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1位の自治体では最大499万円の住宅補助が出る…「2022年金持ち自治体ランキング」市区編トップ200

プレジデントオンライン / 2023年1月19日 13時15分

あなたは地元自治体の財政状況をご存じだろうか。行財政アナリストの磯道真さんは「自治体財政状況ランキング(2022年版)」を作成した。今回は、全国にある1741自治体のうち、「金持ち自治体」の市区編トップ200をお届けする――。(第1回/全4回)

■ランキング上位には東京23区がずらり

あなたは住んでいる自治体の財政状況をご存じだろうか。

債務(借金)が多ければ、将来の返済負担が重く、いずれ行政サービスに支障を来しかねないことを意味する。

逆に借金より金融資産の方が多く実質無借金なら、余裕を持った行政運営ができる。多額の金融資産を保有していれば、新たな住民サービスを始めたり施設を建設したりすることも容易だ。

最も裕福な自治体はどこか――。市区では東京都心部の区が上位に名を連ねる一方、意外な市がお金をため込んでいることも判明した。

■「実質債務がマイナス」は裕福な自治体の証し

地方自治体の財政状態を表す指標はいろいろある。

税収に代表される自主財源の割合を示す財政力指数、義務的な経費を安定収入でどの程度賄えているかがわかる経常収支比率、債務の返済負担をみる実質公債費比率など。

ただ、官庁会計の歳入は税収と地方債のような借金が一緒になっており、歳出も人件費のような純粋な経費と資産が残る投資的経費が区別されていない。そもそも、国や自治体は収支が均衡するように予算を組む。フロー(収支)で豊かさを評価するのは難しい。

そのため、今回は債務水準に焦点を当て、2021年度末の住民1人当たり実質債務を算出し、ランキングしてみた。

1人当たりの債務つまり借金が多ければ、将来の返済負担が重く、いずれ行政サービスに支障を来しかねないことを意味する。逆に借金より金融資産の方が多く実質無借金なら、余裕を持った行政運営ができる。多額の金融資産を保有していれば、新たな住民サービスを始めたり施設を建設したりすることも容易だ。

【図表】【図表】1人当たり実質債務の計算式

実質債務がマイナスということは、現金や基金などの金融資産が借金を上回っており実質無借金を意味する。

■住宅取得に最大499万2000円の補助が出る

千代田区は地方債残高がわずか1500万円しかない一方、財政調整基金が420億円、その他特定目的基金が750億円ある。

官公庁や大企業の本社が集中する首都の中心とあって住民は高所得者ばかり。インフラの類いは国と東京都が整備してくれるため、財政難という言葉とは無縁だ。

行政サービスは当然ながらトップクラスで、子育て世帯が住宅を取得する際などは最大499万2000円の補助を受けられる支援策まで用意している(支援策:「次世代育成住宅助成」区内に5年以上居住する親がいる新婚世帯・子育て世帯、もしくは区内に1年以上居住している子育て世帯が対象。助成金(月額)は、毎月最高8万円、最長8年間まで)

2位の港区はある意味、豊かさで千代田区をしのぐ。地方債残高は1億7300万円で、歳計現金が128億円、財政調整基金が513億円、その他特定目的基金が1357億円にのぼる。

人口が千代田区の3.8倍いるため1人当たりだと少なくなるが、2021年度は借金に頼らず産業振興センターに図書館などを併設した複合施設「札の辻スクエア」(港区芝5丁目)を建設。基金などから88億円捻出し、22年4月にオープンした。

都心のタワマンブームで転入者も多く、過去5年間で人口が7900人(3.2%)増えたが、潤沢な個人住民税を原資に保育所や小学校の開校も相次ぐ。

(脚注)
地方債残高:公共施設や道路、水道、下水道などの整備に充てた借入金である地方債の残高
財政調整基金:年度間の財源不足に備えるため、決算剰余金などを積み立て、財源不足年度に活用する目的の基金
特定目的基金:教育、文化の振興や産業の活性化など、特定目的のために必要な事業に充てるための基金
歳計現金:各自治体の収入・支出に係る現金で、日々の支払いに充てるための資金

■江戸川区がため込んでいる事情

6位の東京都江戸川区(36万2000円)は実質債務のマイナス幅が2495億円で全国一だった。ここも借金はほぼなく、歳計現金が317億円、財政調整基金が399億円、その他特定目的基金が1777億円あった。

基金の内訳は「学校の改築用が527億円、大型区民施設の建て替え用が736億円、災害に備えたものが200億円」(財政課)など。ゼロメートル地帯にあるため、大型台風が直撃すれば区全体が水没しかねない。その際は区長の判断で広域避難を勧告することになっており、「宿泊代を区民に補助する」(同)という。大災害に見舞われても、東京23区は国から特別交付税を受け取れないことも貯蓄に励む理由だ。

23区ではこのほか、渋谷区が3位、文京区、江東区、葛飾区が8~10位に名を連ね、裕福ぶりが際立つ結果となった。

■ふるさと納税による増収

そうしたなか、岩手県陸前高田市(44万3000円)が4位につけた。市の財政需要のうちどの程度が税収等で賄えているかを示す財政力指数は0.33と全国平均(0.50)を大きく下回るのに、歳計現金が48億円、財政調整基金が63億円など「蓄え」は多い。

ただ、それにはわけがある。東日本大震災の復興事業がほぼ完了し、「国から概算で受け取っていた復興予算が余った」(財政課)からだ。「数年かけて返還する。昨年度は15億円、今年度は30億円ほどになる」(同)という。

また、5位の岐阜県高山市(41万3000円)は面積が日本一で、香川県や大阪府より広い。「飛騨高山」は観光名所として知られ、190億円の財政調整基金と257億円のその他特定目的基金を有していた。2021年度にふるさと納税で22億円超の寄付金を集めたことも「貯金」の増加につながった。

■駅もスーパーもない街がランクインしたワケ

驚くのは全国の市で最も人口が少なく、市内には鉄道の駅もスーパーも農協すらない北海道歌志内市が7位に入ったことだ。

財政力指数は全国の市で最低の0.11。2007年に北海道夕張市が財政破綻した際は、同じ旧産炭地として先行きが危ぶまれた。

「当時は基金もなく、職員の給料(基本給の10~15%)を削減し住民サービス(住宅建設や除雪車両の購入)をやめるなどして再建に取り組んだ」(企画財政課)。最近の地方交付税増額や新型コロナ対策で国からお金が入ってきたこともあり、21年度末には基金全体で37億円まで積み増した。「児童館や学校をまとめた複合施設を建設する」(同)という。

かつての歌志内市は、めぼしい産業もなかったことから正職員の7割近い非正規職員を抱えて広義の人件費が膨らんでいた。そこにメスを入れたことで財政は健全化したものの、人口減少には拍車がかかってしまった。

■富める自治体はますます富む構図

裕福な自治体の上位200市区のうち、実質無借金なのは57あった。このうち53市区は過去5年間で実質債務のマイナス幅を拡大させている。つまり金融資産を増やしていたわけだ。

ふるさと納税に伴う寄付金や新型コロナ対応の地方創生臨時交付金など、一時的にまとまった資金が入って基金を積み増している自治体もある。

いずれにせよ、お金があれば子供の医療費や学校の給食費を無料にするなど、住民を引き付ける施策が行いやすい。若い人は住民サービスの充実度を調べて住むところを決める傾向も強まっている。

富める自治体はますます豊かになり、格差が広がっている構図は個人と似ている。

【図表】【図表】「金持ち自治体ランキング」市区編トップ200(1~50位)
【図表】「金持ち自治体ランキング」市区編トップ200(51~100位)
【図表】「金持ち自治体ランキング」市区編トップ200(101~150位)
【図表】「金持ち自治体ランキング」市区編トップ200(151~200位)

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磯道 真(いそみち・まこと)
行財政アナリスト、フリーライター
1964年東京都生まれ。89年慶應義塾大学経済学部卒、日本経済新聞社入社。証券部や日経ビジネスの記者、地方部編集委員、大阪経済部編集委員などを経て、2018~22年日経グローカル編集長。22年7月に日本経済新聞社を早期退職。1999年には出向先の格付投資情報センター(R&I)で日本初の地方債格付けに携わる。著書に『地方自治体は大丈夫か』(共著)など。

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(行財政アナリスト、フリーライター 磯道 真 図版作成=大橋昭一)

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