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絵本、幼児教室、ミュージック…子どもの頃から英語に触れさせるほど英語が苦手になるという残念な事実

プレジデントオンライン / 2023年2月27日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hanasaki

子どもの英語力を高めるには、どうすればいいのか。英語講師の関正生さんは「英語教育は中学生からで十分。小学生の段階で英語に触れさせると、むしろ英語嫌いになってしまう恐れがある」という――。

※本稿は、関正生『子どものサバイバル英語勉強術』(NHK出版新書)の一部を再編集したものです。

■「英語への抵抗をなくす」はただのおせっかい

早期英語教育の取り組みの1つとして有名なのが「リビングに英語の絵本をさりげなく置いておく」「英語の曲をかける」などの行動です。お子さんに英語をマスターさせた親御さんが、雑誌のインタビューやテレビで話す成功談としてよく見かけます。

ここで肝に銘じてほしいのは「あくまでその人が成功しただけ」という事実です。この方法を話す親御さんの中では「成功率100%」でしょうが、失敗する家庭のほうが多いと僕は思いますし、何よりも失敗したときのリスクが大きいのです。

ここまで言う以上、きちんと説明しないといけないので、順を追って説明していきます。まず、本を置いたり曲をかけたりする理由は「英語への抵抗をなくすため」と言う方が非常に多いです。でも、それは大人が勝手に「英語はとっつきにくいもの」と決めつけて、「とっつきにくいのだから、英語への抵抗をなくしておこう」という、「おせっかい」な行動なのです。

よく考えてみてほしいのですが、子どもが2歳でも5歳でも8歳でも10歳であっても、「英語を始めるのに抵抗がある」とか、最初から「英語が怖い」なんて言う子はまずいません。英語を始めるときの子どもの顔は間違いなくイキイキして好奇心に溢れています。中には無関心な子もいますが、少なくとも最初から「恐れている」子なんていないのです(もちろん早くから始めさせられてすでに嫌いになっている子ならたくさんいます)。

■「いつの間にか身近になる」ことはほとんどない

ご存じの通り、英語の最初のレッスンは学校であれ英会話スクールであれ幼稚園の特別レッスンであれ、簡単なあいさつかゲームかアルファベットの練習からです。これでつまずく、抵抗を持つことなど、普通はないはずです。

そういったことを初めて体験した子どもの感想は総じて「楽しかった」というものです。「つまらない」という子は「すでに知っているので簡単すぎてつまらない」ということがほとんどだと思います。もし「そんなの思い込みだろ」と言われたら、「その通りです。でも、英語はとっつきにくいもの、という思い込みよりは多くのお子さんに当てはまると思いますよ」というのが僕の意見です。

確かに「幼い頃から家の中に英語の本があり、なんとなく手にしていたので、いつの間にか英語が身近なものになっていた」という言葉は、つい真似したくなるのかもしれませんが、「置いておけば身近になる」とは限りません。実際、幼い頃から部屋に世界地図などを貼っているご家庭は珍しくないと思います(いわゆる「知育ポスター」というものです)。

しかし国の大きさ・位置・国旗に多少の興味は示すものの、そこまで熱心になる子はかなり少数でしょう。また、意図せずとも、保護者の興味あるもの(ファッション誌でも車関係でも)は家の中にあるでしょうが、それがお子さんの興味を引くケースは少ないのではないでしょうか。まして、得意科目になるまで興味を示したり、将来「家にファッション誌があったので」と言ったりするファッションデザイナーは、ゼロではないでしょうが、決して多くはないはずです。

■親が英語に興味がなければ効果がない

絵本を置いて早期英語教育に成功した方がよく言うのは「強制しないこと。絵本を置いておくだけ」というものだったり、「たまに親自身がその本を手に取り、熱心に読むと、子どもも興味を持つ」というものです。確かにこういったことを「本当にうまくやれば」成功するのかもしれません。でもたぶん実際に真似した人の大半は失敗するでしょう。なぜでしょう?

理由は単純で、「上手にやれていない」からです。本当に熱心に読んでいればお子さんも興味を持つのかもしれませんが、演技を見抜かれるのだと思います。また、仮に演技がうまくいったとしても、それ以上の時間、スマホのほうを熱心に見ていれば、そっちに興味が湧くのは当然ですよね。

一人で遊ぶ子どもの前でスマホの操作に夢中になる母
写真=iStock.com/yamasan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yamasan

つまり成功した方は、やはりご自身が大変な英語好きで、本気で英語の本を楽しんでいるのがお子さんに通じたのでしょう。かつ、知らず知らずのうちにスマホとうまく付き合い、お子さんの見えるところではあまり使わなかったのではないでしょうか。

■英語に対する新鮮さが失われるリスクも

世間でよく聞く「リビングに英語の本を置く」「英語の曲をかける」などの方法をこれだけ否定する英語指導者などいないでしょうね。ただ、厳密には否定ではなく「大半の人には向かないからやめたほうがいい」というのが本音です。それは「失敗したときのリスクが大きい」からです。

そのリスクとは何なのか、ズバリ「英語に対する新鮮さが薄れ、爆発力がなくなること」です。「物心ついたときから英語が身近にあった」というメリットだけが語られますが、それは逆に「英語への憧れ」がなくなってしまうことでもあるのです。

英語の本が並ぶ本棚
写真=iStock.com/Moonstone Images
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Moonstone Images

早期英語教育を受けていない、つまり物心がついてから英語を始める人間の強力な武器が「英語に触れたときの新鮮な気持ち」や「英語を話す人への憧れ」です。これは英語学習の起爆剤になりえます。もちろん誰もが「英語に憧れる」わけではないのですが、「最初は英語が好きだった」という人がそれなりに多いことを考えると、「身近なところに本を置いておく」方法よりも成功率は格段に高いだろうというのが僕の考えです。

また、それがうまくいかなくても、自分で始めたことというのは責任感を持ちやすいので、お子さん自らが「英語をやりたい」と言うときを待つほうが良いと思います。

一部の育児本にも書いてありますが、習い事でも書店で本を選ぶときでもおもちゃを選ぶときでも、子どもは自分で選んだもののほうが、それに対して責任感を持ちやすいのです。「英語に憧れ、自らその選択をした子」は長期間、強烈なモチベーションを持つことがあります。本を置くより、この切り札を取っておくほうが僕はいいのではないかと思います。

■「とりあえず英会話スクール」はやめたほうがいい

前項で「英語の本」について触れましたので、それと同じくらいよく聞かれる「英会話スクール」についてもここで触れたいと思います。英語はやらせたいけど、何をしていいかわからないので、とりあえず英会話を習わせるという方も多いと思います。

結論から言うと、僕はそれにも反対です。一番の理由は本のときと同じ「英語への憧れ」がなくなってしまうからです。ですから、憧れを叶える場所として英会話へ通っているなら、それは良いことだと思います。英会話スクールが即ダメということではなく、お子さんのニーズを完璧に満たしているなら理想的な場となるのは言うまでもありません。

「じゃあウチの子は大丈夫。『楽しい』って言ってるし」という方も注意してみてください。というのも、「心底楽しんでいる」ならいいのですが、「他の習い事と比べてラクだから・ゲームばかりやっているから・宿題などのプレッシャーがないから、楽しい」ということが多々あるのです。

■小学校時点での差なんて、気にしなくていい理由

実際、多くの保護者からよく聞くのが「スクールにはイヤがらず通っているけど、家では何もしない」というものです。これは、子どもながらに「習い事はしないといけないから英会話には通っているけど、実は心から楽しんでいるわけではない」のではないでしょうか。

ちなみに、ひと昔前の中学1年生には次のようなことがよくありました。中1の夏休み前後では「英語が一番好き」という中学生が多いのですが、よくよくその理由を聞いてみると、「数学とか他の科目よりもついていけるから」とか「ゲームが多いから」といった理由が少なくなかったのです。そして、中1の終わりに再び好きな科目を聞くと、英語の割合は激減しているのです。

本稿をお読みいただいたみなさんには、世間の「英語は早く始めるほどいい」というのは「必ずしもそうとは限らず、リスクのほうが大きい」ということが十分に伝わったかと思います。

とは言え、他の子が「英検に合格した」などと聞くと、「小学校で大きく差がつくから早く始めないと」とか「どんどん差をつけられている」と焦ってしまう方も多いでしょうから、ここでは「格差をどう埋めるか?」と悩んでいる方に、「気にする必要は一切ない」という理由をお話しします。

■早いうちから無理をさせてもメリットは少ない

まず1つめは、「そもそも早く始めたところで早くやめてしまったら(挫折してしまったら)、それこそ大きな痛手となる」ということです。なぜかこのたった一言が世間では言われませんよね。焦って始めるよりも、「英語を続けるための準備」に時間を割いてからでも遅くありません。

関正生『子どものサバイバル英語勉強術』(NHK出版新書)
関正生『子どものサバイバル英語勉強術』(NHK出版新書)

2つめは、「早いほうが吸収が良い」と思いがちですが、それはあくまで「興味を持った場合だけ」です。興味がない3歳児や5歳児より、興味を持った10歳児のほうが吸収は早いですし、興味を持ったのが16歳であっても、そのときは逆に日本語力を駆使してどんどん吸収していくものです。

お子さんのポテンシャルを信じるのは素晴らしいことですが、「早い段階で興味を持って順調に進み、その後何年も英語に取り組み続ける」というのは、かなりレアな成功例と思ったほうがいいでしょう。

3つめは、早期英語教育においては丸暗記式の英語を教えられることになるわけですが、丸暗記はいつか限界がくるので、その程度の暗記量は後でいくらでも逆転が可能だということです。言ってみれば「貯金」みたいなもので、子どものときにコツコツと10円玉を貯金したり、お年玉を貯金すること自体は素晴らしいですが、金額という意味ではたいした額になりませんよね。何年もがんばって10万円とかでしょう。

それよりは、子ども時代に有効にお金を使って色々なことを吸収しておけば、大人になって仕事のスキルも上がり、1カ月で10万円を貯金できる、そんな感じです。

もちろん貯金はたとえです。僕が言いたいのは、丸暗記英語は「あれこれ節約して我慢して10円を貯金するくらい費用対効果が悪い」ということです。

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関 正生(せき・まさお)
スタディサプリ 講師
1975年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学文学部英文学科卒業後、複数の大学受験予備校を経て現職。著書に『サバイバル英文法』、『サバイバル英文読解』、『サバイバル英会話』、『子どものサバイバル英語勉強術』(いずれもNHK出版新書)、『真・英文法大全』(KADOKAWA)など多数。

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(スタディサプリ 講師 関 正生)

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