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朝型人間か夜型人間かは遺伝子で決まっている…「結局、何時間睡眠がベストなのか」の答え

プレジデントオンライン / 2023年2月24日 20時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/oatawa

睡眠時間はどれぐらいが適正なのか。東洋大学の松田英子教授は「日中に気分がめいったり、眠気でパフォーマンスが低下したりする人は『睡眠負債』が疑われる。一方、午前10時から11時の間に眠気がない人は、適正な睡眠時間をとれている」という――。(第2回/全2回)

※本稿は、松田英子『1万人の夢を分析した研究者が教える今すぐ眠りたくなる夢の話』(ワニブックスPLUS新書)の一部を再編集したものです。

■ショートスリーパーは社会適応度が高い傾向

夢を生みだすもとになる睡眠にも大きな個人差があります。次の3つが代表的です(*1)

1.健康的な生活をおくるうえで必要とする睡眠の量(いわゆるショートスリーパーかロングスリーパーか)
2.睡眠の質(安眠型か不眠型か)
3.睡眠の位相[時間的調節](リズム:いわゆる朝型か夜型か)

それぞれについて特徴を確認していきましょう。そしてみなさんも、睡眠について気になることがありましたら、お時間のあるときに自己点検してみてください。

・短時間睡眠型の人(ショートスリーパー)は不安が低く、活動性が高く、外向的、社会適応度が高い傾向にある。
・長時間睡眠型の人(ロングスリーパー)はその逆で、神経質かつ内向的。柔軟な思考性はあるが、社会適応度は低く、不眠型に移行しやすい。
・安眠型は自己主張が強く、攻撃的で社会適応性がある。
・不眠型は神経症傾向、内向性と抑うつが高く、身体的不調の訴えが多い。
・朝型は内向型で、午前中の活動性が高い。
・夜型は外向型で、夕方からの活動性が高い。交代勤務への適応性があるが、睡眠に関する訴えが多い。

このように睡眠の傾向には個人差があるものですが、睡眠の量やリズムは科学的に「これがベスト」という答えがあるわけではなく、一人ひとり最適な形が異なるため、いずれも日中の生活や社会的機能に不都合がなければ大丈夫です。年齢によっても、体力や日中の生活のパターンによっても変わってきます。

*1 松田英子・津田彰(2015).『睡眠の個人差の理解と心理学的支援~眠りにまつわる問題解決のために~』.フィスメック

■あなたの“睡眠の質”を調べる8つの質問

「日中の生活や社会活動に影響があるかどうか」は、WHOが作った不眠検査(アテネ不眠尺度)で、ある程度セルフチェックが可能です。

Q1は入眠困難、Q2は中途覚醒、Q3は早朝覚醒と睡眠の持続に関わる症状についての質問です。Q4とQ5は睡眠の量と質に関わる不満足感で、本人にしかわからないものです。Q6~Q8は睡眠が十分にとれていないときに起こる日中の症状(悪影響)といってよいでしょう。

睡眠のリズムには遺伝子の影響もありますが、24時間社会における現代の仕事との付き合い方において工夫が必要なことも多いです。就職したばかりの私の友人Bさんが、交代勤務に慣れず「人間は朝起きる生き物だよ」と辛そうに語った言葉を思い出します。

■「睡眠負債」は怖い病気のリスクを上昇させる

良質な睡眠は、覚醒時の心と体の状態を正常に戻します。反対に、睡眠をはく奪するとさまざまな不具合やリバウンド現象が起こることから、睡眠学者のディメントは「睡眠を健全にしない限り、健康にはなれない」と述べています。睡眠は心身の健康の維持にとって必要であると推測されているのです。

ディメントは睡眠不足が数週間単位で慢性化する状態を「睡眠負債」と呼びました。こうした睡眠不足の悪影響は、免疫系の衰え、糖尿病、ガン、肥満、もの忘れの増加、老化の加速、性欲の減退、望まない脂肪の蓄積、アルツハイマー病、うつ病、心臓病のリスク上昇と、枚挙にいとまがありません。

脳の老廃物であるアミロイドβは睡眠中に脳脊髄液によって洗い流されるとのことで、夜間の良質な睡眠は脳のクリーニングをしているといっていいかもしれません。

以上の研究結果などをもとに、認知症予防と睡眠の質向上の関係性などが夢の研究分野のホットなテーマになっています。

■「結局、何時間睡眠がベストなのか」の答え

私たちが必要とする適正な睡眠時間は何時間なのでしょうか。

ひとつの指標として、日中に眠気、パフォーマンスの低下、ネガティブな気分など不具合がでないために必要な時間であるといえるでしょう。「アテネ不眠尺度」のなかにある6、7、8の質問の答えが(0)になる時間ということです。

さらに、睡眠が十分にとれる状況で、午前10時から11時の間に眠気がなく、カフェインの補給を必要としない――など、日中の不具合がない場合には睡眠負債がないといってよいでしょう。

■ショートスリーパーでもないのに眠らない日本人

OECD加盟国の平均睡眠時間は8時間25分ですが、世界の睡眠時間はアメリカ、アジアを中心に短くなってきており、なかでも日本は最短の7時間22分と、平均より約1時間も短いです。

こうした状況のなか、子どもから大人まであらゆる年代に睡眠の問題がみられます。もともと睡眠が短くてもよい「ショートスリーパー(短時間睡眠者)」が日本に多ければいいのですが、そういうわけでもないでしょう。個人にとっての適正睡眠時間が不足している場合には、睡眠負債が積み重なっていくことになります。

睡眠不足が慢性化すると、寝不足の脳でものごとの判断をおこなうことになるため正確でなくなり、労働災害を引き起こすなど、社会的損失をもたらすリスクがあるのです。そのため、睡眠のパフォーマンスの客観的な測定が必要になります。

テーブルに肘をついて寝るビジネスマン
写真=iStock.com/freemixer
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/freemixer

第1回の睡眠環境に関する箇所でもお話ししたように、昨今、睡眠を管理するアプリが増えていて、機能も充実してきています。なかでも眠りの浅いタイミングでアラームが鳴って起こしてくれるものはいいですね。おすすめです。また、客観的に自分のいびきや寝言を聞いたり、レム睡眠とノンレム睡眠のリズムを確認したりするアプリもあるようです。いずれもとても重要なことで、睡眠障害の早期発見にもつながります。

■交代勤務者を悩ます「社会的時差ぼけ」

次に、睡眠と健康についてのトピックをいくつかご紹介したいと思います。

24時間対応の情報社会、グローバル社会となり、幅広い職種で夜勤を含む交代勤務者が必要とされる事業所が増加しています。

交代勤務者には、時差障害(時差ぼけ)と似た症状が起こります。時差ぼけになると最終的に現地時刻に同調する「外的脱同調」が起こりますが、交代勤務者においては常に勤務時間帯が変化するため、体温、メラトニンリズムなどの生体リズムがズレてしまう変化(内的脱同調)が発生します。これを「ソーシャルジェットラグ(社会的時差ぼけ)」といいます。

入眠困難、睡眠維持困難、熟眠感なし、眠気があるなど睡眠に関する訴えのほか、自律神経症状(めまい、立ちくらみ)や消化器症状(吐き気、下痢)が起こりやすくなります。そのため交代勤務者の雇用者側がなにより注意すべきは、人的災害、転倒骨折、交通事故等を引き起こすヒューマンエラーの抑止でしょう。

仮眠のとり方や夜勤明けの過ごし方の工夫、睡眠環境の調整など、交代勤務者の健康保持のため、さまざまな研究も進められています。

交代勤務に比較的適応力が高い人もいます。夜型の生活リズムの人、年齢の若い人、神経症傾向の低い人、外向性の高い人、交代勤務があっても平均睡眠時間が6時間を確保できる人です。

■「ヒバリ型」か「フクロウ型」かは遺伝子で決まる

自分が朝型か夜型かを知るためには、次の質問票により調べることができます。

「ミュンヘンクロノタイプ質問紙――日本語版」

実際、朝型・夜型のクロノタイプは300ほどの遺伝子の組み合わせで決まるので、努力によってショートスリーパーになれる見込みは少なそうです。

朝型のいわゆる「ヒバリ型」は午前中にもっともパフォーマンスが高まるタイプであるのに対し、夜型の「フクロウ型」は起床が遅く、動き出すまでに時間がかかりますが、夜遅くまで活発でいられるタイプです。

体内時計の個人差は大きいため、もちろん、時差ぼけ・社会的時差ぼけにも柔軟に対応できる人もいます。ちなみに私は、昔はいつでもどこでも眠れて時差ぼけにも強いことが自慢でしたが、中高年になり、その睡眠適応力が落ちてきたことを実感しています。

■40~50代女性はとくに睡眠の質が落ちやすい

オンラインで収集した睡眠のデータでも、男性より女性のほうが加齢による睡眠の質の低下が顕著です。

睡眠の質のみならず、睡眠効率(実際に寝た時間÷就床時間〔ベッドにいる時間〕×100)も同様で、子ども時代は100%で、思春期は90%くらい。ところが老年期になると、個人差は大きいですが70%台になります。入眠に時間がかかったり、途中で起きてしまったりしても布団のなかでゴロゴロしているイメージです。中高年とくに、更年期になるとホルモンの乱れから睡眠の質と効率がどうしても下がってくるのです。

松田英子『1万人の夢を分析した研究者が教える今すぐ眠りたくなる夢の話』(ワニブックスPLUS新書)
松田英子『1万人の夢を分析した研究者が教える今すぐ眠りたくなる夢の話』(ワニブックスPLUS新書)

不眠も更年期症状のひとつです。OECD加盟国の中でも日本は睡眠時間の短さで一番(NHK報道)でしたが、とりわけ40代、50代の女性は世界的にみても仕事と家事育児介護などの両立で睡眠時間も短く、中途覚醒が増えると嫌な夢を覚えてしまう確率も高まります。

悪夢は困りますが、飛び起きるような悪夢ではない夢を覚えていたときには、よりよい生活のために利用する気持ちで、学習、問題解決シミュレーション、創造的解決に活かすのがおすすめです。

夢なんか覚えていないくらいぐっすり眠るのがもちろんいいですし、「楽しい夢」をみたときは、「精神的な健康状態もよく、日中も睡眠中も問題がなくて私は大丈夫!」とポジティブに考えるといいでしょう。

日本人の平均寿命をもとにレム睡眠の割合を睡眠時間の20~25%として計算すると、夢をみている時間は人生の6年~7年半にも及びます。

女性、男性問わず、ゆったりした気持ちで夢とつきあい、心の健康のバロメーターにしてください。

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松田 英子(まつだ・えいこ)
東洋大学社会学部社会心理学科教授
夢の専門家。公認心理師・臨床心理士。お茶の水女子大学文教育学部卒、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科単位取得満期退学。博士(人文科学)。専門は臨床心理学、パーソナリティ心理学、健康心理学。著書に『夢と睡眠の心理学』(風間書房)、『図解 心理学が見る見るわかる』(サンマーク出版)、『夢を読み解く心理学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『はじめての明晰夢 夢をデザインする心理学』(朝日出版社)など多数。関心分野は、睡眠の改善から心の健康を高めること。小学生から90代まで1万人以上の夢を収集・分析しており、夢の専門家としてメディアにも多数出演している。

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(東洋大学社会学部社会心理学科教授 松田 英子)

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