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少し太っているほうが長生きする…医師・和田秀樹が「高齢期のダイエットは絶対にやるな」と訴えるワケ

プレジデントオンライン / 2023年2月27日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/adamkaz

高齢期はどのように過ごすことが健康にいいか。医師の和田秀樹さんは「少し太っているほうが、健康的な生活をおくれて寿命が延びる。高齢期のダイエットは絶対にやるな」という――。

※本稿は、和田秀樹『80歳の超え方』(廣済堂出版)の一部を再編集したものです。

■人間の身体をつくるためには「肉」が必要だ

セロトニンを増やすためには、肉を食べることがいちばんです。

セロトニンの材料というのが「トリプトファン」というアミノ酸です。それを多く含むのは肉です。肉を毎日食べることでセロトニンが生成され、意欲低下の防止につながります。

高齢になると脂っぽいものは食べられないという人もいて、野菜中心の食事になる方もいますし、健康や動物愛護の観点からベジタリアンになる方もいます。

必要な栄養素はサプリメントでとるから大丈夫という方もいます。

しかし、サプリメントはセロトニンならセロトニンしか増やせず、肉のほかの栄養素はとれないし、後述するコレステロールもとれません。価格が高いものも多いです。

できれば日々の食事に肉を加えることで、セロトニンが増やせてたんぱく質もとれるならそのほうが健全であると考えます。

人類の生活様式は狩猟に始まります。もともと肉と木の実と魚と貝、山菜等のヘルシーフードでした。

肉は人間の身体をつくるために必須な栄養があるからこそ、私たちは好きなのかもしれません。

■元気の素・男性ホルモンの原料にもなる

肉にはコレステロールも多く含まれるために、避けているという方もいます。

たしかに、コレステロールは、動脈硬化を促進し、心筋梗塞のリスクになるといわれています。基準値から高いと、すぐにコレステロールを下げる薬が出されます。

しかし、心疾患が死因トップのアメリカならいざしらず、日本では心筋梗塞よりも4倍以上がんの死亡率が高く、心疾患で亡くなる人は先進国の中でももっとも低い状態にあります。

基準値を厳密に守る必要はないと考えます。

実際に、コレステロール値が高い人のほうが長生きをするという研究もあります。

なぜなのでしょうか。

コレステロールは、男性ホルモンの原料になります。男性ホルモンの中でも、特に「テストステロン」という物質が「意欲」と関係しています。

男性ホルモンというと「性欲」というイメージがありますが、性機能だけでなく他者への関心や集中力をもたらしてくれます。男性ホルモンは元気の素なのです。

女性は老いると女性ホルモンが減っていきますが、逆に男性ホルモンが増えていたという研究もあります。

あるNPOのリーダーである年配の女性が、「昔はおとなしいほうだったのに、年をとると人前に立って話すことも平気になった。『おばさん力』がついたのかしら」と話していましたが、「おばさん力」のせいだけではなく、男性ホルモンのおかげかもしれません。

とりあえず、もう少し肉を食べて元気をとり戻してみませんか。

刻んだわさびのロースステーキ
写真=iStock.com/kuppa_rock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

■陽を浴びる習慣でセロトニンをつくろう

――太陽エネルギーはバカにできない

太陽の光を浴びると、「幸せ物質」のセロトニンがつくられます。

よく天気が悪いとうつうつとした気分となり、晴天だと晴れやかな気分になりますね。セロトニンが関係していると考えると、人間というのは単純な生き物だと思います。

どんなにテクノロジーが発達しても、太陽光線を浴びてエネルギーとなるのは人間も植物も同じです。人間も地球の上に暮らす生命体のひとつなのです。

陽に焼けるほど日光浴をしなくても、大丈夫です。天気がいいときは家のまわりを散歩する、ベランダでコーヒーを飲むなど、陽を浴びる習慣をつくってください。

いちばんいいのはウォーキングでしょう。筋肉の維持にもつながります。

ある研究では、男性ホルモンが筋肉の中でも生成されているという報告があります。筋力を保つというのは単に自立して歩くためだけでなく、精神のバランスを保つためにも必要なのかもしれません。

意気消沈して外に出る気分ではない方も、あのパン屋へ行って好きなパンを買って帰ろう等の目的を持って外に出てみましょう。

骨を強くするためにも太陽の光を浴びなさい、とよくいわれます。

■太陽の光は一石四鳥

ビタミンDは、健康な骨を維持するために欠かせないビタミンです。ビタミンDは、魚類やキノコ類などの食品からとるほかに、その一部は日光を浴びることで身体の中で生成することができる特殊なビタミンです。

ライフスタイル
写真=iStock.com/byryo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/byryo

皮下脂肪には、ビタミンDのもとになるコレステロール生成のための中間体があり、それが紫外線に反応してある種のビタミンDをつくります。

本当に人間の身体もひとつの奇跡なのです。太陽や食べ物、環境に影響されながら私たちは生きています。

また、光を浴びて生成されたセロトニンは、夜になると「メラトニン」というホルモンをつくりだします。このメラトニンは、睡眠ホルモンといわれます。

高齢になり「眠れない」という訴えが多くなりますが、老いるとメラトニンが減少していくので仕方がないことなのです。しかし、陽を浴びることでメラトニンを増やすこともできます。

それで、不眠の方には、外に出てウォーキングすることをおすすめするのです。

体操教室やジムやヨガ、スイミングに行って筋肉を鍛え、人と交流することは大事なことですが、室内での運動だけでなく陽の光を浴びる習慣をぜひつくってください。

太陽の光は、一石二鳥どころか三鳥も四鳥も、あなたを元気にしてくれます。

■高齢期のダイエットなんて、とんでもない

いまの中高年以降の方たちは、おしゃれに気をつかう方も多いと思います。女性も男性もファッション誌華やかな時代を過ごしてきました。たくさんの雑誌やテレビの影響をいちばん受けている世代と言ってもいいでしょう。

そのためか、高齢者の仲間入りをしているのに、ダイエットをしようと考える人がいます。

重い糖尿病や何かの病気のために食事制限がある方なら仕方がないのですが、高齢期に入るところでのダイエットはやらないほうがいいでしょう。

理由は、ダイエットをすれば筋肉も減るのは確実だからです。少し太り過ぎを気にするのなら、身体を動かしてほしいと思います。

少し太っているほうが長生きするという研究もあります。

かつて宮城県で大規模調査したときも、痩せ型の人より少し太目な人のほうが、6年から8年平均余命が長かったのです。

メタボ検診では、腹囲を計って男性が85センチ、女性が90センチ以上だとメタボリック症候群のリスクのひとつになります。

理由のひとつとして、肥大化した内臓脂肪細胞から分泌される生理活性化物質アディポサイトカインが糖尿病や高血圧の原因になる、というものがあります。

そういう細胞研究もたしかに正しいのですが、すごい肥満体の人にはそれは当てはまっても、少しふっくらしている人の場合、心理的なことを含めて、十分に栄養をとるメリットのほうが大きいのです。

■少々太めでも健康な生活で寿命が延びる

あなたのまわりを見ても、少しふっくらしている人のほうが元気で活動的ではありませんか。

それは、健康的に人間の正しい道なのかもしれません。

和田秀樹『80歳の超え方 』(廣済堂出版)
和田秀樹『80歳の超え方』(廣済堂出版)

日本人はスタイルを気にし過ぎて、高齢になっても貫禄がないものです。少し太目で健康的な人はそれだけで元気に見えます。

私の知り合いである有名な学者さんがいました。女性でしたが太っていて貫禄がありました。

しかし、あるとき見かけたらずいぶん痩せていて心配しましたが、その後、病気になられ、すぐに亡くなってしまいました。

世の中には食べても太らないという方がいます。そういう方は栄養が十分なので、いいのですが、スタイルを気にしてダイエットする、つまり食餌(しょくじ)を減らすのは、免疫力にも影響します。また、人間は美味しいものを食べるときに脳の前頭葉が刺激されます。

楽しく好きなものを美味しく食べる。少々太めでも健康な生活で寿命が延びるようにしたいものです。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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