風俗店の名刺を何十枚も重ねて見せびらかす…ハラスメント行為を平気でする同僚に効く"戒めフレーズ"
プレジデントオンライン / 2023年2月25日 11時15分
■低俗な話題を振りまく同僚
メーカーで、全員がスーツを着ている堅い職場なのですが、風俗店の話などを平気でする同僚がいます。聞きたくなくても耳に入ってきて、それだけでも十分にハラスメント的な行為に感じます。雰囲気が悪くなるとしても、こんな人には注意をすべきでしょうか――30代前半の会社員の方からの相談です。
私のメーカー勤務時代にも、同じような人がいました。
彼は風俗店でもらった名刺を何十枚も重ねて、机の引き出しに入れており、それを見せびらかして、他の社員と盛り上がっているような人でした。
既婚者でしたが、私たちの事業部では出張の手当が現金支給だったため、家族には内緒で、それを遊びに使っていたようです。
詮索していたのではありませんが、そうした事情から、風俗店の名刺などは自宅には置いておけないように見えていました。
プライベートで何をしようと自由ですが、彼がそんな話をするたびに、職場に低俗な話題を持ち込むのは、モラル・ハラスメントとしか思えなかったのを覚えています。
■「強制じゃないんだけど」と飲み会を強制
(当時はハラスメントという言葉が定着する前でしたが、)彼のハラスメント的な行為は、他にもさまざまなものがありました。私が特に気になっていたのは、彼が新入社員の女性を頻繁に飲みに誘うことでした。
1対1ではありませんが、何かと理由をつけて飲み会を開催し、そこに誘うのです。よく聞こえてくるのは「(参加は)強制じゃないんだけど」というセリフでした。
これは、飲み会などに(本当は無理にでも、その相手の)参加を促したい人が使う常套句(じょうとうく)です。
「強制ではない」などと言われても、先輩から繰り返し声を掛けられれば、若い人は何度かに一度は付き合わざるを得ません。
それにもかかわらず、自分から参加したいわけのない女性社員に頻繁に誘いをかけるのは、ハラスメント以外の何物でもないでしょう。
そんなことをして人を飲みに付き合わせて何が嬉しいのかと思いますが、「強制ではない」と、相手に配慮をしているようなポーズをつけて、実は相手の気持ちなど尊重していないのが、ハラスメントをする人たちの特徴の1つです。
ただ新入社員の女性を飲みに誘いたいだけという、本人が何を考えているのか、周囲にはバレバレの行為――こうしたセクハラまがいのことをする社員の存在は、職場のモラルを下げてしまいます。
■疑いをかけられる行為は控えるべき
相談者の方は、ぜひ風俗店のことを話す同僚の方を反面教師として、それを学びの機会と捉えていただきたいと思います。
「学びの機会? そんな反面教師などいなくても、自分は同じことはしない」と、お感じになられたでしょう。
ごもっともですが、そんなハラスメントまがいの行いを見たら、あらためて考えたいことがあります――ハラスメントの疑いをかけられるような行為を控えることについてです。
今から15年以上も前ですが、私は大学院で非常勤講師をすることになり、その頃お世話になっていた弁護士先生に、雑談の中で、それを伝えたことがありました。
すると先生は、開口一番「セクハラに気をつけなさいよ」と言うのです。何を言うのかと驚きましたが、冗談にしては、表情が真面目すぎます。
「先生、ご冗談でしょう。私がそんなふうに見えるのですか」と返すと、「そうではないが、大学の教員や講師が、セクハラの行為者として告発されるケースが非常に多いのだ」と言うのです。
確かに当時は、私の出身校の国立大学でも、東京の有名私立大学でも、教授による女子学生へのセクハラというニュースが取り沙汰されていました。
弁護士先生も30年以上、大学の法学部で非常勤講師をされているそうですが、その法学部には女子学生はほぼ在籍しておらず、そんな事態は起こりようがないとのこと。それでも、私がたずさわることになる大学院には多くの女子学生がいるだろうと言います。
■純粋な恋愛関係になる可能性も……
「よくあるのは……」と、話が続きます。
男性教員と女子学生が純粋な恋愛関係になるのは、男と女なのだから、あり得ること。それで関係のできた2人が、あるとき教室で抱き合っていた。
そこへたまたま誰かが入って来たとき、女子学生が動揺して「キャー、イヤだー」と言う。
これがよくあるパターンで、「そうなったら、それでおしまい」というのです。
男性教員が立場を利用してのことではなかったのですが、女子学生が「相手が教員なので断れなかった」とでも述べたら、誰も男性教員の弁解を信用することはなく、明らかなセクハラ行為とされてしまう。
弁護士先生は、「君も、そんなふうにされたら困るだろう」と言います。
■周囲には事の真相はわからない
私が教訓にして気をつけようと思ったのは、ここから先の話でした。
弁護士先生は、こうしたケースでは「周囲には事の真相はわからない」と言うのです。本当に何があったかは、弁護士にもわからない。本人たち以外にはわからないことだと。
確かに、男女関係がどうなって、そのとき何が起きていたかは、本人たちにしかわからないでしょう。本人たちですら見解が違うことがあるとも思えます。
■セクハラを告発されたら勝ち目はない
続けて弁護士先生は言います。「他人に真相はわからないので、セクハラを疑われた教員は、本当はやましいことはしていないかもしれない。だが、君もそうしたニュース記事を読んだときに、その教員に対して決してよい印象は持たないだろう」と。
男性教員による女子学生へのセクハラとなると、「告発された男性教員に、まず勝ち目はない。だから、そうした事態に巻き込まれないように、十二分に注意すべし」とのことだったのです。私も、この話には納得せざるを得ませんでした。
この影響で、私は非常勤講師になって、はじめの10年ほどは、女子学生が授業に関することでメールを送ってきたときでも、それが大学から支給されたメールアドレスからでないときは、「次回からは大学のメールアドレスより送付してください」と返信するほど気を遣っていました。
他の教員に話すと驚かれ、笑われたりして、最近では少し緩くなりましたが。
こうした例からも、職場で風俗店の話をしたり、新入社員の女性を頻繁に誘ったりするのは、モラル的な意味合い以外においてもNGだとわかるでしょう。
李下(りか)に冠(かんむり)を正さず(=疑いを招く行動は、できるだけ慎むべき)という戒めもあります。
場の雰囲気を壊さないために、笑って話を聞いていたり、咎めたりしない人もいると思いますが、そうしたハラスメントまがいの行いをする人に、周囲がよい印象を持つことはありません。
■トラブルに巻き込まれないよう気をつける
私たちも、ハラスメントを疑われるような行為には十分に気をつけ、そうしたリスクとは距離を置いておきたいものです。
私は以前、警察官の方と世間話をしていて、「最近、なぜか夜道で変わった人に出会うことが多いのです」と話したら、「できるだけ灯りの多い、大通りを歩いたりして、気をつけないと」と言われ、正直なところ「まるで子供にするような、当たり前すぎるアドバイス」と感じたことがあります。
また、書きものをするときに、弁護士先生に「これをこう書いたら、問題になると思いますか」と尋ねて、「詳細はともかく、問題になるかと思えることは、書くのを止めるべき」と言われたこともあります。
「問題になるか心配なことを書くよりも、それを取り扱うこと、そのものを止めてほしい」「テクニカルなことよりも、あなたがトラブルに巻き込まれないようアドバイスするのが私の仕事です」と言われ、そう返されては元も子もないと感じたものです。
しかしながら、時間を置いて考えてみると、彼らのアドバイスはもっともなことを言っていて、実に正しいのです。事故は生じる可能性があるのだから、巻き込まれないように気をつけなさいというのは、確かにその通りでしょう。
相談者の方は、職場の同僚の方について、感じておられる通りですから、直接注意をされてもよいのですが、機会があれば、こんな話を伝えて差し上げてもよろしいかと思います。
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サイドマン経営・代表
もともとグローバル人材育成を専門とする経営コンサルタントだが、近年は会社組織などに存在する「ハラスメントの行為者」のカウンセラーとしての業務が増加中。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科では、非常勤講師としてコミュニケーションに関連した科目を受け持っている。著書に『好きになられる能力 ライカビリティ』『英語で学ぶトヨタ生産方式』など多数。
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(サイドマン経営・代表 松崎 久純)
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