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大企業でバリバリ活躍した人ほど危ない…定年後のサラリーマンが急激に老け込む残酷な理由

プレジデントオンライン / 2023年2月8日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fizkes

定年後を楽しく生きるにはどうすればいいのか。公認会計士の田中靖浩さんは「50代の生き方がカギだ。会社という後ろ盾をなくして精神的なダメージを受ける人は多いが、打開策はある」という――。

※本稿は、田中靖浩『ただの人にならない「定年の壁」のこわしかた』(マガジンハウス新書)の一部を抜粋したものです。

■仕事の実力=会社力×商品力×自分力

定年のときに失うものはいくつかありますが、その代表が「名刺」です。

名刺はサラリーマンにとっての象徴であり、そこにはその人がこれまで会社につぎ込んできた努力とプライドのすべてが詰まっています。名刺がなくなることは、言葉にできない喪失感をもたらすようです。

名刺には「会社名」が書かれています。そして部署名のなかに何を扱っているかの「商品名」も書かれています。

会社名と商品名、この2つは顧客側から見て極めて重要な情報です。顧客は「その会社の商品」だから信頼して購入するわけです。そんな顧客がいてくれるからこそ、この名刺で仕事ができるわけです。

定年とともにその名刺を失うことは、何を意味するのでしょう?

それは「会社」の後ろ盾と、売りものである「商品」の両方を一度に失うということです。それでもあなたがそのあと何か別の仕事をできるとしたら、それこそが「自分」の実力です。このように考えてみましょう。

仕事の実力=会社力×商品力×自分力

会社の名前と商品はあなたのものではありません。それを失ってもなお残る仕事の実力こそが「自分力」です。

たとえば金融機関に勤めている人は、定年と同時に会社名と融資や預金などの商品メニューを失います。そのあとに残る自分の力とは何でしょう?

■会社を去って「自分力」の弱さに愕然とする

これについて、「そんなことは考えたこともない」という人が多いのではないでしょうか。サラリーマンとして働いている間は「会社」と「商品(サービス)」が強力なほど仕事が順調に進み、稼ぎが大きくなります。

そもそも、多くのサラリーマンは就職活動の際、有名な大企業や優れた商品をもつ会社に入社したいと願っていたはずです。その選択は安定した給料がもらえるという意味では正解です。

しかしながら、「会社」と「商品」の強い会社に長年勤めると、そこを去るとき「自分力」の弱さに愕然としかねません。この落差とそれに伴う精神的ショックは極めて大きいです。これは極めてまずい。なぜなら自分力の弱さと自信のなさは、定年後フリーランスのさまたげだからです。

定年後「ただの人」に転落する人の危険度チェック
出典=『ただの人にならない「定年の壁」のこわしかた』より

定年後フリーランスを目指すなら、「サラリーマン時代から定年後フリーランスまで連続するもの」をこしらえましょう。それには資格のように目に見える専門性、目に見えないスキル、特別な人的ネットワーク、などなどいろいろなものがあると思いますが、まずは具体的に見えるものを用意すべきです。

■サラリーマンではない「あなた自身」の名刺をつくる

サラリーマンの今から定年後までずっと使い続けるもの、いつか定年後の仕事を増やしてくれるもの──それが「あなた個人の名刺」です。

いまや企業間の取引や商談ではテレワークが進み、かつてより名刺交換の機会が減りました。相手と会う機会が減ったからこそ、実際に会ったときの印象が大切になっています。とくに年長者は名刺を大切にします。「いつかフリーランスになりたい」皆さん、本書を読んだらすぐ「自分の名刺づくり」を始めてください。

そのための準備を含め、「自分の名刺」によって新たな人生の扉が開きます。

え? 名刺なら、すでにもっている? 何を言ってるんですか、会社の名刺はダメです。それは定年と同時に使えません。サステナブルではない名刺です。私が言う「自分の名刺」とはサラリーマンではない「あなた自身」の名刺です。

コロナ禍でオンラインミーティングが増えたこともあり、リアルで会って名刺交換する機会は減りました。だからこそ私はその機会を大切にすべきだと思います。

サラリーマンより「自分自身」が大切なフリーランスは、出会いの場の印象、そして名刺交換を大切にしましょう。

■年配者に意見を求めると失敗する

そこで渡す名刺について、定年後まで続く自分の「ニックネーム」と「職業」を考えましょう。このどちらも大切です。それを考えたら次がデザイン。会社の名刺とちがって、フリーランスの名刺は差し出した瞬間のインパクト勝負。相手にどんな印象をもってもらいたいか、それを考慮してデザインを選びましょう。

ちなみに私の現在の名刺はこれです。

名刺
出典=『ただの人にならない「定年の壁」のこわしかた』より

会計士というお堅い印象とのギャップを感じてもらうことを重視しました。これを渡すと95%以上の確率で驚かれます。ちなみにこの名刺は私が主宰するフリーランス塾の塾生、青木英明さんのデザイン事務所「アイデア」の商品です。

まずは自分のニックネームを考えましょう。

自分のことを何と呼んでほしいか。ぜひとも覚えやすく、語感の良い呼び名を見つけてください。良いニックネームが見つかればとても有利です。ぜひともユニークで呼びやすいニックネームを考えてください。会社の名刺ではニックネームが存在しないからこそ、個人名刺では重要なのです。自分で思いつかない場合には、仲の良い友人に考えてもらうのがいいでしょう。ただし年配者はダメ。若い人の感性を頼ったほうがいいです。

え、若い友人がいないって? それはちょうどいい。これを機に若い友人をつくってお願いしてください。これもフリーランスに向けてのいい練習です。

■肩書はまじめに考えすぎたらいけない

ニックネームの次は「肩書き」。いよいよここからが名刺づくりの本番です。

ほとんどの人にとって「肩書き」は組織から与えられるものであり、「肩書きを自分で考える」ことなど経験したことがないはず。だからこそ意味があります。

名刺交換の日本人
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

自分で自分の肩書きを考える──これは本当の意味で「フリーランスへの第一歩」といえる行為です。

だからといって真面目に考えすぎてはいけません。真面目さでは大企業とAI(人工知能)にかないません。自分自身で勝負するフリーランスはユニークな視点とユーモアで勝負しましょう。

この「肩書き」について思い出深いエピソードをご紹介します。

ずいぶん前ですが、事務所のスタッフの名刺を新調したときのこと。デザインもプロにお願いしてカッコ良く一新しました。肩書きについては「各自、自分で考えるように」と宿題を出しました。組織の序列などに関係なく、「自分の個性を表す肩書きをつくるように」と命じたのです。

■いまだに忘れられない20年前に見た肩書

「自分の肩書きを考えなさい」という突拍子もない指示でしたが、数日経ったところで、第一弾が若い女性スタッフから出てきました。

興味津々でメールを開けたところ、彼女が自分に付けた肩書きはなんと「エンジェル」。

私もさすがにビックリしました。「エンジェルかよ」

本人に話を聞けば、自分には特別な専門性など何もないが、みんなの心を和ませる存在でありたい。だから目標を含めて「エンジェル」なのだと。

もちろん即決で採用です。これぞ私の望んでいた肩書き。そして彼女の名刺には「エンジェル」の肩書きが記されました。

出来上がった名刺を彼女が差し出すと、それを渡された人は全員が「えっ、エンジェル!?」と驚きます。すぐさま「なぜエンジェルなのか」の会話が始まります。良い意味で違和感タップリ、笑顔の会話が始まるわけです。

あれから20年近く経ちますが、彼女の本名は覚えていなくても、あの肩書きのことは誰一人忘れません。「エンジェルさん、お元気ですか?」と今でも聞かれます。

このエピソードのポイントは、本人が「エンジェル」という肩書きが似合う女性だったこと。彼女は笑顔が似合う、やさしくて周りも笑顔にできる女性でした。

皆さんも彼女を見習って、ユニークかつユーモアに満ちた、そして自分に似合う肩書きを考えてください。

語感の良いニックネームと自らを表す肩書き。この2つが決まればそれだけで自分の名刺は価値があります。サラリーマン時代から定年後フリーランスまで持ち運べる、長期的にポータブルな名刺。これぞサステナブル!

■転社はいいけど転職をしてはダメ

自分の名刺をつくるに当たって、重大なヒントを差し上げましょう。

それは「自分の職業とは何か?」についてしっかり考えることです。

田中靖浩『ただの人にならない「定年の壁」のこわしかた』(マガジンハウス新書)
田中靖浩『ただの人にならない「定年の壁」のこわしかた』(マガジンハウス新書)

「そんな当たり前のこと?」と思わないでください。ほとんどの日本人は自分の職業について真剣に考えたことがありません。なぜならほとんどの人は「会社員」あるいは「公務員」のことを自分の職業だと思っているからです。

よく氏名・住所に併せて書かされる「職業」欄の会社員・公務員にマルを付けるうち、それが自分の職業だと思ってしまうのでしょう。

「○○会社の会社員」「△△市役所の公務員」それは所属・勤め先にすぎません。職業とは「どんな仕事をしているか/何を目指して働いているか」の内容です。

会社が変わることを転職といいますが、これもおかしな言葉です。会社を移るのは「転社」であって「転職」ではありません。転職とは「職業を転ずること」、つまり仕事を変えることです。

自分の職業を磨くために「転社」するのは問題ありませんが、職業をコロコロ変える「転職」はよくありません。勤める会社を何社か変わったとしても「変わらない自分の仕事や信念」、それこそが己の職業です。

■「自分の職業」を所属・肩書き・資格にあてはめない

フリーランスを目指すなら、サラリーマンのうちから「自分の職業」についてしっかり説明できるよう準備しましょう。これは「営業・経理・マーケティング」のような枠組みでは甘すぎます。その枠組みを通じてどんな仕事をしているのか、何を達成しようとしているのか、それをしっかりと考えましょう。そこまで突き詰めて考えた末に、自分の言葉で表現されたものが「自分の職業」です。

これは資格でも同様です。税理士、ファイナンシャルプランナー、中小企業診断士、それらは名称にすぎません。その資格を通じて自分はどんな仕事をしているのか、何を顧客に提供したいのか、ライバルとのちがいはどこか、それらをしっかり言語化してみましょう。

50代になったら、「自分の職業」を「所属・肩書き・資格」とは別に考えておくべきです。それを名刺に書き、相手に簡潔明瞭に説明することで、はじめて相手はあなたのことを理解できます。

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田中 靖浩(たなか・やすひろ)
田中公認会計士事務所所長
1963年生まれ。早稲田大学商学部卒業後、外資系コンサルティングを経て現職。著書に『名画で学ぶ経済の世界史』(マガジンハウス)、『会計の世界史』(日本経済新聞出版社)ほか

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(田中公認会計士事務所所長 田中 靖浩)

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