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3位は島根県海士町、2位は島根県知夫村、1位は…「2022年貧乏自治体ランキング」町村編ワースト200

プレジデントオンライン / 2023年1月24日 13時15分

あなたは地元自治体の財政状況をご存じだろうか。行財政アナリストの磯道真さんは「自治体財政状況ランキング(2022年版)」を作成した。今回は、全国にある1741自治体のうち、「貧乏自治体」の町村編ワースト200をお届けする――。(第4回/全4回)

■上位に目立つ離島がランクイン

あなたは、自分が住んでいる自治体の財政状況をご存じだろうか。

債務(借金)が多ければ、将来の返済負担が重く、いずれ行政サービスに支障を来しかねないことを意味する。

逆に借金より金融資産の方が多く実質無借金なら、余裕を持った行政運営ができる。多額の金融資産を保有していれば、新たな住民サービスを始めたり施設を建設したりすることも容易だ。

最も貧しい自治体はどこか――。債務総額から金融資産を差し引いて住民1人当たりの実質債務を算出したところ、町村では鹿児島県や島根県、沖縄県の離島が上位に並んだ。200万円を超えている町村も13あった。

地方自治体の財政状態を表す指標はいろいろある。税収に代表される自主財源の割合を示す財政力指数、義務的な経費を安定収入でどの程度賄えているかがわかる経常収支比率、債務の返済負担をみる実質公債費比率など。

官庁会計の歳入は税収と地方債のような借金が一緒になっており、歳出も人件費のような純粋な経費と資産が残る投資的経費が区別されていない。フロー(収支)で豊かさを評価するのは難しい。

そのため、今回は債務水準に焦点を当てる。2021年度末の住民1人当たり実質債務を算出し、ランキングしてみた。

【図表】1人当たり実質債務の計算式

■1位は鹿児島県にある680人の離島

住民1人当たりの実質債務が最大だったのは鹿児島県の十島村で462万円。屋久島と奄美大島の間に位置し、7位の三島村(340万円)とともにトカラ列島を構成する。九州本土との交通機関は週2往復のフェリーのみで、それも天候次第でしばしば欠航する。三島村ととともに、村役場は村内ではなく鹿児島市にある。十島村には有人島が7つ、無人島が5つあり、有人島にはそれぞれ100人前後が住んでいるため人口680人の島に小・中学校が7校あるなど行政効率は悪い。

■隠岐諸島の村が行った独自の町おこし

2位の島根県知夫村(409万円)は隠岐諸島の知夫里島にある。3位の海士町(389万円、中ノ島)、6位の西ノ島町(346万円)とあわせて「島前(どうぜん)」の3島を構成する。もともと人口が少なかったところへ、最近の離島ブームでお金がかかった様子。

「若い人はネット環境と下水がないと来てくれない」(総務課)ため、村で光ファイバーを敷き、下水(漁業集落排水)は100%整備した。さらに「住宅が不足していたのでアパートを村で用意し、状態の良い空き家を改修している。地元に法人はほぼないし、民間企業も来てくれない」(同)という。本来なら民間が手掛けるべきことまで村が行ったため借金は増えてしまったが、そのかいあって移住者は増え、人口も増加に転じている。

海士町は移住ブームの先駆けを作った自治体として知られ、知夫村とは協力して「島留学」の希望者を誘致している。昨年からは「大人の島留学」という事業も始めている。

財政がすぐに改善することは期待しにくいが、各種メディアで取り上げられるなど話題を呼び、好循環につながる可能性はある。

■事業は借金頼みで、独自性が出せない

4位の沖縄県北大東村(374万円)、11位の伊平屋村(243万円)を含め、貧しい自治体の上位は離島が多い。税収が乏しいため事業は借金頼みで、国が面倒を見ないと立ち行かない。借金の返済時には交付税で国が負担してくれるものも多く見た目の数字ほど厳しいわけではないが、1人当たりの実質債務は68町村で100万円を超え、うち13町村は200万円を超えていた。

54位の熊本県益城町(111万円)は町村の中で実質債務が最も多く、5年間で実質債務を261億円増やした。熊本地震に見舞われ、その復旧・復興に多額の資金を要したことが響いている。

債務が多い町村は、どうしても国が用意した補助金のメニューや交付税措置が手厚いもの中から事業を選ぶことになり、独自性は発揮しにくい。かつての小泉政権のように、その時々の国のスタンス次第では行財政運営に支障を来す可能性もある。

■総務省の同種指標との違い

なお、実質債務は財政融資資金の貸し手である財務省が、自治体向け融資の償還確実性を評価するために開発した「財務状況把握」の計算式に基づいて算出した。

総務省にも「将来負担額」という似た指標があるが、財務省の実質債務に比べて金額が小さくなる(マイナスの場合は大きくなる)。

最大の違いは、償還財源が地方交付税の基準財政需要額に算入される臨時財政対策債などを債務から除いてしまうことにある。国から後でもらえるという理屈で債務を少なく見せるわけだが、自治体の借金であることに変わりはない。財務省の指標の方が民間の感覚に近い。

そもそも、交付税の総額は前年末の財務省と総務省の予算折衝で決まってしまう。交付税の算定上は「交付税措置」された元利償還金が必ず上乗せされるが、全体の額が十分確保されていなければ、総務省が他の費目で調整して自治体への配分額を減らすことになる。

【図表】「貧乏自治体ランキング」町村編ワースト200(1~50位)
【図表】「貧乏自治体ランキング」町村編ワースト200(51~100位)
【図表】「貧乏自治体ランキング」町村編ワースト200(101~150位)
【図表】「貧乏自治体ランキング」町村編ワースト200(151~200位)

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磯道 真(いそみち・まこと)
行財政アナリスト、フリーライター
1964年東京都生まれ。89年慶應義塾大学経済学部卒、日本経済新聞社入社。証券部や日経ビジネスの記者、地方部編集委員、大阪経済部編集委員などを経て、2018~22年日経グローカル編集長。22年7月に日本経済新聞社を早期退職。1999年には出向先の格付投資情報センター(R&I)で日本初の地方債格付けに携わる。著書に『地方自治体は大丈夫か』(共著)など。

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(行財政アナリスト、フリーライター 磯道 真 図版作成=大橋昭一)

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