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子供を賢くしたいならスプラトゥーンとBTSの話を存分にさせろ…プロが見ればたった10秒で親の力量がバレる

プレジデントオンライン / 2023年2月17日 11時15分

『プレジデントFamily2023年冬号』の特集は、「読解力」の家庭での伸ばし方。「文章を読める子が“新受験”を制す」「なぜ算数の“文章題”だと解けないのか」「食いっぱぐれないために大事なこと 自分で稼げる子にする!」などを掲載している。

わが子をロジカル脳にするにはどうしたらいいのか。元コンサルタントで学習塾ロジム代表の苅野進さんは「もしそう願っても、家庭でロジカルシンキングレッスンを始めてはいけません。親は『教える』という発想を捨て、子供の話を聞くことが大事。わが子を賢くしたいなら親が声かけを変えるといい」という――。

※本稿は、『プレジデントFamily2023年冬号』の一部を再編集したものです。

■ヒント1 子供が話したくなる場を準備しよう

→大人の正しい声かけ例「いい質問だね」

ロジカルシンキング(論理的思考力)を育てる最良の方法は、人に説明する経験を重ねることです。家庭なら、子供が先生役になって親に教えるなどいいですね。

そう聞くと「ようし、わかった。じゃあ、太郎くん、今日何があったかお母さんに説明してみて!」と、指導者になってしまう親御さんがいます。子供が話し出して10秒もしないうちに「はい、主語がない」「それって、さっき言ったことと矛盾してない?」「理由を言ってない」などと、整合性の破綻を指摘し出すのです。

気持ちはよくわかります。子供の話は論理が破綻しがちですし、親としては子供の間違いを直して、論理的な話し方を教えてやりたいと思いますよね。

でも、それでは子供は口を閉ざしてしまいます。

大切なのは「心理的安全性」といわれる、安心して話しやすい場をつくること。親の声かけは注意や叱責(しっせき)になりがちです。

「宿題終わってないよね」
「間違ってるよ」
「やるって言ったんだからやらないと」

などなど。それでは心理的に危険・恐怖を感じさせてしまいます。

心理的安全性が保たれていると、子供は気持ちよく話せるようになりますし、たくさん話します。実際、東大生など説明する力が高いお子さんのご家庭は、たいてい親が聞き上手です。

参考になるのは、アメリカの学校の先生です。生徒の発言に対して大げさにうなずいて「いい質問だね」と言うシーンを映画などで見たことはないでしょうか。まずは肯定的に受け止めてやることで、子供にとって発言のハードルがグンと下がるのです。何か言うだけで褒められるくらいでよいのです。

もう一つ大事なのは、途中で口をはさまないこと。「へー、そうなんだ」とうなずいて最後まで聞いたうえで、「いい質問(説明/話)だね」と褒める。

まずはこう言うと決めておけば、親は考える時間がつくれるので、反射的に「ここが違う」などと指導してしまう失敗を防ぐことができます。

落ち着いて聞いて、親は質問するくらいでいい。子供と親の発言は8対2くらいでいいでしょう。

親子の会話が大事と言うと、「教えなくちゃ」とインプットしようとしがちですが、子供の発言をいかに引き出すか、アウトプットが大切なのです。

■ヒント2 子供の説明を聞くときは上からではなく下から

→大人の正しい声かけ例「わからないから教えてよ」

子供が先生役といっても、どんな内容を話してもらうのがいいのでしょうか。

あるとき教室で子供たちに、「みんなゲームやってる?」と聞いてみたことがあります。「やってるよ。今は、スプラトゥーン!」などと、どんどん返してきたので、「全然知らない。そのゲームって何をしたら勝ちなの?」と質問したのです。すると、子供たちの目がキラッと光りました。

日本のゲーム大手、任天堂の店舗で、任天堂のゲーム「スプラトゥーン」のキャラクターが表示されたスクリーンの前を通るマスクを着けた人(2022年2月3日、東京都千代田区)
写真=AFP/時事通信フォト
日本のゲーム大手、任天堂の店舗で、任天堂のゲーム「スプラトゥーン」のキャラクターが表示されたスクリーンの前を通るマスクを着けた人(2022年2月3日、東京都千代田区) - 写真=AFP/時事通信フォト

俺に話させろとわれ先に争って、説明合戦に。そのうちに一人などはホワイトボードを使ってシリーズ3作の違いを整理しだしました。

別のときに、普段あまり発言しない女の子がBTSの話に食いついたこともありました。そこで「そもそも何人いるの?」と聞いてみました。その子はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに顔を輝かせて、韓国の男性アーティストで7人いること、年少組と年長組があること、主に歌う人とダンサーに分かれること、などを説明してくれたのです。驚くほど整理されてわかりやすい説明でした。

自分の好きなことについて聞かれたとき、子供はスイッチが入ります。素人でもわかるようにわかりやすく説明してやろうという気持ちになるのです。そこが大切です。

そういうときのエンジンのかかり方はすごい。普段より10倍くらい賢くなるのではないかと思います。日常での会話では、子供は手抜きをしています。ものわかりのいい大人である親には、多少いい加減でも伝わると知っているのです。だから「テレビ」「おしょうゆ」などと単語だけで話したり、頭のなかがごちゃごちゃのまま考えずに話し出したりします。

でも、自分にとって大切なことを伝えるという目的のためなら、ちゃんと説明したいという気持ちになり、論理性を普段より意識するのです。これは趣味の話だけではありません。教室につるかめ算は大得意という子がいました。その子に「一番くわしいから、わからない子でもわかるように教えて」と言うと、スイッチが入りました。「まず、全部亀だったと仮定するとね……」などと、筋道を立てて教えてくれたのです。

親には、演技力が求められます。本当は知っているけれど教育的観点から子供に説明させている、という態度では子供のエンジンはかかりません。自分が年下というくらいの姿勢で、本当に教えてほしいと伝えてみてください。

■ヒント3 親のボケで楽しく気づかせよう

→大人の正しい声かけ例「(ボケて)おなかがすいてるなら、食べに行こう!」

心理的安全性のために大切なのは、相手の発言を否定しないことです。正しいことを指摘しているつもりでも、言われた側が否定されたと思ったら意欲はしぼんでしまいます。

だれだって、「日本語がおかしい」「何を言ってるのかわからない」と言われると、すごく嫌な気持ちになりますよね。賢い親は、子供を論破するような言い方はしません。本人に気づかせるのです。

間違っていると言ってはダメなら、どう言えばいいのか。私が授業で子供と話すときに、使っているコツをお話しします。

子供の話でありがちな間違いは大きく3つです。

1 主語がない
2 理由がない
3 理由がおかしい

でも、話している子に「はい、ストップ。主語言ってない!」と指摘したら黙ってしまうでしょう。

私のおすすめは親が徹底的にボケることです。

たとえば1の「主語がない」場合。子供が唐突に「おなかがすいててさ」と話し始めたとします。文脈から「ははあ、弟の話をしているな」とわかっても、「よし、おなかがすいてるなら、食べに行こう」と食事に出かけるふりをする。そうすると必ず「違うよ! お・と・う・とが、おなかがすいてるんだよ」と自分で主語を入れてくるはずです。

父と息子のリラックス
写真=iStock.com/miya227
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miya227

「それじゃあ伝わらないよ」と正面から言われると腹が立ちますが、こちらがボケてやることで、やんわりと気づかせることができるのです。

同じように、2の「理由がない」話をしだしたら、ありえない理由をつけて返してやる。3の「理由がおかしい」場合は、その理由だと成立しない例を返してやるのです。

面倒なようですが、やってみると楽しい。うまくボケて、否定された気持ちにさせずに気づかせてやってください。

■ヒント4 親の間違いを探してもらおう

→大人の正しい声かけ例「お母さん、どこを間違えてると思う?」

小説が大好きで多くの本を読んでいる子が読解力が高いかというとそんなことはありません。自分の世界に入って都合よく解釈している場合もあります。読書を趣味として楽しんでいるのかもしれませんが、読解力を身につけるには効果的とは言えません。

物語を正確に読み取るには、登場人物の行動や気持ちを、書かれている情報から類推しなくてはなりません。

子「負けちゃったところで泣いたよね」
親「だよね。誰が負けちゃったんだっけ? 忘れちゃったよ」
子「主人公だよ」

などと、親子の会話で理解を促すのがよいでしょう。多く読むことよりも、意識して読むことが大切です。

勉強する親と娘
写真=iStock.com/miya227
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miya227

また、国語が苦手だからとドリルをただたくさん解かせることも、おすすめできません。場合によっては、「自分は国語ができない」と繰り返し刷り込んでしまうだけになります。

会話を工夫することで、間違いを意識させることができます。私たちの教室でやっているのは、架空のタカシくんに活躍してもらう方法です。

タカシくんが間違えたときの解答を見せて、「どこを間違えてると思う?」と聞いてみるのです。

子供は、自分の間違いを振り返るのは大嫌いですが、他人の間違いを探すのはパズル感覚で前向きに楽しめます。

「問題文のここに丸をつけるといいよ」「最初の『なぜなら』に引っ張られて、理由が書いてあるところを間違えてるんじゃない?」などと、するどいことを言ってくるものです。

親が一緒に問題を解いて、わからないときに子供に教えてもらう、というのもいいでしょう。喜んで親の間違いを探してくれるはずです。子供が的外れなことを言ってきたとしても、上から目線で誤りを正すのではなく、「そうかもね。でも、この文の主語はほかの子っていう可能性もある?」などと、違う読み方を提案するような会話がいいでしょう。

そうして、間違いに意識的になっていくことで、子供の読解力が鍛えられていくのです。

■「読解力がないことに本人は気がついていません」

読解力がない人は、自分に読解力がないことに気がついていません。それは子供も同じです。読めていないことに気がつかないから、「読めた?」と聞けば「読めた」と言う。

気づかせる一番簡単な方法は、「自分が言ったことを、意図と違うとらえ方をされることがある」ということを経験することです。小学生ともなれば、もう日本語がいっぱしにできるつもりです。なので、自分が言ったことがわかりにくかったり、間違って伝わったりすることに考えが及ばないのです。

たとえば、牛乳が飲みたいときに、「お母さん、牛乳」と言う。その言葉では、牛乳がほしい場合のほかに、牛乳が切れているのか、牛乳をあげるのか、牛乳がこぼれているのか、いくらでもとらえようがあるのですが、そこに考えがいかない。それが読解力のなさです。

そのためにも、親子で何往復もするような会話をすることが大切です。伝え方をきちんとしないと読み違えが発生するということを理解させられます。

「牛乳」
「牛乳って白いよね」
「違うって。牛乳飲みたい」
「妹が牛乳飲みたいの? あの子、牛乳嫌いじゃなかった?」
「違うって。俺が牛乳飲みたいの」

そんな会話を繰り返すことで、「もしかしたら違う意図で伝わっているかも」ということに気がつくアンテナが育っていくのです。

ミルクイラスト
写真=iStock.com/CSA-Printstock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/CSA-Printstock

学習塾ロジム代表 苅野進さん

早稲田中学・高等学校、東京大学文学部卒業。人事・経営戦略コンサルティング会社で社会人向けのロジカルシンキング講座などを担当。学習塾ロジムを2004年に設立。著書に『10歳でもわかる問題解決の授業』(フォレスト出版)、『ロジカルキッズワーク』(学研プラス)など。

(プレジデントFamily編集部)

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