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「君、かわいいね」と言われても全然嬉しくない…水商売の女性から一目置かれる"モテる紳士"の条件

プレジデントオンライン / 2023年3月4日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Deagreez

接客のプロ・水商売の女性と良好な関係性を築くにはどうすればいいか。日本水商売協会代表理事の甲賀香織さんは「モテる紳士は『君、かわいいね』とは絶対に言わない。水商売の女性が褒められて嬉しいのは、『外見』ではなく『内面』や『気遣い』である」という――。

※本稿は、甲賀香織『日本水商売協会 コロナ禍の「夜の街」を支えて』(筑摩書房)の一部を再編集したものです。

■「そこまでやるか」水商売の良い店といえる条件

日本水商売協会の理念は、「店舗・働く女性・顧客・社会の四方良し」である。この4つのアクターが水商売業界を構成し、どれも重要で、それぞれに役割がある。

まず、「店舗」がなければ働く場所が確保できない。働く場の提供は、とても重要な役割だ。そして、複数名が働く店舗であれば、店という場で仲間やチームができる。

しかし現状では、働く女性を搾取の対象としてみている店がある。頑張りたいキャストに頑張り方を教えることもなく、評価制度がないため人によって報酬がまちまちだったりもする。

さしさわりのない接客をし、お客様のニーズを深く考えることもなく、法令よりも自分たちの利益を優先し、地域のイメージを汚してしまう、そんな店舗も残念ながら存在する。

では、どのような店舗が良い「店」といえるのか。我々は、次のように考えている。

・働く女性の人生を、家族の一員のように考えられる店。
・教育のチャンスを与えられる店。
・正しく、公平に仕事の成果を評価できる店。
・お客様の想像を超える「そこまでやるか!」の感動を創出できる店。
・状況に応じた適切な配置・配役をできる店。
・法令順守を徹底している店。
・店舗のある地域を大切にしている店。

これらを徹底することで、飛躍的に、長期的に成功する店舗を作ることができる。またその努力や誠実さが正当に評価されるよう、優良店舗としてのブランディングをお手伝いしていきたいと考えている。

■働く女性が成否を分ける

「働く女性」は、もっとも重要なアクターだ。

接待飲食業が成功するか否かを分ける、最大の要因は「人」である。良い子がいればお店が繁盛し、良い子がいなければお店が衰退する。接待飲食業は、人とのコミュニケーションが売りものだからだ。

お酒を飲みたければ、スーパーやコンビニで買える。お酒を提供されたければ居酒屋へ行けば良い。雰囲気の良い空間でお酒を提供されたければバーへ行けば良い。

そうではなく、クラブやキャバクラやガールズバーやスナックやショーパブへ足を運ぶのは、そこで働く人だったり、そこに飲みに来る客だったり、人とのコミュニケーションを求めているからだ。接客というコミュニケーションに値段が付いているのだ。

では、どういう「人」が「良い子」なのだろうか。もちろん、一般的に売れっ子という言葉でイメージするような容姿端麗な女性は、そうでない人に比べてアドバンテージがあることは間違いない。

とはいえアドバンテージ止まりであり、美人というだけで売れっ子になれるわけではない。むしろ、それより重要なのは、仕事への姿勢や取り組み方だ。

■目指すべき能力は教育で身につけられる

現状では、個人のスタンドプレーばかりで自分のメリットばかりを主張する人や、お客様と適当に話を合わせていればいいと考えている人、目先のお金ばかりを追いかけ、感情に流されそれを態度に出し、遅刻やドタキャンなどを平気でしてしまう、そんなキャストが残念ながら存在し、それが業界のイメージの一部になってしまっているようにも感じる。

では、具体的にどのような「人」を目指すべきであるか。我々日本水商売協会の見解は次のとおりだ。

・店という組織の一員としての自らの役割を考えられる人。
・自分のメリットの前に、店のメリットを優先できる人。
・お客様に対して、(表面上ではなく)人として好意を持って接することができる人
・お金に魂を売ることなく、プロとしての努力が伴った健全なプライドを持てる人。
・常に笑顔でいられる人。
・社会人としてのルールやマナーを守れる人。

これらは、どんな「人」であっても、本来教育で身につけられる能力だ。そういった意味でも、教育こそが、事業の成功を大きく左右する重要な役割を担う。日本水商売協会は、このような「人」の教育を担いたいと考えている。

■お客様も水商売業界の一員

そしてもちろん、「顧客」――お客様がいなければ商売として成り立たない。

前述のとおり、水商売業界の市場規模は二兆円を超えるとされる。巨大な消費活動を担う、ある意味では水商売業界の主役だ。

お客様は大切な存在であるが、神様ではない。もてなす側として「こんなお客様になってほしい」「こんなお客様になったら楽しめる」という方法を伝えていきたい。

・働く女性に対して、敬意をもって接していただくこと
・店内では他のお客様へご配慮いただくこと
・全力で経済を回していただくこと

たとえば、「大金を使えばモテる」。

これは誤った認識だ。確かに、店やキャストから気を遣われることは間違いないが、モテるということとは別なのだ。

「お客様は自分の鏡」とは、キャスト側の視点からよく言われることだが、逆もしかり。

いくらお金をたくさん使っていただいたとしても、お客様自身が意地の悪い態度でいると、寄ってくるキャストは裏表のある意地の悪いキャストばかりになる。

お客様が下心丸出しで接すれば、キャストもお金という下心丸出しで接客をしてくるようになる。

■褒められて嬉しいのは「内面」や「気遣い」

では、どうすればいいのか。キャストには「一人の人」として接してほしいと思う。

「飲み屋のねーちゃん」というスタンスで、名前も覚えない対応をされているキャストは、心底悲しい思いをしている。

女なら誰でも良く、数合わせの一人として見られていると感じるからである。

若い女性がテーブルに座って前を覗いている
写真=iStock.com/Masaru123
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Masaru123

したがって、このような横柄な態度のお客様の接客はないがしろになってしまう。

これでは、せっかくの楽しい飲みの場が気持ちの良い場になりにくいのではないだろうか。キャストである前に、一人の人間として敬意をもって接してほしい。

また、「キャストをおだてればモテる」と思っている方もいる。これも間違いだ。男性と違い、初対面で何かを褒められても、本気で喜ぶキャストはほとんどいない。

「君、かわいいね」。新人でない限り、キャストはこのような言葉を真に受けはしない。

日頃から言われ慣れているため、挨拶代わりにしか思えないし、自分に言っているということはその他――たとえば50人くらいには同じことを言っているだろう、と捉える人がほとんどだからだ。

捉える、というよりは、実際言っているのではないだろうか。

褒められて嬉しいのは、内面や、気遣いを褒められたときではないかと思う。

接客にも、費用対効果が存在する。キャストが店外で長時間付き合ってくれたのだとしたら、店内でキャストの売上になるような抜きもの(シャンパーニュやワインなど)を入れるべきだし、お客様の単価が高くなったときには、キャストはアフターサービスを積極的にするべきだと思う。

このことに明確なルールがあるわけではないが、お互いへの気遣いができ、暗黙の了解が通じ合っている者同士であるほど、より良い関係性が築けるのではないだろうか。

■店への配慮もモテる紳士の条件

本当の楽しみは、キャストとの間に、人と人との信頼関係を結んでから始まる。

店への配慮というものも、モテる紳士の条件の1つだ。周囲へ配慮できるゆとりのある方はかっこいい。

一方、接待飲食店が好きではないという男性からよく聞くのは、「客である自分のほうが女の子に気を遣ってしまって、会話を振ったりするのが疲れる」という意見だ。

これは、キャスト側の力不足であることは否めないので、申し訳ない気持ちであるが、そんななかでも楽しめる方法を強いて伝えるのなら、店に指名制度があるのならば指名をしてみる、ということだ。

キャストにとって、自分があえて選ばれたという自信と喜びが、仕事を頑張ろうというやる気とお客様への好意につながるのだ。

これは、報酬云々の問題ではない。指名で出るパワーというのは金額以上のものがある。

キャストは、キャストという役柄を演じながらも、一人の人間、「個」として認められることを願っている。

それは人間皆が欲する欲求であり、そのことを理解するお客様こそが、真のモテるお客様なのだ。

■社会に貢献し、社会に認められる

最後のアクターは「社会」だ。我々は、働く人も、店も、顧客も、社会に対して貢献していると考えている。

そんな業界を社会が認めてこそ、より貢献できるものだと思う。日本水商売協会の活動を通じて、社会のあるべき姿勢を伝えたい。

・「水商売」という職業を正しく理解し、職業として尊重すること

それぞれのアクターがそれぞれを尊重し、お互いを認め合ってこそ、すべてがうまく回りだすものではないか。

日本水商売協会は、このような世界を目指したい。そのために、それぞれが目指すべき姿を設定し、改善に向けて活動を続けているのである。

なお、この4つには含まれないが、行政や法とのかかわりも重要だ。

風俗業の監督官庁は公安委員会であり、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」に基づいて、各店舗が都道府県公安委員会に営業許可を得て活動している。

この点については、本書の別ページで解説している。

■水商売に従事する女性の約2割はシングルマザー

水商売で働く女性は、特殊な事情を抱えている……、こうしたイメージを持たれることが多い。

それは、テレビなどのドキュメンタリーやバラエティ、ノンフィクション小説、雑誌などにおいて、とりわけ厳しい環境で育った方々にだけスポットをあてて取材しているからだ。

実際には、必ずしもそういうことばかりではない。

とはいえ、「ワケあり」の方々も一定数存在する。中でも、離婚女性やシングルマザーが困窮してやむを得ず水商売の世界に足を踏み入れるというケース。

ただでさえ男女の収入の差がある日本において、専業主婦だった女性が再び会社員として社会復帰するハードルは極めて高い。自立した生活を送るために、とりあえずの仕事場として、業界で働き始める方は非常に多い。

まして、それがシングルマザーである場合、事態はより深刻になる。日本において、別れた元夫から養育費をきちんと受け取れている女性は全体の2割にも満たないというデータがある。

母と娘は、ベッドの部屋で楽しい時間を過ごしています
写真=iStock.com/Yagi-Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yagi-Studio

そのため働ける時間は短い、時間帯は限られるなどの制約が多いなか、養育費を捻出するために、より多くの収入を早急に得る必要がある。

実際、水商売に従事する約2割の女性はシングルマザーであるともいわれている。

また、昼間の仕事の収入だけでは生活費が足りず、水商売の仕事を兼業している方や、起業したものの売上が立たず、収入の補填として夜働く方もいる。

学費を稼ぐため、奨学金を返すため、あるいは一人暮らしの生活費を稼ぐためなど、学業と両立させながら働いている方、他にも一般企業への就職が困難である層――たとえば、外国人労働者や、低学歴層、トランスジェンダーといった方々が水商売の仕事に就くことも多い。

コロナ禍においては、昼間の仕事を解雇される、または職場の休業要請によって収入がなくなり、水商売で生計を立てるようになったという話も多く聞く。

こうした状況も鑑み、水商売の業界で働くことが決して特殊なことではなく、職業の1つとして、先入観なく認識される社会になることを願ってやまない。

■水商売が日本経済の起爆剤になるために

私は、水商売には、日本の経済を活性化する起爆剤となり得るポテンシャルが秘められていると考えている。

甲賀香織『日本水商売協会 コロナ禍の「夜の街」を支えて』(筑摩書房)
甲賀香織『日本水商売協会 コロナ禍の「夜の街」を支えて』(筑摩書房)

水商売は女性が活躍しやすい業界の1つでもある。

前述のように、収入は必要だが、昼の時間帯に働けない、あるいはなかなか採用されない方や、昼の仕事だけでは生活費が賄えない方などのセーフティネット的な役割も果たしている。

さらに、日本は古くから特有の「花街文化」を形成してきた歴史がある。この花街文化は「粋」という言葉で表現され、ユーモアや思いやり、奥ゆかしさを持つ日本特有の文化であり、日本の誇りでもある。

水商売が日本経済の起爆剤となり、女性活躍の場になっていくためには、我々が社会に認めてもらえるような、責任のある行動を徹底することが求められる。これを通じて、水商売の社会的地位の向上を目指していかなくてはならない。

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甲賀 香織(こうが・かおり)
一般社団法人日本水商売協会代表理事
1980年、埼玉県生まれ。青山学院大学文学部卒業後、出版社等を経て株式会社ベンチャー・リンクに入社、カーブスジャパンに出向。人材教育や営業マニュアルの作成、新規店舗の立ち上げ、業績不振店舗の再建に従事する。27歳で銀座の高級クラブ「ル・ジャルダン」に入店。1年でナンバー1となる。引退後は、ホステスの営業メール配信システムの開発・販売を行う。2018年、日本水商売協会を設立。

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(一般社団法人日本水商売協会代表理事 甲賀 香織)

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