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「足が太い」と悩む人は勘違いしている…鎌田實「60歳を過ぎたら、メタボ対策は忘れたほうがいい」

プレジデントオンライン / 2023年2月8日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hana-Photo

健康長寿でいるためにはどうすればいいのか。諏訪中央病院の名誉院長で作家の鎌田實さんは「健康づくりに必要なのは『うまいものを食べて、運動すること』。コレステロール値を気にする人もいるが、脂質異常がなければ、卵などのコレステロール値が高い食材はいくら食べてもいい」という――。(第1回)

※本稿は、鎌田實『60歳からの「忘れる力」』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

■60歳を過ぎたら、足は太いほうがいい

60歳は健康づくりの節目です。それまでの中年期は、メタボ対策が健康づくりの中心的な課題でした。メタボになると動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病、認知症……とさまざまな病気がドミノ倒しのように増えていきます。だから、中年期はメタボにならないように、脂肪をためこまないことが重要なのです。

ところが、60歳を過ぎると、加齢や運動不足によって筋肉の量が減っていきます。食が細くなる人もいて、栄養不足になることが多くなります。「やせてうれしい」などと思っていると、70代、80代で筋肉が減るサルコペニア(加齢性筋肉減少症)や、全身の機能が低下して十分に活動できないフレイル(虚弱)という状態になってしまいます。このままでは、要介護状態へまっしぐらです。

90代になっても、歩いて好きなところへ行き、おいしいものを味わうには、60歳になったら「やせて健康になる」というメタボ対策はいったん忘れ、「筋肉を増やす」フレイル予防へと考え方をシフトする必要があります。やせて脂肪を落とすことばかり意識していると、大事な筋肉までやせて、フレイルが加速してしまうからです。

自分がフレイルかどうかを知る目安として、「指輪っかテスト」というのがあります。両手の親指と人差し指で輪をつくり、ふくらはぎのいちばん太いところを囲みます。指が届かないくらいの太さがあれば、十分な筋肉があると推定できます。

けれど、指が重なってしまう場合は、筋肉がやせている可能性があり、フレイルに注意しなければなりません。若いころは、ほっそりした足を目指す人が多かったかもしれませんが、60歳を過ぎたらしっかり筋肉がついた足が重要になるのです。大根足でオーケー。少しずつ脂肪も減らせれば最高です。

■若者でも虚弱状態の寸前になる可能性も

2022年11月、テレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」にフレイルをテーマに出演しました。このとき指輪っかテストをしたのですが、若い女性アナウンサーから「私、指が重なります。プレフレイル(フレイルの前段階)ですか?」と聞かれました。

中高年のフレイルだけではなく、最近では若い人のプレフレイルも心配しています。「できるだけ筋肉をつけて、タンパク質をしっかりとって、脂肪は増やさないようにして、“貯筋”運動をしましょう」と説明しました。

年に一度とか半年に一度、指輪っかテストをして変化を追いましょう。ふくらはぎが細くなっていれば筋肉が減っている可能性があります。片足立ちで靴下を履けなくなった、椅子から立ち上がるときに「ヨッコイショ」と気合いが必要になった、という自覚症状があれば、筋肉減少の可能性が高いです。

ただし、ふくらはぎが太いからといって安心しきれません。一見しっかりした足でも、筋肉が少なくて脂肪が多い「隠れ肥満」の場合もあります。さらによくないのは、筋肉が著しく減少したサルコペニアの状態なのに、脂肪が覆い隠している「サルコペニア肥満」です。

隠れ肥満やサルコペニア肥満になると、筋肉にも脂肪がついてしまい、筋肉の質も低下します。最近の体重計では、体脂肪率やBMI(体格指数)、筋肉の質などを測定できるものが普及しているので、これらの数値も意識してください。

■フレイル予防はメタボ対策にもなっている

筋肉のいいところは、いくつになっても鍛えられること。タンパク質をしっかりとって、ウォーキングや筋トレをする「筋活」をすれば、筋肉は確実についてきます。

筋肉がつくと活発に動けるようになり、体重は同じでも脂肪は減り、しまった体になります。代謝効率もよくなり、半年から1年もすれば脂肪も落ちていくでしょう。フレイル予防の筋活が、まわりまわってメタボ対策にもなれば一石二鳥です。

■「タンパク質は肉から」の常識を忘れる

ぼくの健康づくりの大きな柱は、「うまいものを食べて、運動すること」です。うまいもの、つまりタンパク質豊富な食べ物をとって筋肉をつくり、ウォーキングや筋トレをして体を動かすことで、健康はつくられるのです。

けれど、日本人の多くはタンパク質が足りていません。一日に必要なタンパク質は、体重1kg当たり1g以上。ぼくは体重72kgなので、いまの筋肉量を維持するには一日最低でも72gのタンパク質が必要ということです。さらに筋肉量を増やしたい場合は、あと10g多い82gが目標になります。

キッチンの背景にタンパク質源の選択、コピースペース
写真=iStock.com/a_namenko
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/a_namenko

タンパク質をたくさん含むのは、魚や肉です。食べられる人はしっかり食べてください。そのうえで、魚や肉だけに頼らず、ほかの食品から少しずつタンパク質を積み上げていくことが大事です。

■ヨーグルトや粉末だしからもタンパク質はとれる

魚や肉以外でタンパク質を豊富に含むものは、卵や、納豆、豆腐、高野豆腐などの大豆製品、チーズ、ヨーグルト、牛乳などの乳製品です。最近はタンパク質ブームなので、プロテインを強化したさまざまな食品が手に入るようになりました。

木製のボウルにヨーグルトをスプーンで入れます。
写真=iStock.com/masa44
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/masa44

ぼくは、プロテインやカルシウムが強化され、乳脂肪分がカットされた「プレミル」という牛乳や、高プロテインの「ギリシャヨーグルト パルテノ」などをとっています。運動後30分以内にタンパク質をとると、運動で傷ついた筋肉がしっかり再生されるため、筋トレ後には高プロテインの牛乳やヨーグルトを飲むようにしているのです。

魚や大豆のタンパク質を原料とした粉末だし「こまめにたんぱく」は、佐賀県の溝上薬局がつくり、アルフレッサが販売しているもので、ぼくも開発にかかわりました。みそ汁、野菜炒めなどいろいろなおかずにふりかけて使うと、うまみが増し、タンパク質もしっかりとれるというものです。全国のスーパーなどで売られるようになりました。

■さまざまなメニューがある「大豆ミート」

また、代替肉の大豆ミートも普及しています。定食チェーンのやよい軒では、お肉の代わりに大豆ミートを使ったメニューが選べるようになっています。ぼくが行く長野県・蓼科(たてしな)のメラ・ナタラジというカレー屋さんでも、大豆ミートのカレーを出しています。

おなじみの高野豆腐も、日本人が昔から重宝してきた代替肉といえます。旭松食品の即食タイプの高野豆腐は、熱湯を注ぐだけでふっくらし、1分でおいしく食べられます。高野豆腐に含まれるタンパク質「レジスタントプロテイン」は血糖値を下げ、コレステロールを下げる作用が知られています。

ぼくの家では、高野豆腐を粉状にした粉豆腐を愛用していて、お好み焼は小麦粉の代わりに粉豆腐を使い、たっぷりのキャベツと冷凍カキなどでつくっています。こうしたアイデアを積み重ねていくと、目標量のタンパク質もわりと簡単にとることができます。

■コレステロール値は少し高いほうがいい

鎌田實『60歳からの「忘れる力」』(幻冬舎)
鎌田實『60歳からの「忘れる力」』(幻冬舎)

総コレステロール値の適正域は、220mg/dl未満。コレステロール値が高くなると動脈硬化や脳卒中のリスクが高まるため、医師から薬を処方された人も多いのではないでしょうか。ぼくは、70歳を過ぎたら、総コレステロール値はあまり気にしなくてもいいと考えています。むしろ、少し高い人のほうが血管障害は起こりにくく、低いと死亡率が高くなるというデータがあります。

ぼくの内科外来では、70歳以上で280を超える場合は、患者さんと相談し、コレステロールを下げる薬を処方します。250~260くらいの場合は生活習慣を改善することを中心に、コレステロール値が下がるかどうかを見ていきます。コレステロールを下げるには、適度な運動がいちばん。外来ではウォーキングやスクワットなどの筋トレをすすめています。

食物繊維はコレステロールや中性脂肪を体外に排出するのを助けるので、野菜やきのこ、海藻などをたっぷりとりましょう。また、高野豆腐やそばなどに含まれるレジスタントプロテインは、血中のコレステロールを低下させるといわれています。かつて卵は一日一個までといわれましたが、この制限は撤廃されました。脂質異常がなければ、卵はいくつ食べても大丈夫です。

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鎌田 實(かまた・みのる)
医師・作家
1948年東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県茅野市の諏訪中央病院医師として、患者の心のケアまで含めた地域一体型の医療に携わり、長野県を健康長寿県に導いた。1988年に同病院院長に、2005年から名誉院長に就任。また1991年からチェルノブイリ事故被災者の救援活動を開始し、2004年からはイラクへの医療支援も開始。4つの小児病院へ毎月400万円分の薬を送り続けている。著書に『がんばらない』『あきらめない』『なげださない』ほか多数。新著『だまされない』(KADOKAWA)が刊行中。

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(医師・作家 鎌田 實)

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