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人間関係で無駄なエネルギーを浪費しない…マッキンゼーで学んだ頭の良さより大事な"一生モノのスキル"

プレジデントオンライン / 2023年3月4日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tadamichi

仕事のデキる人の共通点は何か。元マッキンゼーでエグゼクティブコーチの大嶋祥誉さんは「マッキンゼーで出会った優秀なビジネスパーソンは、みな感情コントロールの達人だった。どんなに多忙であっても、焦ったりイライラすることなく、目標に向かって最短距離で結果を出していく」という――。

※本稿は、大嶋祥誉『マッキンゼーで学んだ最高に効率のいい働き方』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

■「感情コントロール力」が仕事のパフォーマンスを決める

今、ビジネスパーソンに最も求められている能力は何だと思いますか? それは「感情コントロール力」です。

私たちは日常、さまざまな感情が湧き起こります。感情に振り回される人と上手にコントロールする人では、同じ仕事でも処理するのに時間がかかり、仕事の効率やパフォーマンス、成果にも大きな差が生じます。

誰でもイライラしたり不安になって、思うように仕事が手につかないということがあるでしょう。どんなに能力があり、スキルを持っている人物でも、感情が乱れていてはパフォーマンスを十分に発揮することができません。

余計な感情は物事を複雑にします。たとえば嫌いな上司の言葉は、いちいち心に引っかかります。普段ならすぐにこなせる仕事もなかなか集中できず、時間がかかったり出来が悪くなったりして、結果的にとても効率が悪くなってしまうのです。

感情が不安定だとコミュニケーションも難しくなります。それによって人間関係がギクシャクしたり、もめたりして、思うように仕事が進みません。

感情が乱れがちな人は何かにつけて滞り、ためらい、逡巡します。時間と労力を使う割に仕事が遅く、質も悪い。結果として評価が下がるのです。

■マッキンゼーで出会った一流ビジネスパーソンの共通点

一流のビジネスパーソンほど、エネルギーを1つのことに集中して使うことが大きな成果につながることをよく知っています。

限られたエネルギーを効率よく仕事に向けることがパフォーマンスを上げる一番の方法であることを熟知しているのです。そして、その妨げの最大の要因が感情に振り回されることだと理解しています。

私が以前勤めていたコンサルティングファーム、マッキンゼー・アンド・カンパニーでは、優秀なビジネスパーソンにたくさん出会うことができました。みな例外なく感情コントロールの達人だったと言えます。

どんなに多忙であっても、焦ったりイライラすることなく、目標に向かって最短距離で結果を出していく。それを最優先にするので、日常で派生する些末な感情にこだわることはありません。その徹底ぶりは見事だったと思います。

ただし、彼らは感情を抑圧するのではありません。むしろ喜怒哀楽を素直に表現します。とても自然体でバランスがいいのです。冷静でありながら人間味にも溢れている。

つまり魅力的な人物なのです。周囲の人望も厚く、良好な人間関係を築くことができる。それによってさらに仕事がしやすい環境が生まれていく。これこそが成功へ向かう「正のスパイラル」です。

逆に仕事のできない人物に限って、些末なことに心を奪われ、そのたびに感情を乱しがちです。その結果、仕事のパフォーマンスも人間関係も悪くなる。まさに「負のスパイラル」に落ち込んでいくのです。

■頭の良さやスキル以上に感情コントロールが重要な理由

感情コントロールは自己コントロールとほぼ同義と考えられます。米国のある研究では、大学生の成績と30を超える性格特性との関係を分析したところ、学生の成績に関連する特性は「自己コントロール力」だけだということが示されました。

自己コントロール力は、学生のその後の成績を予測する方法として、IQやSAT(米国の大学進学適性試験)のスコアよりも優れていたそうです。

ビジネスパーソンを調べた別の研究では、自己コントロール力のスコアが高い上司は部下からも同僚からも好意的に評価されていることが分かりました。

そういう人物は感情も安定していて腹を立てることが少なく、他人に対して攻撃的になったりすることが少ないという結果も出ました。

窓のそばに立つアジアの実業家
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

頭の良さや仕事の能力以上に、自己、すなわち感情をコントロールできる人が社会的にも成功する。これらの研究からも、そのように言うことができます。

良い人間関係をつくり、仕事で成果を上げ、幸せな人生を送るために一番に必要なこと。それは感情コントロールなのです。

■人間関係で無駄なエネルギーを浪費しないコツ

じつは私自身、以前は感情コントロールがうまくできず、仕事が手につかなかったり、上司とギクシャクしてパフォーマンスが上がらないということが多々ありました。

以前の職場にいた上司は、部下の仕事の仕方にやたら細かくダメ出しをし、頭ごなしに否定する人物でした。当時の私はそんな上司の攻撃に遭うと、ただオロオロ。何とか上司の機嫌を取りなそうと焦り、過剰反応していました。

それはかえって上司の思うツボで、さらに怒りと攻撃が増すという悪循環。そんな上司に対して恐れと同時に怒りや嫌悪感を抱いていました。

それは上司に振り回されていると同時に、自分の感情に振り回されている状態だったと思います。そんな自分にも嫌気がさして、自己嫌悪。

結局、あるきっかけで、私はその悪循環を断ち切り、上司と心理的に距離を置くことで、冷静になることができました。

上司が突っかかってきても、「あぁ、またいつもの上司のクセが出たな」と考え、適当に合わせながらスルーする。すると上司のほうも冷静になり、これまでのようにカサにかかって攻撃することもなくなりました。

それどころか、感情的にならずに上司と向き合えるようになると、相手の意外な能力や長所に気がつくようになりました。むしろ適切な距離感を保っている分、仕事がしやすい相手に変わったのです。正直、この変化には私自身が驚きました。

嫌な人こそ、じつは人生を大きく変える重要人物の可能性が高い――。そのときの体験が、私に1つの気づきを与えてくれたのです。

■嫌な人とでもいい仕事ができる距離感とは

これは後で詳しくお話ししますが、私たちが相手に対してネガティブな感情を抱く場合、自分の心の中の偏りや思い込みが大きく関係していることが分かっています。

つまり、相手に原因があるというより、自分のほうに原因があるということ。

その証拠に、同じ状況を体験したり、同じ人と向き合っても、人それぞれに抱く感情が違うのです。

ある人にとっては怒りの対象になる出来事が、ある人にとっては好ましいと認識される。感情は客観的な事実によってのみつくられるのではなく、自分の主観、心の偏りや思い込みなどが大きく関係しているのです。

感情にまかせて、相手を拒絶したり否定したりしているうちは、自分の中の偏りや思い込みに気づくことも、正すこともできません。それらを自覚し、意識化すること。そして自分の考え方や行動を修正することで、その偏りや思い込みを正すことができます。

私自身、苦手だった上司と親しくなるとまではいかずとも、新たな関係にシフトすることができました。自分自身が変化することで、上司の嫌な部分だけでなく、長所も認めることができるようになったのです。

不思議なことに、そういう関係になると、一転、仕事をする上でお互いが協力し、補完し合う、前向きな関係に変化したのです。

この体験は、嫌な人とでもいい仕事ができる、という大きな自信になりました。

そして自分自身、大きく成長することができたと思っています。

■感情を無理に取り繕うのではなく認める

誤解されがちですが、感情コントロールは、感情を抑圧することではありません。感情を殺すのではなく、むしろ感情を上手に生かし、豊かな感情生活を送ることです。

怒りや悲しみ、恨みや妬みなどのマイナス感情を、いけないものだとして抑圧すると、それは無意識の中に逃げ込み、さまざまな悪さをするようになります。

オフィスのパートナーとの交渉会議
写真=iStock.com/fizkes
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fizkes

本書の別の章でも詳しく触れますが、まず自分の中の感情を素直に認めることが大事。

「あぁ、今、自分は怒っているな」「今、自分は悲しんでいるな」「嫉妬しているな」

……など、言葉で自分の気持ちをしっかり感じ、認識してやるのです。

感情を無理に取り繕おうとすると、エネルギーを浪費してしまう――。米国でそのことを証明した実験結果があります。被験者たちを3つのグループに分けて、同じ悲しい映画を観てもらった実験です。

3つのグループとは、

1.どんなに悲しくても感情を表に出さないように指示されたグループ
2.大げさに感情を表に出すように指示されたグループ
3.何も指示されず、普通に見るように伝えられたグループ

の3つです。

それぞれのグループは、映画の前と後で体力測定を受けたのですが、1と2のグループは、いずれも鑑賞後に体力が落ちたのに対し、3の普通に見たグループは、前後で変化がなかったのです。

ここからも分かるように、感情をありのまま素直に受け止めることで、心理的な葛藤を避けることができ、エネルギーも浪費しないですみます。逆に感情を取り繕えば、葛藤が生じ、その結果としてエネルギーを奪うのです。

感情を無理に抑圧したり過大に受け止めること、言いかえると、感情を取り繕うことは、決して感情コントロールではないのです。

むしろ感情コントロールは感情を活用することです。それによってエネルギーの浪費を防ぎ、本来の目標のためにエネルギーを向けることができる。

感情を上手に表現できることこそ、感情コントロールの真髄だと言えるでしょう。

■感情コントロール力は誰もが身につけられる

感情コントロール力は仕事の効率や成果に大きな影響を及ぼしますが、みなさんはこれを持って生まれた性格によるものだと諦めていませんか? それは大いなる誤解です。感情コントロール力は誰もが身につけられるテクニカルな「技」です。

先ほどもお話ししたように、私自身、かつては感情に振り回されがちな人間でした。しかし感情コントロールの技法を身につけることで、大きく変わることができたと思っています。

じつは、感情コントロールはマッキンゼーで学んだ問題解決のスキルとよく似ています。詳細は別の記事でも触れていますが、マッキンゼーの問題解決の手順は、そのまま感情コントロールに当てはまるのです。

まず問題解決の手順は以下の通りです。

1.真の問題を見極める

2.問題の構造を把握する

3.仮説を立てて検証する

4.解決策を導き出す

この4つが問題解決の基本的なプロセスです。これを感情コントロールに当てはめると、

1.感情を意識化し、冷静に受け止める

2.感情が湧き起こった問題の構造を把握する

3.どうしたらその問題が解決されるのかを仮説を立てて検証する

4.解決策を導き出す

となります。

■問題を捉えて行動することが評価にもつながる

まず大事なことは、湧き起こっている感情をしっかり感じ、認識すること。たとえネガティブな感情であっても、受け止めることが大切です(1.意識化)。

その後、その感情がなぜ起きたか、真の問題を検証します。たとえば上司に企画書の出来が悪くて注意され、フツフツと怒りが湧いてきたとしましょう。怒りが湧いた真の原因は何だったかを冷静に振り返ってみる。

すると、上司からの評価が下がるのでは、という不安感や、上司に自分の努力を知ってほしいという承認欲求、自分の同僚ばかり評価されているという嫉妬の感情などが背景にあり、それらの存在をそのまま認めたくないがゆえに「怒り」という感情に転化したのかもしれない。そんな構造が浮かび上がってきます(2.構造の把握)。

その上で、自分はもしかすると努力をもっと認めてほしいという承認欲求が強いのでは、と仮説を立ててみる。もし、上司が成果だけでなく過程を評価してくれたらどう感じるか? 自分なりにシミュレーションしてみましょう(3.仮説の検証)。

上司が過程を評価し、努力を認めてもらうことが、自分にとって何より重要なのであれば、問題解決策は自分の怒りの感情を爆発させることではない、と分かります。

たとえば、自分の企画書作成の過程を紙に箇条書きにし、この作業のどこに問題があったのかを上司に相談してみる。すると、あなたのこれまでの仕事の流れを理解してもらえると同時に、積極的に改善しようとしているあなたの態度を評価してくれるかもしれません。

それがあなたの承認欲求を、満足させることにもつながっていきます(4.解決策を導き出す)。

■“見える化”することで解決可能な「課題」に変わる

要は、感情を何かモヤモヤした捉えどころのないものとして扱うのではなく、解決可能なロジカルな「問題」、あるいは「課題」として「見える化」すること。つまり、問題化することができれば、それに対する解決策も自ずと生まれてくる、ということがポイントなのです。

大嶋祥誉『マッキンゼーで学んだ最高に効率のいい働き方』(青春出版社)
大嶋祥誉『マッキンゼーで学んだ最高に効率のいい働き方』(青春出版社)

その際、イライラしている感情が、作業が物理的に進んでいない焦りから来ているのであれば、人に助けを頼む、あるいは作業工程を見直すことが課題として見えてきます。

あるいはその感情が、上司の自分に対する評価が気になるということから来ていると分かれば、自分のこれまでの仕事の流れを上司に示してアピールしたり、どこに問題があるかを指摘してもらうことで印象をアップさせるなど、次に取るべき行動がロジカルに導き出されてきます。

いずれにしても、ロジカルな分析と思考が基本になっていて、まさにマッキンゼーで学んだ問題解決のスキルの真髄がそのまま応用できるのです。

感情にとらわれ、それに流されてしまう人たちは、逆に言えばロジカルに問題を捉えることができない人であり、感情を解決可能な課題にまで落とし込むことができない人だと言えます。それが効率のいい働き方を遠ざけてしまうのです。

ただし、安心してください。それはやり方、手法さえ知れば、誰でも実践することができます。誰もがそれを実現できるようにするのが本書の目的なのです。

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大嶋 祥誉(おおしま・さちよ)
センジュヒューマンデザインワークス代表取締役、エグゼクティブコーチ、人材戦略コンサルタント
米国デューク大学Fuqua School of Business MBA取得。シカゴ大学大学院修了(MA)。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ワトソンワイアットなどの外資系コンサルティング会社や日系シンクタンクなどで経営、人材戦略へのコンサルティングに携わる。2002年に独立し、現在までに2000チーム以上のチームビルディング、組織変革コンサルティング、経営者や役員へのエグゼクティブコーチングを行う。

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(センジュヒューマンデザインワークス代表取締役、エグゼクティブコーチ、人材戦略コンサルタント 大嶋 祥誉)

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