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やっぱりハードな筋トレはムダだった…筋肉を強くするカギは「イメージトレーニング」である科学的な理由

プレジデントオンライン / 2023年2月21日 15時15分

ハードな筋トレは本当に必要なのだろうか(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/recep-bg

ハードな筋トレは本当に必要なのだろうか。明治大学の堀田秀吾教授は「イメージトレーニングだけで筋力が24%増加という研究もあり、普通の人は適度な運動で十分だろう。むしろハードな運動はストレスホルモンを増加させるので、追い込みすぎると逆効果になる」という――。(第2回)

※本稿は、堀田修吾『「不安」があなたを強くする』(日刊現代)の一部を再編集したものです。

■イメージトレーニングだけで筋力が増加した

「イメージトレーニングだけで筋肉は鍛えられる」という驚きのエビデンスがあります。

オハイオ大学のクラークらは、29人のボランティアを募集し、1カ月間手首を整形外科用のギブスで固定してもらいました。

その上で半数に対して、毎日約10分、週5日のペースで、固定された手首の筋肉を曲げるイメージトレーニングを行ってもらいました。

イメトレをしていた半数と、していなかった半数を比較したところ、前者の方が手首の屈筋が強く、サイレント・ピリオド(筋肉が一気に大きな力を出そうとする直前に起きる一瞬の弛緩状態)が短かったのです。

また、カナダのビショップス大学のシャッケルとスタンディングの研究でも、週に5回筋トレを「イメージ」してもらったグループに、24%の筋力の増加が見られたそうです。

ちなみに実際に運動したグループでは28%の筋力増加がみられました。

このように脳と筋肉の間には、われわれの想像を超えるつながりがあります。

頭の中で運動している姿を想像すると、実際の運動と同じように脳が活性化されることがわかっています。

腹筋する時にお腹に意識を集中するのは理にかなっているのです。

■運動をすると脳も鍛えられる

文武両道という言葉がありますが、運動をすると、血流が良くなり、脳により多くの酸素が届けられて、脳の働きが良くなります。

ハンブルク大学のホティングらは運動と記憶の関係を研究しています。

エアロバイクを30分間、「比較的ハードにこいだグループ」と「軽くこいだグループ」、そして「何もせず座っていたグループ」の3つに、外国語の単語を暗記してもらうという実験を試みました。

20分後、24時間後、2日後にテストを行ったところ、運動した2つのグループは、何もしなかったグループより成績が良かったのです。

特にエアロバイクを軽くこいだグループがもっとも好成績でした。

エアロバイクを軽くこいだグループがもっとも好成績(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/jacoblund
エアロバイクを軽くこいだグループがもっとも好成績(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/jacoblund

■ハードな運動は逆効果に

逆に激しい運動をしたグループでは、神経細胞の発生や成長、維持や再生を促すBDNF(脳由来神経栄養因子)というタンパク質が増えていましたが、ストレスホルモンであるコルチゾールの値も上昇していました。

ハードな運動をすると当然負荷も大きくなります。本格的なアスリートなら別ですが、自分を追い込み過ぎると逆効果。ストレスにならない程度の軽い運動こそ、脳を効果的に働かせる名コーチというわけです。

■運動によって数学的能力が上がる

また、イリノイ大学アーバナシャンペイン校のブルジンスカらは、運動をすると脳の「白質」と呼ばれる部位が強化されることを明らかにしました。

白質とは、脳の中でも神経繊維が集まっている部分です。いわば情報伝達を担うケーブルの集合体。最近の研究では白質と数学的能力の関連も判明しています。

ちなみに白質の強化には、子どもの頃から適度な運動を定期的に行うのがよいとされています。特に縄跳びが望ましいようです。

白質の強化には縄跳びが望ましい(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/lzf
白質の強化には縄跳びが望ましい(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/lzf

■「友人がたくさんいる」と間違いが増加

このように、強くイメージすることは非常に重要なのですが、あまり思い込みが激し過ぎるのも問題です。

そもそも人間は雰囲気や周りの意見に流されやすい存在でもあります。

「アッシュの同調実験」という有名な実験があります。

1本の線が書かれたカードと長さの異なる3本の線が書かれたカードを被験者に見せ、前者と同じ長さの線を、後者から選ばせるという実験です。

実験は次の条件のもとで行われました。

「7人の集団で12回行う」
「7人中6人はサクラで、本当の被験者は7番目に回答する」
「6人のサクラは12回のうち7回、全員がわざと同じ誤答をする」

この実験において、「サクラ6人が全員一致で誤答したとき」に間違いがもっとも多かったそうです。

つまり、正しい答えを選んでいても、大多数の人が間違った意見を口にすると、同調圧力が働き、多数派の意見になびいてしまうのです。

逆に、「1人でも正解を言うサクラがいる」と正答率は大きく跳ね上がったそうです。

少なくともこの「アッシュの同調実験」を見る限り、友人が多すぎるのも考えものだと言えそうです。

■広い交友関係には忍耐力が必要

オックスフォード大学のジョンストンとダンバーは、社会的なつながりやコミュニケーションの多寡が、神経伝達物質の一種であるエンドルフィンの分泌にどのように影響するかを調べました。

被験者に「空気イス」の姿勢をとってもらい、耐えられる時間を測定し、メールや電話で連絡をとる友人の数や関係性を調べました。

堀田秀吾『「不安」があなたを強くする』(日刊現代)
堀田秀吾『「不安」があなたを強くする』(日刊現代)

すると、より長い時間我慢できる人ほど、交友関係が広いことがわかったのです。

ただ、逆に言うと、広い交友関係を持つのは、かなり我慢強い人でないと無理なのかもしれません。

京都大学の内田由紀子教授らは、友達の数と質が幸福感とどう関係するかを調査しています。

それによると、人間関係を広く求める人は、友達の数が多いほど幸福感が高まるそうですが、狭い範囲の人間関係でも心地よい関係を求める人は、友達の質が幸福感に大きく影響するそうです。

どうやら、むやみやたらに友達を増やせばいいというわけではなさそうです。

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堀田 秀吾(ほった・しゅうご)
明治大学法学部教授
1968年、熊本県生まれ。シカゴ大学博士課程、ヨーク大学ロースクール修士課程修了、同博士課程単位取得満期退学。言語学博士。立命館大学准教授、明治大学准教授などを経て、2010年より現職。専門は司法におけるコミュニケーション分析。脳科学、言語学、法学、社会心理学などのさまざまな分野を横断した研究を展開している。『科学的に元気が出る方法集めました』(文響社)など著書多数。コメンテーターとしても活躍中で、メディア出演も多い。

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(明治大学法学部教授 堀田 秀吾)

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