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お笑いなんか好きじゃなかった…アイドル志望だったクロちゃんが「やりたくない仕事」で結果を残せたワケ

プレジデントオンライン / 2023年2月15日 13時15分

お笑いトリオ「安田大サーカス」のクロちゃん - 撮影=門間新弥

気の進まない仕事は続けてもいいのだろうか。アイドル志望からお笑い芸人の道に進み、『日本中から嫌われている僕が、絶対に病まない理由』(徳間書店)を上梓したお笑いトリオ・安田大サーカスのクロちゃんに聞いた――。(聞き手・構成=フリーライター・東川亮)

■アイドル志望からお笑い芸人の道へ

――元々はアイドル志望だったそうですね。

僕はアイドルになりたくて芸能界入りを目指したけど、どういうわけか安田大サーカスという芸人になって、「水曜日のダウンタウン」(TBS系)でゲスキャラ、いじられキャラになり、気がついたらプロレスに参戦したり、アイドルのプロデュースをするようになっていて。自分からこうなろうなんて一つも思ってなかったですし、「アイドルになりたい」っていう自分のプランはもう崩れっぱなしなんですよ。

僕が目指していたアイドル像というのは、ジャニーズみたいなものではなくて、松田聖子さんや荻野目洋子さんといった人たちでした。僕は性別は男ですけど、女性以上に女の子っぽくなりたかったんです。

あとは、自分の特徴でもある甲高い声もあって、「もののけ姫」を歌う米良美一さんなんかも意識していました。

よく、「夢は口にすれば叶う」とか言いますけど、僕に関しては全然叶っていないんです。僕はお笑いが好きなわけじゃなかったですし、お笑い芸人なんて、向き不向きで言えば僕は全然向いていないですよ。

■お笑い好きだったら今の自分はなかった

――ではなぜ向いていないお笑い芸人を続けられたのでしょうか。

向いてなかったからこそ、今も続けられていられるんだろうなと思いますね。そもそも僕は、お笑いを通ってきていないですから。お笑い番組を好きな人たちは、お笑い番組を見て劇場に通ったりとか、勉強したりしているじゃないですか。僕はアニメとか漫画しか見てなかったから、お笑い芸人になった時もめちゃくちゃ苦労しました。

ボケるにしても、僕は一般常識がなくて単に突拍子のないことしか言えなかったから、ボケ方とかも全然分からなかった。つらくて泣いていたこともありました。

でも、それがみんなと違う型になって、人と被らないようになったから、今があるんじゃないかなと思います。ある意味、僕がお笑い好きだったら、逆に今みたいなポジションにたどり着くのは無理だったんじゃないかな。

■自分にしかできない「コンプラ緩い芸人」

――テレビ出演では体を張る企画が多いように思います。つらくはないのですか?

最近はバラエティ番組のコンプライアンスも厳しくなりましたが、「クロちゃんだけいろんなひどいことされてるね」「クロちゃんだけコンプライアンス緩いよね」って言われるようになりました。

それってつまり自分にしかできないことがあるということなので、嬉しくもあります。

僕、前に「クロちゃんはあと10年早くテレビに出ていたら大スターになっていた」って言われたことがあるんです。僕より上の世代で言うと、ダチョウ倶楽部さんとか出川哲朗さん、もっと前だとたけし軍団のみなさんとか、過激なことをやって体を張って人気者になっていた芸人さんがたくさんいたんですよね。

僕自身、そうやって体を張ることは嫌だったんですけど、そう言われたのがすごくショックでした。でも今は、自分がドッキリを仕掛けられたり、24時間部屋を監視カメラで監視されたりっていうことをしているのは、「なんでだよ!?」って思う反面、すごく嬉しいんですよね。「他の人だとダメだけどクロちゃんなら大丈夫でしょ」みたいになるのはある意味でおいしいですし。

あと、そうやっていやいやながら体を張っていく中で、だんだんそういうことが好きになってきたんです。だから今後もそういうことはしていきたいと思って、体だけは鍛えています。

今では体を張ることもすごく好きになりました。

お笑いトリオ「安田大サーカス」のクロちゃん
撮影=門間新弥

■与えられたこともやれない人にチャンスはない

――とはいえ、もともとはアイドル志望。やりたくない仕事を続けるのはつらくなかったのでしょうか。

僕は「売れたら好きなことをやらせてあげるから」っていう口車に乗せられてこれまでお笑いをやってきました。もちろん、内心は嫌なこともたくさんあるわけです。まあ、それは今もですけど……。

でも、たとえそれがやりたくないことでも、自分が与えられたことをできなかったら、次のチャンスはもらえないと思っているんです。人間誰しもやりたくないことをやっているでしょうし、世の中でやりたいことだけをやり続けられる人なんていないはず。僕は、やりたいことをやれない状況にある意味の諦めを持ちつつ、そこで与えられた役割を一生懸命にやるように頭を切り替えたんです。

■まずはやってみて得意・不得意を見極める

お笑いも、分からないし好きじゃなかったけど、やっていくうちに少しずつ「リアクションがいい」とか「ドッキリに引っかけられているのがいい」「隠し撮りされているとめちゃくちゃ面白い」とか言われるようになりました。自分でもよく分からない評価のされ方ですけどね(笑)。

だから、やりたくないことをやらなければいけないときは、まずは下手に皮算用せず、とりあえずやってみたらいいんじゃないかと思うんですね。そして、与えられた役割を成立させる。だいたい、何か役割を与えてもらえるだけでありがたい話なわけですから、まずはそれを一生懸命やるべきなんじゃないかなと。僕もそういうふうに心掛けていたら、自然と新しいお仕事につながってきました。実際にやっていくことで、自分の得意・不得意も見極められますから。

やりたいことを主張するなら、それなりのものを見せられなければ自分が不利になっちゃいます。だからやりたいことをできないとしても、今与えられたものを必死にやりながら、それができる時を待つのがいいと思います。

それに、やりたくなかったことでも実際にやっていく中で面白く感じるところも見えてきますから。どんなこともマインドの持ち方一つだと思いますし、僕はそういう頭の切り替えはめちゃめちゃうまいと自分で思っています。慣れない人にとっては最初は難しいかもしれませんけど、ものの見方を工夫するのは、練習してみて損はないと思いますよ。

お笑いトリオ「安田大サーカス」のクロちゃん
撮影=門間新弥

■「誰かのせいにする」のは必ずしも悪いことじゃない

――やりたくないことを続けているうちに、つらく感じてきた場合はどうすればいいのでしょうか。

自分がやりたくないことをやるなら、うまくできないことも多いと思うんですよ。NHKの「ブシメシ!」という時代劇に出た時に、「ナガダマ」(望遠で撮影すること)って言われて、「長い間黙っていること」だと勘違いしてそうしていたらめちゃめちゃ怒られたことがありました。でも、そこで落ち込んでもしょうがないですし、それだったらいっそ、怒られたことをいっそのこと相手のせいにしちゃうんです。

たとえばアイドルの人が、やりたくもないグラビア撮影をするとするじゃないですか。そこでポーズがうまくとれないからと言って怒られたとしても「このカメラマンの撮り方が下手なんだ」「変な要求ばっかりして、私の魅力を全然引き出せていないじゃないか」って思うんです。そうすると、まずは自分があまりダメージを食らわなくなりますよね。

それができたら、次は「相手が下手なんだから、私がちゃんとやってあげればいい」って、相手が喜びそうなポーズをとってあげるようにする。そうして少しでもいい仕事ができれば、自分の実績にもなりますし、何より成長につながります。誰かのせいにしつつ自分を成長させるっていうのは、ステップとしてすごく大事だと思っていますね。

僕たちは子どものころからよく「誰かのせいにするな」って教えられてきましたけど、それは違うなと思っています。なるべく誰かのせいにしたほうがいい。僕は小さい頃、学校でよくからかわれていて、それを全部受け止めて泣いちゃっているような子だったんです。でも、このままじゃだめだと思って、いつからか今のような思考に変わってきました。

■器用じゃないのでキャラの使い分けはしていない

――芸人としての「クロちゃん」と一人の人間としての「黒川明人」は使い分けていますか。

これがね、あんまりないんですよ。僕はあまり器用な人間じゃないので変えられない。でも、変えないことによって、普段をすべて自分のペースにしているから楽ですよね。

SNSについても同じです。

アイドルになりたい気持ちは今も変わらないので、アイドルがやりそうな感じで「おはよう」って写真を上げているだけ。そしたら「気持ち悪い」とか「早く永眠してください」ってリプライが返ってくる。僕はあくまで日常の可愛いと思っていることに対して、アイドルっぽく立ち振る舞っているだけなんです。

お笑いトリオ「安田大サーカス」のクロちゃん
撮影=門間新弥

■アンチのおかげで正しい方向へ進めていられる

――クロちゃんといえばTwitterでも人気です(2月15日現在約76万フォロワー)。辛辣なリプライにはどう対処していますか。

最初はもちろんショックはありましたよ。でも、僕の中で考えてみても、自分が悪いことをした訳ではないんですよね。だから、それに対して何かを変えようとも思わなかったですし、逆にその人たちがどういうマインドなのかを知りたくなって、一つひとつのリプライに全部目を通したんですよ。

クロちゃん『日本中から嫌われている僕が、絶対に病まない理由 今すぐ真似できる! クロちゃん流モンスターメンタル術30』(徳間書店)
クロちゃん『日本中から嫌われている僕が、絶対に病まない理由 今すぐ真似できる! クロちゃん流モンスターメンタル術30』(徳間書店)

そこで思ったのが、アンチの人たちって、僕のことをすごく意識しているんですよね。それは僕に対して興味、関心があるっていうことで、もしかしたら一歩違えば僕のことを好きになってくれるかもしれないと、ある意味で大きな可能性があると思ったんです。

そこでTwitterを実験材料にしていろいろなことをやっていった結果、中には反応が変わってくる人も出てきて。だから、SNSでひどいことを書かれたとしても、僕はあまり気にしないようになりました。とんちんかんなリプライは心の中で論破して、たまに的を射た意見があったときには少し直すとか。

個人的には、周りが自分を認めてくれる、それこそイエスマンばかりになってしまうと、自分がおかしな方向に行ってしまうと思うんです。ある意味でアンチの人たちのおかげで、そこは正せていると思います。SNSで心ないことを書かれて、落ち込んだり病んだりしてしまう人もいっぱいいると思いますけど、そういう人とやりあってもいいことはないですから。真摯な意見は受け入れつつ、あとは見下すくらいでちょうどいいと思います。

■「損したままは嫌だ、絶対に得したい」

――今後もお笑い芸人は続けていきますか。

僕は「損したままは嫌だ、絶対に得したい」っていうマインドがすごく強いんですよ。

今「アイドルに絶対になれる」っていう保証があれば飛びつく可能性はあります。実際昔そういうドッキリもありました。

お笑いトリオ「安田大サーカス」のクロちゃん
撮影=門間新弥

お笑い芸人として結構名前は売れさせてもらったと思いますが、最近はドラマの仕事もやらせてもらうんですよね。ただ、売れている感じで演技の仕事をすると、絶対うまくできないし、自分が絶対に損をする。だから「ゴミ拾いもしますよ」ぐらいのイチ新人の気持ちで行ったら文句は言われなかった。

僕は基本的に怒られるのが嫌いなので、怒られないように、あとさっき言ったように相手のせいにできるように、ということは絶対に考えていますね。

いま損してもいいと思っているんですよ。最終的に得になればいい。アイドルにもなりたいですけど、僕にとっての最終的な得は、「すごいいい人だね」ってみんなからちやほやされることのような気がします。

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クロちゃん(くろちゃん)
芸人
1976年12月10日生まれ。本名黒川明人。広島県出身。松竹芸能所属。2001年、団長安田、HIROと共にお笑いトリオ・安田大サーカスを結成。『水曜日のダウンタウン』(TBS 系列)がきっかけで結成されたアイドルグループ・豆柴の大群、都内某所のアドバイザーを務める。

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(芸人 クロちゃん)

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