように伝えました。

「今回のことは、司会進行役という団体にとって大切な人を選ぶことなので、ひとりで決めるのではなく先に相談してほしかった。責任感から動いたことは理解できるが、団体全体の課題として先に運営に携わる人に相談して決めたことなのか。もし、そういった事前の相談がなかったのなら、あらためて事務局メンバーを集めて相談のうえ選考基準を決めてほしい」

ところが……。「私は自分が抜けることに責任を感じて、やる必要もないことを好意でやっているのに、それに文句を言われるなんて心外だ。それに無報酬のボランティアでその活動をしているのに、そんな言われ方をするなんてひどすぎる!」と、まるで、自分のすべてを否定されたかのように解釈して、激怒してしまいました。

林健太郎『否定しない習慣』(フォレスト出版)
林健太郎『否定しない習慣』(フォレスト出版)

そして、結局、「この団体はヒドイ」というようなことを周りに言いふらして、そのまま後任者を決めることも投げ出して去っていったのです。

言うまでもなく、事務局長には、Aさんを個人攻撃するつもりなんて、1ミリもありませんでした。事務局長としては、勉強会の円滑な運営が滞ってしまうことを懸念し、また、立候補者が今の段階では司会進行役を務めることは難しいと想定され、ご本人も苦しい思いをするのではないかと心配して、あえて口を挟んだのです。

しかし、結果は、誤解を生み、後味の悪いお別れになってしまいました。このように「否定」は、まったく悪気がなくても、伝え方ひとつで、相手を激怒させてしまうことがあるのです。

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林 健太郎(はやし・けんたろう)
リーダー育成家
合同会社ナンバーツー エグゼクティブ・コーチ。一般社団法人 国際コーチ連盟日本支部(当時)創設者。1973年、東京都生まれ。バンダイ、NTTコミュニケーションズなどに勤務後、日本におけるエグゼクティブ・コーチングの草分け的存在であるアンソニー・クルカス氏との出会いを契機に、プロコーチを目指して海外修行に出る。帰国後、2010年にコーチとして独立。リーダーのための対話術を磨くスクール「DELIC」を主宰。2020年、オンラインでの新しいコーチングの形態「10分コーチング」(商標出願中)を開発。

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(リーダー育成家 林 健太郎)

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