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コーヒー豆の種類は知りたくない…上品なおじいさんが思わずフリーズした"チェーン店の最悪な接客"

プレジデントオンライン / 2023年3月1日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yrabota

気持ち良い接客は何がどう違うか。渋谷で25年続くバーのマスター・林伸次さんは「チェーン店の接客もマニュアル通りでは、相手に寄り添ったものにはならない。自分に与えられている仕事の意味、自分の役割に対して、ベストを尽くすべきだ」という――。

※本稿は、林伸次『結局、人の悩みは人間関係』(産業編集センター)の一部を再編集したものです。

■大手コーヒーチェーンの接客に違和感

先日、ある大手チェーンのカフェで並んでいたところ、前に並んでいたすごく上品なおじいさんがカウンターで、「コーヒー、1つもらえますか?」と注文していました。

担当した店員は、「コーヒーは本日のコーヒーが◯◯の豆です。エスプレッソならアメリカーノとラテと△△がございますが~」みたいなことを言って対応したんですね。

おじいさんはその場で固まってしまったんですが、しばらく悩んでやっと注文したんです。

そこにさらに店員が「サイズはショートとトールとグランデがございますが」って言うと、またそのおじいさんは固まってしまって、しばらく悩んでいると、そこに店長の名札を付けた男性が登場しました。

僕は、店長ならわかりやすく説明できるだろうなと思っていたら、店長はメニューを指差して、「サイズはショートとトールとグランデがあるんです。どれがいいですか?」って大きい声で言うだけだったんです。

おじいさんが困っていたことって、そういうことではないと思ったんですが、気圧された感じでメニューを指差して注文が決まっていたようでした。

うーん……、こういうシーンって時々目撃しますよね。

おじいさんが「コーヒー、1つもらえますか?」と言ったということは、おそらくエスプレッソとかスペシャリティコーヒーとかをよく知らない人で、オーソドックスなホットコーヒーを飲みたいんだろうなって、察しがつくと思うんです。

チェーン店だからマニュアルがあるのかもしれません。チェーンとはいってもお店としてのこだわりもあると思います。

でも、人が人の接客をしているのだから、その場その場で臨機応変に対応してほしいなあと思ってしまいました。大きさなら、本物のカップを見せればおじいさんでもすぐ理解できたと思うんです。

■外国人のコンビニ店員の臨機応変な対応

最近、お店の近くのコンビニの店員が、ほとんど外国人になっていることに気がつきました。どこの国の人なのかはわからないけど、みんなすごく感じがいいんです。

僕が毎日のように顔を出していたら、ホットコーヒーを注文しただけで「小さいのね」って言ってくれるようになったし、箸とか袋はいらないのも覚えてくれて僕には何も聞かずに会計してくれます。

コンビニなんてガチガチにマニュアルが決まっていると思うんですが、臨機応変に対応してくれるんです。

バーコードスキャナーを使用してレジカウンターでのチェックアウト時に顧客から品目をスキャンするアジアの中国の女性小売販売員レジ係
写真=iStock.com/Edwin Tan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Edwin Tan

僕、19歳の頃にコンビニで深夜のバイトをしたことがありました。そこには古株バイトの大学生がいたんですが、すごくやる気がない人だったんです。

深夜のお客さんが少ないお店だったからというのもあるのですが、いつも裏でマンガを読んでいて、お客さんに呼ばれたらレジに出ていくという感じの人でした。

僕だってそんなに真面目ではないのですが、「この作業は先にやっておいたほうが後が楽だな」くらいは考えるんですね。

そしたらその大学生が、「林くん、こんなコンビニ仕事を真面目にやることないよ」って言うんです。正直、そのときはすごく嫌な気持ちになりました。

今になって考えれば、それも1つの考え方かもしれません。

その頃はみんなすごく安い時給で働いていたし、コンビニのアルバイトで得たスキルはその後の人生で活かすのが難しいと思ってしまって、本気で取り組めなかったのかもしれません。

だけどやっぱり、僕はどんな仕事も、どんな職場も、社会の中で必要な1つの役割だと思いたいんですね。

■せっかく自分が関わるならより良い場所にしたい

最近は「仕事が全てじゃない」とか、「余暇のために仕事をしている」とか、「仕事以外の場所で自分を表現している」という考え方の人も増えていると思います。

それはそれで、僕は賛成です。ただ、「ここは入りたい会社じゃなかった」と言いながら適当に仕事をしたり、「こんな仕事、そんなに本気でやることじゃない」と言いながら手を抜いたりするのはちょっと違うと思っています。

やっぱり僕だったら、やる気のない大学生よりも、気持ちよく臨機応変に対応してくれる外国人店員に接客してほしいし、僕が店員だとしてもそうしたいと思うからです。

せっかく自分が関わっている場所なんだから、できるだけいい状態になればと試行錯誤したほうがいいんじゃないかと思うんです。

お客様や取引先ともいい関係を保って、お互いが得したり、「いい時間だった」って思えたりするように、みんなが意識してベストを尽くしたほうが、みんなが幸せになるんじゃないかと思うんです。

■「お金も時間も必要」なのにバーに来て仕事の話

先日、noteのハッシュタグ企画「わたしが応援する会社」の審査員とお手本記事に携わりました。その担当者が、note社の平野太一さんという人だったんですね。

僕、最初、お手本記事で「好きな会社はマイクロソフト」っていう原稿を書いたんです。

林伸次『結局、人の悩みは人間関係』(産業編集センター)
林伸次『結局、人の悩みは人間関係』(産業編集センター)

ちょうど、ビル・ゲイツのドキュメンタリー番組を見たばかりで、ついついその感想文みたいなのを書いてしまったんです。

今思うとすごく薄っぺらい内容でした。平野さんとしては僕に「ダメ出しして書き直しをさせなきゃ」ですよね。

僕は彼からするとすごく年上だし、彼が入社する前からnote社での仕事をしているし、すごく言いにくかったと思うんです。

そしたら、平野さん、突然bar bossaに飲みにきてくれて、しばらく世間話をした後で、すごく言いにくそうに、「あの原稿ですが」って切り出してくれました。

別にメールですむ仕事だし、わざわざ就業後のプライベートな時間を割いて、さらにバーでの飲み代まで払って、言いにくいことを本人に言いにいくの、平野さんとしては「面倒くさい」し「大変」だし「お金も時間も必要」だったと思うんです。

■仕事ができる人はベストを尽くす

でも、「これは、林の顔を見ながら言ったほうがいい」と判断してくれたんじゃないかと思いました。

自分の仕事に責任を持って、自分の担当している企画や原稿に、できる限りベストを尽くそうと考えたのだと想像します。それができるのってすごく優秀な人ですよね。

カフェで遅くまで働く2人のビジネスマンとビジネスウーマン。彼らはラップトップコンピュータを使用し、話しています。
写真=iStock.com/AzmanL
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AzmanL

自分に与えられている仕事の意味、自分の役割、それに対して、できる限りのベストを尽くそう、みんなが「得」したり「良い関係」になれたりする仕事をしようって思いながら働ける人、僕はすごく好きです。

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林 伸次(はやし・しんじ)
「bar bossa」店主
1969年生まれ。徳島県出身。渋谷のワインバー「bar bossa(バールボッサ)」店主。レコファン(中古レコード店)で2年、バッカーナ&サバス東京(ブラジリアン・レストラン)で2年、フェアグランド(ショット・バー)で2年勤務を経た後、1997年渋谷に「bar bossa」をオープンする。2001年ネット上でBOSSA RECORDSをオープン。選曲CD、CDライナー執筆多数。著書に『大人の条件 さまよえるオトナたちへ』(産業編集センター)、『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』(幻冬舎)、『バーのマスターはなぜネクタイをしているのか?』(DU BOOKS)、等がある。

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(「bar bossa」店主 林 伸次)

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