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結果は本番前に決まっている…仕事のできる人がやっている「完璧な準備」3つのポイント

プレジデントオンライン / 2023年2月7日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

仕事でベストパフォーマンスを出すにはどうすればいいか。元JALのトップCA・桜井妙さんは「ベストを尽くすために必要なのは、完璧な準備だ。3つのポイントを押さえれば、心の姿勢を正し、ぶれずに道を進むことができる」という――。

※本稿は、桜井妙『元JALのトップCAが明かす ベストパフォーマンスを発揮する人の「接客力」』(大和出版)の一部を再編集したものです。

■イチローが言った「結果は本番前に決まっている」の意味

決意は、口で言うのは簡単です。

しかし、ベストを尽くそうと頑張っても、決意通り結果を出すのは難しいものです。私たちは結果が出せなかったときに、できなかった言い訳を探してしまいます。

そして、言い訳に責任を押しつけ「次こそは頑張ります」「今度こそベストを尽くします」と、また同じように宣言します。あなたにも身に覚えがありませんか?

このパターンを繰り返すと、周りに信用されなくなるか、言い訳をする自分自身に嫌気がさし、ベストパフォーマンスを発揮する心理状態ではなくなってしまいます。

いますぐこのパターンから、抜け出しましょう。

「ベストパフォーマンス」と聞いて私たちがすぐに思い浮かぶのは、イチロー選手ではないでしょうか。あるインタビューで、「結果は本番前に決まっている」とおっしゃっていました。

つまり、「一番大切なことは、試合前に完璧な準備をすること。準備というのは、言い訳の材料となり得るものを排除していくこと。そのために考えうるすべてのことをこなしています」と。

いかがでしょうか。まったくその通りだと頷いてしまいます。精神論だけでは、よい結果を出せるわけがありません。

■完璧な準備に必要な3つのステップ

私は訓練生の頃に、この「完璧な準備をすること」の意味を学びました。

試験勉強のために年末年始は帰省せず、故郷の成人式にも参加しないなど、訓練に支障がでそうな要因をとことん排除したのです。そうしないと、私の能力ではCAになれないと自覚していたからです。

しかし、準備は勉強だけでは不十分。健康管理も必須です。

学生時代は風邪をひいたら簡単に休んでいましたが、訓練中は休むと訓練が受けられません。自分の意志で、風邪をひかないよう健康管理をするようになりました。時間管理も当たり前。遅刻や無断欠勤という言葉は人生からなくなりました。

失敗を避けるために完璧な準備をする。そのために、言い訳のもとになりそうな要因を排除しました。

イチロー選手が常にベストパフォーマンスを出せるよう研究し、工夫を重ねたように、私にもいつもしていたベストを尽くすための準備があります。

・STEP1 目的と目標を明確にする
・STEP2 覚悟を決める
・STEP3 感情のマネジメントをする

この3つのSTEPは、シンプルですが心の姿勢を正し、ぶれずに道を進ませてくれます。次の項目から1つずつ見ていきましょう。

■STEP1 目的と目標を明確にする

「目的と目標の違いは何でしょうか?」

私はセミナーや研修で毎回この質問をします。目的も目標もよく使う言葉ですが、この質問に自信を持って答えられる人はほとんどいません。

なぜこの質問をするのかと言うと、前に進むために必要な質問だからです。何かを実行し達成するためには、目的と目標の意味を正しく理解しなければいけません。では、一緒に意味を確認しましょう。

目的は、「的」という字からわかるように、目指す到達点やゴールのこと。

弓道の的を想像してみてください。的は必ず1つ、同じく目的も1つなのです。

わかりやすく言うならば、登山のときに目指す山の頂上のようなものです。

一方で目標は、目的を達成するための具体的な手段のこと。

「標」は道標と使われるように、途中で目に見えて認識できる通過点を指します。

入社時、私は完全に目的と目標を混同していました。

当時は目的を「CAになること」と考え、CAになった途端目的を達成したと思い込みました。そして次の目的は、とりあえず「接客を学ぶこと」にしました。

■28年間ブレずに飛び続けたのは、「なぜ」を突き詰めて考えたから

しかし、ひとえに接客と言っても、その意味合いは幅広く、あまりにも漠然としています。挨拶1つをとっても先輩CAたちの挨拶は何かが違い、一般的な接客の知識だけでは不十分ということだけ想像できましたが、どこを目指せばいいのか、自分ではわからず途方にくれました。

そんなとき、上司のチーフが私にこう聞いたのです。

チーフ「桜井さん、あなたは誰のために仕事をやっているのですか?」

私「もちろん、お客様のためです」

チーフ「では、なぜJALのCAになったのですか? ほかの職業でもお客様のために仕事はできますよ」

確かにその通りです。ドキンとして答えに詰まりました。私はこの「なぜ」という質問で、自分の仕事と人生について考えなければならなくなってはじめて、目的と目標がハッキリしました。

私の人生の目的は、「CAという仕事を通して、自分の人生を充実させること」。その目的を達成するために、そのつど必要な目標を立て達成するようにしました。

「なぜ」を突き詰めて考えることで、目的はぶれないまま28年間飛び続けることができたのです。

■「目標」は常に変わっていい

先ほど述べたように、目標は経験を重ねるうちに変えました。

たとえば、あるときは日々の機内業務から外れることを目標にしました。

なぜなら、お客様に感謝の気持ちを直接伝えたかったから。この目標は「ふれあいメール」という企画として先輩を中心に5人で実行しました。

【図表1】「Why(なぜ)」「How(どのような)」で目的と目標が明確になる
出典=『ベストパフォーマンスを発揮する人の「接客力」』

営業や広報も関わる大きな活動になりました。そして活動内容を先輩と2人で、役員会でプレゼンしました。役員会は部長も出席できない大きな会議です。

CAが役員会に参加することは異例中の異例。そこからこの活動は周知され、新聞や雑誌で紹介していただき、最終的に社長表彰をしていただきました。

私たちがなぜこの企画を実行しようと思ったのか、それには理由があります。

前年、JALは大きな事故を起こしました。それにも関わらず、JALを選んで乗ってくださるお客様に心から感謝していましたが、その気持ちがうまく伝えられないこと、よい接客をしたいのに心の底から明るい気持ちになれないことに皆葛藤していました。

これではいけないと突き動かされて、先輩と一緒に顧客様や関係者様全員に、感謝の気持ちを直筆で綴った搭乗御礼のハガキを出すことにしたのです。

これができた理由は、チーフから「なぜ」と問われ、自分の人生の真の目的に気づいたから。目的は「なぜ(Why)」で深掘りして、目標は「どのような(How)」と質問することで明確になります。

私の目的は「CAという仕事を通して、自分の人生を充実させること」、そう決めていたからこそ、「機内サービス」という枠を越え行動できました。

接客力を違う視点で捉え実行したことで、物事の見方の視野と考え方が大きく変わったのです。

あなたは、ベストパフォーマンスを発揮してどんな未来を手に入れたいですか?

同じ仕事をしていても、未来予想図は皆違います。

たとえば、「高い顧客満足を実現してサービスに磨きをかけたい」と接客業を極めたいCAもいれば、コミュニケーション力という強みを活かし「NPO法人でボランティアをして、たくさんの人と関わりたい」というCAもいました。

未来が目的になるのです。目的がはっきりすれば自ずと目標が見えてきます。

■STEP2 しっかりと覚悟を決める

さて、目的は「なぜ」という質問で明確になるとお伝えしました。

ベストパフォーマンスを発揮している人は、目的が定まったあと何をしているのか。それは「覚悟を決めること」です。

・達成した先の結果が理解できる(思考)
・やりたい気持ちになる(感情)
・強い覚悟を身体に刻む(感覚)

人間はこの条件を満たさないと、目的をやろうという気持ちが起きません。

目的を定めても、すぐに行動に移せないという経験をしたことが誰しもあるのではないでしょうか。

学習塾のCMで、子どものやる気スイッチを塾の先生が押すというものがありました。背中についているスイッチを押すと、やる気のある子どもに変身するという映像です。

しかし、実際には他人が人のやる気を促すことは難しいものです。親が口煩く言っても、ご褒美をちらつかせても、勉強しないと将来が大変だと教えても、子どものやる気スイッチをONにすることはできません。

もし勉強をはじめたとしても、真のやる気でなくその場逃れの見せかけのやる気では、行動は継続しなくなります。

■脳では「感情」のほうが思考より早く反応する

心理学や脳科学では、「脳は快を好んで痛みを避ける」と表現されます。

たとえば、人と関わることが好き(快)で接客業に就いたとしても、仕事をするうえで苦手とすることや不安な気持ち(痛み)があれば、不安な気持ちのほうが行動の決定権を握ってしまい、前に進めないということです。

思考で目的を定めても、脳では「感情」のほうが思考より早く反応してしまうのです。

自分の心の底にある不安感を無視しながら接客をしていても、エネルギーは湧きません。接客はお客様から反応が返ってくるからこそ楽しいのに、それを楽しむ余裕がないのは、あまりにもったいないことです。

では、好きなこと、やりたいことだけを目的にすればいいのでしょうか。これも違います。

自分の実力よりも難しいことや、困難なことにチャレンジしてこそレベルアップができるのです。

たとえば、ピアノが好きで、最初は「猫ふんじゃった」が弾けるようになり満足したとします。すると今度は、もっと難しい曲が弾きたくなります。好きだからこそ向上心が生まれます。

ピアノと楽譜
写真=iStock.com/pidjoe
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/pidjoe

新しい演目を達成するたびに達成感と技術が上がるので、演奏はさらに楽しくなり練習が嫌ではなくなります。そんなある日、「ラ・カンパネラ」を聴いて深く感動したら、いつか自分も弾いてみたいと憧れを抱くかもしれません。

名曲「ラ・カンパネラ」は、世界中のピアニストたちが選ぶ一番難しい曲。弾けるようになるまで血のにじむような練習をするしかありません。

しかし、絶対に弾いてみたいと強く願う「感情」「感覚」があれば、それがやる気になり、練習が辛くても「やるぞ!」という覚悟が練習を継続させます。

■自信はなくても気持ちが強いとき、それは覚悟になる

人生は、小さな覚悟の積み重ねです。

そして、覚悟が決まるのは「向上したいとき・変化したとき」です。

接客業をはじめて間もないころは、お客様に話しかけられるとしどろもどろになり、気の利いた返答ができないかもしれません。

しかし、だんだん余裕が生まれると、お客様とコミュニケーションをとりたくなります。

そんなときに、「今日は、『いらっしゃいませ』という挨拶のあとに、一言添えてみよう」と決めるのも立派な覚悟です。

接客に慣れてきて生まれた「楽しい気持ち」や、一歩踏み込んだ会話に「チャレンジしたい気持ち」。

自信はなくても気持ちが強いとき、それが覚悟になるのです。

■STEP3 感情のマネジメントをする

前項では、目的を達成するための覚悟のつくり方をお伝えしましたが、この状態は永遠には続きません。悲しいかな、やる気スイッチが機能しなくなるような突発的なことが人生には起きるのです。

たとえば、「初対面のお客様からいきなり怒鳴られた」「お客様が勘違いしたのに、私のミスになった」「笑顔で挨拶したら、冷たく無視された」など、あなたも仕事中こんな経験をしたことはありませんか?

不用意に怒鳴られると誰でも心が深く傷つきます。ミスが自分のせいになったら、誰でも釈明したいものです。ところが、相手がお客様の場合は、言葉を呑み込まなければならずイライラするでしょう。

また、心を込めて笑顔で挨拶しても、無視され続けたら心が折れてしまい悲しくなりますよね。

このようなネガティブ感情が生まれると、私たちは感情の奴隷と化してしまいます。

ネガティブ感情はポジティブ感情より3倍強いと言われています。

ノースカロライナ大学のバーバラ・フレドリクソン教授の研究で「ポジティブ感情とネガティブ感情には黄金比があり、3:1以上の割合であると自己成長に繋がり幸福感が高まる」ということがわかったそうです。

これは、ネガティブ1を感じた場合、ポジティブ3以上を感じないと幸福感は高まらないということです。

たとえるなら、ダースベイダー1人を倒して幸福になるには、ジェダイの騎士3人以上で戦う必要があります。つまり、そのぐらいネガティブな感情は私たちに、強いダメージを与えているのです。

■接客業は「感情労働」

ビジネスでは数年前からアンガーマネジメントが話題です。

怒りはネガティブな感情の代表。パワハラ・モラハラなど怒りにまつわる問題が増えたのも一因ですが、ビジネスのみならず、つい感情的になってしまいSNSで問題発言をする人も増えました。

あおり運転や家庭内暴力、虐待は、ネガティブな感情である怒りに呑み込まれた攻撃的衝動です。

このように、いまの社会では多くの人が感情のマネジメントができず悩んでいます。

一方で接客業は「感情労働」と称されるように、自分の感情をコントロールすることが常に求められています。

たとえば、プライベートで悲しいことや辛いことがあった場合でも、お客様の前では、明るく振舞わなければなりません。

さらにサービスパーソンは会社のイメージと直結するため、好印象を抱かれる立振る舞いが求められます。

お客様からのクレームには、動揺せずに冷静に対応。また、さきほどお話ししたように、直接お客様のネガティブな言動に対応することもあります。

■感情を制する者は人生を制する

一読すると、感情の渦の中に翻弄(ほんろう)されるとても大変な仕事に思えるかもしれませんが、実際はその逆です。ポジティブな感情、優しい気持ち、前向きな気持ちになることのほうがはるかに多いです。

桜井妙『元JALのトップCAが明かす ベストパフォーマンスを発揮する人の「接客力」』(大和出版)
桜井妙『元JALのトップCAが明かす ベストパフォーマンスを発揮する人の「接客力」』(大和出版)

たとえば、仕事として接客しているのに、お客様からいつも感謝されます。人から常に「ありがとう」と言われる仕事はそう多くはありません。「ありがとう」という言葉ほど人を幸せにする言葉はほかにはありません。

そして宝石のような美しく清らかな感情にもたくさん出合います。豊かな感情が生み出す奇跡の瞬間に私は何度も出合いました。そんな体験ができる仕事です。

感情に振り回されると、目的や目標を見失います。感情をうまくマネジメントできると、仕事のみならず、自分の人生をマイナスからプラスに簡単に変える方法を手に入れることができるのです。

感情を制する者は人生を制する。それは決してオーバーな言葉ではないので、一緒に本書で学びましょう。

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桜井 妙(さくらい・たえ)
コミュニケーション・デザイン結 代表取締役
JAL国際線客室乗務員として28年間勤務。在職中、社長表彰など数多く表彰される。2012年より現職。専門は、コミュニケーションとストレスの危機管理。米国NLP協会認定トレーナーアソシエイト、睡眠健康上級指導士、シナプソロジーアドバンスインストラクターなど資格多数。現在、全米さくらラジオ制作の「イエス ユー キュン♪」とFM北海道制作の「ミラコイcast」「危機管理podcast~Watch Out」の3本のポッドキャストを担当。フランスと日本を拠点に活動。

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(コミュニケーション・デザイン結 代表取締役 桜井 妙)

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