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「油は太る」はウソだった…ダイエットに失敗する人が知らない「ヘルシーな食事ほど太る」というワナ

プレジデントオンライン / 2023年2月23日 10時15分

「油は太る」はウソだった(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/KPS

油の摂取は体重を増やすのだろうか。医師の大脇幸志郎さんは「高炭水化物食より高脂質食のほうがやせるという実験結果がある。太るかやせるかを左右するのは、脂質よりも糖質である」という――。

■実験でわかった「油はやせる」

当たり前のことですが、食べれば体重は増えます。

テレビや雑誌には星の数ほどのダイエット食品が出てきますが、カロリーゼロの寒天のようなものでも、おなかに入れれば、食べたぶんは体重になります(尿と便になって出ていくまでの話ですが)。

食べると体重が減る「魔法の食べもの」は存在しないわけです。

しかし、「ダイエットのためには食べたほうがいいもの」はあるかもしれません。それが油です。

油はやせます。逆に言えば、ダイエットのために油を減らすのは賢いやりかたではありません。

食事における脂肪の割合を増やすと、ほかの食べ物の摂取量が減るため、体重が減ります。

これはいくつもの実験から証明されています。

たとえば、2023年1月に『Annals of Internal Medicine』というトップクラスの医学専門誌に載った論文があります。

この論文では、カロリー制限なしの「高脂肪・低炭水化物食」と、「低脂肪・高炭水化物食」を比較した実験が報告されています。2型糖尿病を持つ人を対象に、糖尿病および非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)への影響を調べた実験です。

要するに、パンとかイモとかの炭水化物を減らすかわりに油はたくさん食べる場合と、逆に脂肪を減らし炭水化物をたくさん食べる場合を比較したわけです。

この実験では、「高脂肪食」として、摂取カロリーの50~60%を脂肪で摂取しました。2019年の国民健康・栄養調査によると、日本人は平均して摂取カロリーの30%弱を脂肪で摂取していますので、その2倍です。

■脂肪の摂取量を増やしたほうが4キロ近くやせた

結果は次のとおりでした。

・高脂肪食のほうがHbA1c(糖尿病の指標)が0.59%改善した。
・高脂肪食のほうが体重が3.8kg多く減った。
・高脂肪食のほうがLDLコレステロール値が14.3mg/dl高くなった。
・NAFLDの検査では違いを確認できなかった。

実験の結果、脂肪の摂取量を増やしたほうが4キロ近くやせていたのです。

ただし、高脂肪食はLDLコレステロール値が悪くなっていることに注意が必要です。

また、この体重3.8kgの減少が、何かの偶然だった可能性も考えなければいけません(「統計学的に有意」とされてはいますが)。

偶然かどうかについては「多重性」という専門的な問題があってややこしいのですが、ほかの実験結果からも同様の傾向が見て取れます。

たとえば、炭水化物を摂取カロリーの45~65%の範囲にした場合と、さらに炭水化物を減らした場合の比較を全部集めた調査があります。

それを見ると、全体としては低炭水化物食のほうが体重が減る傾向が見て取れます。

ご飯、食パン、麺などの炭水化物
写真=iStock.com/zepp1969
低炭水化物食のほうが体重が減る(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/zepp1969

この調査では、対象者のBMI(体重÷身長の2乗)が25以上の実験を選んでいます。

そのうち、2型糖尿病を持たない人を対象とした、3カ月から8.5カ月の実験では、低炭水化物食のほうが平均的に1.07kg多く減量しています。

さらに、2型糖尿病を持つ人を対象とした3カ月から6カ月の実験では、低炭水化物食のほうが平均的に1.26kg多く減量していました。

ただ、1年以上の実験では、低炭水化物食との差がはっきりしなくなる傾向にありました。

調査の結論部分では、以上の差は「小さいか、ない」と表現されていますが、ゼロと言ってしまうのは少し厳しいように思います。

■「植物由来のヘルシーな食品ほど太る」というワナ

「3カ月で1kgの差」はたしかに小さな違いではありますが、少なくとも逆の方向ではないでしょう。

つまり、「油は太る」と言うより「油はやせる」と言うほうが事実に近いと思われます。

私たちは植物由来の食品のほうがヘルシーだと考えがちですが、そうした食品は往々にして炭水化物が多く含まれています。

つまり、こと体重に限っていえば、植物由来の食品を食べれば食べるほど太りやすいため、ヘルシーではないと言えるかもしれません。

玄米や野菜を使ったランチプレート
写真=iStock.com/Kayoko Hayashi
植物由来のヘルシーな食品ほど太る(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Kayoko Hayashi

■「油食べ放題ダイエット」をすすめるほどではない

要するに、やせたいなら脂質制限よりは糖質制限がいいと言えそうです。

人間が食べる量には限界がありますから、脂質を減らせば、その分糖質の摂取量が増え、太りやすくなります。

逆に、油の摂取量を増やせば、糖質の摂取量が減り、体重が落ちます。

ただ、なぜ糖質を摂取すると太るのかは、よくわかりません。

人体は複雑です。体内で糖と脂質は互いに変換されていて、食べたものがそのまま身に付くわけではありません。

ロバート・アトキンスが1960年代に糖質制限食を考案したのは有名です。ただ、実験データが積み重なってきた2000年ごろまで、糖質制限が脂質制限に勝るという考えは少数派でした。

ただ、さっそく唐揚げと焼肉をいっぱい食べようと意気込むのは考えものです。先ほどの実験でも、「油食べ放題ダイエット」はせいぜい3カ月で1kgの差。ダイエットの成否を分けるほどの効果ではありません。

■ダイエット開始から5カ月くらいでリバウンドする

しかも、減らした体重はたいていリバウンドします。

医学専門誌の中でも世界一よく引用されている『New England Journal of Medicine』に載った有名な実験では、糖質制限のほうが脂質制限より(かつ、地中海食よりも)体重を減らしたのですが、どの方法でもダイエット開始から5カ月くらいで体重が戻り始めています。

この結果について、やはりトップ医学誌の『Lancet』に載った論考は、食べる量が戻るからというシンプルな解釈を示しています。がまんは続かないのです。

■ダイエットの目標を明確にすべき

どんな方法を使っても、体重を減らすのはとても難しいことです。

新たなダイエット方法を試す前に、苦労して体重を減らす必要があるのか、明確にしたほうがよいでしょう。

BMIを30未満にして、心臓や脳の疾病リスクを減らしたいのでしょうか?

それとも、「やせたらモテるかも」という甘い期待を抱いているのでしょうか?

ちなみに筆者は2017年から2018年にかけての約半年で20kg減量したことがあります。

その前の半年にたくさん食べて太る実験をしていたのですが、20kg太ったあたりで膝が痛く呼吸も苦しくなったので実験を中止してダイエットしました。

その時は徐々に食べる量を減らし、最後は毎日味噌汁とサラダだけでした。やせましたが当然のことながら体調は悪くなりました。

明確な目標があるなら、それに向けてとにかく食べる量を減らせばやせます。

ただ、体調を悪くしてまでやせるつもりはないなら、肉は食べ放題だが糖質は制限、くらいにしてはどうでしょうか。

それで体重が減ればラッキーぐらいに思っておくのが、心にもおなかにも優しいように思います。

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大脇 幸志郎(おおわき・こうしろう)
医師
1983年、大阪府に生まれる。東京大学医学部卒業。出版社勤務、医療情報サイトのニュース編集長を経て医師となる。首都圏のクリニックで高齢者の訪問診療業務に携わっている。著書には『「健康」から生活をまもる 最新医学と12の迷信』、訳書にはペトルシュクラバーネク著『健康禍 人間的医学の終焉と強制的健康主義の台頭』(以上、生活の医療社)、ヴィナイヤク・プラサード著『悪いがん治療 誤った政策とエビデンスがどのようにがん患者を痛めつけるか』(晶文社)がある。

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(医師 大脇 幸志郎)

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