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店員に「ありがとう」と言えない人は必ず失う…日本人が口にしている「感謝の言葉」の本当の意味

プレジデントオンライン / 2023年3月10日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ivosar

「ありがとう」という言葉にはどんな意味があるのか。福厳寺住職でYouTuberの大愚元勝さんは「語源は『有ることが難い』で、人間が生きていくために欠かせない周囲の人との縁を指している。ブッダが『知恩』という言葉で感謝することの大切さを説いたように、他人に感謝できない人は信頼を失い、不幸になっていく」という――。

※本稿は、大愚元勝『これでは、不幸まっしぐら 今すぐ変えたい30の思考・行動』(佼成出版社)の一部を再編集したものです。

■「してもらってあたりまえ」と思っていないか

「夫が『ありがとう』という言葉を言ってくれないんです」

そんな相談を受けたことがあります。奥さんのやるせない思いが伝わってきました。

たとえば、本を読んでいる夫に対し、奥さんがコーヒーを淹れてそっと差し入れてあげたとする。このちょっとした気遣いに対し、「ありがとう」という言葉が返ってくれば、その場は非常に和やかになるのです。しかし、とくに意識もしていないのか、素直に感謝の言葉を口にすることができないのです。

感謝の気持ちを素直にあらわせないケースは、家族間のような気の置けない関係性、あるいは、上下関係がはっきりしている場合に多いようです。その背景には“してもらってあたりまえ”という思いがあるのだと思われます。

■「店員こそお客に感謝を」は一見、正論だが…

時々議論になる話題があります。それは、「お客は店員にお礼を言うべきか」という問題です。「サービスの対価を払っているのだから、客が店員に『ありがとう』と言う必要はない」「いやいや、お金を払っているからといって、客と店員に立場の上下関係があるわけではない。してもらったことにお礼を言わないのはおかしい」「細かいことは気にしていないけど、自然と『ありがとう』と言ってしまう」など、さまざまな意見があがります。

こちらが何かをしてあげたから、何かを返してもらうのは当然である――このような考え方に立っているうちは、感謝の気持ちは生じなくなるでしょう。お客は対価を払っているから商品を受けとる権利があり、店員は商品を買ってくれたお客に感謝を伝える立場にある。

これは一見すると正論であり、間違ってはいないようにも思えます。もしかしたら、夫が感謝の言葉を伝えてくれないのは、「妻は夫に尽くして当然である」(現代では時代錯誤的な考えですが)と夫が思っているからかもしれません。

ですが、それが正しいかどうかは別として、私はそこには大きな問題があると思っています。

■「ありがとう」と「サンキュー」は意味が違う

そもそも、「ありがとう」という言葉の意味を履き違えている点が原因だと思います。

日本語における「ありがとう」の語源は「有ることが難い」という意味です。そのことが希有であるというのが本来の意義なのですが、おそらく多くの人が、英語のサンキューと同義にとらえています。「感謝する」という動詞の「thank」と、「あなたに」を指す目的語の「you」です。つまり、「あなたに感謝します」という意味での「ありがとう」を意味しています。

日本語における「ありがとう」は実はもっと深い意味をもっていて、これは大袈裟にいえば、私たち人間の存在論に関わる言葉なのです。

「人」という字に「間」と書いて人間です。この言葉に示されるように、私たち人間は、他のものや他人との関係性の「間」を生きています。たとえば、自己紹介をしようと思うとき、「私は、福厳寺住職の大愚です」「○○の息子の大愚です」など、自分以外の何かとの関係性を明示することで初めて、自分という存在を語れます。

■自分の周囲にある縁は「有ることが難い」

誰一人として、自分一人で存在できる人間はいない。もしも両親が出会わなければ、自分の命はこの世に誕生しなかったでしょう。もしも両親の両親が出会わなかったら……とさかのぼっていくと、たった一つの出会いが変わっていただけでも、いまの自分という存在はなかったかもしれないのです。

そんな偶然に偶然が重なって生きている世界において、触れる縁はどれも奇跡的なことであり、まして八十億人近くいる人間のなかから、家族になったり、恋人になったり、あるいは関係性をもつ縁が得られること、それがいかに「有ることが難い」ことであるか、想像できると思います。

関係性のなかを生きている私たちは、自分一人で生きていくことはできません。食べ物として動植物の命をいただき、誰かがつくった道具を利用して調理し、木材を使って職人が造った家で衣食住を満たす。他の人の力を借りなければ、生きていくことはできないのです。

この真実を正しく見ることができると、「お金を払ったから感謝しなくてもいいんだ」という考え方が、必ずしも正論ではないことがおわかりいただけるのではないでしょうか。「してもらってあたりまえ」なことなど、何一つないのです。

■「ありがとう」は人間関係の潤滑油になる

さまざまな人やものとの関係性を生きる私たち人間にとって、「ありがとう」の言葉はコミュニケーションの潤滑油のようなものです。誰だって、人に親切にしたり、施してあげたりしたときには、感謝されたいという欲をもっています。

「してあげたのだから感謝してもらって当然だ」という態度をとることが、非常に横柄であることはご理解いただけると思いますが、せめて一言「ありがとう」と言ってもらえるだけで、気持ちが良い関係性を保つことができます。

スーパーで食料品を買う女性
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

反対に、潤滑油である感謝の言葉を伝えられない人は、周りとの関係性がギスギスしていくことになるでしょう。「あの人に協力しても、感謝されることなんてないからな」と、周囲に助けてもらえない人間になっていくのです。

最近は店員に横柄な態度をとる男性に不快感を覚える女性も多いようですが、「俺は客だぞ! 金を払っているんだから言うことを聞け」などと勘違いする男性の幼さ、度量の狭さが伝わるのでしょう。

これと同じく、会社などで部下や後輩が自分を助けてくれても、さして感謝の態度も示さないばかりか「別に頼んでない」「あたりまえのことだから」などと憎まれ口を叩こうものなら、頼りにされることもなくなっていきます。たった一言、「ありがとう」と言えないがために、信頼を失い、結果的に大きく損をすることになるのです。

■感謝できる人間になるブッダの教え「知恩」

では、感謝できる人間になるにはどうしたらいいか。ヒントになる仏教語が「知恩」です。「恩を知る」と書きますが、この教えは感謝することの大切さを説いています。

恩という字は「因」と「心」の二つの字から成り立っています。つまり、「原因」となったものを洞察できる「心」をもつということです。そうして初めて、恩を感じることができるのです。

このような観点で物事を見ていくと、たとえ対価としてのお金を支払っているのが自分であったとしても、施してくれる相手がいなければ何かを享受できないことに気がつくことができます。そこまで想像力が働けば、「してもらってあたりまえだ」という傲慢(ごうまん)な心ではなく、「していただいて有難い」という恩に変えていくことができるのです。

■周囲に感謝できなくなった人は不幸に陥る

大愚元勝『これでは、不幸まっしぐら 今すぐ変えたい30の思考・行動』(佼成出版社)
大愚元勝『これでは、不幸まっしぐら 今すぐ変えたい30の思考・行動』(佼成出版社)

「うれしい」「楽しい」「美味しい」など、幸福感を感じたときに、それが何によってもたらされたのかを深く洞察することで、自然と「あたりまえではなく、有難いことなんだな」と思える感性が育っていきます。

実はこの「恩」の字は、小学校五年生で習う漢字です。子供のころはあたりまえにできていたことも、大人になるにつれて次第にできなくなっていく。不思議なことです。原因を正しく洞察するどころか、冒頭の例のように自分に、都合の良いように物事を解釈し、横柄になってしまうことさえあります。

周囲のことに感謝ができなくなったときは、不幸に陥っていく黄色信号だと思い、気をつけたいものです。

感謝は幸せを噛み締める力です。知恩を胸に、目の前の一つひとつに感謝できる自分でありましょう。

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大愚 元勝(たいぐ・げんしょう)
佛心宗大叢山福厳寺住職、(株)慈光グループ代表
空手家、セラピスト、社長、作家など複数の顔を持ち「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶。僧名は大愚(大バカ者=何にもとらわれない自由な境地に達した者の意)。YouTube「大愚和尚の一問一答」はチャンネル登録者数57万人、1.3億回再生された超人気番組。著書に『苦しみの手放し方』(ダイヤモンド社)、『最後にあなたを救う禅語』(扶桑社)、最新刊としてYouTube「大愚和尚の一問一答」のベスト版として書籍化した『人生が確実に変わる 大愚和尚の答え 一問一答公式』(飛鳥新社)がある。

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(佛心宗大叢山福厳寺住職、(株)慈光グループ代表 大愚 元勝)

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