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先輩に「鼻毛が出ていますよ」と伝えるにはどうすべきか…「結論から伝える」が常に正しいとは限らないワケ

プレジデントオンライン / 2023年2月14日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/LeoPatrizi

相手にとって都合の悪い話を、角が立たないように伝えるにはどうすればいいのか。教育コンテンツプロデューサーの犬塚壮志さんは「結論から先に話すと、相手から拒否される場合がある。状況に応じて話す順番を変えたほうがいい」という――。

※本稿は、犬塚壮志『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』(サンクチュアリ出版)の一部を再編集したものです。

■肝心なところでうまくいかないこと、ありませんか?

「なんで、自分ばっかり仕事を押しつけられているんだろう……」
「なんか、いつもアイツに言いくるめられてしまう……」
「親しくなりたい人となかなか距離が縮められない……」
「これ、買うつもりなかったのに、なんですすめられたまま買っちゃったんだろう……」

これはすべて、ほんの4、5年前まで私が抱えていた悩みです。人付き合いがものすごく苦手というわけではありませんでしたが、肝心なところでうまくいかないもどかしさを抱えていました。このような感覚は私だけでなく、多くの人が普段の生活の中で一度や二度、感じたことがあるのではないかと思います。

一方で、私はこんな人たちとも出会ってきました。

・頭の回転が速く、気の利いた言い回しができる
・コミュニケーションがうまくて、いつも冷静沈着
・他人と言い争ったり、トラブルを起こしたりはしない
・でも、周囲の人たちに忖度(そんたく)はせずに、自分の意見はしっかりと主張する
・仕事もプライベートも順風満帆
・人間関係で1ミリもストレスを溜めていないように見える

こうした対人関係をスマートにこなす人たち。私は彼らをうらやましく思いつつ、対人関係の秘訣(ひけつ)を研究するうち、共通するスキルがあることに気づきました。

それが「交渉術」です。

交渉術と聞くと、弁護士や外交官など、特定の職業の人にだけ必要なスキルのようなイメージがあります。しかし、対人関係をスマートにこなし、人に対して強くなるためには、「交渉術」のテクニックが必要不可欠だったのです。具体的に説明していきましょう。

■「有利な合意を目指す」だけでは足りない

辞書を引くと、「交渉とは、ある問題やある議題について相手と話し合うこと」と書かれています。ただ、この定義には重要な言葉が欠けていると思いませんか?

それは「(自分にとって)有利な合意を目指すこと」です。

私はこう考えています。交渉とは、ある問題やある議題について相手と話し合い、丸め込まれることなくあなたにとって有利な合意にいたること。交渉術とは、ある問題やある議題について相手と話し合い、あなたにとって有利な合意を勝ち取るテクニックです。

たとえば……

・職場の上司から自分のスケジュールに合わせた休暇の許可を得るのも、
・取引先からより良い条件の契約を取るのも、
・知り合いからの面倒なお願いをスマートに断るのも、
・家電量販店で納得のできる値引きに成功するのも、

すべて有利な交渉が生んだ、対人関係の結末です。ただ、「交渉の理想的な結末」はここで終わりません。頭のいい人が身につけている交渉術、(以降、頭のいい交渉術)を使いこなせるようになると、あなたにとって有利な合意をしたあとに、交渉相手も笑顔になってしまいます。

つまり、こういうことです。

■本当にデキる人は論破などしない

・職場の上司に自分のスケジュールに合わせた休暇の許可を得ながら、「リフレッシュしてきな」と笑顔で送り出してもらう
・取引先からより良い条件の契約を取っただけでなく、「今後も一緒に仕事がしたい」と信頼度を高めてしまう
・知り合いからの面倒なお願いをスマートに断りつつ、いい関係は維持してしまう
・家電量販店で納得のできる値引きに成功したうえ、「いいお客さんだったな」と店員さんを笑顔にしてしまう

交渉とは、相手を論破することでも、打ち負かすことでもありません。

「頭のいい交渉術」を身につけると、「相手をあなたの提案に乗りたい状態」に促していくことができます。結果、あなたは有利な合意を得ながら、交渉相手との人間関係をより良くしていくことができるのです。

交渉術の本質は、あなたの望む最高の結末と、相手の納得感を重ね合わせることにあります。頭のいい人は、一度の勝ちではなく、交渉相手を長く付き合える味方、自分のファンにしてしまうのです。

私は「頭のいい交渉術」を身につけることで、誰とでも対等な関係をつくることができると考えています。これは対人関係に悩むすべての人に役立つスキルです。

では、頭のいい人たちが実際に行っている交渉は、ふつうの人の交渉とどこがどう違うのでしょうか?

今回のその一例として、頭のいい人たちがよく使っている「対処法先行モデル」というテクニックを紹介します。

■相手にとって都合の悪い話をうまく伝えるには

聞き慣れない「対処法先行モデル」ですが、これは相手にとって都合の悪い話をきちんと伝えたいときに役立つ交渉術です。

たとえば……

「上司に耳の痛い話を伝えなくちゃいけないんだけど、どうしよう……」
「○○さん、自分に都合の悪い話だと途中でへそまげちゃうからな……」
「これから商談だけど、先輩、鼻毛がチョロッと出ているんだよな。でも、面と向かって言いにくいな……」

こんなシチュエーションで相手のためによかれと思って正しいことを伝えたつもりが、聞き入れてもらえなかったり、不機嫌になったりして、気まずくなったことはありませんか?

相手に修正すべき点があり、そこを正すような意見や提案、すなわち相手にとって耳の痛いことを伝えるのは、誰にとっても気後れする状況です。

ここでやってはいけないのは、相手の修正すべき点(What)を結論として先に伝えてしまうこと。すると、その後に続く改善や修正の仕方(How)に対して、聞く耳を持ってくれなくなる可能性が高まります。

なぜなら、耳の痛い話や都合の悪い話は、相手にとって「恐怖」の一種であり、本能的に耳を塞いでしまうからです。

とはいえ、伝えなければいけない……。そんな状況に直面したら、相手に伝える順番を意識しましょう。

■対処法を先に話し、都合の悪いことは最後に伝える

ポイントは、改善や修正の仕方(How)、つまり、対処法から先に伝えていくこと。人はいったん恐怖を感じてしまうと、その後の情報を遮断してしまう傾向があります(Leventhal,1965)。ですから、都合の悪い話を先に伝えて相手がフリーズしてしまう前に、具体的な対処法を示すようにしましょう。私はこれを「対処法先行モデル」と呼んでいます。

たとえば、クライアントの部長が激怒していることを自社の同僚に伝えなければいけない場面では、「○○会社の部長、お前にめちゃくちゃ怒っていたよ。だから謝りに行ったほうがいいよ」と伝えても同僚は動揺するだけです。

そうではなく、先に対処法を用意して、そちらから話を切り出します。

電車の中で向かい合って会話をする2人のビジネスマン
写真=iStock.com/pixelfit
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/pixelfit

「○○会社の部長、趣味がサウナなんだって。整ったあとはすごく機嫌がよくなってなんでも話を聞き入れてくれるらしいよ。だから、菓子折持ってそのサウナが入っているビルの前で待ち伏せしてきなよ。なんでって? 部長、おまえに激怒しているみたいだから」と。

こんな順番で耳の痛い話を伝えれば、同僚も打開策を試してみようと考えてくれるはずです。

このように相手にとっての恐怖となり得る情報を話さなければいけないときには、その対処法を必ず事前に伝えるよう準備しましょう。ちなみに、相手が安心し、あなたに感謝してくれる対処法のポイントは以下の通りです。

■結論から伝えることが常に正しいとは限らない

・相手がすぐに実行できること
・実行するための心理的なハードルが低いこと
・すぐに結果が出そうなこと
・成功確率が高そうと期待できること
・恐怖を回避できる可能性を感じられること

相手にとって耳の痛い話、都合の悪い話を伝えるからこそ、対処法はできるだけ具体的に。すると、ピンチに役立つ助け船を出してくれた人という印象を残すことができます。この積み重ねによって相手を自分のファンにしていくことができるのです

最後に、対処法先行モデルを用いる際の注意事項を1つだけお伝えします。

注意点としては、耳の痛い話や都合の悪い情報を伝える相手がせっかちな人の場合、対処法(前置き)が長かったりすると、「結局、何がいいたいわけ?」と言われてしまう可能性があります。そのような相手には、結論を先に提示しましょう。

このように結論から先に伝えることを、私は「結論先行モデル」と呼んでいます。通常のビジネスシーンでは「結論ファースト」と呼ばれる定番の方法です。一方、今回のテーマのように耳の痛い話や都合の悪い話など相手にとっての恐怖となり得る話題の場合は、結論から伝えることが必ずしも正解でないことも知っておきましょう。

■大切なのは、状況に応じて修正すること

なお、あなたにとって耳の痛い話や都合の悪い話だけをしてきた相手には、その対処法を必ず聞き出すようにしましょう。恐怖を感じる話だけされて、その後、冷静にひとりで対処しろと突き放されてもなかなかそうはいきません。悪い情報を耳にすると、よほどメンタルの強い人でない限り、「どうしよう……」と軽くパニックに陥ってしまうからです。

そんなときは、その悪い情報を伝えてきた相手に「どうしたらいいと思う?」と遠慮なく対処法を相談しましょう。相手にも「あなたを恐怖に陥れた」という責任が発生していますから、遠慮せずに一緒に考えてもらいます。気を使う必要ありません。

あなたのメンタルを守るためにも、ここは相手に頼るところです。うまく対処法が見つかったら、しっかりとお礼を伝えれば貸し借りゼロ。大切なのは、状況を修正することです。

■鼻毛が出ている先輩にやんわり伝えるには?

ちなみに、商談に向かう先輩の鼻からチョロッと鼻毛が出ているとき、あなたならどう伝えますか?

犬塚壮志『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』(サンクチュアリ出版)
犬塚壮志『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』(サンクチュアリ出版)

「○○さんは、相手に言い出しにくい話があるとき、どういうふうに切り出しています? なるほど、ズバッと言うタイプなんですね。じゃあ、私も真似をして……先輩、鼻毛が出ています」

あなたの問いかけに先輩が「ズバッと言うタイプかな」と答えたら、結論先行モデルを選択。ストレートに「先輩、鼻毛が出ています」と教えてあげましょう。

逆に先輩から「遠回しに相手の反応を見ながら、切り出していくかな」という感じの返答があったら、対処先行モデルで対応します。

「大事な商談ですし、ちょっとお手洗いに寄って身だしなみをチェックしてから行ったほうが安心かもしれませんよ」と提案してみましょう。

対人関係に対する苦手意識を払拭するためにも、ぜひ「頭のいい交渉術」を身につけてみてください。

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犬塚 壮志(いぬつか・まさし)
教育コンテンツプロデューサー/士教育代表
福岡県久留米市生まれ。元駿台予備学校化学科講師。大学在学中から受験指導に従事し、駿台予備学校の採用試験に25歳の若さで合格(当時、最年少)。駿台予備学校時代に開発した講座は、超人気講座となり、季節講習会の化学受講者数は予備校業界で日本一となる。2017年、駿台予備学校を退職。独立後は、講座開発コンサルティング・教材作成サポート・講師養成・営業代行をワンオペで請け負う「士教育」を経営する。著書に『あてはめるだけで“すぐ”伝わる 説明組み立て図鑑』(SBクリエイティブ)、『理系読書 読書効率を最大化する超合理化サイクル』(ダイヤモンド社)がある。

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(教育コンテンツプロデューサー/士教育代表 犬塚 壮志)

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