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夜型のほうが想像性・思考力に優れている…脳科学で分かった「早起きは三文の得」がウソである理由

プレジデントオンライン / 2023年2月19日 10時15分

早起きさせないほうが成績は上がる(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/timnewman

早起きは本当に必要なのだろうか。明治大学の堀田秀吾教授は「学校の始業時間を約1時間遅らせると、成績が平均4.5%向上したという報告がある。夜型人間に無理に早起きさせても、注意力が散漫になり、睡魔に襲われやすくなる」という――。(第1回)

※本稿は、堀田秀吾『「不安」があなたを強くする』(日刊現代)の一部を再編集したものです。

■始業時間を遅らせると成績が平均4.5%向上

働き方が多様化し、「始業時間が遅くなった」「ランダムになった」という方は少なくないかもしれません。

午前9時の始業が午前10時に後ろ倒しされるだけで、時間の使い方は大きく変わるでしょう。

実際、後ろ倒しにするメリットが報告されています。

ワシントン大学のダンスターらは、「学校の始業時間を約1時間遅らせると、生徒の睡眠時間が30分ほど長くなり、成績の向上にもつながった」と報告しています。

ダンスターらは、2017年にシアトルにある2つの公立高校の始業時間を2週間だけ55分遅らせて(7時50分から8時45分へ)、学生の睡眠時間にどのような変化が表れるのかを実験しました。

その結果、睡眠時間に改善が見られ、前年と比較したところ平均睡眠時間が34分長くなり、成績も平均4.5%向上したといいます。

所得の低い家庭の学生が多く在籍する高校では、遅刻の回数や出席率にも明らかに改善が見られたそうです。

これだけみれば、始業時間を遅らせた方がいいと多くの人が思うでしょう。

■元々夜型の人にはあまり効果がない

英バーミンガム大学のフェイサー=チャイルズらの研究では、午前2時に寝て午前11時くらいに起きる夜型人間には「9時5時勤務は不利」と報告しています。

夜型生活の人は、その生活習慣を変えない限り、仮に1時間スライドさせても改善は見られないというのです。

フェイサー=チャイルズたちは、午後11時前に寝て午前6時半に起きるといった朝型人間と、夜型人間の脳をスキャンした上で、脳の働きを比較しました。

その結果、午前8時から午後8時までの時間帯では、夜型人間の脳内では集中力をつかさどる領域の活動が少ないことがわかったといいます。

夜型傾向の人は本来の体内時計に合うように仕事した方がいいというわけです。

■夜型のほうが想像性・思考力に優れている

夜型人間にメリットはないのでしょうか?

イタリアのサクロ・クオーレ・カトリック大学のジャンピエトロとキャバレラは、バラバラの年齢層の男女120人に夜型か朝型かアンケートに回答してもらった上で、創造性や思考力を試すテストを行いました。

すると、夜型の人ほど高いスコアを示したのです。

夜型のほうが想像性・思考力に優れている(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/champja
夜型のほうが想像性・思考力に優れている(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/champja

夜型の人が、無理に朝型に「改宗」する必要がないことを示す研究はほかにも世界各国で行われています。

イギリスのウエストミンスター大学のクローらの研究では、さまざまな睡眠リズムを持つ42人のボランティアの唾液を2日間にわたって一日8回分析しました。その結果、早起き傾向にある人からは、睡眠が長い人に比べて、より多くのコルチゾールが検出されたといいます。

コルチゾールは、ストレスを抑制するために分泌されるホルモンです。

つまり、無理して早起きをするとストレス値が上がるわけです。

■無理に早起きする必要はない

また、ベルギーのリエージュ大学のシュミットらの研究では、16人の極端な朝型タイプと15人の極端な夜型タイプを対象にした検証を行っています。

それぞれのタイプの起床時と10時間半後の脳の活動を測定してみたところ、朝型も夜型も起床時の生産性は変わらなかったのですが、10時間半の計測では差があったといいます。

朝型タイプの脳では、注意力と概日(がいじつ)リズムに関連する領域の活動が、夜型タイプよりも低下していました。

無理のない時間の使いかたが大切なのであって、早起きが苦手な人が、無理に早起きする必要はないのです。

苦手なアクションは、それ自体がストレスになります。

なので早起きは「三文(以上の)の害」になるのです。このことをお忘れなく。

■ジャンクフードを我慢できない理由

無性にジャンクフードが食べたくなることはないでしょうか?

かくいう私もお菓子が大好きで、ついつい仕事の合間に手を出してしまいます。

進化心理学的な視点で考えると、脂や糖がたくさん含まれたジャンクフードは、もともと入手が困難な「ご馳走」でした。

ジャンクフードはもともと「ご馳走」(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/Mizina
ジャンクフードはもともと「ご馳走」(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Mizina

しかし、文明の発達により、いまでは「ご馳走」を簡単にたくさん入手できるようになりました。

もともと貴重な「ご馳走」なので、ついつい食べすぎてしまうわけです。

もちろん、脂や糖は人間に必要な栄養素ですが、粗食を心がけていても、思いのほか摂取しているものでもあります。

その上ジャンクフードを食べてしまうと、脂や糖の過剰摂取となり、太ってしまうというわけです。

■ジャンクフードが欲しくなるのは「栄養が必要だから」ではない

ちなみにジャンクフードを食べてしまうのは、必ずしも「疲れていて体が栄養を必要としているから」ではありません。

西オンタリオ大学のロゥイーらの研究によると、脳の左背外側(ひだりはいがいそく)にある「前頭前皮質」の機能を一時的に低下させると、カロリーが高い食べ物を欲するようになり、ジャンクフードを食べる傾向が強くなるそうです。

堀田秀吾『「不安」があなたを強くする』(日刊現代)
堀田秀吾『「不安」があなたを強くする』(日刊現代)

前頭前野を含む前頭葉は、注意力、集中力、判断力などと関係し、感情や欲求を抑制する脳の大切な部位です。そのため前頭葉の機能が低下すると、普段は「悪いからやめよう、我慢しよう」と思っていることについての判断が鈍くなり、我慢ができなくなってしまうのです。

また、背外側前頭前皮質の機能低下は、ストレスが原因で引き起こされます。

つまり、ストレスが蓄積して、脳の背外側前頭前皮質の機能低下が生じると、それに応じて判断が鈍ってしまうというわけです。

つまり、ジャンクフードを欲してしまうのは、疲労やストレスによって抑制力が働かなくなるからなのです。

普段は体に悪いからやめておこう、我慢しようと思っている抑制のフタが外れてしまった結果、ポテトチップスの袋を開けてしまうのです。

原因は、脳の機能低下にあるということです。

ジャンクフードを食べたくなったら、まずは脳と体を休ませた方がいいかもしれません。

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堀田 秀吾(ほった・しゅうご)
明治大学法学部教授
1968年、熊本県生まれ。シカゴ大学博士課程、ヨーク大学ロースクール修士課程修了、同博士課程単位取得満期退学。言語学博士。立命館大学准教授、明治大学准教授などを経て、2010年より現職。専門は司法におけるコミュニケーション分析。脳科学、言語学、法学、社会心理学などのさまざまな分野を横断した研究を展開している。『科学的に元気が出る方法集めました』(文響社)など著書多数。コメンテーターとしても活躍中で、メディア出演も多い。

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(明治大学法学部教授 堀田 秀吾)

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