女性は閉経すると性的エネルギーが高まる…高齢女性が元気で、高齢男性がしょんぼりしがちなワケ
プレジデントオンライン / 2023年2月22日 15時15分
※本稿は、和田秀樹『いつまでもハツラツ脳の人』(日刊現代)の一部を再編集したものです。
■「アンチ・エイジング」は誤解されている
最近、以前にも増して「アンチ・エイジング」という言葉をよく聞くようになっています。
とくに美容に熱心な女性の間では、シワやほうれい線を消すためにヒアルロン酸を注入する施術などが増えているようです。
アンチ・エイジングは「健康的に年齢を重ねること」がひとつの目的ですが、それ以外にも「健康な人を、さらに元気に美しくする医学」という一面があります。
健康寿命を延ばすとともに、体の美を求める医療ともいえるのですが、日本では未だに否定的な見方が少なくありません。
美容整形も含めて「お金で美しくなる」ことへの偏見が、日本人には抜きがたくあるような気がします。
しかし、メイクアップをするために化粧品を購入したり、髪の毛をセットしたりするのと基本的には同じことで、男女を問わず、美しくなるために努力するのは大切なことです。
私は高齢者施設で数多くの高齢者と接してきましたが、心身ともに若々しい人に共通しているのは、オシャレなことです。
それは高価なものを身につけているということではありません。
首元に可憐なスカーフを巻いたり、少し目立つ、さし色の靴下を履いたりと、こざっぱりしたファッションの中にさり気ないセンスを見ると、オシャレだなと感心してしまいます。
しかも、そういう人にかぎって健康で頭もシャキッとしていることが多いのです。
■外見を気にしなくなるとどんどん老け込む
服だけではありません。私の知人のお母さんは、最近、養護施設に入居したのですが、出張してきた美容師さんのカットが少し気に入らなかったとこぼしていたそうです。
「いいじゃない、似合うわよ」と、知人は慰めたそうですが、「ヘアスタイルを気にする母を見て、まだしばらく元気でいられるな」と思って少しうれしい気持ちになったといいます。
人は外見を気にしなくなると、どんどん老け込んでいきます。
気持ちが老け込み、体も脳も老化していきます。
「若々しく見られたい、キレイに見られたい」という気持ちは、ヨボヨボ脳の予防にもなるのです。
■オシャレを楽しんでいると元気でいられる
オシャレに関して、男性のほうが女性より保守的なのは間違いありません。
とくに高齢になると多くの男性は白、黒、グレーのモノトーンが中心で、それにブルー系かグリーン系をコーディネートするという、地味めのファッションをしがちです。
サラリーマン時代の“ドブねずみルック”(もはや死語ですが……)の影響が抜けないのか、と訝しく思ってしまいます。
中年以降になって、洒落たレストランなどでランチをしているのは大半が女性です。
「オシャレ」と褒められるようなファッションに身をつつみ、「特別日」専用のアクセサリーを競って身につけています。
そうやって楽しげに話している女性たちを見ると「ずっと長生きしそうだな」と感じてしまいます。
それくらいバイタリティに溢れているのは大いに結構なことです。オシャレを楽しんでいるからこそ、元気でいられる、といえます。
ひるがえって、居酒屋で飲んでいるだけの男性たちは……。
■閉経を機に性的なエネルギーが高まる
男女のオシャレに費やす熱量の違いは、性に対するエネルギーの違いがそのまま表れていると考えられます。
女性は閉経を機に男性ホルモンの量が増え、人付き合いやボランティア活動が活発になる傾向が顕著ですが、一方で性的なエネルギーの高まりも確認できます。
女性は“推し”のアイドルに熱中することが多いようです。中年以降になってもかつての『冬のソナタ』のペ・ヨンジュンや、演歌歌手の氷川きよし、フィギュアスケートの羽生結弦、スーパー銭湯アイドルの純烈などのコンサートで大いに盛り上がっています。
これらの行動は一種の擬似恋愛、擬似セックスであると考えられます。それくらい性や恋に対する欲求が高いのです。
男性が地味なファッションに満足し、しょんぼりと元気がないのは、性愛に対する興味を失っているからにほかなりません。
■同じ服で外出すると脳は老ける
男性がオシャレに興味がないのは、無頓着以上に「目立つのはカッコ悪い」という意識があるせいかもしれません。
これもサラリーマン時代の悪しき弊害なのでしょうか。
「服はいつものモノトーン系。清潔ならそれでいい」と思い込んでしまう男性が多いような気がします。
ワードローブを増やさず、いつも同じ格好をしていたら、外出する喜びが半減します。
新しいシャツを着れば、散歩をする気持ちも華やいできますが、同じシャツとズボンではそんな気持ちになれません。
いつしか出かける回数も減るようになり、脳はヨボヨボへの道をまっしぐら、ということになります。
■「前例踏襲」で脳はヨボヨボ化する
着慣れない服を選ぶのは、少し勇気が要るのも事実です。
「この歳でこんな服を……」としり込みしてしまう人もいるでしょう。
しかし、そこは「実験」だと割り切ってトライすることが大切です。
日本の小学校で行われていた理科の実験は、まさに「名ばかりの実験」でした。あらかじめ答えのわかっている結果を確認するだけの授業でした。
その後遺症を引きずっているのか、日本人は実験を重ねて新たな発見をすることが苦手で、新しいことに挑戦する意欲に乏しい気がします。
社会批判や政治・政党を批判する場合、われわれは、しばしば「前例の踏襲」をやり玉に上げます。
「日本の政治や行政は前例を踏襲しているだけ。とくに役人は失敗を恐れ、前任者の判断や行動をなぞることが多い」という批判をよく耳にします。
ですが、前例をなぞるのは日本人全体に共通している行為で、ファッションでも冒険する人はかぎられています。
その結果、いつも同じファッションに身を固め、同じような時間を過ごし、同じ人とばかり会うようになります。
これは「ヨボヨボした人の生き方」であり、脳のヨボヨボ化は避けられません。
年齢を重ねると衣料品を購入するのが面倒という声も聞かれます。
ただ、いまはインターネットで気軽に服を買える時代です。「安くてもOK」なら、ワイシャツも1000円台で購入できます。
パソコンやスマホを検索すると、感心するほどたくさんの種類やデザインの衣料品を閲覧することが可能です。
たまには「いつもの自分では着ない服」を選んでみると、ウインドーショッピングに似た楽しさがあり、若い心が甦ってきます。
■「やってみなはれ」で脳は若返る
「やってみなはれ、やらなわかりまへんで」
これはサントリーの創業者、鳥井信治郎の有名な言葉です。
鳥井はこの精神で無謀と指摘された国内でのモルト・ウイスキーの醸造に挑戦し、見事に成功させてサントリーの礎を築きました。
関西人には「やってみなはれ」気質が強いのかもしれません。
登山家でありながら京都大学助教授を務め、東芝の技術者としてデミング賞(社会貢献度の大きい企業や産業人に与えられる賞)を受賞している西堀栄三郎も、次のような言葉を遺しています。
「とにかく、やってみなはれ。やる前から諦める奴は、一番つまらん人間だ」
こういうマインドの必要性は、なにも高度な研究、製品の開発・製造といった特別なジャンルにかぎったことではありません。
日常的なあらゆるシーンでも、人間に新しい発見をもたらします。
着たこともないようなシャツを買って着てみたら、意外と好評だったなどということもあるでしょうし、はじめての食材が信じられないほど自分の舌に合った、テーマパークにはじめて行ったら、とても気分が壮快だったとか、いくらでもあるはずです。
「やってみる」精神が大切なのです。
そんなちょっとしたトライ、冒険は脳を驚かせたり、脳に感動をあたえたりするのです。ヨボヨボ脳になっているヒマなどありません。
毎日、どんな些細なことでもかまいません。やったことのないことをひとつ見つけて、トライしてみませんか。
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精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」
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(精神科医 和田 秀樹)
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