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人から親切にされて「すみません」と謝っていませんか?…幸福感の低い人が使いがちな口癖

プレジデントオンライン / 2023年2月13日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

人から親切にされると、「すみません」と謝る人がいる。一般社団法人「giv」代表の西山直隆さんは「お礼よりも謝罪が口をついて出てくる人は幸福感が低い。『幸福学』の第一人者、慶應義塾大学の前野隆司教授の研究によると、お礼が言えない人は幸福感を構成する『四つの因子』のうち、『ありがとう因子』が弱いことが分かっている」という――。

※本稿は、西山直隆『こころのウェルビーイングのためにいますぐ、できること』(中央経済社)の一部を再編集したものです。

■幸せを運んでくれる「四つの因子」

ぼくも日頃からお世話になっている方に、日本における「幸福学」の第一人者と呼ばれている慶應義塾大学の前野隆司教授がいる。前野教授は“こころ”に関係する幸せについて、「幸福学」として研究されている。

過去の幸福研究から幸せに関連する項目を徹底的に洗い出し、29項目87個の質問にして、15~79歳の1500人にアンケート調査を行い、その結果を多変量解析(因子分析)した。その結果、幸せを運んでくれる心的要因を学術的に明らかにしたのである。

それが前野教授の提唱する「幸せの四つの因子」だ。

幸せの四つの因子

① やってみよう因子
② ありがとう因子
③ 何とかなる因子
④ ありのままに因子

■すべてを満たしている人は最も幸福感が高い

① やってみよう因子がある人は、自己実現を目指し、成長しようと頑張っている人。主体的にわくわくしながら頑張っている人は幸福度が高い。

② ありがとう因子は、つながりと感謝から生まれるもの。人とのつながりを実感すると、何ともいえない幸福感に包まれる。

③ 何とかなる因子は、前向きさと楽観性が鍵となる。細かいことを気にせず、失敗を恐れずにチャレンジできる人。

④ ありのままに因子は、人の目ばかり気にするのではなく自分らしく生きている人。自分の軸を持ち、それに従い行動する人。

すべての因子を満たしている人が最も幸福感が高い。また、幸せな人はどの因子も高く、逆に不幸な人はどの因子も弱いという。

この4つの因子は、脳科学的アプローチにも通ずる内容と言えそうだ。

「やってみよう因子」は、自己実現できている実感やその原動力を通してドーパミンが、「ありがとう因子」は、人とのつながりや感謝を通してオキシトシンが、「何となる因子」「ありのままに因子」は、精神的に安定した状態を維持できるセロトニンやオキシトシンも関係しているといえるのではないか。

米国ハーバード大学の成人発達研究所では、世界で最も長きにわたり(七十五年ほど)、大勢の人の人生を毎年追い続け、人の幸福と健康の要因について研究している。ハーバード大の研究は、この四つの中でも特に、「ありがとう因子」の”つながり”を中心に要素を抽出しているとも言えそうだ。

ここまで読んでいただいた皆さんの中には、すでに“幸せ”が解明されているのであれば、それを実際に社会に実装させる仕組みを導入すべきではないか、と考えられる人もいるのではないだろうか。

これらを踏まえて実社会の中でどんな行動をすればよいのか、考えていきたい。

■「ありがとう」の力はすごい

こころの豊かさが感じられるメカニズムに関する内外の研究成果として、「脳内物質から放出されるホルモン」、「人と良好な関係を築くこと」、「4つの因子」がある。そこには、当然のことながら共通点も多い。中でもぼくが注目しているのは「感謝」だ。ソーシャルな生き物である人間には、人との良好な関係が必要で、良好な関係を築き維持するには、「利他」の行為とそれに対する「感謝」の気持ちが不可欠だと思うからだ。

では、感謝とはどういう意味なのか。

感謝の“感”は心の動く様を表している。そして“謝”は【言】(=言うこと)と【射】(=矢を手から放つこと)という漢字から成り立っている。つまり相手から何かをしてもらったことで、自分の心が動き、それを言葉の矢として放つということだ。

感謝の言葉として「ありがとう」があるが、漢字で書くと、「有り難う」だ。その状態が有ることが難しいことを意味している。

ここでは、この「ありがとう」の持つちからに焦点を当てるとともに、どうすればこれを自然と使いこなせるようになるか紹介する。

■「ありがとう」と言うだけでオキシトシンが分泌される

米国ハーバード大学の成人発達研究所では、世界で最も長きにわたり(75年ほど)、大勢の人の人生を毎年追い続け、人の幸福と健康の要因について研究している。ハーバード大では「人と良い人間関係を築くこと」、慶應義塾大学の研究では「ありがとう因子」が、“幸せ”を得る上で極めて重要なキーワードであることがわかっている。

人から感謝されると自己肯定感が向上する。自分が役に立つことができたという感覚を得る。そして感謝の言葉をくれた相手に対して好感を抱く。何か別の機会さえあれば、その相手にまた同じようにしてあげたいと考えるかもしれない。

実際、“ありがとう”を言うことでオキシトシンとエンドルフィンが分泌されると言われている。さらには、言った人だけではなく、言われた人からも分泌するそうだ。すなわち、”ありがとう”の言葉で自分自身も相手も良い状態になるのだ。感謝の言葉が双方の人間関係をより良いものにするのは間違いない。

しかし、現代社会では”ありがとう”を言う機会、言われる機会が少ないように感じる。大きな力を持つこの素晴らしい言葉を、誰もが出し惜しみなくより使えるような社会が必要だ。

■とっさに出てくる「あっすいません」を変える

先日、ぼくがドアを開けて建物に入る際、後ろから同じ建物に入る人がいたのでドアを開けたままにして待っていた。そのとき、その人がぼくに発した言葉は、“あっ、すいません”だった。エレベーターでも同じことが起きる。後から入ってきた人に対して“何階ですか?”と聞くと、“すいません、5階です”。

なぜこうも謝るのか。ぼくは謝られるようなことをしていない。謝るのは自分が悪いことをしたときだ。ドアを開けてもらうことも、代わりにエレベーターのボタンを押してもらうことも、“悪いこと”ではないはずだ。

日々謝ってばかりの生活だと、自己肯定感が下がり、常に恐縮して生きることになる。

謝る親を見て、子どもも、“なぜ謝るのだろうか”と疑問に思うのではないだろうか。

人にドアを開けてもらうことや、エレベーターのボタンを押してもらうことは悪いことなのだろうか。と無意識のうちに刷り込まれる。そうすることの積み重ねが、他者との交流をやりにくくする原因になっているのではないか。なるべく他者と関わらずに、自分のことは自分でなるべくやる。という現代社会の断絶の仕組みを生み出しているように思う。

■1日1回「ありがとう」と伝えてみよう

「ありがとう」を言ったり言われたりする機会が少ないのは、普段のこうしたあらゆる場面で、本来“ありがとう”が使える場面ですら使われなくなっているからではないか。悪いことをしたわけではない場合は、“すいません”のネガティブワードから、“ありがとう”のポジティブワードに変える。たったこれだけで双方の気持ちが変わる。

“ありがとう”は、伝えた人も、言われた人も、ポジティブで優しい気持ちでさせる力がある。そして、それを見た子どもは、人に親切にする・されることは、悪いことではなくて良いことだと明確に理解できるだろう。

オフィスでミーティング中のグループ
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

感謝の言葉を使うには少しの勇気や慣れが必要なのかもしれない。“ありがとう”と言い慣れていない人からすると、照れ臭いと感じるだろう。しかし、これは一種のトレーニングや習慣によって改善できる。普段の生活でいかに“ありがとう”を発するかという慣れの問題だ。

慣れるまでは、生活の中で意識をする必要がある。まずは感謝の言葉を1日1回誰かに伝えてみる。家族、仕事の仲間、友だち、店員さん、誰でもいい。そして、それを寝る前に思い出してみる。今日、自分は感謝の言葉を何回伝えることができたかな、誰に対して伝えることができたかな。

これを1週間継続できたら、1回を3回に増やせばいい。1カ月継続できれば、きっと自然と自分の生活の中に”ありがとう”が取り込まれているだろう。3カ月も経てば、人間関係が良好になっていることに気づくだろう。

■今日あった「よいこと」を3つ書き出す

医学やメンタルヘルス誌“Journal of Medical Internet Research Mental Health”に掲載された2018年の研究では、ポジティブなことを記載する「感情日記」 が、1カ月後に不安、抑うつ、全般的な苦痛の感情を減少させることを明らかにした。

米国ペンシルバニア大学のセリグマン博士は、うつの改善に役立つ、簡単なプログラムを提唱している。それはThree good thingsといわれるもので、「毎日就寝前に、その日にあった『よいこと』を三つ書き出し、これを1週間続ける」というものである。

このプログラムの効果を調べるために、セリグマン博士が、約60人の実験参加者に、プログラム実施の前と後に「うつ症候」テストと「幸福感」テストを行った。驚くべきことに、たった1週間で、うつスコアが激減し、その効果が6カ月後まで続いた。また幸福度スコアは日を追って確実に増え続けた。これらの結果は、『よいこと』を毎日書き出すことがきわめて大きな良いインパクトがあったことを示している。

今日あった良かったこと、あるいは誰かへの感謝をノートに書き出しみる。最初は1文だけの簡単な文章でもよい。友人に励ましの言葉をかけてもらって嬉しかった。夫が家事を積極的にこなしてくれて感謝している等々。

その光景を改めて思い返しながら書いてみる。じんわりと優しい気持ちが広がってくる。

■“失敗”は“成功”のための必要なステップ

世の中には感謝とは反対に、常に不平不満を言っている人もいる。どこかに欠点はないかと粗探しをしている。対象とする人が失敗をすれば鬼の首を取ったかのように騒ぎ立てる。そんな人にはネガティブなオーラが纏(まと)い、人は遠ざかっていく。一緒にいると自分のエネルギーまで吸い取られ、疲れを感じた経験がある人も多いのではないだろうか。

そういう人はおそらく自己肯定感が低く、自分に自信がなく、人の欠点を見つけることが自分の存在意義となっているのだと思う。

西山直隆『こころのウェルビーイングのためにいますぐ、できること』(中央経済社)
西山直隆『こころのウェルビーイングのためにいますぐ、できること』(中央経済社)

物事の事象を良い面をとらえるか、悪い面をとらえるかは自分次第。事実自体は変わらない。事実は一つだが、考え方やとらえ方は人によって複数になる。

たとえば、一般的に悪い結果として認識される“失敗”という言葉。人は“失敗”を避けるように生き、“失敗”したことを恥じて隠そうとする。ネガティブな事象ととらえられることが多い。

しかし、かのトーマスエジソンはこう残している。「失敗すればするほど、我々は成功に近づいている」と。

失敗をどうとらえるか。エジソンにとっては、“失敗”は“成功”のための必要なステップなのである。いかなる事象をも、楽観的にポジティブにとらえるか。あるいは、悲観的にネガティブにとらえるか。

どうせならポジティブに捉え、次の糧にしたい。

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西山 直隆(にしやま・なおたか)
一般社団法人giv代表理事
1985年生まれ。関西学院大学卒業。米国公認会計士の資格を取得後、デロイトトーマツグループにてベンチャー企業の成長支援に従事。当時、最年少部長に就任。2016年よりアジア事業立ち上げを任され、シンガポールに。海外での多様な価値観に触れる中で、金銭的豊かさだけではなく、こころの豊かさが得られる社会のあり方について考える。実際に社会で実装するために2019年に帰国し、一般社団法人givを設立。同時に国籍や宗教、性別に関わらず、誰もが最高に輝ける社会の実現に向けて、グローバル高度人材採用のプラットフォームを展開するTech Japan株式会社の代表取締役も務める。

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(一般社団法人giv代表理事 西山 直隆)

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