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100円で1年中いつでもスケートができる自治体が5位…「2022年金持ち自治体ランキング」町村編トップ200

プレジデントオンライン / 2023年1月23日 13時15分

あなたは地元自治体の財政状況をご存じだろうか。行財政アナリストの磯道真さんは「自治体財政状況ランキング(2022年版)」を作成した。今回は、全国にある1741自治体のうち、「金持ち自治体」の町村編トップ200をお届けする――。(第3回/全4回)

■ランキング上位に目立つ原発立地の自治体

あなたは住んでいる自治体の財政状況をご存じだろうか。

債務(借金)が多ければ、将来の返済負担が重く、いずれ行政サービスに支障を来しかねないことを意味する。

逆に借金より金融資産の方が多く実質無借金なら、余裕を持った行政運営ができる。多額の金融資産を保有していれば、新たな住民サービスを始めたり施設を建設したりすることも容易だ。

最も裕福な自治体はどこか――。債務総額から金融資産を差し引いて住民1人当たりの実質債務を算出したところ、町村では福島第一原子力発電所周辺が1位と3位を占めたほか、原発立地の自治体や離島が上位に名を連ねた。

■「実質債務がマイナス」は裕福な自治体の証し

地方自治体の財政状態を表す指標はいろいろある。

税収に代表される自主財源の割合を示す財政力指数、義務的な経費を安定収入でどの程度賄えているかがわかる経常収支比率、債務の返済負担をみる実質公債費比率など。ただ、官庁会計の歳入は税収と地方債のような借金が一緒になっており、歳出も人件費のような純粋な経費と資産が残る投資的経費が区別されていない。フロー(収支)で豊かさを評価するのは難しい。

そのため、今回は債務水準に焦点を当てる。2021年度末の住民1人当たり実質債務を算出し、ランキングしてみた。

【図表】1人当たり実質債務の計算式

実質債務がマイナスということは、現金や基金などの金融資産が借金を上回っており実質無借金を意味する。

■原発立地の固定資産税は年20億円超

1人当たりのマイナス幅が最大で最も裕福という結果になったのは福島県双葉町で1374万円だった。3位の大熊町(1096万円)とともに、東日本大震災で事故を起こした福島第一原発が立地する。2町以外でも、6位の葛尾村(419万円)、11位の楢葉町(284万円)、12位の浪江町(255万円)など同原発周辺が上位に来ている。

事故後に国や東京電力から多額の復興費用や賠償金を得る一方、長らく帰還困難区域に指定され復興が進んでいないことが背景にある。避難した住民が戻らず人口が震災前から大きく減ったことも影響している。双葉町は住民票を残したまま避難している人を除いても、震災前と比べて約1500人(22%)減少している。

福島県以外でも、5位の北海道泊村(494万円)、8位の佐賀県玄海町(341万円)、9位の新潟県刈羽村(313万円)など原発立地自治体はどこも裕福だ。例えば泊村には1年を通してスケートができるアイスセンター「とまリンク」(村民の利用料は100円)があり、刈羽村には運動広場を含めて総工費64億円をかけた生涯学習センター「ラピカ」がある。

2021年度は、3町村とも国の電源立地交付金を10億円以上受け取っていたほか、電力会社からは多額の固定資産税が入ってくる。固定資産税収入はいずれも20億円以上あった。原発が止まっていても関係ない。

■小泉政権下のトラウマ

2位の東京都青ヶ島村(1097万円)と4位の御蔵島村(676万円)は伊豆諸島の離島だ。どちらも本土から遠く、船かヘリコプターでしか上陸できない。人口も少なく、青ヶ島村はわずか170人と日本の自治体で最も少ない。めぼしい産業はなく小笠原諸島のような世界遺産でもないため、コツコツためてきた。

青ヶ島村総務課の担当者によると「職員定数削減や公債費の抑制で捻出した財源を基金に積み立てた。今後は財源不足や災害、渇水など不測の事態に備えるほか、大型の施設整備を予定している」そうだ。昨年4月時点の正職員数はわずか23人だった。

財政力の乏しい自治体が「貯蓄」に励むのは、2000年代前半の小泉政権時代に「三位一体改革」で痛い目に遭った記憶が残っているからであろう。税源移譲の一方で補助金や地方交付税を減らされ、厳しい財政運営を強いられた。麻生政権以降のここ15年ほどは民主党政権時代を含めて地方へのバラマキが拡大しているのだが、当時のトラウマから抜け出せていない。

■南会津の村がランクインしたワケ

7位の福島県桧枝岐村(353万円)は、日本最大の高層湿原である尾瀬の北の玄関口に位置する。「豪雪地帯のため住むのは大変で移住者も少ない」(総務課)が、村の北部にJパワー(電源開発)の奥只見ダムと水力発電所があり、そこからの固定資産税が財政を下支えしている。人口530人の村にあって2021年度は固定資産税収入が3億8000万円あった。

■地方との向き合い方を見直すべき

裕福な自治体の上位200町村のうち、実質無借金なのは189。このうち141町村は過去5年間で実質債務のマイナス幅を拡大させている。つまり金融資産を増やしていたわけだ。過疎町村で無借金が多い点について、大和総研金融調査部の鈴木文彦主任研究員は「住民1人当たりの財政支出は大きいが、それを上回る交付税や補助金があるため」と解説する。小さな町村は、ふるさと納税に伴う寄付金や新型コロナ対応の地方創生臨時交付金の影響も大きく出やすい。

ふるさと納税は地方全体でみれば収入を減らし、恩恵を受けるのはサイト運営業者や節税メリットの大きい高所得者など一部に偏っている。

地方創生臨時交付金は巨額の赤字国債発行と引き換えに、地方へ多額の資金が流れている。

「無駄遣い」をするよりは「貯金」した方がマシだが、国の財政が悪化の一途をたどっていることを考えれば、地方への大盤振る舞いはそろそろ見直すべきだろう。

【図表】「金持ち自治体ランキング」町村編トップ200(1~50位)
【図表】「金持ち自治体ランキング」町村編トップ200(51~100位)
【図表】「金持ち自治体ランキング」町村編トップ200(101~150位)
【図表】「金持ち自治体ランキング」町村編トップ200(151~200位)

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磯道 真(いそみち・まこと)
行財政アナリスト、フリーライター
1964年東京都生まれ。89年慶應義塾大学経済学部卒、日本経済新聞社入社。証券部や日経ビジネスの記者、地方部編集委員、大阪経済部編集委員などを経て、2018~22年日経グローカル編集長。22年7月に日本経済新聞社を早期退職。1999年には出向先の格付投資情報センター(R&I)で日本初の地方債格付けに携わる。著書に『地方自治体は大丈夫か』(共著)など。

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(行財政アナリスト、フリーライター 磯道 真 図版作成=大橋昭一)

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