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男性は40代、女性は50代からズブズブ溺れていく…"肥満の沼"にハマる中高年に不足している"栄養素"

プレジデントオンライン / 2023年2月22日 17時15分

水野雅登『医師が教える 40代からの神ダイエット』(プレジデント社)

けっして食べ過ぎてはいない。運動もしている。なのに、40歳を超えてからどんどん太り出すのはなぜなのか。セブン-イレブン限定書籍『医師が教える 40代からの神ダイエット』を上梓した内科医の水野雅登さんは「40代にもなると20代のころに比べて大きく筋肉量が減ります。消費するエネルギーも減ります。それなのに食事は同じ。その“差”がしっかり脂肪になるのです」という──。(第1回/全3回)

※本稿は、水野雅登『医師が教える 40代からの神ダイエット』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■男性40代、女性50代が肥満のターニングポイント

40代以上の肥満の9割は、食事が原因──。

そう聞くと、「20代、30代のころと変わらない食事をしていて、決して食べ過ぎてはいません!」と答える方がほとんどでしょう。しかし、加齢とともに体重が増加する人は非常に多い、という事実があります。

厚生労働省が令和元年(2019年)に行った国民健康・栄養調査報告によると、肥満度を表す指数BMIが25以上の「肥満」に当たる人は、20代では16%に留まりますが、30代では21.5%、40代になると27%と確実に増加しています。

この傾向はとくに男性に顕著で、男性の肥満は30代で29.4%、40代になると39.7%に跳ね上がります。40代になると、男性は実に、10人中4人が肥満となるわけです。

女性の場合は30代で15%、40代で16.6%と、男性と比べると比較的緩やかですが、これが50代になると20.7%となるため、10人に2人は肥満となります。

つまり、男性は40代、女性は50代が肥満になるターニングポイントなのです。

太った女性のシルエット
写真=iStock.com/Oleg Elkov
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Oleg Elkov

■加齢で肥満が増える原因は「筋肉量の減少」

加齢で肥満が増える理由は、主に筋肉量の減少にあります。

加齢するにしたがって筋肉量が減ってしまうことは、聞いたことがあるでしょう。とくに下肢(足回り)の筋肉量は、驚くことに20代後半から徐々に減少しはじめます。

そして、全身の筋肉の減少が加速するのが、40代から50代にかけて。まさしく、体重が増えはじめる時期とリンクしています。

そして、男性は女性よりも筋肉量が多いぶん、その減少の割合が女性よりも多いこともわかっています。そのため、体重の増加も顕著に現れると考えられます。

■「食べる量は変わっていないのに太る」仕組み

私たちが安静時も消費するエネルギーを「基礎代謝」といいますが、基礎代謝は筋肉量に比例しています。つまり、筋肉が減れば基礎代謝が落ちて消費するエネルギーも減るため、そのぶん、使われなかったエネルギーは残ります。

冒頭の「食べる量は変わっていないのに太る」という謎の正体に、もうお気づきでしょう。40代からどんどん脂肪が増えていくのは、「筋肉量が減って消費するエネルギーも減ったのに、食事は今までと変わらないから」です。

エネルギーを大喰らいする筋肉がどんどん失われている中で、今までと変わらない食事をしていれば、当然ながら収支が合わなくなって、どんどん脂肪が増えていくばかり……となるわけです。

■食事を変えなければ体重を減らすのはムリ

私が健康診断でよく出会うのが「元体育会系です!」という、でっぷりと太った男性です。結果を見れば、内臓脂肪もたっぷり、血糖値や血圧の数値も黄色信号どころか赤信号が灯っている状態です。

彼らは、10代、20代の筋骨隆々の現役スポーツマンだったころは大量の食事をとっていました。競技を引退しても、「俺は食べても太らないから!」とその食習慣を続けた結果、30代、40代になっておなかの回りに脂肪がたっぷり……。

まさしく、収支が合わなくなったケースの典型です。実際、現役引退後、みるみる太っていくプロスポーツマンも珍しくありません。

運動経験者は「いざとなればすぐやせられる」と考えがちですが、中高年になると週に数回の運動でやせることは至難の業。食事を変えない限り、すっきり脂肪を落とすことは難しいのです。

■ひそかに広がる「現代的栄養失調」

加齢で脂肪が増える原因はこれだけではなく、もう1つあります。実はそちらのほうが深刻で重大です。「現代的栄養失調」です。

そう聞くと、「食べ物があふれている日本で栄養失調なんてあるわけないよ」と思う方も多いことでしょう。

私が「栄養失調」と指摘する理由は、摂取している栄養の内訳に問題があるからです。とくに、現代人の一般的な食事の質が、肥満だけでなく、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の引き金になっています

肥満の原因となっている要因は、主に次の2つです。

【要因1】糖質のとりすぎ→「肥満ホルモン」をドバドバ分泌させる反応が起こる
【要因2】タンパク質が足りない→筋肉の材料不足で脂肪の燃焼が起こらない

具体的には、食習慣が次のチェックリストに当てはまる人は要注意です。

■「現代的栄養失調」チェックリスト
□3食しっかり主食をとっている
□丼もの、麺類などの1品料理をよく食べる
□食後には甘いものを食べる習慣がある
□コーヒーや紅茶には砂糖を入れるのが習慣
□清涼飲料水や果汁100%のジュースを飲む習慣がある
□疲れたときには栄養ドリンクを飲む
□肉は太るからなるべく避けている
□野菜中心の食事を常に心がけている
□テイクアウトの総菜やお弁当を食べることが多い
□体重が増えたときは、まずは食べる量を減らす

■「普通の食事」が危ない

チェックリストを見て、「これって普通のことじゃないの?」と思ったかもしれません。

目玉焼き丼
写真=iStock.com/Promo_Link
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Promo_Link

それはその通りです。よくある一般的な「普通の食事」で、現代的栄養失調になってしまうのです。そして、先に示したデータの通り、中年以降に肥満者がどんどん増えているのが、現代の日本です。

脂肪をどんどん増やす反応ばかり起こして、燃やす反応が起こらない食事を20代、30代からずっと続けていると、若いうちはなんとか持ち前の筋肉でエネルギーを燃焼できますが、そのツケが40代で一気に噴き出てきます。加齢で筋肉が衰えたところで、一気に肥満が加速してしまうのです。

こうした「糖質過剰で低タンパクな食事」は、内臓や血管も傷めつけます。そのために、肥満の加速とともに、血糖値や血圧などの健診結果の数値にも赤信号が灯りはじめるのです。

■「やせ型」にも健康リスクはある

一方、ごはんやパン、甘いものをたくさん食べているのに、太ることもなく、やせている、という人がときどきいます。

なんともうらやましく思えますが、私はこのタイプの方が急激に健康を損なうケースをたくさん診てきました。とくに、若くしてがんを発症するケースでは、やせているタイプの患者さんがほとんどでした。

実際に、国立がん研究センターの調査によると、BMIが19未満のやせ型の男性は、そうでないグループと比較して、がんの発生率が約30%も高くなるといいます。そして、全体の死亡リスク自体も、肥満の人よりもやせている人のほうが圧倒的に高いという結果が出ているのです。

■血管や心臓がボロボロに

やせていると血液を運ぶポンプ役である筋肉が少なくなるため、心臓や血管の疾患のリスクが高まることも知られています。

また、順天堂大学の研究では、BMI18.5未満のやせ型の女性の場合、食後に高血糖となる「耐糖能異常」の割合が、そうでない人と比較して約7倍高いことがわかりました。これは、糖尿病発症のリスクが高くなるともいえます。

私は、「糖質をたくさんとっているのにやせているケース」についても、現代的栄養失調が原因と考えています。栄養が足りないために、糖質をエネルギーに変える代謝が働かず、体内が極端な酸性に傾いてしまうからです。

体内が酸性に傾くことで、全身の細胞が傷めつけられ、血管も内臓もボロボロになり、心血管系の疾患やがん発生のリスクは跳ね上がります。

20代や30代の若い体であればなんとか耐えられますが、40代になってダメージが蓄積してくると、たちまち病気となって現れるようになります。やせていても、太っていても、糖質の過剰摂取は非常に健康リスクが高いのです。

■最優先は「タンパク質」

ダイエットというと「減らす」ことばかりに意識が向きがちです。しかし実は、脂肪燃焼にはいくつかの栄養を十分量とる必要があるのです。中でも最優先なのが、タンパク質。

ダイエットのために減らすべき糖質、増やすべきタンパク質やその他の栄養については、拙著『医師が教える 40代からの神ダイエット』で詳しく解説しました。摂取する順番や量にはコツがあり、間違えると逆に太ったり、体調を悪くしたりすることもあるので、同書を参考に学んでいただければと思います。

いずれにしても、問題は食事の「質」です。「量」を極端に減らす必要はありません。満足に食べても問題はありませんし、運動もとくに必要ありません。

食材
写真=iStock.com/AlexPro9500
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AlexPro9500

■1年で14kgの減量に成功した私のケース

「食べるだけで体重が減る? そんな都合のいいことあるわけない!」と思う方も多いはず。

【図表1】水野医師の変化
出所=『医師が教える 40代からの神ダイエット』

しかし、事実、私は食事の質を変えただけで、1年で14kgの減量に成功しています。写真(図表1)をご覧ください。右の写真は、体重が76.8kgあったころの私です。そこから食事改善をはじめ、1年後には62.8kgまで、みるみる体重が減りました。

それからさらに5年たった私が左の写真です。体重は68kg前後で安定し、体調もすこぶるいい状態です。

■高タンパク・低糖質食で人生激変

体重が76.8kgあった当時の私は立派な肥満体で、しかも脂肪肝に逆流性食道炎、睡眠時無呼吸症候群まで発症していました。

医師でありながら、肥満体に現れやすい病気の見本市のような状態でした。常に体がだるくて元気がなく、外出することもおっくうでしかたがありません。

患者さんたちに健康を指導する立場として「これはまずい……」と、カロリー制限によるダイエットも行いましたが、一時は体重が減るものの、すぐにリバウンドしてさらに太る、ということを繰り返していました。

ところがあるとき、「高タンパク・低糖質」の食事法に出合い、実践したところ、みるみる体重が減り、脂肪肝までもあっさりと改善しました。逆流性食道炎の薬も不要になり、嘘のように体が軽く動くようになりました。

以後は、仕事をする気力に満ちあふれ、本の執筆や講演会への出席など、以前とはうって変わって精力的に活動できるようになったのです。

■しっかり食事をとりながら体重を落とす

その食事法のダイエット効果、健康効果に確信を持った私は、肥満のある患者さんたちにも同じ方法を指導するようになりました。

すると、患者さんたちにも次々と同じような変化が現れはじめました。体重が減り、しかも、赤信号だった血糖値や血圧の数値も改善させることに成功したのです。

その患者さんたちは、私と同じく、キツイ運動をすることもなく、空腹に耐えることもなく、しっかり食事をとりながら体重を落とすことができました。

カロリー制限や食事制限では、健康的にやせることはできません。大切なのは、体に必要な栄養は満たしながら、脂肪を増やす反応を体に起こさないことです。

『神ダイエット』では、そのノウハウをあますところなく紹介します。

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水野 雅登(みずの・まさと)
医師
1977年、愛知県生まれ。2003年に医師免許取得(医籍登録)。日本糖質制限医療推進協会提携医。著書に『薬に頼らず血糖値を下げる方法』(アチーブメント出版)、『医学的に内臓脂肪を落とす方法』(エクスナレッジ)、『糖質オフ大全科』(主婦の友社)など多数。

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(医師 水野 雅登)

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