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NHKで働く人に「大河ドラマ」の話題を振ってはいけない…初対面で「会社名」を聞くと大体つまらなくなる理由

プレジデントオンライン / 2023年2月28日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/winhorse

会話が上手な人は、初対面の相手と何を話しているのか。渋谷で25年続くバーのマスター・林伸次さんは「相手の勤め先がNHKとわかり、大河ドラマを話題に出しても、その人の仕事には関係ない場合が多い。会社名ではなく、職種について話した方が盛り上がる」という――。

※本稿は、林伸次『結局、人の悩みは人間関係』(産業編集センター)の一部を再編集したものです。

■渋谷・宮益坂のナンパで相手が立ち止まるマジックワード

僕のnoteに、たぶん同業の方だと思うんですが、「お客様から何か面白い話をしてと言われたのですが、どう対応すればいいのでしょうか?」という質問が届きました。

バーに行かない方はどういう状況なのかよくわからないですよね。僕、修業時代もいれたら26年もバーテンダーの仕事をしているのですが、この、お客様から「面白い話をして」は、しょっちゅう言われるんですね。

最初に言われたときのことは今でも覚えています。バーテンダー修行を始めた頃で、「なんか面白い話して」という言葉を聞いたとき、「ああ、そうか。真夜中にこういうバーで、バーテンダーに何か面白い話を聞かせてっていう人たちがいるんだ」と思って、びっくりしました。

そしたら僕の師匠が、「おまえ、面白い話くらい用意しておけ」って助言してくれたので、意識的に「面白い話」をストックするようになりました。

例えば、「僕の友達でコンビニでバイトしている奴がいるんですけど、コンビニ店員って自動ドアが開いたら、反射的に『いらっしゃいませ』って言うようになるらしいんですね。

そいつとこの間、山手線に乗っていて、電車が渋谷についてドアが開いたら、そいつ『いらっしゃいませ』って思わず言ってしまったんです」って感じの軽く笑える話を、いろいろと用意しておきました。

でもやっぱり、みなさんお酒が入っているので「性愛ネタ」が一番受けるんですよね。もちろん性愛に関する話は相手を選びますが、だいたいは聞いてくれたお客様が「じゃあ俺が聞いた話なんだけど」って話を引き継いでくれるので楽です。

僕の場合は、人に聞いたり、本で読んだりした話を一生懸命ストックしていたのですが、当時そのバーにいた渋谷の宮益坂でナンパをするのが日課というすごくイケメンのバーテンダーが、毎回「こんな風にナンパしたら、こんな展開になった」というネタを披露していて、「すごいなあ」と羨ましく思ったのを覚えています。

ちなみに、ナンパは「とにかく立ち止まってもらう」っていうのが難しくて、いろんな「かけ言葉」を研究したそうです。彼が言うには、一番止まってくれるのは「すいません。あんまんと肉まんどっちが好きですか?」っていうフレーズで、「なるほど。そういうのって現場でしかわからないなあ」と感心しました。

■盛り上がるのはこんな話題

あるいは、バーでは「金額ネタ」も受けます。

例えば、僕の友人の飲食店に、当時話題沸騰中の芸能人が来店したときの話です。その人が帰った後すぐに週刊誌の記者が来て、「さっき、あの人がどんな会話をしていたか教えてくれたら○万円差し上げます」って提案されたのですが、さていくらでしょう? っていうような話題は確実に盛り上がります(ちなみにその友人はもちろん断ったそうです)。

疑問符と日本のお金
写真=iStock.com/bee32
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bee32

バーテンダーではありませんが、常連のお客様でとても綺麗な女性がいらっしゃるのですが、その方は「以前AVに出ないかと誘われたのだけど、そのとき提示された出演料はいくらでしょう?」っていう話題が必殺技で、その場にいる男性も女性も百発百中で盛り上がっていました。

あとはむしろ、こちらから質問をしたほうが盛り上がることが多いですよね。飲食店などのサービス業をしている人には、「今までで一番困ったことって何ですか?」って聞くと、みんなすごく面白い話を教えてくれます。

フリーライター、編集者、デザイナーのような、フリーランスの人には、「今までで一番悔しかったことって何ですか?」って聞くと、みんな「聞いてください、林さん」って、すごく面白い話を教えてくれます。その人の職業の特性に合わせた質問が効くみたいです。

あと、僕は意識的に、「街で流行っているもの」の情報を集めています。例えばコロナの前ですが、渋谷では「路上飲み」が流行り始めていたのをご存じでしょうか?

他にも、渋谷でクリスマスにサンタの仮装をした男性グループが、同じように仮装をした女性グループに声をかけるっていうのが流行ってたりしました。こういう街の流行を意識的にチェックして、ネタとしてカウンターで披露しています。

僕はどちらかといえば、「お客様に話してもらって、それを聞く」というスタイルですが、カウンターのお客様同士が話していて、イマヒトツ会話がかみあわなくて、どうしても僕から何か新しい話題を提供しなくてはいけない状況になることもあって、そんなときのために、意識的に「何か面白い話」を集めているわけです。

バーテンダーに限らず、会話の仕方や盛り上げ方に悩んでいる人は多いと思うので、もし参考になれば嬉しいです。

■「女性の会話は共感してほしいだけ」の真実

いろんな雑誌やウェブの記事、カウンターでの会話などで、女性にどういう男性が好きなのかや、婚活での体験談などをいろいろ聞いていると、とにかく「話が合う男性が好き」「会話が面白くない男性は嫌だ」って言うんですね。

で、「会話が面白い人ってどういう人ですか?」とか「会話が合うってどういう状態ですか?」って、できるだけ具体的に聞いてみることにしているんです。

というのは、どうやらそこさえクリアすれば、「恋愛成立」ということが多いからなんです。日本の婚活問題の多くが解決しそうなんです。

まず、女性からの意見でよく聞くのは、有名なあの「共感してほしい」です。

例えば、女性が「会社でこんな嫌なことがあって」と男性に相談すると、男性が「それはおかしいよ。だったらあなたは会社に対してこういう風に抗議してこういう風に改善すべきだと思う」と答えるパターンがあります。

それはまあそうなんだけど、女性としては「解決策」を知りたいのではなくて、「なるほどね。そういうことあるよね。大変だよね」と共感してほしいという説です。こういうの、多くの「男女の違い」というような本に書いてありますよね。

もちろん、性はグラデーションなので男性女性とはっきり2つに分かれているのではなくて、限りなく男性に近い女性もいれば、限りなく女性に近い男性もいます。

主語を大きくして「女性はこうだ」と決めつけるのはよくありません。ただ、この「共感してほしい」説に対して思っていることがあるのであえて書きます。

実はこの会話のすれ違いって、男性がよくやりがちな「自分の話に持ち込むパターン」が原因なんじゃないかということです。

■自分が知っている話題を挙げても盛り上がらない

例えば、海外からの旅行者と話すことになったとき、自分が知っているその国の話をしてしまいませんか?

「あの歌手のCD持ってるよ」とか「○○料理美味しいよね」とか「友達に○○人夫婦がいるよ」って感じで、自分では相手のことを気遣って話しているつもりなのですが、それって基本的に「自分の話」なので、話題がどこにも広がらないし、面白くないんです。相手も「そうだね」としか答えられません。

でも、会話が上手な海外の人と話すと、例えば、「日本語って、チャイニーズ・キャラクター(漢字)使ってるよね。他にも何か文字があるの?」って感じの質問をしてくるんですね。

そしたらこちらとしては、「ひらがなとカタカナっていう、二種類の文字がありますよ。それを交ぜて使ってます」って答えると、「それ、すごく難しいんじゃない。どうして1つだけの文字にしないの?」ってなって、会話が発展していきます(もちろん会話が苦手な海外の方もすごく多いです)。

■会話を自分の土俵に持ち込みがちな男性

あるいは、僕が「バーを経営しているんです」って言ったとしますよね。

そしたら、自分の話をしてしまう人は、「『レモン・ハート』っていうバーのマンガ、よく読んでたなあ」とか、「昔銀座のバーって、行ってみたら、2杯しか飲んでないのに8000円で……」って感じで、自分が持っているバーに関する話をするんです。

バーカウンターの後ろで働いている間にデジタルタブレットを使用して若い男のショット
写真=iStock.com/PeopleImages
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

それだと「ああ、そのマンガ、面白いですよね」とか「銀座ってそういうものなんですよね」って、僕が話を合わせて、そこで会話が止まってしまいます。

ところが会話が上手な人だと、「すいません、バーってめったに行ったことないんですけど、どういう層の方が利用するんですか?」って感じで、僕に向かって質問してくるんですね。

それなら「マスコミ関係者とか、今、業績が良い業界の人とか、あとはカップルとか、口説きたい人ですかね」って答えたりできるし、「やっぱりバーってカップルの需要が多いんですか。口説けるものなんですか?」みたいな感じで、いろんな方向に話を展開できます。

で、本当に申し訳ないのですが、自分の話をする人はやっぱり男性に多いのです。意図しているわけではなく、「会話を自分の土俵に持ち込む」っていうパターンにしてしまいがちです。

■共感は「どちらが上か下か」と真逆

例えば、複数人で「映画の話をしましょう」というテーマがあったら、やっぱり多くの男性は、「自分が詳しいジャンルの映画の話」に持ち込もうとします。

そして、その場の話題が、例えば「自分がよく知らないSF映画の話題」で盛り上がっていると、つまらなそうにしたり、話題を変えようとしたりします。

想像ですが、男性は多くの場合に会話で「感心されたい」「すごく詳しいんだなあと思われたい」っていう気持ちが働くのではって思うんです。もちろん人によりますが、男性はどうしても「どちらが上か下か」というのを気にするんですよね。

「共感」はむしろ逆です。よくよく考えれば会話に共感をするって、相手の土俵に乗るということで、普通のことですよね。少なくとも「どちらが上か下か」よりもよっぽど健全です。

でもそれを理解できない男性が、「女性の会話は共感を求めているだけ」と揶揄しているだけなのではないでしょうか。

ともかく、「この人とは会話が合う」と思われるには、「会話を自分の土俵に持ち込まない」というのを常に心がけることが大切です。「相手の土俵で話そう」と考えるのが大切なようです。

■なぜ、日本人は相手の「年齢」「所属組織」を知りたがるのか

以前、ヨーロッパ滞在が長かった日本人男性が、会話の中である人物のことを話し始めたときのこと。

話題上、僕が人間関係を把握したくて、「その人って何歳ですか?」って聞いたところ、「いや、わからないです。僕、人に年齢を聞く習慣がないもので」って答えられて、「あ、そうか。年齢を知りたいって日本人特有の発想なんだな」と反省しました。

僕たち日本人はほんと「年齢」を知りたがりますよね。テレビや新聞を見ていても、名前の後に(34)みたいに必ず年齢が書いてあります。韓国でもそういうことがあると聞くので、やっぱり年齢が上の人間を敬わなくてはいけないという儒教と関係あるのでしょうか。

ブラジル人って必ず「はじめまして」のときに、相手の「家族構成」を質問するんです。結婚しているのか、独身なのか、子供はいるのか、両親は健在なのかって一通り質問するんです。あれ、結構面食らうんです。

例えば、ブラジル人とよく会話をしていた当時、僕が「恋人はいて、その彼女は娘がいて」って言うと、「彼女とは結婚しないの?」ってすぐに聞くんです。でも、ブラジル人は「家族が全て」だから、それを質問するのって当然だと思ってるんです。

こういう「その人のプライベートな情報の何が知りたいか」って国や時代や文化によって違いますよね。それで、やっぱり日本人は「どの組織に所属しているのか」っていうことに、すごく興味があるんだと思います。

何かで読んだのですが、アメリカ人は仕事を質問されたら「職種」を答えるんですよね。会話の中で「トヨタで働いています」って日本人が言うと、アメリカ人は「トヨタの工場のラインで働いている」と思うそうです。

だから、アマゾンで働いているとか、東急で働いているとかって言わずに、「デザイナーをやっている」とか「広報をしている」とかって職種を言う必要があるそうです。まあ僕たち日本人は、「どこに属しているか」という会社名をどうしても重視してしまうんでしょうね。

■NHK勤務で大河ドラマの仕事をしている人は一握り

でも実際、バーでお客様を見ていて、「会社名」が出ると、話題がつまらなくなるときがよくあるんです。

例えば、よくある会話で、「お仕事何をされてるんですか?」「テレビ関係です」「どのテレビ局ですか?」「NHKです」となってしまうと、ほとんどの方が、紅白歌合戦とか大河ドラマとかの話題をそのNHKの方にしてしまうんですね。

もちろんNHKの方も慣れているとは思うのですが、まあほとんどの人が紅白や大河とは関係ない仕事をしていますよね。そういう人はこの話題に全く興味がなかったりしますよね。でも、しばらく紅白の話をしなきゃいけないというパターンがあるんです。

こういうことってよくあるんです。Googleで働いているって言ったら、検索機能の話題をふられると思うのですが、日本でGoogleに勤めている人のほとんどが「検索機能」とは関係ない仕事をしていますよね。

でも、「検索で上にいくには」って会話を毎回ふられて、「それはですね」みたいな話をしているはずなんです。

そういうことが嫌なのかどうなのか、「自分が勤めている会社名を言いたくない」っていう人が結構いるようなんですね。

まあメーカー勤務の人ならしばらくの間、自分の仕事とは関係ない「みんなが知っている商品やCMの話」をしなければいけないのが退屈なのかもしれません。

■世の中に浸透してほしい会話のルール

そういうことを避けるという意味では、「トヨタで働いています」よりも「自動車メーカーで人事をやっています」って答えたほうが、話はズレないですよね。

「人事の大変なところってどういうところですか?」とか、「特別な技術を持った人を作らずに、営業も商品開発も全部やれる人間を作ろうとする日本の会社の習慣ってまだあるんですか?」とかいろいろ話題は深くなります。

なんでも「アメリカのほうがいい」というのはあまり好きではありませんが、やっぱり所属している会社名を言うよりも、自分がやっている職業を言うほうが、話題もトンチンカンなことにならないし、お互い深い話ができますね。

林伸次『結局、人の悩みは人間関係』(産業編集センター)
林伸次『結局、人の悩みは人間関係』(産業編集センター)

今、世の中がどんどん変化している時代です。日本のメディアの名前の後ろにカッコで年齢が入っているあれも、そろそろなくなるかもしれません。

ブラジル人が家族構成を質問するのも、もしかしたら今は変わっているかもしれません。日本だと「結婚しているの?」とか「恋人いるの?」とかは公共の場では聞かなくなりましたよね。

妻の友達で、そういうプライベートなことは一切質問しない女性がいるそうなんです。でも彼女、妻が「娘がいる」って言ったら、そこで初めて娘について話すし、妻が「両親が」って言ったら、そこで初めて「両親」の話をし始めるそうなんです。

たぶん、彼女の中で、「プライベートな話題は相手が話したがっているのがわかったら、その話題に踏み込む」って決めているのでしょう。

これ、ルール化したいですよね。会社名、未婚・既婚、恋愛、年齢、相手みたいな話題は、相手がしたそうだったらし始めるっていうルールが一番ですよね。

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林 伸次(はやし・しんじ)
「bar bossa」店主
1969年生まれ。徳島県出身。渋谷のワインバー「bar bossa(バールボッサ)」店主。レコファン(中古レコード店)で2年、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)で2年、フェアグランド(ショット・バー)で2年勤務を経た後、1997年渋谷に「bar bossa」をオープンする。2001年ネット上でBOSSA RECORDSをオープン。選曲CD、CDライナー執筆多数。著書に『大人の条件 さまよえるオトナたちへ』(産業編集センター)、『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』(幻冬舎)、『バーのマスターはなぜネクタイをしているのか?』(DU BOOKS)、等がある。

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(「bar bossa」店主 林 伸次)

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