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テレビ局員や不動産屋に偽装している…あなたの周りにも必ずいる"プロの情報屋"に共通する特徴

プレジデントオンライン / 2023年1月24日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Sushiman

諜報員や探偵など「プロの情報屋」と呼ばれる人たちは、どうやって情報を集めているのか。元防衛省情報分析官の上田篤盛さんは「彼らは『砂時計会話術』をよく使う。ごく普通の世間話で会話を始め、少しずつ特定の話題へと絞り込むことで、相手から重大な情報を引き出している」という――。

※本稿は、上田篤盛『超一流諜報員の頭の回転が速くなるダークスキル 仕事で使える5つの極秘技術』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。

■誰が「重要な情報にアクセスできるか」狙いをつける

諜報(ちょうほう)員は直接ひとりで機密情報を取るよりも協力者を獲得して、彼らを通じて任務を達成することが多い。

協力者を獲得して運用するためには、

・誰を協力者にするか狙いをつける
・協力者にふさわしいか評価する
・ターゲットとの人間関係をつくる
・ターゲット勧誘する

の段階を経る。

そして、「実際に動いてもらう」ことになる。これは、①狙いを定める(Spotting)、②評価する(Assessing)、③人間関係を築く(Developing)、④勧誘する(Recruiting)という4つの段階の頭文字をとり、SADRとも略称されている諜報員のテクニックだ。

【図表1】協力者を獲得するためのSADR
出所=『超一流諜報員の頭の回転が速くなるダークスキル 仕事で使える5つの極秘技術』

まず、最初に行なうべきことは、誰を協力者にするか、すなわち近づくための協力者候補の決定である。

これには、考慮すべき2つの要件がある。

それは、需要性(ニーズ)と可能性である。

ニーズとは、相手が自分の必要とする情報を持っているかということである。

業界用語では機密などを知る適切な立場にあること、あるいは人物を「インプレス(Inpress)」と言う。

つまり、インプレスにいる人物を探して接近する。

自分や組織にとって、「役に立つ重要な情報を持っている」、あるいは「重要な情報にアクセスできるかどうか」、これが第一の基準となる。

■トップ層に近づけない場合はどうするか

たとえば、あなたが「ライバル会社が新商品を売り出すか?」、もしくは「どんな新商品を売り出すか?」を知りたければ、ライバル会社のトップ層に接近することがベストである。重要な企業秘密はトップ層だけが持っていることが多いからだ。

しかし、多くの場合、相手側企業のトップにやすやすと近づくことはできない。

このような場合は、どうすればよいのだろう?

そこで第二の基準である「可能性」、つまり「あなたは接近できるか?」ということを考える必要がある。

もし、諜報員であれば、企業トップの周辺で同様な情報を持っている人物への接近をはかるだろう。

一般社員でも新商品の研究開発や宣伝広告に携わっている人がいて、関連情報を知っているかもしれないからだ。その場合は、ターゲットを広く選定して接近し、複数の情報をつき合わせて情報の確度を上げることになる。

相手側から「私はあなたにとって耳よりな良い情報を持っている」などと接近してくることを「ウォーク・イン(walk in)」と言う。

これは金銭目的の場合が多いとされるが、自社の内情を探る二重スパイの可能性もあるので注意しなければならない。

人生やビジネスは正々堂々が原則。相手を出し抜くようなことはすべきではない、法に触れるようなことは絶対にしてはならない、と私は考えている。

■当たり障りのない会話から、核心の情報を引き出す方法

しかし、どうしても情報を手に入れなければならないときもあるだろう。

また、日本伝統の“正直さ”は、ビジネスがグローバルに展開される中では、弱点になりやすい。

だから、協力者を獲得する方法を、ビジネスパーソンはセルフディフェンスの観点からも知っておくべきだ。

先にも述べたが、まずは「問い」を設定し、必要な情報を選別する。

ついで、その問いに答えられそうな者は誰かを考える。

この際、問いに直接答えられるハイターゲットよりも、ローターゲットに対し接触するほうが安全であり、現実的だ。

ビジネスパーソンの場合は、ライバル会社の情報であったり、効果のあるアイデア、個人が成長するためのスキルを知ることが目的になることだろう。

展示会、セミナー、業界団体の会合に出席し、当たり障りのない会話をする。

話し合い
写真=iStock.com/PrathanChorruangsak
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PrathanChorruangsak

当たり障りのない会話から、核心の情報に少しずつ近づいていくわけだから、核心の情報に関する知識のほかに、社会情勢、趣味、嗜好(しこう)、スポーツなど多様なジャンルにおよぶ豊富な話題に対応できることが必要である。

しかし、相手が自然に話すよう誘いを仕掛ける必要があるので、自分の知識をわざわざ披露(ひろう)する必要はない。

だから、広く浅く、いろいろなことを知っておくことも重要である。

■ターゲットからなるべく遠い人から攻める

対象に接近するには、直接法と間接法がある。

直接法は目標とする情報に迅速アクセスできるが、失敗する危険性も高い。元諜報員の話を調べてみると、だいたいは間接法を使う。

間接法は、対象からできるだけ遠い人から攻めるのが鉄則だ。

情報を得たい相手が会社員だとすれば、相手の趣味仲間や子供のママ友など、相手にとって警戒感のより薄いところから活路を開く。

こうした巧みなアプローチ法については、日本では探偵が詳しい。探偵は聞き込みが不自然ではないストーリーを最初につくる。

調査対象の過去の居住地や高校時代の友人など、調査対象者の遠いところから調査を開始するのが探偵の鉄則である。

そしてだんだんと、内情をよく知っている人へ近づいていく。あたかも「調査対象者の古い友人と深い関係にある」といったストーリーをつくって聞き込んでいく。

本当はターゲットのことを聞きたいのだが、あえてターゲットの周辺を聞き込むことを「ボカシ調査」と言う。

ただし、このような安全な調査であっても、ひそみ行為や覗き見行為など軽犯罪法違反になったり、地域住民から通報されたりすることになるので要注意である。

対象にアプローチするために、対象がどこに住んでいるのかは最大関心事であろう。しかし、そうした場所を徘徊(はいかい)するだけでも世間から不審な目で見られ、通報されたりする。

だから、地域を徘徊するためには、それにふさわしいストーリーが必要になる。たとえば、テレビ局や新聞社のインタビュアー、あるいは不動産業者ならば付近を徘徊したからといっても不自然ではない。

むろん、テレビ局員や不動産屋をかたるには、相応の知識は必要であるし、そのように見えるマイク、腕章、携帯ノートなどの小道具も必要である。

実際の団体や、警察や公務員をかたると犯罪なので絶対に行なってはならない。架空の団体をかたることも行動がいきすぎれば軽犯罪となるので要注意である。

諜報員や探偵がやっているようなことは、素人が容易にできるものではない。もちろん、探偵のように動こうというビジネスパーソンも少ないだろう。

しかし、ターゲットからなるべく遠い人から攻めるというのは参考になる。

そして、むしろ重要なことは、世にはこうして情報を集めている諜報員や探偵が存在しているという事実をセルフディフェンスの視点から知っておくことである。

■フィーリングを相手に合わせられるか

ビジネスパーソンが相手にアプローチしたいならば相手を敬い、真心をつくして接するのが基本である。

相手のことを公開情報で調べて、相手がどんなことに関心を持っているか明らかにし、相手の気持ちを考えて、相手にとって自分が会ってみたいと思える人物であるかを考えてみる。

相手を理解し、相手の趣味や家族に寄り添うことができるなら、趣味サークルや子供の関係から、良好な交際や核心の情報を得るためのコミュニケーションのチャンスは得られる。

相手が会いたくなる人とは、どんな人か。

自分が知らない情報を持っている人、人脈を持っている人、会って退屈しない人、安心できる人、温かい人、感情の豊かな人、聞き上手な人、挙げればきりがないが一言ではフィーリングを相手に合わせられる人である。

諜報員はフィーリングを合わせているのである。そのため、ターゲットをよくよく事前研究しており、弱みや強みを把握している。強みは賞賛し、弱みは親身になって聞く、ということを行なっている。

■警戒させずに重大な情報を引き出す「砂時計会話術」

ターゲットとの会話で聞きたいことを直接聞くと、「ずいぶん詮索してくるな」と相手を警戒させることになる。

そこで、諜報員がよく使う相手を警戒させずに重大な情報を引き出す「砂時計会話術」を紹介する。

砂時計
写真=iStock.com/bernie_photo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bernie_photo

「砂時計会話術」とは、ごく普通の世間話で会話を始め、それから少しずつ特定の話題へと絞り込んでいき、また世間話に戻すという会話術だ。

たとえば、会話の冒頭では相手の子供について尋ね、それから相手の仕事(あなたが望んでいる情報)へと話題を変える。それから、休暇についてや好きな食べ物などの、世間話に戻すのだ。

人は会話の最初と最後の話題を覚えている。しかし、どういうわけか、その間の会話はあまり覚えていない。優れた諜報員はこの原理を利用して会話している。

上田篤盛『超一流諜報員の頭の回転が速くなるダークスキル 仕事で使える5つの極秘技術』(ワニブックス)
上田篤盛『超一流諜報員の頭の回転が速くなるダークスキル 仕事で使える5つの極秘技術』(ワニブックス)

たとえば、ビジネスの世界でこの手法を利用すれば、相手に警戒されずに探れるだけでなく、相手が自社の製品を購入しようとしているのか、競合他社の製品を購入しようとしているかなどの核心の情報を手に入れることができる。すなわち、見込みがある顧客かどうかを迅速に判断できるようになる。

少し練習を重ねれば、砂時計会話術を簡単に実行し、本当にお客さんになってくれる相手を見分ける際に時間や労力を節約できるようになるはずだ。

もちろんそれだけではなく、あなたに必要なビジネスの情報を収集することができる。セールス以外にも使うことができるので、ぜひ砂時計会話術を使ってみてほしい。

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上田 篤盛(うえだ・あつもり)
元防衛省情報分析官
株式会社ラック「ナショナルセキュリティ研究所」シニアコンサルタント。1960年広島県生まれ。防衛大学校(国際関係論)卒業後、陸上自衛隊に入隊。2015年定年退官。在職中は、防衛省情報分析官および陸上自衛隊教官として勤務。93年から95年まで在バングラデシュ大使館において警備官として勤務し、危機管理などを担当。現在、官公庁および企業において、独自の視点から「情報分析」「未来予測」「各国の情報戦」などに関するテーマで講演を行なっている。

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(元防衛省情報分析官 上田 篤盛)

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