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駐在でやって来た日本人は必ず驚く…台湾人が「いくら給料をもらっているのか?」と堂々と聞いてくる理由

プレジデントオンライン / 2023年3月7日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Oleksii Liskonih

台湾と日本にはどんな違いがあるのか。日台ビジネスコンサルタントの御堂裕実子さんは「台湾は日本から距離が近く、人々の外見も似ているが、考え方は大きく異なる。とりわけ自分の給料の額や商売での利益、家の値段などを堂々と聞いてくるので、注意したほうがいい」という――。

※本稿は、御堂裕実子『成長戦略は台湾に学べ』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■子供にも「損をするな」と注意する

以前、隣同士である日本と韓国、台湾の子育てについて書かれている記事を新聞で読んだことがありました。それによると、日本の子どもは親から「他人に迷惑をかけないように」と言われながら育つと言います。一方、韓国では「人に負けるな」と言われるそうです。さらに中国では「他人に騙されるな」と諭されるとのことでした。

この記事の内容に興味をもった私は、台湾のケースを知りたくなり、さっそく複数の台湾人に聞いてみました。すると、彼らから返ってきたのは「損しないように」「後れないように先んじて」という答えだったのです。

それを聞いてすぐに思い出したのは、就学期の子どもを持つ台湾の親たちが、小学校で後れをとらないように先んじて子どもたちを塾や習い事に積極的に通わせている日常の光景でした。

それぞれがお隣同士の国とはいえ、親の教えがこれほどまでにも異なるのですから、わかり合うのが難しいのも納得がいきます。

台湾は日本から距離的にとても近いですし、人々の外見も日本人によく似ているため、ついつい考え方も日本人に近いのではないか? と早とちりしがちなので注意しなくてはなりません。

■給料のことでも堂々と聞いてくる

実際に台湾の人たちと付き合ってみると、日本人とは異なる考え方に触れる機会も多く、「似ている」との思い込みが強ければ強いほど、違いを実感したときの驚き具合は大きなものになります。

では、何がそんなに異なるのでしょうか?

まず初めに日本人が驚くのは、台湾の人たちの多くが自分たちのプライバシーに関してオープンであるという点です。例えばお金についていうと、日本では自分の給料の額や商売での利益、家の値段などはあまり人に話しません。

ところが台湾では事情が違います。給料のこと、商売のこと、家の価格のことなどをざっくばらんに話すだけでなく、相手にも堂々と聞いてくるのです。

聞き手に回るだけなら、ひとまずどうにかなるかもしれません。しかし、答えを求められる側になると、多くの日本人が戸惑います。

事実、駐在で台湾にやって来た日本人がとても驚くのが、給料の額を聞かれることのようです。駐在員の給料は現地採用の社員よりも高い場合が多く、うっかり正直に答えてしまうと、現地の人たちに不公平感を植え付けてしまう恐れがあります。これを避けるために、本社からは「給料の話はしないように」との通達が届くケースがあるくらいです。

■家族血脈のつながりを何よりも信頼

私自身もお金のことを話すのは得意ではなく、相手から聞かれるとついつい言い淀んでしまいます。

台湾人がお金についてオープンなのは、「損をしない」ための防衛策なのかもしれません。損をしないためには、どうしても情報を得る必要があります。その情報を基に他人と自分を比較して、自分が損をしていないかを確認するのです。そうした考えが根底にあるため、「給料はいくらもらっている」「これだけ儲かった」という会話に抵抗がないのかもしれません。

日本の企業文化では、たとえ創業者であっても、自社がある程度の規模の企業に成長すると、「親族だから」という理由だけで身内を雇い入れることを避けようとするものです。

ところが、私が知る複数の台湾企業の場合、創業者の兄弟やいとこはもちろんのこと、それ以外の親戚でも積極的に雇用し、さらには社長の妻が副社長に就任している企業も見かけます。

こうした慣習を支えてきたのは、「家族血脈の繋がりが何よりも信頼できる」という非常に強い意識です。私が知っているケースでは、自分の姪を日本支社の支社長に任命した社長もいます。このように同族同士の結束が強いのが台湾の特徴であり、日本とは大きく異なる点です。

幸せなアジアの家族の家の肖像画。
写真=iStock.com/imtmphoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/imtmphoto

■台湾のオーナー社長は、子供の国際性を重視

台湾のオーナー社長の多くは、子どもがまだ幼いころから後継者になるための教育を授けようとします。その際に親たちがこぞって重要視するのは、子どもたちに国際性を身につけさせることです。例えば、子どもが2人いたら、1人はイギリスに留学させ、もう1人は日本に留学させるというバランスを取りながら、一族のなかに幅広い国際性を取り込もうとします。また、台湾で企業規模を大きくするには外国企業との取引がマストのため、親は早いうちから子どもに外国語を学ばせます。

このように子どもたちを外国に留学させたり、幼少期から外国語を習得させたりするのは、将来的に自分の会社に入社させ、外国でのビジネス展開を考えているからです。直接の会社経営とは別に、有事に備えて日本をはじめとした海外に拠点を確保し、不動産などの資産を分散させてリスクヘッジをする狙いもあります。

家族や親族の関係を会社に持ち込むのは、社長だけではありません。家族ぐるみで会社との関係を築いている一般の社員もたくさんいます。

■家族が同じ部署にいるほうが合理的

それをよく表すかのように、台湾企業の職場では家族が同じ部署で働いていたりすることも珍しくありません。

例えば社内恋愛で結婚した場合、日本では周りが気を遣うからという理由で、夫婦のうちどちらかが別部署に異動になるパターンが一般的です。ところが台湾では、そうした異動は行われず、夫婦は同じ部署で働き続けます。それを気にする同僚たちもいません。仕事さえしっかりとやっていれば特に問題はなく、むしろ同じ部署で働いていたほうがお互いの仕事を理解できるため、合理的だと考えます。家族の誰かが会社を見学しに来たり、挨拶にふらっと立ち寄ったりすることもあり、それを煙たがる風潮はほとんどありません。

幼いころ、母親が台湾の大手保険会社・新光人壽で働いていたという私の友人は、学校が終わると会社に行き、母親の隣のデスクを借りて宿題をやっていたと言います。

郵便局に勤めていた父のところにも、手紙の仕分けの手伝いに行ったことがあるそうです。

■台湾企業では家族参加型イベントが盛ん

台湾では、大企業、中小企業にかかわらず、社員旅行に自分の家族を連れて来ることもよくあります。既婚者は配偶者や子どもを参加させ、独身者の場合は恋人や友人を同行させることが許されるのです。また、社員旅行には社長の家族も参加します。

台湾の企業のなかには「社内運動会」があるところも多いです。社長はもちろんのこと、企業幹部や社員、さらにはその家族も参加するエンターテインメントイベントになっています。かつては日本でも「社内運動会」が行われていましたが、すでにそうしたイベントを見ることはなくなりました。

御堂裕実子『成長戦略は台湾に学べ』(かんき出版)
御堂裕実子『成長戦略は台湾に学べ』(かんき出版)

台湾を代表する大企業の台湾プラスチックグループの運動会では「5キロ走」が名物種目で、創業者の王永慶(2008年死去。現在は実弟の長男の王文淵氏がグループ総帥を務める)は83歳になるまで数百人の幹部と共にこの種目に参加していました。

毎年のようにこの運動会に招かれた元総統の馬英九は、5キロ走に数十回にわたって参加しています。

社員旅行や社内運動会などのイベント開催の背景には、社員同士の親睦のためでなく、家族も共に参加してもらうことで社内での交友関係を知ってもらうと同時に、社員たちに社長や幹部の子どもに接してもらい、将来の後継者に親しみを感じてもらう意図があるのかもしれません。

そもそも台湾の多くの人たちは「社長の会社を子どもたちが継ぐのは当然」と考えています。そのため、社長の子どもが重要なポストに就くことに抵抗を感じません。

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御堂 裕実子(みどう・ゆみこ)
日台ビジネスコンサルタント
1979年東京生まれ。明治学院大学卒業後、日本での広告代理店勤務を経て、台湾国立政治大学へ留学。帰国後2008年に日本企業の台湾進出サポート事務所、合同会社ファブリッジを立ち上げる。2017年には台湾Fabridgeを設立。日本の地方自治体のアウトバウンド支援や、食品会社、不動産企業、教育事業など様々な業界の台湾進出を手がけ、支援企業は200社を超える。

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(日台ビジネスコンサルタント 御堂 裕実子)

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