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会社の色まで統一している…日本電産・永守重信会長が「同じ色のネクタイ」を2000本持っているワケ

プレジデントオンライン / 2023年1月30日 11時15分

オンラインの決算会見に臨む日本電産の永守重信会長=2021年7月21日(写真=時事通信フォト)

どうすれば運が良くなるのか。日本電産の永守重信会長は「私は緑色のネクタイを2000本持っている。緑は私のラッキーカラー。ネクタイだけでなく名刺入れやカバン、会社のコーポレート・カラーまで統一している。いいと思うものは、一途といってよいほど信じるようにしている」という――。

※本稿は、永守重信『運をつかむ』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

■験がよいものは、たくさん集めて持っておきたい

私はネクタイを2000本近く持っている。それも、すべて緑色だ。九星術(きゅうせいじゅつ)によると、緑は私にとってラッキーカラーなのだ。

九星術とは、生まれた年月日の九星と干支、五行を組み合わせた古代中国より伝わる占術である。私は1944年生まれなので「二黒土星(じこくどせい)」という星回りに当たる。この星の下に生まれた人は、豊かな実りを生む「土」の資質を持つといわれている。種をまかれた栄養豊かな土からは、樹木や草といった「緑」が生き生きと育つ。それゆえ緑なのだ。

験(げん)がよいものは、たくさん集めて持っておきたい。私が緑色のネクタイをいつも好んでつけているのを見た人から、プレゼントとしていただいたものも相当数ある。行きつけのデパートには、緑のネクタイが入荷されたらすぐ送ってくれと頼んである。その結果が2000本である。

それらのネクタイは、すぐ選べるようにガラス張りの収納棚に1番から順番に番号を振って並べている。色は同じでも、デザインも柄も幅も形もみな違う。だから、どうしても気に入ったものを頻繁に身に付けるなど、使用頻度は偏ってしまう。

そのなかからよく手に取るネクタイは、およそ200本といったところだろうか。今日は大きな商談があるという日は、とりわけ気に入っている勝負ネクタイを選び出し、いつもより少し強めにギュッと締めて家を出る。

■名刺入れやコーポレート・カラーまで緑に統一

同じ色のネクタイが2000本もあると聞くと、変わった人だなと思われるかもしれない。しかし、自分にとって験がいいものは、いくらあってもいいと思っている。ネクタイ以外にも、名刺入れ、カバン、カフスボタンなども、すべて緑で統一している。日本電産のコーポレート・カラーも緑だ。

自分にとって験のいいラッキーカラーを身につけたり、周りに置いたりしておくと、それだけで気分がいい。気持ちが良ければ、仕事への意欲もいっそう高まるのは当然のことだ。いいと思うものは、一途といってよいほど信じる。おかしな宗教を信じたりするつもりはないが、験を担ぐような類であれば、いくらそうしてもいいと私は考えている。

私が験を担ぐものには「方角」もある。運気の流れは方角とも関係しているからだ。たとえば私は、寝るときは枕を南にしている。妻は反対に北枕の方がいいといって、頭を北向きにして寝ている。つまり夫婦は寝室で、お互い逆さまに向いて寝ているわけだ。傍から見れば、きっとおかしな光景だろう。

出張でホテルに泊まるときも、南を頭にして寝る習慣は変えない。予約の際にはできるだけ南枕の部屋を取るようにしているし、もしベッドの向きがそうなっていなければ、わざわざベッドを動かして向きを変えている。常連になっているホテルはそのことを知っていて、宿泊する際には事前にベッドの向きを変えてくれるから、いつも感謝している。

■日本電産の本社ビル玄関が「東向き」であるワケ

何故南の方角にこだわるかといえば、私が太陽を好きなことも関係している。南は太陽の光がもっとも強く射し込んでくる方角である。太陽は生命エネルギーの源であり、太陽の光を浴びることは、生きる力をいただくことである。私が好きな「緑」を育む力でもある。

だから、会社でも家でも、私の机は太陽の光がたくさん入ってくる南向きに置いている。グループ会社にある私の机も、すべて東か南に向いている。大学を出てから勤めていた会社では、刻々と変わる日の向きに合わせて机の位置を変えていたので、「ひまわりくん」というあだ名をもらったほどだ。

住宅でもビルでも、玄関の方角は南向きか東向きがいい。日本電産の本社ビルの玄関は、東に向いている。方角というものを軽んじるべきではないのである。

日本電産本社・中央開発技術研究所
京都市南区久世殿城町の日本電産本社・中央開発技術研究所(写真=J o/CC-BY-SA-3.0,2.5,2.0,1.0/Wikimedia Commons)

■神社は“神頼み”ではなく決意を再確認する場所

私は月に一度、朝早くに九頭竜大社にお参りする。この習慣は初めてお参りして以来、一度も欠かしたことがない。

そこでは自分の決意を述べるだけである、今度こういう会社を買って再建させますとか、こんな事業を始めるので成功させますなど、心の内にある決意を聞いていただくのだ。決して「どうかうまくいきますように」と願いをかけるようなことはしない。

神頼みでうまくいくなら、神様にお願いする人はみなうまくいくはずだが、そんなことはない。私にとって神社は、純粋な気持ちで仕事に向かうことを誓ったり、これからの決意や覚悟を再確認するための場所なのだ。

京都にはたくさんの神社があるが、お参りするのはこの九頭竜大社だけである。神様においても一途であるべきで、浮気しないほうがいいのだ。

拝殿で手を合わせた後は、必ずおみくじを引くことにしている。それがまたズバリ、そのときどきの心境に刺さるのである。あまりにも当たるので50年以上もお参りを続けているといってもいい。だから、おみくじを引くときは緊張する。

調子に乗って有頂天になっているときは、「驕るなかれ」と慢心を戒めることが書かれていたり、問題を抱えて壁にぶつかっているときは、「もう少し辛抱すれば、好転の兆しが見えてくる」と励ましてくれたりする。

月に一度のお参りにより、私は毎月、初心に戻ることができているのである。

参拝する人
写真=iStock.com/taka4332
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/taka4332

■運がほしければ、運が集まっている場所に行くといい

テレビの相撲中継を見ていると、花道を歩く相撲取りの体を観客が嬉しそうに触ったり、叩いたりする光景をよく目にする。相撲というのは本来神事であり、その神事をつかさどる超人的な力を持った相撲取りに触れるのは縁起がいいということらしい。もっとも真剣勝負に臨もうと集中力を高めている相撲取りからすれば、体をぺたぺた触られるのはたまったものではないだろう。

以前、ぜひ採用したいと思った優秀な人材がいた。ところがなかなか受諾の返事をくれない。理由を尋ねたところ、「実はあるベンチャー企業からお誘いの話があり、迷っているのです」と言う。そのベンチャー企業の社長から「日本電産なんか、やめておきなさい。当社が世界をアッと言わせる大きな企業になった暁には買収しますから」と熱く語られたというのだ。

日本電産を買収すると言っているのは、いったいどこの会社なのか。言い渋っていたその青年の口からようやく出てきたのは、何と我が息子が経営するベンチャー企業の名前であった。その息子は半ば冗談で、私と握手すると「運を吸い取られる」と言って握手を拒むが、運がほしければ運を持っている人と縁を持ったり、運が集まっている場所に行くといいのは事実である。

■同僚や会社の「運の流れ」に乗っていくことも重要

たとえば運を持っている人と一緒に仕事をしたり、運の流れに乗ってぐんぐん伸びている会社で働けば、おのずと運が回ってくる可能性は高いだろう。

先頃日本電産の新社長に就任した小部博志は創業時からのメンバーであり、大番頭として日本電産をずっと支えてきた人物である。大学の後輩であり、そのつき合いは妻よりも長い。

会社をつくったとき、私は小部ら3人の社員を前に将来売上高1兆円の会社にするぞと宣言したが、彼はそんな大ボラに半分あきれながらも、辛抱強くずっとついてきてくれた。私とともに血のにじむような努力を重ねて、今日までともにやってきた。

彼は自分でも言っているが、強いリーダーシップでぐいぐい社員を引っ張っていくようなタイプではない。だが、今回社長を引き受けてほしいと依頼したのは、彼が日本電産の文化や価値観といったものを、細部にわたるまで隈なく吸収し尽くし、それを全身で体現している存在だからだ。

企業の文化や価値観といったものは、その企業にとって言わば背骨である。日本電産はこの背骨をたくましくすることで、ここまで成長してきた。さらなる飛躍に向かうには、もう一度原点をしっかり確認する必要がある。その大きな責務を担う中核として、彼は最適任なのだ。

もし私が彼と出会わず、従って日本電産という会社と縁がなかったのなら、売上高2兆円近くの企業の社長などにはなっていなかっただろう。社長になったのは、もちろん本人の途方もない努力もあるが、同時に会社が持つ運気に恵まれたからともいえる。運は、自家発電のように自力でひたすらつくり出すだけでなく、運を持っている人間や運が集まっている場所に赴くことでもつかめることがある。

もちろん縁ができても、そこでちゃんと努力をしなければ、運はすぐにすり抜けて、どこかに逃げてしまうことは言うまでもない。

■働いていた5つの会社がすべて潰れた応募者

とある有名な会社の社長は採用試験のとき、運がいい人を採用するという話を聞いたことがある。面接の時に「あなたは自分で運がいいと思いますか?」と聞くのだそうだ。きっと運気のよい人がたくさん集まれば、会社の運気もよくなるという理屈なのだろう。

私は採用試験の面接で、この人は運がよさそうかどうかなどということにはとりたてて関心を向けない。それよりは、会社に入ってから真面目に努力できそうかどうかを大事な判断基準にしている。

面接
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

以前、面接を受けに来た人の履歴書を見て、思わず「へぇ~」と驚いたことがある。それまでに5つの会社を経ているが、どの会社ももれなく倒産していたからだ。1、2社潰れたというならまだしも、5社すべてはかなり稀だろう。これを「運が悪い」と言わずして何と表現できようか。

■自分を信じて疑わない気持ちが運を引き寄せる

人事部長は、「この人を採ったら、うちもつぶれるんじゃないですか? やめときましょう」と言ったが、私は「いや、うちは一人のよくない運気なんかに負ける会社ではない」と採用を決めた。それだけの苦労や挫折をしてきたからこそ、その経験をうちで活かそうとするのではないか。そんな思いもあった。

永守重信『運をつかむ』(幻冬舎新書)
永守重信『運をつかむ』(幻冬舎新書)

結局、その人はその後転職もせず、定年までしっかり勤め上げてくれた。会社が強い運気に乗っていれば、一人の悪い運気に影響を受けることはないのだ。むしろ、その人の悪い運気の流れを変えてしまったりもする。

前にも触れたが、私の母親は小さい頃からよく私の手相を見ては、「お前の手相は珍しい。きっと強運の人生だよ」といつも言ってくれた。「ますかけ」といって、豊臣秀吉や徳川家康と同じ手相らしい。

母のその言葉は私に強く刷り込まれ、俺は運が強いんだ、がんばれば必ず夢を実現させることができる、と信じ込んだ。思い込みと言えば思い込みだが、自分を信じて疑わない。これもまた、運気を呼び寄せる上で大事なことである。

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永守 重信(ながもり・しげのぶ)
日本電産 代表取締役会長
1944年、京都府生まれ。6人兄弟の末っ子。京都市立洛陽工業高等学校を卒業後、職業訓練大学校(現・職業能力開発総合大学校)電気科を首席で卒業。1973年、28歳で日本電産を創業し、代表取締役に就任。同社を世界シェアトップを誇るモーターメーカーに育てた。また、企業のM&Aで業績を回復させた会社は60社を超える。著書に『成しとげる力』(サンマーク出版)、『人を動かす人になれ!』(三笠書房)、『大学で何を学ぶか』(小学館新書)など。

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(日本電産 代表取締役会長 永守 重信)

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