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地価上昇率は全国2位…都心タワマンに投資していた富裕層が今、目を向ける"新たな投資先"は国防の最前線

プレジデントオンライン / 2023年3月2日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/noa195

沖縄の南西約300kmにある宮古島が空前の不動産ビジネスに沸いている。金融アナリストの高橋克英さんは「2019年には2つめの空港が開港して国際線の離発着が可能となり、2023年6月にヒルトン、2024年にはローズウッドという高級ホテルリゾートが開業予定、さらに新規のホテルコンドミニアム分譲プロジェクトも進行中だ。国内外の企業や富裕層が巨額の資産・資金を投じている」という――。

宮古島は、沖縄本島から南西に約300km、東京からは約2000kmに位置し、直行便だと3時間足らずで到着する南国の楽園だ。宮古島市は大小6つの島(宮古島、池間島、来間島、伊良部島、下地島、大神島)で構成されており、総面積は204平方km、人口約5万5000人である。

市内の観光客数は、コロナ禍前の2018年度には年間114万人に達していた。足元の観光客数は月間 4万702 人で、前年比約203%増加(2023年1月)しており、コロナ禍前のピークを超えるのは時間の問題だろう。

■三菱地所がホテル開発と空港運営

無料で渡れる橋としては日本最長3540mを誇る伊良部大橋で渡る伊良部島の西に位置する「みやこ下地島空港」(滑走路全長3000m)は、従来のパイロット訓練用に加え、国際線、国内線の離発着が可能となり、さらにはアジアや欧米からのプライベートジェットを迎えることが可能となった。空港の運営権は三菱地所が受託しており、2019年には新ターミナルが開業している。

既存の宮古空港(滑走路全長2000m)と合わせて、宮古島には空港が2つもあることになり、観光客集客においては、大きなアドバンテージだ。

三菱地所は、みやこ下地島空港の運営に加え、「ヒルトン沖縄宮古島リゾート」や「ローズウッド宮古島」などリゾートホテル開発計画も推進している。

2023年6月に開業予定のヒルトン沖縄宮古島リゾートは、伊良部大橋全景とサンセットを望む宮古島・トゥリバー地区に位置し、客室数は329室を備える。宮古島内でも最大級の宿泊施設になる見込みだ。

外資系最高級ホテルの「ローズウッド宮古島」は、2024年開業予定だ。ヴィラタイプの客室が55棟建設される見込みで、世界的高級ホテルチェーンの「ローズウッドホテルズ&リゾーツ」が国内初進出し運営する。三菱地所によるホテル開発と空港運営により、アジアの富裕層がプライベートジェットで下地島空港に舞い降り、伊良部大橋を渡って、なじみのある外資系高級ホテルにて長期滞在して過ごす、といった世界が実現しそうだ。

■ユニマットグループのリゾート開発も続く

1984年にオープンした「宮古島東急ホテル&リゾーツ」は老舗のリゾートホテルとしていまだに顧客からの満足度も高い。また、2018年には、森トラストとマリオット・インターナショナルが運営する外資系高級ホテル「イラフSUIラグジュアリーコレクションホテル沖縄宮古」(58室)がオープンしている。

宮古島で最初にリゾートホテルを展開したのは「宮古島東急ホテル&リゾーツ」であったが、その後、孤軍奮闘で宮古島のリゾートを拡大し続けてきたのが「シギラセブンマイルズリゾート」だ。運営・展開しているのはユニマットグループ。同グループは1986年に宮古島でのリゾート開発に着手し、1993年に第1号ホテルがオープンして以来、海岸線に沿って広がる約130万坪の敷地に、専任のバトラーによるオールインクルーシブの最高級プライベートヴィラ「ザ シギラ」やオールスイートの「シギラベイサイドスイート アラマンダ」など9つのホテル(客室数1138室)、ビーチ、ゴルフ場、温泉、20店舗以上のレストランなどがそろう「シギラセブンマイルズリゾート」を展開しており、世界有数のリゾートシティを目指し、現在もさまざまな施設を拡張中である。

シギラセブンマイルズリゾート【公式】
画像=シギラセブンマイルズリゾート【公式】ページより

■新築ホテルコンドミニアムも完売

なかでも、ユニマットグループによる新築ホテルコンドミニアム分譲プロジェクト「沖縄・宮古島ビーチフロント計画」は、販売を担った三井不動産リアルティによると、第I期販売(100室)は、首都圏を中心とした国内の富裕層を中心に内々営業のみで建物竣工1年前に完売したという。これまで都心のタワマンなどに投資していた人々が南の島にも注目しているわけだ。

そうしたニーズもあり、ホテルコンドミニアムの第II期(179室)や新たなるホテル(10室+100室)などが着工・計画中であり、今後も供給を積極的に推進していくという。

このように、外資系高級ホテルの開業ラッシュと並行するように、ホテルの客室を所有し、自身が利用しない時は貸し出す「ホテルコンドミニアム」が、沖縄本島だけでなく、石垣島や宮古島などでも、誕生し新たに開発計画されている。物件によっては、流通市場において販売当初の価格よりも高値で取引されており、キャピタルゲインが狙えるのだ。

当然ながらこうした物件は、ハワイや東南アジアに加え北海道のニセコなどでホテルコンドミニアム投資の実績がある国内富裕層の目にも留まることになる。また、スルガ銀行では、別荘・セカンドハウスローン(ホテルコンドミニアムプレミアム)を富裕層向けに展開しており、すでに多くの顧客が利用しているという。

■再び地価高騰の兆し

宮古島では、外資系高級ホテルやホテルコンドミニアムなどの開発ラッシュを受けて、リゾート施設従業員や新設ホテルやアパートなどの建設作業員向けの賃貸アパート需要に加え、観光客や移住者など人口増加に伴い、市街地における飲食店など店舗需要もあり、住宅地、商業地とも地価が上昇している。

宮古島の賃貸ワンルームマンションやアパートの家賃は3万円程度だった相場がここ数年の間に急騰し7万円台から、新築のデザイナーズ物件では10万円超えも出回っている。白亜でモダンな新築の賃貸アパートなどは引き続き建設されており、首都圏の個人投資家などに投資用不動産として販売されるケースも出てきている。

実際、宮古島の公示地価(商業地、宮古島市平良字西里羽立391番外)は、コロナ禍直前(2020年1月時点)では、なんと前年比41.4%も上昇していた。翌年はコロナ禍で観光客数の激減もあり、2.1%まで縮小したものの、2022年1月時点では2.9%の上昇と再び拡大基調となっている。

なお、2022年9月に発表された地価調査(2022年7月1日時点)では、都道府県別の上昇率で沖縄県が福岡県に続き全国2位(上昇率2.7%)。特に、宮古島市の全用途地域の平均変動率9.4%は、沖縄県内トップであり、住宅地の変動率では県内トップ5を宮古島市が占めるに至っている。

■バラ色の話ばかりではない

もっともバラ色の話ばかりではない。「海も空も青くきれいだし、リゾート感満点ながら、ホテル内でも島の至るところでも工事中ばかり。活気はあるけど、雰囲気は壊れる」「値段が何でも高い。次はないかな」「何もなくてつまらない」「ガラが悪い観光業者がいる」といった観光客の声も聞く。確かに、ショッピングモールやテーマパークや観光名所、子ども向けやファミリー向け施設が充実しているわけでもない。

東シナ海に位置する宮古島は、台風銀座と呼ばれるように毎年のように大型の台風が通過することも忘れてはならない。また、宮古島には、航空自衛隊と陸上自衛隊の駐屯地があるように、国防の最前線でもある。台湾有事などの際には、大きな影響を受ける可能性もあり、国と県、地元市町村では、有事の際の住民避難を想定した図上訓練なども計画されている。

防衛省[JASDF] 航空自衛隊・宮古島分屯基地
画像=防衛省[JASDF] 航空自衛隊・宮古島分屯基地オフィシャルサイトより

急激な開発や投資により自然や景観が損なわれたり、多くの観光客が訪れることで、地元住民の住環境悪化など観光公害を懸念する声もある。

■国内外の富裕層が投資するワケ

美しいビーチを持つ南国の楽園、宮古島。2つもある空港に加え、富裕層を引き付けるキラーコンテンツである①外資系高級ホテルと②ホテルコンドミニアムもそろってきた。

まもなくインバウンドも完全復活してくれば、運休中の香港からの国際線や、途絶えている中国からの国際クルーズ船に加え、新たなる国際路線、海外からのプライベートジェットの受け入れなども進むことになろう。

宮古島の活況と魅力が、海外富裕層や投資家に広がるもの時間の問題かもしれない。外資系高級ホテルの開業・開発が、コロナ禍においても、継続していることを一つの判断材料として、国内外の富裕層や投資家は、安心して、中長期的視点で宮古島への不動産投資を行うことができるのだ。外資系高級ホテルがある地は、別荘地やコンドミニアム、セカンドハウス需要のニーズも高く、国内外の富裕層などにより、投資対象として売買されることになる。

宮古島では、外資系高級ホテルやホテルコンドミニアムを起爆剤に、国内に加え海外の富裕層顧客が消費し投資することで、さらに良質な物件が供給され、ブランド化が進み、資産価値の上昇により、さらなる開発投資が行われる、という、投資が投資を呼ぶ好循環が再開されようとしているのだ。

■「カネ余り」は続いている

日銀新総裁や金利上昇が話題になっているが、急激な金融政策の変更ができる経済環境にはない。日本においては、依然として異次元の金融緩和による「カネ余り」が続いている。カネ余りの恩恵を最も受けるのは、すでに資産・資金を十分に持ち、その資産・資金を元手に投資や開発を行うことができる国内の事業者や富裕層となる。

また、海外の事業者や富裕層にとっては、欧米で利上げが続くなか、低金利で円安により割安な日本への投資や観光は魅力を増している。この先も宮古島のブランド化は進みそうだ。もっとも、われわれ庶民にとっては高根の花となり、今以上に気軽には行けない場所になるのかもしれない。

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高橋 克英(たかはし・かつひで)
株式会社マリブジャパン 代表取締役
三菱銀行、シティグループ証券、シティバンク等にて富裕層向け資産運用アドバイザー等で活躍。世界60カ国以上を訪問。バハマ、モルディブ、パラオ、マリブ、ロスカボス、ドバイ、ハワイ、ニセコ、京都、沖縄など国内外リゾート地にも詳しい。1993年慶應義塾大学経済学部卒。2000年青山学院大学大学院 国際政治経済学研究科経済学修士。日本金融学会員。著書に『いまさら始める? 個人不動産投資』、『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』など。

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(株式会社マリブジャパン 代表取締役 高橋 克英)

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