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「本当の自分」を探す必要なんてない…どんな業界にも一発で採用される「完璧な志望動機」の書き方

プレジデントオンライン / 2023年3月3日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Wirestock

採用面接で志望動機を聞かれたとき、どう答えればいいのか。「退職学」の研究家の佐野創太さんは「志望動機には書き方の方程式がある。それに沿って書けば、『私の本当の思い』などに思い悩む必要はない」という――。

※本稿は、佐野創太『ゼロストレス転職 99%がやらない「内定の近道」』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

■志望動機で他の求職者と差をつける

志望動機には方程式があること、企業が採用を行う目的である「会社に利益をもたらす社員を増やす」という原理原則に基づいて志望動機を作ること。

このルールに沿ってさえいれば、「私の本当の思いは何だろう」とグルグル回るストレスなく、志望動機を作ることができます。

一方で、「なんだか味気ない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。その直感は正しいです。

志望する企業や事業部が好きで転職しようと考える人ほど、そう思うでしょう。

出版やスポーツ、エンタメといったファン時代が長く、憧れを持って転職する人が多い人気産業への転職に多い傾向であり、必要な要素があります。それが「この仕事に就きたい」という純度の高い気持ちです。「好きを仕事にしたい人向け」の志望動機の作り方をご紹介します。

なお、この志望動機の作り方は、人気産業に限らず他の求職者と差をつけるためにも有効です。

■差がつく志望動機を作る5つのステップ

企業は「数ある企業の中で、なぜ弊社に応募するのか」を知りたがっています。

「たまたま知ったからです」が本音である多くの求職者は、他企業との違いがボンヤリしています。答えられれば大きな差になります(ちなみに、転職エージェント経由の面接で「紹介されたから」と、正直過ぎる回答で早々と落選する求職者もいます。そして転職エージェントには企業からクレームが届きます)。

この志望動機は、理詰めで作り上げたものとは違う角度から、あなたの志望動機に「私にしか紡(つむ)げない言葉で作られた自信」をもたらしてくれます。

さて、「鋼の志望動機」の作成は5ステップあります。

【前編】
・ステップ1:「肯定的な影響」を分析する
・ステップ2:「ファン」か「提供者」か、自問自答

【後編】
・ステップ3:「ファン」から「提供者」へ意識が変わった瞬間を振り返る
・ステップ4:2つの価値分析
・ステップ5:未来の行動分析

■「好き」を客観的な事実として伝える

具体的に見ていきましょう。

幼少期に漫画やスポーツ、音楽などに強い影響を受けて「この世界の仕事ができたら」と思った経験がある人もいらっしゃるでしょう。作品や文化に、どれだけ肯定的な影響を受けたでしょうか? 自分がどう変わったのか、その「before → after」があなたの「好き」を、客観的な事実として伝える手段になります。

ステージライト付きのライブショーでギターを弾くインディーロックギタリスト
写真=iStock.com/piola666
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/piola666

私が担当した相談者さんの例をご紹介します。

この相談者さんは、もともと引きこもりでした。しかし、あるミュージシャンのファンになってから、ファン同士で交流するようになり、人と会話する楽しさを知ったと言います。この経験をきっかけに、音楽業界を志望しました。

このように、ある対象から価値を得る「前と後の変化」を話せるようになると、自分がどれだけ熱い思いを持っているかが、客観的な事実として伝えられるのです。

「大好き」「この作品がないと生きていけません」という抽象度の高い言葉を使って伝えようとするよりも、あなたの本気が伝わりやすいでしょう。

■ファンを卒業して提供者の意識に切り替える

さらにあなただけの体験に根ざしているので、誰も否定できません。

借り物の志望動機が、替えの効かないあなたの言葉の志望動機へと変わります。

今、憧れの産業で働いている人たちも、かつては純粋なファンでした。

今や消費する楽しさを享受する立場から、楽しさを提供する立場になり、その業界の裏も表も知り尽くしています。裏側を見すぎて、去っていく仲間を見送った人も多々いることでしょう。

そうした事情から、採用企業はこう考えています。「ファン意識のままでいる人は、本人のためにも早めに落としておこう。つまり、「ファンのままでいてください」ということです。

裏を返せば、「ファンを卒業して、提供者の意識に切り替えられた人と働きたい」という本音が見えてきます。もちろん、ファン意識を持ち続けることは提供者になってからも大切です。「顧客の気持ちがわかる」は大きな武器になりますから。

■覚悟が伝わる志望動機を作る3つの問い

しかし、ファン意識しかない、ファン意識のほうが大きい場合、「採用しにくい人物」とみなされるのです。ファンが見る理想と提供者が知る現実の間にある崖に落ちやすいからです。

そこで、以前紹介した「提供者目線」が必要になるのです。

たとえば、私はロックバンドのGLAYの音源に関しては何も思いつきません。純粋なファンなので、アイデアや改善すべき施策を思いつかないのです。このままだとGLAYの事務所に転職できる確率は限りなくゼロに近いので、永遠のファンでいたほうが幸せという結論に至りました。

アイデアや施策を思いつく方は、続く提供者として働く覚悟が伝わる後編の3ステップをご覧ください。

・ファンから提供者に意識が切り替わった瞬間はいつか
・提供者になってどんな価値を発揮したいのか
・入社後にどんな改善策と行動を予定しているのか

この3つの問いに答えると、誰にも否定できない力強い志望動機ができあがります

3本の指、白い背景を持つスーツを着た男
写真=iStock.com/35mmf2
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/35mmf2

■ファンから提供者に切り替わった瞬間

ファンから提供者に、意識が切り替わった瞬間はいつか。実は、面接でもよく聞かれる質問です。「なんで仕事にしようと思ったのですか?」という形で聞かれることもあります。中には、「ファンのままでいたほうが幸せですよ」と牽制されることも。

あなたには、「これは最高にいいな」と感じたファンや消費者だったマインドから、「ここを改善すればもっと広まるんじゃないか」と提供者に気持ちが切り替わった瞬間があるはずです。それはいつでしょうか?

ファンでいれば対象に惚れ込み続ける幸せを享受できたはずです。その甘い時間を手放してまで「仕事にしたい」と思った瞬間はどんなシーンだったのでしょう? この問いに答えていくことは、そのまま面接対策にもなります。あなたが「ファンから提供者に切り替わった瞬間」はいつですか?

どんな価値を提供したいのか。問いだけを見ると難しく見えます。しかし、スラスラ書けるようになる切り口が二つあります。

■「プロダクトアウト」と「マーケットイン」の切り口

一つは、ステップ1で明らかにした「自分がもらった価値」を切り口に考えます。「過去の自分のような境遇の人に届けたい(助けたい)」という自分の価値を中心に考えるパターンです。

たとえば、音楽によって「自分の感情に素直になる喜びを知った」という価値を受けたとしたら、過去のあなたと同じように「自分の本音がわからなくなりがち」な人の気持ちを反映させた商品やサービスに携わる資格があると言えるでしょう。

二つ目は、社会課題を解決する切り口です。

たとえば、高齢者世帯が増え、元気な方も多い現在、高齢者も楽しめるエンタメが求められているとします。そういった社会の大きな流れの中で、課題を解決する価値を提供したいといったパターンです。

前者は、自身の経験に根づいた感性豊かなプロダクトアウト(作り手が作りたいものを売る)の方法である一方、後者は社会や市場の流れを見たマーケットイン(市場が必要とするものを提供する)の方法です。

■社会が求めている価値に気づく糸口

もちろん、2つの経験をミックスすることも可能です。

たとえば、配偶者が亡くなって以来、塞ぎ込みがちだった自分の祖父・祖母が、音楽によって心を開くようになった。高齢者の孤独は、社会問題になっている。こうした課題を解決するために、音楽を活用するビジネスに自分の経験を役立てたいといったことも、「鋼の志望動機」にできます。

あなたも仕事を通じて、「こういう人が増えている」「顧客企業からこんな要望をもらうことが増えた」と感じた経験があるのではないでしょうか?

その感覚は、「社会が求めている価値」に気づく糸口です。ぜひ、そのヒントを見逃さずにいてください。社会の流れやビジネスチャンスを反映させた志望動機をつくれます。あなたが情報感度の高い人だと企業に伝わるでしょう。

ステップ5では、入社後にどんな改善策と行動を予定しているのかを、具体的に伝えます。ファンと提供者の意識は180度違います。ファンであればただ商品やサービスを享受すればOKですが、提供者は「企業の成長」のために働きます。

■企業はあなたが入社後にどう働くのか知りたい

「確かに今も最高ですけど、120%にできるよう『ここ』を改善したい」と伝えることが、あなたの志望動機にさらなる説得力をもたらします。

「改善策なんてわからない」と感じた人もいるかと思います。改善策は中長期的なものになりますから、無理もありません。イメージできなければ、「入社後の行動予定」を説明すれば十分です。企業はあなたが入社後にどう働くのかを知りたがっています。

ミスマッチは入社して数カ月以内に起きるからです。

最後に、簡単な志望動機フォーマットを記載します。現職の仕事や企業発見・分析にもお忙しいと思うので、ゼロから作る手間を省いてください。

私は○○(商品やサービス名)の価値をさらに広めたいと思い、志望しました。

私自身、○○(商品やサービス名)に勇気づけられ、●●という大きな変化を体験しました。過去の私のような悩みを持つ人はたくさんいます。

既にファンに愛され続けた歴史がある○○(商品やサービス名)ですが、私が考えた●●(改善策)と●●(行動)で、より多くのファンを獲得できると考えています。

とはいえ、まだまだこの業界については初心者です。ご縁をいただけることがあれば、まずは現場に出て●●のリアルを知りたいと考えています。

■現場でみずから知識と技術を吸収する意欲を伝える

最後に「現場」を打ち出した理由をお伝えします。好きが高じて志望者が集まるいわゆる「夢産業」では、「見て盗め」の文化が強く残っているからです。「こうすればできるようになるよ」とノウハウが確立されていないので、現場で自ら知識と技術を吸収する意欲を伝えると印象が良いのです。

佐野創太『ゼロストレス転職 99%がやらない「内定の近道」』(PHP研究所)
佐野創太『ゼロストレス転職 99%がやらない「内定の近道」』(PHP研究所)

実際に、スポーツビジネス界に従事している葦原一正氏は、著書『稼ぐがすべてBリーグこそ最強のビジネスモデルである』(あさ出版)の中で「アルバイトで球団に入るパターン」が「意外とおいしい」と説明しています。

誰も否定できない「鋼の志望動機」を作る過程で、「やっぱり、好きなことを仕事にしたい」という思いを強くすることでしょう。

その気持ちが言葉になった時、書類の段階から企業は「覚悟を持って弊社を志望している」と感じます。期待されて始まる面接ほど、あなたと企業の相性の良さがわかるものではありません。入社後も一目置かれるでしょう。

ぜひ書類の段階からあなたの強い思いを伝えてください。

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佐野 創太(さの・そうた)
企業顧問、「退職学」の研究家
1988年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、2012年パソナグループに入社し、転職エージェントとして従事する。法人向けの研修会社に転職するも1カ月で早期退職し、無職となる。パソナグループに出戻り後、新規事業の責任者として求人サイトを立ち上げる。介護離職を機に2017年に独立。新規事業のマーケティング、コンテンツ、成長企業の人材育成の顧問として活動しつつ、退職学の研究家として20代から50代まで1200人以上のキャリアアップを実現させる。著書に『「会社辞めたい」ループから抜け出そう!転職後も武器になる思考法』(サンマーク出版)、『ゼロストレス転職 99%がやらない「内定の近道」』(PHP研究所)がある。

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(企業顧問、「退職学」の研究家 佐野 創太)

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