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胸を張って歩いてはいけない…背筋をピンと伸ばす「正しい姿勢」が首・肩・腰の不調をもたらすワケ

プレジデントオンライン / 2023年2月14日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AH86

肩こりや腰痛を防ぐにはどうしたらいいのか。ウォーキングコンサルタントの犬飼奈穂さんは「胸を張って背筋を伸ばす姿勢が『いい姿勢』とされているが、それは間違いだ。筋肉に必要以上の負荷がかかってしまい、身体の不調の原因になる」という――。

※本稿は、犬飼奈穂『背中をゆるめると健康になる』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■がんばる姿勢はダメな姿勢

「体に力を込めて何かをがんばること」がクセになっている人は要注意です。まずは、次のようなことに心当たりはないでしょうか?

・胸を張って歩く
・下腹に力を入れてお腹を引っ込める
・お尻にキュッと力を入れて立つ
・ストレッチで思いきり筋を伸ばす
・長時間パソコンの前に座り、肩を上げたまま作業する
・気がつくと歯を食いしばっている
・やらなければいけないことを常に考えている

このどれもが、筋肉を固くしてしまう習慣だということを、まず覚えておいてください。がんばる人は、筋肉が固くなっていることが多いのです。

筋肉には、力を入れているときに固くなり、力を抜いたときに柔らかくなるという性質があります。かくいう私もいわゆる“スポ根世代”で、「力いっぱいがんばることが良いことなんだ!」とずっと思い込んできました。

ジムや姿勢改善のインストラクターからも、肩甲骨をグッと寄せて胸を張り、がんばって「良い姿勢」をキープするよう、繰り返し指導されてきました。

でも、人間にとって、力を入れ続けることは決して自然な状態ではありません。疲れる動作や姿勢は長続きしませんし、力を込めていることが原因で体に余計な負荷をかけ、不調を訴えている人も実際に多いのです。

■姿勢のためにがんばってはいけない

筋肉は、ゆるんだり縮んだりすることで、ポンプのような働きをして、血液やリンパ液を流しています。細胞のすみずみまで酸素や栄養を届けたり、老廃物や余分な水分を回収したりするのに、筋肉の動きはとても重要です。

ところが、体に力を込めて筋肉が緊張した状態が続くと、筋肉が弾力性やしなやかさを失ってしまいます。筋肉は一時的に「固い」状態から、常時「固まった」状態になります。こうなると、自分ではリラックスしているつもりなのに、筋肉はゆるまず、固いままなのです。

筋肉のポンプ作用が働かなくなると、血液やリンパ液の流れが阻害され、酸素や栄養の運搬・老廃物の排出が滞ります。こうして、疲れやすさやコリ、痛み、不快感などの不調が発生します。また、筋肉が固まって収縮すると、骨が引っ張られてしまいます。

骨は本来の正しいポジションから外れてしまうので、スムーズに動くことができなくなり、動きも制限されます。筋肉をゆるめてあげると、関節の可動域(動かせる範囲)が広がり、引っ張られていた骨も自然と元の位置に戻ってくれます。

本来あるべき場所に骨や筋肉があると、とても機能的に動かせますし、体もラクになります。スポーツでも仕事でも、力が抜けているときのほうがいつも通りのパフォーマンスができます。

私が「がんばらないでほしい」とお伝えしているのは、このような理由からです。

■胸を張ると肩、首、腰にガタがくる…

人間の体の構造を、わかりやすく空のペットボトルで例えてみましょう。体に負担のないラクな姿勢は、ストンとしたきれいなペットボトルの状態です。ところが胸を張ると、身体を前に突き出した反動で腰が大きく反ってしまいます。これは、ペットボトルがぐにゃりとつぶれて、歪んだ状態になります。

こうなると、体に力を込めないとバランスがとれません。ただ立つだけで、筋肉に必要以上の負荷がかかっている状態なのです。この姿勢を続けてしまうと、呼吸の質の低下、内臓機能の低下、肩こりや首こり、腰痛、スタイルの悪化などをもたらします。「たかが姿勢で?」と、大げさに思われるかもしれませんが、詳しく紹介していきます。

ベッドに座って腰痛に苦しむアジアの男性の背中
写真=iStock.com/AsiaVision
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AsiaVision

まず、胸を張った姿勢をとると、呼吸が浅くなります。「胸腔(きょうくう)」という、肋骨や横隔膜などで囲まれた空間に左右の肺がおさまっているのですが、この胸腔がつぶれて、うまく広がらなくなってしまいます。

また、胸を張ると骨の位置はどうなるでしょうか。①肋骨は前につき出て、②背骨は反り、③骨盤は傾いた状態になります。ペットボトルがいびつに歪んだ状態です。容器が歪むと、中におさまっている臓器が圧迫されます。

つまり、内臓の働きが悪くなってしまうのです。胃が圧迫されると胃の不調に、腸が圧迫されると便秘に、卵巣や子宮が圧迫されると生理痛などにつながります。

■「がんばる姿勢」をやめることがベスト

胸を張ると、いかにも体がグーッと上に上がったように感じるかもしれません。でも、実際に体の中で起こっていることはその逆で、内臓は「上から下へ」押されてしまっているのです。

ペットボトルがきれいな形のとき、人間の背中はゆるやかなS字カーブを描いています。胸を張った姿勢をとると、腰が反って、S字カーブがきつくなります。腰に過度な負担がかかるので、腰痛の原因になります。

また、腰が反ると相対的にお腹がぽっこり出てしまいます。背中の筋肉の動きは大きく制限されるので、背中の筋肉は次第に固くなり、しなやかさを失います。血液やリンパ液の流れが悪くなって、首や肩まわりのコリを引き起こします。

「胸を張ってがんばる姿勢」は、体に良いことは一つもありません。疲れて、体に負担をかけて、スタイルも悪くなってしまうとても残念な姿勢です。大切なのは、まずは背中の筋肉をゆるめ、体に余計な力を入れなくてもスッと立ち、座るということです。「がんばる姿勢」をやめることを、がんばりましょう。

■筋肉をゆるめることを意識したほうがいい

もうひとつ大事なことがあります。体に力を込めるだけではなく、「心」に力を込めることも、実は筋肉の固さにつながります。胸をピンと張ってがんばる人にありがちなのですが、「こうあらねば」「こうあるべきだ」と思い込んで思考が固くなると、筋肉も固くなります。

心と体はつながっています。嫌いな人と会ったり、苦手な人と電話をしたり、人前に出てあがったりすると、無意識に人の筋肉は固くなります。イライラしたり、緊張したりすると、脳が戦闘モードになり、交感神経が優位になるため、筋肉も収縮反応を起こして固くなるのです。

一時的に固くなるのはよくあることです。緊張がゆるむと筋肉もゆるむので、問題ありません。ただ、ストレス状態が続くと、筋肉の緊張状態が慢性化し、そのまま固まってしまいます。

■「思い込み」がある人は要注意

自律神経の乱れは、背中の筋肉の固さとしてあらわれます。自律神経が乱れると、脊柱起立筋(背骨に沿って、首から骨盤までつながっている大きな筋肉)が固くなるからです。次のような「思い込み」がある人は要注意です。

・メールはすぐに返信するべきだ。
・部屋はいつもきれいにしなければいけない。
・自分が決めたことは守るべきだ。

犬飼奈穂『背中をゆるめると健康になる』(プレジデント社)
犬飼奈穂『背中をゆるめると健康になる』(プレジデント社)

「こうあらねば!」「こうしなければ!」という思い込みが強い人は、背中が固くなっています。自分が決めた「枠」があちこちにあって、はみ出すことを自分にも他人にも許さない人……。体は正直なので、イライラや怒りにすぐに反応します。

思い込みを取っ払うことができれば一番ですが、人の性格やクセはそう簡単には変えられません。簡単なのは、体からアプローチすることです。体と心は常に影響し合っています。背中をゆるめて背骨や骨格の歪みを正すことで、自律神経を整えることが可能なのです。つまり、背中をゆるめれば、思考の固さも自然にゆるまります。

いろいろなことが許せる状態になると、心も体もびっくりするほどラクになります。

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犬飼 奈穂(いぬがい・なほ)
ウォーキングコンサルタント
歩き方コーチ。「ORO(オーロ)ウォーキングスタジオ」代表。「オーラをまとう歩き方レッスン」主宰。愛媛県松山市出身。「正しい歩き方」ではなく、「心地よい歩き方」を探求し、これまでに述べ6000人以上に指導し、肩こり・腰痛、猫背、坐骨神経痛など、体が抱える数々の悩みを改善してきた。開催する講座やセミナーは1000回を超える。

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(ウォーキングコンサルタント 犬飼 奈穂)

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