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「マンションを買えば貴族になれる」はウソだった…「借金は資産」という謎理論を信じた韓国社会の末路

プレジデントオンライン / 2023年3月3日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Iseo Yang

韓国で民間の債務問題が深刻化している。韓国生まれの作家シンシアリーさんは「韓国では『借金は資産である』という考えが浸透しており、無理なローンを組んでまでマンションを購入する人が多い。当然、借金額は膨れ上がり、年収の大部分を借金返済に回さなければいけない世帯が増えている」という――。

※本稿は、シンシアリー『韓国の借金経済』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

■借金で支えられてきた“勘違い経済”が限界に

韓国で、各種「債務」問題が、国家そのもののリスクとして警告されています。いえ、詳しくは、「10年以上前から警告されてきたけど、特に強く警告されるようになった」という、笑えない状態です。

結論から先に書きましょうか。韓国の、「借金は資産である」とする勘違い経済が、限界を迎えつつあります。政府債務はまださほど問題になるレベルではありませんが、民間、すなわち経済3大主体である政府・法人・個人のうち、政府以外の「家計(個人)」と「企業(法人)」の借金で支えられてきた経済構造が、悲鳴を上げています。

国家の財政が破綻するという意味ではありません。本書は、○月○日に韓国はモラトリウムを宣言するであろう、懺悔せよ、そんな予言書ではありません。サムスン電子など世界的な企業がすぐに潰れるという意味でもないし、数億円の金融資産を持っている人たちがいますぐホームレスになるという意味でもありません。

■「マンションを買えば貴族に」を信じた若者たち

ただ、ここで述べたいのは、借金経済はもう限界に来ていること、そして、これからそれが表向きに回復するように見えても、あまりにも多くの副作用を深く、そして長く残すことになるだろう、という趣旨です。

「深く」と思うのは、青年層、20代、30代の人たちが、いまから崩れていくであろう借金経済の「悪い意味での主役」になってしまったからです。一部の青年たちは「マンションを買えば貴族になれる」という儚い夢に捉えられ、数十年かけても返せるかどうかわからない借金を背負いました。おまけにマンション価格は絶賛下落中です。

それすらかなわない青年たちは、単に住むところ、家を借りることすらできなくなりました。そのためのお金もローンを組んで銀行から借りなければならない、妙な借金システムのためです。

20代の借金は1年間で40%以上増加し、自殺率は大幅に跳ね上がり、合計出生率は0.7人台に入りました。韓国の20代の40%は生活を親に依存しています。2021年基準で15歳~29歳の約21%はニート(職業無し、求職もせず)です。

■年収の40%が飛んでいくだけでも大変だが…

全般的に見て、韓国の人たちは年収のどれぐらいを返済に使っているのでしょうか。それは、DSR(Debt Service Ratio)、「総負債元利金償還率」についてのデータから垣間見ることができます。

この場合のDSRとは、1年間返済しなければならない元金と利子が、年収において占める割合のことです。年収1億ウォン(※)の人が、元利金の返済に1年間5000万ウォンを使うなら、DSRは50%になります。税金などを考えると、給料の半分以上が元利金の返済で「飛んでいく」という意味ですから、普通は40%超えるだけでも生活にかなり響くことになります。

(※)編集部注:1ウォン=約0.1円

2022年11月9日、韓国で金融機関の監査や金融消費者保護などを担当する「金融監督院」が、ユン・チャンヒョン「国民の力」(韓国の与党)議員室に提出した資料によると、「平均金利が7%になった場合」、このDSRが70%を超える人が、190万人になります。韓国の経済活動人口は約2800万人、総家口(世帯)数は約2100万世帯です。

■ローン金利が5.5%→7%に上がる予測

韓国の家計ローンの平均金利は、2022年末時点で、集計が可能なところだけですが(一部の貸付業者、違法金融業者の分は含まれません)、約5.5%とされています。当時、住宅担保ローンの最大金利が、一部で、最大で、すなわちローンの金利が高く設定される場合に7%を超えるところが多くなっていたので(2022年12月15日に一部銀行の住宅担保ローン金利は最大で7.7%まで上がり、年末には8%台の予想もいろいろ出てくるようになりました)、複数のメディアが「このまま金利引き上げが続くと、2023年に平均金利も7%になるのではないか」との予測を出していました。

そこで、金融監督院の資料をもとに、「もし、家計債務の平均金利が7%になったら、どうなるのか」を調べてみましたが、その結果、「年収から、債務を返済する分と、税金など必須的に使う分を除けば、最低限の生活費も残らない」人が、190万人になることが分かりました。

■354万世帯が年収の98%を借金返済に充てている

統計データは違いますが、もう少し分かりやすくまとめてある記事(「ハンギョレ新聞」/2022年5月9日)もあります。韓国金融研究院という機関が、韓国の赤字世帯354万世帯について調べた結果についての記事です。ここでいう「赤字世帯」というのは、実際の生活で赤字になるという意味ではなく、「本当に必要な消費だけをしても、所得が足りない」という意味になります。

総世帯数が2050万世帯ですから、数で見ても結構多いですが、さらに気になるのは、彼ら354万世帯の平均年間所得が、4600万ウォンであることです。繰り返しになりますが、これは生活において使わなければならないもの、たとえば税金とか、最低限の生活費とか、そして借金の返済を考えての「赤字」ですので、年4600万ウォンだと、赤字生活は十分回避できるはずなのに、どうしてなのか。

それは、家計債務の返済に苦しんでいるからです。彼ら354万世帯の年間平均元利金返済額は4500万ウォン。先の平均4600万ウォンで考えると、年間所得の98%が借金の返済で飛んでいくわけです。記事は、「借金が、赤字の最大の原因になっている」「金融負債の規模が所得に比べ大きすぎることが、家計の赤字に影響を及ぼしている」と述べています。実際、金融負債が所得の5倍を超える世帯も68万世帯確認された、とも。

韓国通貨と家
写真=iStock.com/baona
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/baona

■米国の「サブプライムローン事態」前夜

まだ私が韓国で歯科医師だった頃、米国で「サブプライムローン事態」が問題視されるようになって、それでもまだ目に見えるほどの被害が起きる前の頃だと記憶しています。米国の「一般人」たちが住宅関連で大騒ぎだという趣旨のテレビ番組で、米国のある人が、30代ぐらいに見えましたが、自宅の壁を自分で増築しながら、こんな趣旨を話しました。

「こちらの壁を○ぐらい増築すると、ぼくの家の評価価格は○ドル上がるんだ。あと、あそこの車庫を○だけ増築すると、○ドル上がるんだよ」

その人は、満面の笑みを浮かべていました。家の○○を○○にすれば、○ぐらい価格が上がる、まるで「規格化された通貨システム」もどきのようになった、そんな感じでした。

家の構造などで価格上昇の原因になる何かの要素があるという側面まで否定するつもりはありませんが、さすがにこれはどうかな、と。言い方は悪いけど、素人さ丸出しの人がいじりまくった家を、高い価格で買いたいとは思えませんでした。本当は何の知識も腕もない人たちが、適当な情報に踊らされているだけではないのか、そんな気もしました。

■ケネディ大統領の父親が投資に成功したワケ

1920年代、ジョセフ・P・ケネディさんは、ウォール・ストリートで投資に成功、相応の富と名誉を手に入れました。のちに政界に進出し、息子のジョンさんがアメリカの大統領になります。そのケネディさんがある日、ウォール・ストリートで、靴磨きの少年に靴を磨いてもらっていたときのことです。

どうみても株や金融と関係なさそうなその靴磨き少年が、「ウォール・ストリート・ジャーナル」を愛読していて、ケネディ氏に「○社の株は絶対買ったほうがいいよ」と勧めました。さすがにケネディ氏がどんな人かは知らなかったでしょうけど、少年のこのような話に、ケネディ氏は直感しました。「ああ、株の大暴落が近い」と。そして、持っていた株を処分し、それから起きた経済大恐慌による被害を最小化できました。私が見た番組の人も、ケネディ氏に株を勧めた靴磨き少年と似たような境遇だったかもしれません。

その番組の数年後、サブプライムローン事態が起き、多くの人たちの人生が、次々と台無しにされていきました。あのとき家の壁を増築していた人も、この靴磨き少年のような人たちではなかっただろうか、と私は思っています。

■借金地獄に苦しんでいる「サントゥ組」

そして、何か「事態」が起きたとき、真っ先に被害を受け、崩壊していくのが、彼らです。韓国では、彼らのことを「サントゥ(ちょんまげのようなもの)を掴んでしまった」とも言います。何かの価値が上がると話題になって、その市場にあとから入ってきて、その価値が頂点に達したときに買ってしまう人たち。先にその市場に入ってきた人たちが、価格が下がる前に「処分」する条件を盛り上げる人たち。バブルが弾けると、真っ先に倒れるのは彼らです。

シンシアリー『韓国の借金経済』(扶桑社)
シンシアリー『韓国の借金経済』(扶桑社)

このDSRで苦しんでいる人たちも、全員ではないにせよ、そんな「サントゥ組」が大勢含まれていることでしょう。これでも、まだデータが記事に載ったのが11月である点を考えると、2022年10月12日の0.5%ポイント引き上げと、11月24日の0.25%ポイント分の引き上げは反映されていません。これから数年の間、このDSRの動きを見れば、サブプライムローン事態へ直行するのか、奇跡的に回避できるのか、大まかには予想できるでしょう。

ちなみに、いまは直行コースです。サブプライムローンのとき、アメリカの可処分所得対比家計債務が130%台でした。韓国の家計債務の場合、すでに2008年に138%を超え、2020年時点で200%を超えました。

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シンシアリー(しんしありー)
著作家
1970年代、韓国生まれ、韓国育ち。歯科医院を休業し、2017年春より日本へ移住。アメリカの行政学者アレイン・アイルランドが1926年に発表した「The New Korea」に書かれた、韓国が声高に叫ぶ「人類史上最悪の植民地支配」とはおよそかけ離れた日韓併合の真実を世に知らしめるために始めた、韓国の反日思想への皮肉を綴った日記「シンシアリーのブログ」は1日10万PVを超え、日本人に愛読されている。著書に『韓国人による恥韓論』、『なぜ日本の「ご飯」は美味しいのか』、『人を楽にしてくれる国・日本』(以上、扶桑社新書)、『朴槿恵と亡国の民』、『今、韓国で起こっていること』(以上、扶桑社)など。

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(著作家 シンシアリー)

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