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「ウサギの角は何本あるか」その回答でバレる仕事がデキる人とそうでない人の決定的な違い

プレジデントオンライン / 2023年3月5日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kaew6566

ビジネスで本質的な問題はどう見つければいいか。元マッキンゼーでエグゼクティブコーチの大嶋祥誉さんは「問題そのものを真の問題と疑似問題に分けて考えるべきだ。『ウサギの角は何本あるか』という問いは、設定や前提が間違っていて疑似問題であり考える意味がない」という――。

※本稿は、大嶋祥誉『マッキンゼーで学んだ最高に効率のいい働き方』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

■エネルギーの浪費がなくなる「分解思考」の驚くべき効果

感情の乱れを感情の問題として扱わず、解決可能なロジカルな問題として扱う。これこそが感情コントロールの極意です。そのためにはマッキンゼーなどで学んだフレームワークが有効であり、応用可能であるということです。

先に紹介した問題解決の原則4つの他に、ロジカルシンキングの基本として物事を2つに分けることで思考をクリアにするという分解思考があります。

思考が混乱し、モヤモヤした感情をさらに複雑化させるのは、この分解思考ができていなかったり、不十分であることが多いのです。以下、分解思考の代表例を挙げてみましょう。

1.「自他の問題」を分ける(課題の分離)

本来は相手の問題にもかかわらず、自分の問題として捉えてしまい、エネルギーを浪費してしまう場合があります。

たとえば、ある人のために仕事上でいろいろ骨を折ったとしましょう。自分がこれだけやったのだから、相手はきっと自分を好きになってくれるに違いないと期待しがちです。

ところが意外に相手は感謝してくれない。こちらを好きになってくれる気配もない。「おかしい」「どうして?」と思い悩み、「感謝の気持ちがないやつだ」と怒ったりします。

しかし、よく考えてみると、相手が自分に対してどう思うかは相手の問題なのです。他人の自分に対する印象を完全に自分がコントロールしようというのは無理な話ですし、傲慢だと言うこともできます。

自分は相手のことを思い、相手のためになればと思って行動しただけ。その評価はあくまでも相手が行うことであり、相手の問題なのです。

■イライラしているのは相手の問題

あるいは上司が何かとイライラしているとします。それを自分のせいだと考えると「どうしよう?」とか、「何とかしなければ」と思ってしまいます。

しかし、そのイライラはもしかすると上司とその奥さんの関係がうまくいっていないとか、上司の体調のせいだとか、必ずしもあなたのせいではないかもしれません。

私自身、いつもイライラしている上司に、どう対応していいか分からず、かえって関係性がぎくしゃくしてしまった経験があります。

あるとき、それはもう上司のクセで、いたずらに反応しないほうがいいと気づいたのです。イライラしているのは相手の問題だと。そうやって切り離したことで、上司の感情に振り回されなくなり、結果、関係性がよくなったという経験があります。

相手の判断や感情は、最後は相手の問題であるということ。「自他の問題を分ける」ということが、自分の感情を乱さないための秘訣なのです。

つい感情に流され、悶々としたり爆発したりする人は、この自他の問題を分けるということを意識するだけでも、冷静になれるきっかけになります。

■「嫌だ」と思っても、その感情からは解放されない

2.「コントロール可能なこと」と「不可能なこと」を分ける

どんなに悩み、思い煩っても、どうすることもできないことがあります。雨が降っているのを、晴れにしたいと思ってもどうすることもできません。

1日がどうして30時間にならないのかと望んでも無理な話でしょう。自分の親や生まれ育った環境を変えたいと思っても不可能です。

自分の力ではどうすることもできないこと、コンロールできないことがあります。それを何とかしようとして気をもんだり、感情を乱してしまうのは無駄なことです。感情コントロールの上手な人は、自分の力が及ばないことに対して思い煩いません。

ロープのバランスを歩き
写真=iStock.com/Nuthawut Somsuk
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Nuthawut Somsuk

たとえば、自分の上司が嫌いだからといって、上司が別の部署に行ってほしいと思ってもどうすることもできません。上司は部下を選べることはあっても、部下は上司を選べないというのが、ほとんどの組織の原則だと思います。

ならば、思い悩む前にできることは何か? その上司と何とかやっていく方法を探すことです。そのために何をすればいいか、具体的な方法を考える。その上司をよく観察して、上司の地雷を見極め、それを踏まないようにする。

挨拶をきちんとすると機嫌がよくなると分かったら、挨拶を心がける。事前連絡や確認を求める上司なら、それをはずさないように気をつける……etc.

「嫌だ、嫌だ」と感情的になったところで、決してその感情からは解放されません。ならば、少しでも気持ちが楽になるように、具体的な行動を取るべきです。

古典的名著となった『7つの習慣』を著したスティーブン・コヴィーは、その著書の中で、変えられるものは変える努力をしつつ、コントロールできないものは、穏やかに受け入れるおおらかさが必要だと述べています。

コントロール不可能なものを、思い煩うことをやめるだけで、仕事も人生もずいぶんスッキリするのです。

■仕事のデキる人は例外なく目的意識が明確

3.「優先順位の高いもの」と「低いもの」を分ける

目的や優先順位を明確にすることも、感情コントロールに必須のロジカル思考です。私の知っている優秀なビジネスパーソンは、例外なく目的意識が明確であり、それによって優先順位を明確にしています。

目的意識が明確であれば、それに向かうためには何をすべきかが、おのずと決まってきます。何が不可欠で、何が必要なものか? 逆に何が無駄なものかが見えてきます。迷いがなくなり、物事がクリアになっていきます。

上司が機嫌が悪かったり、同僚が嫌なことを言ったり、部下がなかなか言うことを聞かなかったり……。仕事をしていると、さまざまな問題が起きてきます。その問題の多くは、じつは仕事の目標達成には直接関係ない問題かもしれません。

たとえば、営業の成果を上げるという目標があったとして、やるべきことは何か? 既存顧客のサポートだったり、新規顧客の開拓が最優先されます。

それに対して部下や上司との日常のちょっとしたことでのトラブル、そこから起こるさまざまな感情のすれ違いなどは、優先順位としては高くないはず。

ならば、それは気にしない。それに時間を取られることは、目標達成の邪魔でしかありません。その割り切り、仕分けを明確にすることが、感情コントロールの大切なポイントになります。

これは逆に言えば、感情コントロールのコツは、つねに目標を明確にしておく、ということでもあります。そしてその目標を達成するために、何が重要で何が重要ではないかをつねに仕分けることだと言えると思います。

■上司に嫌われても給料はもらえる

4.不安な事態が起きる確率と起きたときのダメージを判断する

感情には、イライラや怒りとともに、不安や恐れがあります。むしろ一見、怒りと思える感情も、そのじつ、不安や恐れが原因となっている場合もあります。

不安や恐れは生きていく上で大切な感情です。不安や恐れを感じることで、危険を察知したり回避したりできるからです。

ただし、それが過剰になると問題です。集中力がなくなり、仕事が手につかなくなってしまいます。悪化すると、不安神経症のような心の病にまでつながっていきます。

このような過剰な不安や恐れにとらわれないために、どうすればいいでしょうか? まずは、その不安な事態が起きる確率を考えてみることです。

1つの例として、航空機による死亡事故を考えてみましょう。航空機事故は、墜落事故が起きてしまえば乗客の大半が命を落としてしまう大事故になります。

ただし、航空機による死亡事故発生は、東京ニューヨークを12万5000回往復して1回遭う確率でしかありません。と考えると、飛行機に乗ることに対して、過剰に恐れる必要はないということが分かります。

もう1つはリスクが起きたときのダメージがどれくらいかを冷静に判断することです。不安に押し潰されがちな人は、得てしてダメージを過大に想定しがちです。

私自身、上司から注意されたり怒られたり、あるいは機嫌が悪かったりするととても不安になり、動揺し、何とかしなければと焦っていました。

なぜ、私はそれほどまで上司の言動に反応したのか? それは上司から睨まれ、嫌われたら、まともに仕事ができなくなるのではないか? 職場の居場所がなくなるのではないか? という恐れがあったからです。

しかし、よくよく考えてみれば、その上司に嫌われ、疎まれたからといって、職場に居場所がなくなるわけではありません。給料がゼロになるわけでもない。多少嫌われたからといって、すべてを失うわけではないということに気がつきました。

お札を数える
写真=iStock.com/liebre
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/liebre

不安や恐れは誰もが持っている感情です。大事なことは、それをいたずらに膨らませないこと。そのためには冷静にリスクが起こる確率と、起こったときのダメージを想定することです。

すると意外に今恐れていたことが、根拠のない、妄想を恐れていたということが分かると思います。

■報告は客観的な数字や主語を明確にする

5.「事実」と「意見」を分ける

問題を複雑化し、難しくする1つの原因に、事実と意見を混同してしまうということがあります。たとえば、あなた自身が「うちの会社の朝礼はつまらないし、時間も長いからやめるべきだ」と腹が立ったとしましょう。

ただし、それは客観的な事実であると言えるでしょうか? 「つまらない」というのも「時間が長い」というのも、それはあなたの感覚であり、意見かもしれません。他の人にとっては、つまらなくもなければ、長いとも感じないかもしれないのです。

怒りやイライラが起きたり、不安や恐れを感じたときには、それを感じた理由が、はたして客観的な事実か、自分の感覚や意見なのかを見極める必要があります。

事実と意見を分けるのは、日常の仕事の中でも非常に重要な力になります。上司に仕事の報告をするときでも、つねに事実と意見を分けて伝えることが必要です。

たとえば、上司にクライアントの今回のプロジェクトに対する取り組みを報告するとしましょう。

「A社は予算的にかなり厳しいようで、できれば今回のプロジェクトからは手を引きたがっているようです」と、報告したとします。

上司にとってみれば、予算的に厳しい状況が事実なのか、それともあなたの単なる見立てなのかが、分かりにくい内容です。A社が手を引きたがっているというのも、あなたの意見や感想にすぎないのか、

本当にその事実があるのかどうかも分かりにくい。

予算がいくらしかないとか、A社の誰々の話ですが、というように客観的な数字や主語を明確にすること。逆に自分が上司の場合、部下の話している内容が事実なのか、それとも意見や願望なのかを分けて理解することが必要になります。

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写真=iStock.com/hamzaturkkol
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/hamzaturkkol

■感情コントロールの回路を完成させる

6.「問題」と「感情」を分ける

「事実と意見の分離」を発展させたものが「問題と感情の分離」です。たとえば部下の仕事が遅くて締め切りを守れなかったとします。「締め切りを守らないなんて社会人として失格だ!」と怒るのは感情です。

そうではなく、「締め切りを守らなかった」という問題と、「そのことが許せない」という感情に分けて、問題は問題として、「なぜ彼は締め切りが守れなかったのか?」と冷静に対処する。

感情が湧き起こるのは致し方ないのですが、それによって大事な「問題」を見過ごすことがないようにすべきです。

「事実と意見」を混同しない、さらに「問題と感情」を混同しない。それらを分離することで、感情コントロールの回路が次第にできあがってくるのです。

■「ウサギの角は何本あるか」

7.「真の問題」か「疑似問題」かを分ける

あなたが思い悩み、感情を乱している問題は、はたして本当に悩むべき問題なのでしょうか? 以前、私が必要以上に上司の顔色を窺っていた話も、悩まなくてもいいところで悩んでいたわけです。

人は得てして、本当の問題ではないことに心を砕いてしまいがちです。本当の問題らしく見えて、そのじつ取り組むべき問題ではないものを、あえてここでは「疑似問題」と呼びます。

じつは本来の意味での「疑似問題」とは、問いの仮定や前提が間違っているため、答えがそもそも存在しない問題を言います。

たとえば「ウサギの角は何本あるか?」という問いは、ウサギには角がないので意味がありません。このように前提がそもそも間違っている問題を、「疑似問題」と呼びます。

しかし、ここではそこまで厳密な意味ではなく、「いかにも問題に思えるけれども、本質的な問題ではない」という意味で使っています。その意味での「疑似問題」が、今の世の中には溢れているのです。

■「ジム選び」の前に「人間ドック」と考えられるか

たとえば「ダイエットしたいのだけどAとBのどちらのジムがいいか」という問いが、あったとしましょう。しかし、これは本質的な問いでしょうか? ダイエットしたい、すなわちその目的は「体重を落としたい」、もっと言えば「健康になりたい」ということでしょう。

ジムでトレーニング
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

そうすると、本当に大事な問題は「健康になるためには何をすればいいか?」ということです。すると、その解答は、人間ドックで徹底的に見てもらうことであったり、食事に気を使うことであるかもしれません。

大嶋祥誉『マッキンゼーで学んだ最高に効率のいい働き方』(青春出版社)
大嶋祥誉『マッキンゼーで学んだ最高に効率のいい働き方』(青春出版社)

日常の仕事の中でも、疑似問題に惑わされることがあります。企画書をつくるのに、やたらに体裁にこだわる人がいます。パワーポイントで、何枚もチャートをつくり込んでしまいます。

しかし本当に大事なのは体裁ではなく、企画の内容です。ところがきれいに図解して、何ページかのボリュームが必要だと考えてしまう。内容より形にこだわってしまう。結構ありがちだと思いませんか?

これも一種の疑似問題と言えるかもしれません。本来エネルギーを割かなくていいことに割いてしまう。それによって悩んだり感情的になってしまう。

疑似問題か、それとも真の問題かを見極め、分けるにはどうすればいいでしょうか? それは前にも挙げた、仕事の目的をしっかり持つこと。それに照らし合わせることで、その問題が本当の問題であるかどうかが分かるはずです。

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大嶋 祥誉(おおしま・さちよ)
センジュヒューマンデザインワークス代表取締役、エグゼクティブコーチ、人材戦略コンサルタント
米国デューク大学Fuqua School of Business MBA取得。シカゴ大学大学院修了(MA)。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ワトソンワイアットなどの外資系コンサルティング会社や日系シンクタンクなどで経営、人材戦略へのコンサルティングに携わる。2002年に独立し、現在までに2000チーム以上のチームビルディング、組織変革コンサルティング、経営者や役員へのエグゼクティブコーチングを行う。

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(センジュヒューマンデザインワークス代表取締役、エグゼクティブコーチ、人材戦略コンサルタント 大嶋 祥誉)

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