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クラブ、ミニクラブ、ニュークラブ、キャバクラの違いを答えられるか…意外と知らない「水商売」の全業態

プレジデントオンライン / 2023年3月3日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Free art director

水商売とは何で、どんな業態があるか。日本水商売協会代表理事の甲賀香織さんは「水商売は接待を伴う飲食店の総称で、性風俗店やギャラ飲みとは異なる。その実態は案外クリーンで、従事する人の多くは、真面目に、一生懸命に仕事に取り組んでいる」という――。

※本稿は、甲賀香織『日本水商売協会 コロナ禍の「夜の街」を支えて』(筑摩書房)の一部を再編集したものです。

■悪気なく別物扱いされてきた「水商売」の歴史

水商売はこれまでも長い間、虐げられてきた歴史を持つ。その事実は、業界の内側にいなければ、わからない。なぜならば、業界の外側にいる方々は、悪気なく水商売を「別物扱い」し続けてきたからである。

業界内の人間は、この「別物扱い」の風潮を、「業界あるある」であり「どうすることもできない仕方のないこと」として受け入れてきた。特に理由もなく理不尽な対応をされたとしても、それは業界内の人間にとっては「よくあること」だったのである。

だからこそ、水商売の経営者たちはそれを気に掛けることも、声を上げることもなく、ある意味では自立して、粛々と経営を続けてきた。

ところが、状況は大きく変化した。新型コロナウイルス感染症が広まったことで、理不尽が理不尽のままでは、死活問題になる環境となったのである。

水商売の業界関係者は、このコロナ禍によって初めて、自分たちの置かれてきた「不公平」な真実と向き合わざるを得なくなった。

本稿では、「別物扱い」され「不公平」な扱いを受けてきた、現在の水商売業界全体を概観していく。

■従事者は100万人、市場は2兆円規模

「水商売」という言葉、あるいはそれが示す業界に、とても良いイメージ、クリーンな印象を持つ方は少ないかもしれない。

しかし、いわゆる「水商売」、ナイトビジネスを展開している経営者や、そこに従事する人の多くは、真面目に、一生懸命に仕事に取り組んでいる。

私自身は、一般企業よりも常に目をつけられているこの業界のほうが、案外クリーンなのではないかと思っている。

接待飲食業界の従事者は、100万人いるといわれている。警察庁によれば2019年末、接待飲食等営業の許可数は6万3466件だった。

一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会の20年1月度のデータでは、コンビニの店舗数は5万5581店なので、コンビニよりも多いことになる。市場規模では2兆4594億円はくだらないという説もある(2018年度、日本フードサービス協会)。

それだけ多くの人間が従事し、多くのお金が動くにもかかわらず、さまざまな問題や課題が手つかずのまま残ってしまっている。しかし、「水商売だから」「夜の街だから」とひとくくりにしてしまっては、その問題・課題を解決に導いていくことも難しい。

その内実を明らかにし、問題を切り分けていくことで、業界のみならず社会全体の長年の課題・問題も解決することにつながるのである。

■接待を伴う飲食店の総称

まず、「水商売」とは何か。

「水商売」を国語辞典で調べると、次のような説明がある。

料理屋・待合・酒場・バーなど、客に遊興させるのを目的とし、客の人気によって収入が動く、盛衰の激しい商売。水稼業(みずかぎょう)。(小学館『大辞泉』)

別の辞書の解説も見てみよう。

水を扱うあきない。水あきない。

客のひいきによって成り立つ盛衰の激しい商売。主として、待合・貸座敷・料理店・バー・キャバレーなどにいう。水稼業。(小学館『精選版日本国語大辞典』)

辞書の解説からいえば、水商売とは「客商売であり、客の人気・ひいきによって売上や人気が左右される商売」ということになる。そういう意味では、例にも挙がっているとおり、飲食店全般が「水商売」ということになる。

ただし、日本水商売協会の「水商売」の定義は、辞書とは少し違う。

我々は、「水商売」を「接待を伴う飲食店(以降、接待飲食店と呼ぶ)」の総称として使っている。正確には「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」中の、風俗営業接待飲食等営業1号営業に該当する店舗を示している。

『日本水商売協会 コロナ禍の「夜の街」を支えて』より
『日本水商売協会 コロナ禍の「夜の街」を支えて』より

先に説明したとおり、「水商売」は本来、飲食店も含むものである。

しかし、大手レストランチェーンや居酒屋などの外食産業は東証一部に上場するといった躍進を遂げ、社会的にもネガティブなイメージはほとんどなくなった。

そして、取り残されたのは接待飲食店である。現代ではこれらが「水商売」の主たる産業として認知されている。

これらの店舗は、風営法に基づき都道府県公安委員会に営業許可を得て活動しているが、時に「公序良俗に反する」とされたり、差別的取扱いを受けたりすることがある。

ただ、特に30代以下の若い方々には、「水商売」という言葉の成り立ちや、かつて差別的な意味合いで使われていたことは知られておらず、「業界を示す用語」として使用されている実態がある。

■クラブ、ミニクラブ、ニュークラブ、キャバクラ

具体的に、どのような店舗・運営形態があるのか。業態の説明も合わせて紹介していこう。

なお、ここでは我々日本水商売協会が活動の範囲とする、女性が働く店に限って紹介していく。

また、現状において業態の明確な定義は存在しない。同じ名称であっても内容が違う、といったこともざらである。ここで挙げている定義が絶対的なものとはいえないので、「こういう業態があるんだなあ」と思っていただければ幸いである。

まず【クラブ】【ミニクラブ】【ニュークラブ】【キャバクラ】という非常に似た業態がある。

まず【クラブ】は東京・銀座や大阪・北新地などの繁華街の中でも、限定されたエリアに密集して存在している。その他の繁華街にある場合でも、地域全体の店舗数から考えるとごく少数である。

クラブとキャバクラとの大きな違いは料金システムで、クラブでは席に対して料金が発生することが多い。都心のいわゆる「高級クラブ」では、座っただけで4~6万円が「チャージ料」として発生し、飲み物は別途注文、というシステムが一般的だ。

クラブは時間を気にせずくつろいでいただく場所であることを前提としているが、2時間をワンセットとして、それを超えると追加料金がかかるのが通常である。2時間ワンセットとなっている意味は、「2時間以内でお席を空けてくださいね」という店側の意図がある。

これは、お店の都合を配慮してお席を空けていただく紳士の心遣い、またはクラブの「しきたり」に対する暗黙の了解のようなものを示しているものだと思われる。日本における独特の文化、「粋」な飲み方、風習・作法がこの料金体系に表れているともいえるだろう。

【ミニクラブ】は、クラブよりも小規模かつリーズナブルな料金体系の店舗が名乗ることが多い。内装にかける費用や、ホステスの人件費がクラブよりも安価な分、料金がリーズナブルになるのだ。

■ホステスは指名なのに変えることができない

クラブは江戸幕府によって公認されていた遊郭である「吉原遊郭」と、京都祇園の「お座敷」文化の流れとが合わさった形で継承されているという説がある。そのためか、「一見さんお断り」などの一般の飲食店などには見られない決め事がある場合が多い。

現代における「一見さんお断り」には、「支払いはツケである場合が多いので、身元のわからない一見さんだとトラブルの元になる」「店の品格を保つために、店が客を選ぶ」という意味がある。

また、店に従事する女性にも違いがある。クラブやミニクラブに従事する女性は「ホステス」と呼ばれ、以下に説明するキャバクラやラウンジ、ガールズバーの従事者は「キャスト」と呼ばれる。

クラブでは永久指名制という制度が主流で、客は原則「係」(関西地域では、「口座」)と呼ばれる指名ホステスを自分で選ぶことも、変えることもできない。

指名なのに変えることができないというのはおかしな話だ、と思われるかもしれないが、ツケの回収責任を負うと共に、ホステス同士のトラブルなどを回避するためにある制度なのだ。

一方、キャバクラは、その日の気分や、写真などで選んで気に入った女の子を「指名」することができる。

街の中で若い女性
写真=iStock.com/maruco
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maruco

入店と同時に指名することを「本指名」、店内入店後に、特定のキャストを自分の席に固定させることを「場内指名」という。

【キャバクラ】は日本の接待飲食業で現在もっとも従事者の多い業態である。クラブとは違い1時間、または30分単位での課金システムを採用している。

最近は朝や昼の時間帯に営業する「朝キャバ」、「昼キャバ」なども登場している。

ちなみに、札幌・すすきのなど、一部地域では、いわゆる「キャバクラ」のことを「ニュークラブ」と呼ぶ場合もある。

■ガールズバー、ラウンジ、ショーパブ、スナック

最近、店舗数が増加傾向にある【ガールズバー】は、クラブやキャバクラのように客の隣に座って接客を行うのではなく、カウンター越しで接客を行う。

料金体系はキャバクラなどよりもリーズナブルに設定されていることが多い。

隣に座っての接客でないことから、飲食店のくくりに入ると勘違いされやすいが、飲食店ではなく、ほぼ例外なく風俗営業の許可を取得する必要がある。

【コンセプトカフェ】も、ガールズバーの一種で、キャストがその店のコンセプトに即した衣装を身に着けて接客をする。

こちらも「カフェ」というネーミングにはなっているが、ガールズバーと同じく、風俗営業の許可が必要である。

【ラウンジ】はクラブよりもカジュアルで、ガールズバーと異なり、カウンター以外の席が多い店舗を指す。

【ショーパブ】は、店内でショーやステージを行うラウンジのこと。

【スナック】または【パブスナック】は、ママやマスターが個人で経営をする小規模店舗を指すことが多い。

女性による接客よりも、ママ、マスターとの会話や、客同士のコミュニケーション、カラオケなどを目当てにする客が多いのも特徴である。

■性風俗店やギャラ飲みとの違い

ちなみに、日本水商売協会では、接待飲食店と性風俗店は分けて考えている。

衣装がランジェリーだったり、ボディタッチなどがサービスの一環として含まれていたりする(あるいは、暗黙の了解で認められている)、いわゆるセクキャバ・いちゃキャバ・おっぱいパブなどを接待飲食店と定義づける方もいるが、当協会ではこれらの店舗は「脱法的な接待飲食業とはいえるが、事実上の性風俗店であり、我々が呼ぶ「水商売」ではない」としている。

なお、性風俗店は風営法上「性風俗関連特殊営業等」と呼ばれ、水商売が含まれる「風俗営業」とは別に定義されている。

甲賀香織『日本水商売協会 コロナ禍の「夜の街」を支えて』(筑摩書房)
甲賀香織『日本水商売協会 コロナ禍の「夜の街」を支えて』(筑摩書房)

また、運営会社が女性に時給を支払い、飲み会の場に女性を斡旋する「ギャラ飲み」という仕組みもある。

これは無店舗型・フリーの接待飲食業のようなものだが、現状ではこの業態も当協会では「水商売」とは定義していない。ただし、ここで働く女性たちは、協会として支援していきたいと考えている。

さらに補足すると、同じ接待飲食業である「ホストクラブ」のような男性が接客をする業態は、我々の定義としては「水商売」に含まれる。

しかし、現状において日本水商売協会には参加していない。協会設立時の段階では、まずは女性が働く業態で協会運営を確立させるほうが確実であると考えたためだ。

とはいえ、私はかねてより個人的にホストの皆様との親交があり、同じ業界の「仲間」だと思っており、本書にはホストとして働く男性も登場している。

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甲賀 香織(こうが・かおり)
一般社団法人日本水商売協会代表理事
1980年、埼玉県生まれ。青山学院大学文学部卒業後、出版社等を経て株式会社ベンチャー・リンクに入社、カーブスジャパンに出向。人材教育や営業マニュアルの作成、新規店舗の立ち上げ、業績不振店舗の再建に従事する。27歳で銀座の高級クラブ「ル・ジャルダン」に入店。1年でナンバー1となる。引退後は、ホステスの営業メール配信システムの開発・販売を行う。2018年、日本水商売協会を設立。

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(一般社団法人日本水商売協会代表理事 甲賀 香織)

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