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帰宅後に「話題を振り返る」では手遅れ…相手の心をつかむ「お礼メール」を書くためにメモしていること

プレジデントオンライン / 2023年2月22日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/taka4332

会食などの「お礼メール」では、どんなことを書けばいいのか。ブックライターの上阪徹さんは「誰にでも言えてしまう一言を書いたところで、思いは伝わらない。その場にいなければ決して得られなかった『素材』を盛り込めれば、あなたにしか書けないメールになる」という――。

※本稿は、上阪徹『文章がすぐにうまく書ける技術』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

■会食の「お礼」メールは会食時から始まっている

あるプロジェクトが終わって、取引先から会食に誘われ、役員や上司、同僚などとともに伺ったあとに、「お礼」のメールを出すとしましょう。

送り先の「読み手」である上司、役員、取引先の担当者、同僚、違う部署の社員では、内容はすべて同じでいいでしょうか。違うでしょう。

役員には、こんなプロジェクトを任せてもらえたお礼がいいかもしれない。取引先の担当者には取引をさせてもらったお礼。上司にはサポートしてもらったお礼。同僚は一緒に頑張ってくれたお礼。違う部署の社員には陰ながら支えてもらったお礼かもしれない。

そして「お礼」のメールでは、1つ大きなポイントがあります。

それは、「お礼」メールを書くことがわかっているなら、「素材」集めは「お礼」の対象となるシーン、この場合なら食事のときから始まっているということです。

■その場にいなければ得られなかった「素材」を使う

実際、会食に誘ってもらった取引先の担当者に「昨日は食事をありがとうございました」という当たり前の慣用句の御礼で、果たして感謝の気持ちは通じるか。

それこそ、誰にでも言えてしまう一言を書いたところで、思いは伝わらないでしょう。そこで、なんとかしようとデスクでウンウンうなってしまうことになる。書けない。

なので、こういうとき、ぜひ使ってほしいのが、拙著『文章がすぐにうまく書ける技術』(日本実業出版社)で紹介している「素材」の「メモ」なのです。

あらかじめ食事の「お礼」のメールを出すことがわかっているのであれば、食事の場から「素材」の準備は始まるのです。

「お礼」のメールに入れる内容を、アンテナを立てて探しておくのです。

たとえば、会食の最中に取引先の担当者が、若い頃に聞いたというとてもいい言葉を発したりする。また、プロジェクトのどんな場面が最もうれしいと感じたかを話したりする。なぜこの店にしたのか、どんなにこの店を気に入っているか伝えたとする……。

こうした、その場にいなければ決して得られなかった「素材」が「お礼」のメールに1つ入っているだけで、「読み手」の受け止め方はまるで変わるのです。

会食の「お礼」メール例
昨夜はありがとうございました。
お話されていた、◎◎さんの入社3年目のとき、上司からお聞きになったというエピソード、とても強く心に残りました。
「仕事は必ず誰かが感謝してくれている」
私も、この言葉を励みに、これからも頑張っていきたいと思います。

■「事実」「数字」「エピソード」をただ置くだけ

どうでしょう。こんなフレーズがメールの中にちょっと入っているだけで、通り一遍の当たり前のメールにはならなくなるのです。書き手にしか書けない、気持ちのこもった「お礼」のメールになる。

しかも、文章のテクニックで書いているのではありません。「事実」「数字」「エピソード(コメント・感想)」の「素材」をそのまま書いただけです。それだけで文章はまるで変わるのです。しかも、手間をかけずに。

そのために重要になるのは、会食のときから「お礼」のメールを意識して、「事実」「数字」「エピソード(コメント・感想)」の「素材」を集めておくことです。そして、忘れてしまうので、必ず「メモ」を取る。

もちろん、食事中、あからさまにずっとメモを取っていては興ざめですから、「これはいい話を聞いたぞ」と思ったら、トイレに立ってササッとメモしておくのです。

「お礼」のメールなら、2、3の「素材」があれば充分でしょう。

たったそれだけで、翌日書く「お礼」のメールはまったく違うものになります。そして、あっという間に書けてしまうのです。

■「出張レポート」にも応用できる

出張後のレポートも、あらかじめ書かなければいけないことがわかっている文章です。となれば、「素材」集めは出張時点から始まっています。

それをやらずに会社に戻り、デスクに座って「書けない」となるのは、1日の終わりの日報と同じ。しっかり「素材」をメモしておけばいいのです。それはそのまま、レポートの文章になっていきます。

そしてレポートに必要な「素材」は、「真の目的」と「読み手」によって変わっていきます。逆にいえば、「真の目的」と「読み手」を意識すれば、必要な「素材」に頭が向かうようになるのです。

たとえば、工場視察のレポートを例にしましょう。「真の目的」と「読み手」が変われば、必要な「素材」はこんなにも変わるのではないでしょうか。

「真の目的」と「読み手」が変われば、必要な「素材」は変わる――工場視察のレポート例

真の目的/工場の現状について部の同僚たちにレポートする
読み手/同僚
素材

・工場の概要(大きさ、生産高など)
・外観やエントランスなどの雰囲気
・強みと課題
・ラインで働いている人たちのコメント


真の目的/工場の改善点について上司にレポートする
読み手/上司
素材

・生産高やコストなど数字面の状況
・現場における課題
・課題の改善、現場の意見
・ライン長や管理者のコメント


真の目的/工場の建て替えについて役員にレポートする
読み手/役員
素材

・工場をクローズした場合の影響
・建て替えに際して必要な手続き
・これから改善すべき点
・工場長のコメント

■事前のイメージが文章の質を左右する

もし、出張に出る前に「真の目的」と「読み手」を意識して、こうした「素材」について少しでも頭を巡らせておけば、出張先の工場では的確な「素材」をすばやく手に入れることができるようになります。

必要な「素材」について聞いたり見たり、確認し、「メモ」してくればいいのです。

実はこれ、書くことを仕事にしている私がまさにやっていることでもあります。

「素材」は現場にありますから、必ず現場で手に入れなければなりません。あとでデスクでうなったところで現場の「素材」は出てこないのです。

だから、事前のイメージが大きな意味を持ってきます。会食の「お礼」もそうですが、文章を書くことがわかっているのであれば、早めに準備をしておくことが「素材」集めにおいては大きな意味を持ちます。

それができれば、あとになって頭を悩まさずに済むようになるのです。

■読書感想文を書くのが嫌いだった

もう1つ、例を挙げておきましょう。

研修や講演、セミナーを受けたあと、会社や上司に感想文や報告書を提出しなければいけないケースがあります。こういうとき、「何を書いていいかわからない」「書くことがない」「書けない」といった事態に陥ってしまう人が少なくありません。

どうしてこんなことになってしまうのか。答えはとてもシンプルです。

研修や講演の最中に、しっかり文章の「素材」となる「メモ」を取っていなかったからです。

感想文・報告書というと、感想だけを書くものだと考えてしまう人がいます。

かつて書くのが苦手だった私がまさにそうでした。子どもの頃、とても嫌いだったのが、読書感想文でした。

本を読んだ感想を、原稿用紙2枚にわたって書く、とてもではないですが、感想はそんなにないし、書けません。どうやってマス目を埋めるか。ということで結局、大ざっぱなあらすじをただ書き記していくだけ、という苦痛な時間を過ごしていました。

■内容と感想をセットでメモする

実は読書感想文も、「読み手」のことを頭に描くと何を書けばいいのかが見えてきます。感想文を読むのは、先生です。しかし、先生がその本の内容についてくわしく知っているとは限らないのです。

なのに、感想だけをつらつらと書き連ねても、読んでいる先生には、なんのことだか、さっぱりわからない、ということになりかねません。

読書感想文では、本がどんな内容だったかを書くことも必要になるのです。

こんな内容が書かれていて、それに対してこんな感想を持った、という合わせ技。

これこそが感想文なのです。

研修や講演、セミナーの感想文・報告書もこれと同じです。

どんな研修を受けたのか、どんな講演だったのか、その内容がわからなければ、感想を読む会社の人事なり、上司なりにはなんのことだかわからないわけです。

こんな内容を学び、それに対してこう感じた、と内容と感想をセットで書く。内容に感想をかぶせていくのです。これが、感想文・報告書です。

だから、研修や講演、セミナーの間に必ずやっておかなければいけないことがあります。「これは感想文・報告書に書けるぞ」と思う内容があったら、それをしっかりメモしておくことです。

■聞いたことだけでなく見たことも素材になる

それはそのまま文章の「素材」になります。そして感想文・報告書ですから、その「素材」について感じたことも一緒にメモしておく。こんな「自分の感情」もメモしておくのです。

・何を感じたか?
・何を学んだか?
・何に驚いたか?
・何をしたいと思ったか?

メモを取っていないと、あとから「素材」を思い出すことは難しい。

ましてや、そのときどう感じたか、など思い出せるものではありません。

だから、いざ書く段になって、「あれ、書くことがないぞ」ということになってしまうのです。

たとえば、講師が印象的なエピソードを語ったとする。これが「素材」になると思ったら、その内容をメモすると同時に、それについてどう感じたかもメモしておく。どんな話を聞いて、それについてどう思ったか、両方書いておくのです。

また、聞いたことだけが「素材」になるわけではありません。

見たことも「素材」になります。スライドに投影されたグラフ。講師を務める人の姿勢の美しさ。配られた資料の精度の高さ。

なるほど、これはすごいな、と感じた「見たこと」もしっかりチェックしてメモしておくことです。

■上司や同僚に報告するつもりでメモを取る

そして、文章にするときには、メモを見ながら内容に感想をかぶせていく。

上阪徹『文章がすぐにうまく書ける技術』(日本実業出版社)
上阪徹『文章がすぐにうまく書ける技術』(日本実業出版社)

まず内容があって、それについての感想があるわけですから、書くのにそれほど戸惑うことはありません。ボリュームもすぐに稼げます。

書くことがない、なかなか書けない、ということはなくなるのです。

メモという「素材」がたっぷりあるからです。

それこそ、上司や同僚に、あとから同じことを報告できるようにしよう、くらいのつもりでメモを取っていくといいと思います。

あとで文章にする、報告する、と思えば、「何を伝えようか」と「素材」に自然に意識が向かうようになります。

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上阪 徹(うえさか・とおる)
ブックライター
1966年兵庫県生まれ。89年早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスとして独立。雑誌や書籍、Webメディアなどで執筆やインタビューを手がける。著者に代わって本を書くブックライターとして、担当した書籍は100冊超。携わった書籍の累計売上は200万部を超える。著書に『マインド・リセット』(三笠書房)、『10倍速く書ける 超スピード文章術』(ダイヤモンド社)、『JALの心づかい』(河出書房新社)、『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』(あさ出版)など多数。またインタビュー集に、累計40万部を突破した『プロ論。』シリーズ(徳間書店)などがある。ブックライターを育てる「上阪徹のブックライター塾」を主宰。

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(ブックライター 上阪 徹)

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