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3位は寺尾聰、2位は阿部サダヲ、1位は…令和版「徳川家康を演じた俳優ランキング」ベスト10

プレジデントオンライン / 2023年2月12日 13時15分

徳川家康像(写真=大阪城天守閣所蔵/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons)

過去10年のドラマや映画で、徳川家康役が最も素晴らしかった俳優はだれか。ドラマ偏愛コラムニストの吉田潮さんが選んだ、令和版「徳川家康を演じた俳優ランキング」ベスト10をお届けする――。

■ここ10年の「マイベスト家康」を勝手にランキング

過去の大河ドラマでは主人公だけでなく、かなり頻繁に登場してきた徳川家康。そもそも、家康と言えば一般的にはどんなイメージなのだろうか。

関ヶ原の戦いを制し天下統一を成し遂げた人、260年の平和を築いた江戸幕府の初代将軍、鳴くまで待つ人、戦国の世で長生きした人、くえない狸おやじ、熟女・後家好き、出自問わず侍女に手を出しがち、16人の子をなした艶福家、天ぷら好き、伊賀忍者との交流、脱糞・焼き味噌、食い逃げ……。

すみません、私が歴史に疎いので、つい些末な、というか人間味あふれるエピソードのほうの印象が強くてね。

そこで、NHK大河に加え、民放各局ドラマや映画でここ10年の家康役を振り返り、「マイ・ベスト・家康」を選んでみようと思う。

ここ10年にしぼったのは、そりゃ昔の大河の家康のほうが断然迫力があって、津川雅彦や西田敏行、滝田栄が高得点になるわな。平成と令和にしぼったほうが、描き方の変化がみられるなと思ったから。

「人間味・矮小さ・策士としての智慧・上に立つ者としての威厳・平和主義の矜持・人としての慈愛・男としての魅力・茶目っ気やウィット・武将としての迫力・容貌の印象」で各10点ずつつけて、超主観的に総合点を出してみた。

「ここ10年の家康像」勝手にランキング、である。

■織田信長に食われてしまった10位

思いつくかぎりで家康が登場した作品を振り返ってみると、あることに気が付く。10位~5位の大半が「トリッキー家康」。家康だけど家康じゃない。要するに、SFファンタジーにおける家康像が多い。ちょっと一気にご紹介しよう。

10位 風間俊介 20点「麒麟がくる」(2020年・NHK大河)

明智光秀が主人公(演じたのは長谷川博己)で、若き暴君・織田信長(染谷将太)に仕え、朝廷と幕府をとりもちつつ、水面下でのネゴシエーション、そして決裂を描くのが主軸。

そのため、風間家康の出番は少なく印象が薄い。松平元康時代は適役だし、正統派だが、染谷信長の承認欲求っぷりが強烈すぎて、得点伸びず。

■SFドラマに頻繁に登場

9位 濱田岳 20点「信長協奏曲」(2014年・フジ)

男子高校生がタイムスリップ、織田信長と顔が似ていたためにうっかり影武者というか、なりすますハメに陥るタイムリープモノ。

信長と明智の2役を小栗旬、豊臣秀吉を山田孝之が演じ、家康は濱田岳が演じた。

「女好き」「グルメ」を前面に打ち出し、のほほんとした可愛らしい家康像を完成。平和主義な感じもいい。

8位 小澤征悦 30点「新・信長公記」(2022年・日テレ)

戦国オタクの博士が戦国武将のDNAをもつクローンをつくり、学園に集める。名武将のクローン(高校生)たちが天下獲りで争うファンタジー。

主人公・信長を演じたのは永瀬廉。その他の武将には、こぎれいな若手や手練れの中堅俳優が多いが、家康がひとりだけ重厚感ある小澤征悦。そこがもう可笑しい。しかも凶暴で残忍な性格。信長の宿敵となるが、過剰な小澤家康、これはこれでありだな、と。

■意外にハマり役だったカンニング竹山

7位 カンニング竹山 30点「信長のシェフ」(2013年・テレ朝)

玉森裕太主演、若き料理人ケンが戦国時代にタイムスリップ。信長(演じたのは及川光博)に気に入られ、料理を通した戦略に重用される。

『テレ朝動画』より
『テレ朝動画』HPより

で、家康を演じたのがカンニング竹山。容貌も、たやすく人を信用せず、信長に対しても辛辣な陰口を叩く感じも適役。ケンが作った鯛のソテーで人質時代に信長と交わした約束を思い出し、織田勢につくことを決意。義理人情の家康とも言える。

こうして振り返ると、この10年の家康像は想像の幅が広がり、自由度を増して、ファンタジーの世界で暗躍するようになっている。きわめつけは次のふたりだ。

■大河史上最もトリッキーだった徳川家康

大河史上最もトリッキーだったのは、大河のみならず民放局の時代劇で何度も家康を演じてきたあの人である。

6位 北大路欣也 30点「青天を衝け」(2021年・NHK)

主人公は吉沢亮が演じる渋沢栄一。近代資本主義のフロンティアとされるも、大河で描くには微妙に知名度が低い。そこで案内役としてオープニングを飾ったのが北大路欣也演じる家康だった。

自己紹介に始まり、渋沢が徳川家臣だったと解説。スタジオで時代背景や人間関係を手短に語る欣也家康。バックではパネルや映像とともにパントマイムのパフォーマンス。

初めは「興ざめ」と思ったが、欣也家康の解説は私のように歴史に疎い人間を物語に優しく導いてくれた。割と頻繁に登場し、物語の展開に合わせて嘆いたり、反省したりと家康公の感情も表現。最終的には、威厳も風格もある欣也家康が出てこないとちょっと寂しい、とさえ思わせた。

■コメディとの相性も◎

5位 三宅弘城 40点「小河ドラマ 徳川☆家康」(2023年・BSフジ)

三宅弘城主演、“非”本格派時代劇のシリーズ第3弾。歴史上の偉人が現代にタイムスリップ、せこいエピソードを軸に展開するコメディだ。

『BSフジ』HPより
『BSフジ』HPより

過去、織田信長・坂本龍馬ときて、今年は家康。

関ヶ原でカチドキを挙げたとたん現代へきてしまった三宅家康は、なぜかテレビドラマのADに。制作陣は家康を主人公にしたドラマを企画するも、「地味で面白くない」「長生きしただけ」「勝てる戦しかしてない」「おこぼれ天下」とディスりまくり。

ちょっと厄介な時代劇大御所スター(松平健)が家康を演じることになり、三宅家康は全面的に協力するも、史実の家康像と自分の理想像の差に戸惑い、落ち込んだりもする。馬鹿馬鹿しいけど意外に適役。

ランク外だが、Netflixのドキュメンタリー「エイジ・オブ・サムライ」(2021年)も、設定をやや無視しながらも再現ドラマで武将たちを描いていて、興味深かった。

家康を演じたのは真青ハヤテ。パルクールの演出や指導もできるアクション俳優だ。

若く猛々しいハヤテ家康は新鮮。海外制作は見せ方が面白いよね。ちなみに他の武将はアメリカで活躍する俳優陣、伊達政宗は伊藤英明が演じていた。

おっと、亜種・家康が続いてしまった。記事から離脱する人をひきとめるために、そろそろ本格的な家康について語ろう。

■NHK大河史に残る名シーン

4位 内野聖陽 50点「真田丸」(2016年・NHK)

クセの強い二枚目・内野が演じた家康は、阿茶局(斉藤由貴)の尻に敷かれ、武将らしからぬびびりや、小物感全開でスタート。

内野家康の間抜けさを際立たせたのは、徳川家重臣・本多正信役の近藤正臣でもある。徳川家の狡猾さや侮れなさの源は手練れの本田と言っても過言ではない。

「あれには子がおらん」「跡継ぎがいるというのはありがたいことだ」と、子供がいない秀吉を暗にディスり、底意地の悪さとマウンティングも際立つ。

脚本・三谷幸喜は徳川家康という武将にそんなに興味がないのだとも思う。ただし、全編を通して内野家康が見せたのは「根っこは平和主義」。戦の虚しさを最も痛感している家康公だった、と記憶している。

3位 寺尾聰 50点「軍師官兵衛」(2014年・NHK)

たったワンシーンで強烈な印象を残したのが寺尾家康。

役どころとしてはメインではないのだが、政局の流れを静観し、沈思黙考タイプの家康を演じた。ずっと片目を閉じていて、言葉少ない寺尾家康。

で、問題のワンシーン。耄碌(もうろく)してせん妄まで起きている秀吉が死んだ瞬間、閉じていた目をパカーン! と開けた寺尾家康。

NHKアーカイブスの特集記事には寺尾のコメントが。「五感のすべてで周りの動きを感じ取り、自分がトップに立つのを虎視眈々とねらっているイメージ。大きく見開いた左目で相手を見つめつつ、細めた右手で相手の裏の顔をうかがうという思いを込めた」という。

いや、もう、さすが! 膝を打ちまくったことを思い出した。

■威厳が全くない人間・家康

2位 阿部サダヲ 60点「おんな城主直虎」(2017年・NHK)

井伊直虎を女性として描いた異色作、主演は柴咲コウ。何かと井伊家と縁の深いのが阿部サダヲ演じる家康だ。

家康を「古狸」「狸オヤジ」と描くことが多かったが、阿部家康は新たに「豆狸」の称号を得た。中盤まで威厳という威厳はなく、今川・織田・武田の戦況に流しに流される役どころ。

井伊家再興の約束を反故にし、直虎から責められるも、土下座したまま無言で後ずさりするシーンが忘れられない。

その後、出世して罪滅ぼしに井伊家を何かとフォローしたのが、せめてもの救い。また、愛する妻・築山殿(菜々緒)と息子・信康を犠牲にしてしまったことを悔い、献杯する場面も。人の心は残っている。罪悪感もある家康像だった。

そして、堂々の1位はドラマではなく、映画のあの人。

■戦いでも映画でも石田三成に勝った

1位 役所広司 70点「関ヶ原」(2017年・東宝)

この映画の主人公は石田三成(演じたのは岡田准一)。豊臣秀吉(滝藤賢一)が天下人となり、家臣として重用された三成の暗躍と苦悩を描く。

役所家康は見た目の迫力に策士としての鋭さ、無邪気さと残酷さのハイブリッドが凄くて、ちょっと別格の内府だった。嫌悪感すら覚える家康像だが、ポイントの要素をほぼ満たし、史実のエピソードもてんこもり。2時間ちょっとの作品で、奥の深い家康を体現。

映画「関ヶ原」のロードショーが始まり、舞台あいさつする東出昌大さん(前列右端)ら出演者=2017年8月26日、東京都千代田区
写真=時事通信フォト
映画「関ヶ原」のロードショーが始まり、舞台あいさつする東出昌大さん(前列右端)ら出演者=2017年8月26日、東京都千代田区 - 写真=時事通信フォト

関ヶ原に向かう前に、母衣(ほろ・馬に乗るときに武士が背中につける武装具のひとつ)を作るシーンが印象的だ。

籠を編みながら母衣の由来を説く。戦場と母の胎内は生死の境目という点で同じだと語り、18年前を振り返る。「本能寺の変」では信長が絶命し、家康自らも伊賀の山中に逃げ、腹を斬ろうと覚悟して母衣を編んだという。

年月を経て、異なる境遇に絶対的な自信と覚悟ものぞかせる、いいシーンだった。「武将・家康」としてはダントツの矜持を表現。

■松潤家康にも期待

てなことを思い出しつつ、今年の大河「どうする家康」。

初回は「馬のシーンがちゃちい」「松本潤と有村架純のおままごとシーンはさすがにキツイ」「野村萬斎、舞って瞬殺」「#俺の白兎」など、おおいに話題を呼んだ。

怯えて隠れて逃げまくり、常に岐路に立たされる、威厳なき元康時代。

ある種の「珍味」と思いながらも、今後展開されるであろう新しい家康像におおいに期待しちゃっている。

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吉田 潮(よしだ・うしお)
ライター
1972年生まれ。千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。2010年4月より『週刊新潮』にて「TVふうーん録」の連載開始。2016年9月より東京新聞の放送芸能欄のコラム「風向計」の連載開始。テレビ「週刊フジテレビ批評」「Live News イット!」(ともにフジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。

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(ライター 吉田 潮)

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