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忘年会で「自社株、ボーナス、車」が当たる…台湾の経営者が「とんでもない社員還元」を実施するワケ

プレジデントオンライン / 2023年3月8日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Sanga Park

台湾人は「おもてなし」が大好きだ。日台ビジネスコンサルタントの御堂裕実子さんは「台湾の社内忘年会では、自社株や海外旅行、ボーナス、車などの当たる抽選会があり、とても盛り上がる。台湾には『歓待する』という文化が根付いている」という――。

※本稿は、御堂裕実子『成長戦略は台湾に学べ』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■空港の到着ロビーに出た瞬間、サプライズが始まる

日本のクライアントの方を台湾に案内すると、まず初めに驚くのが台湾の人たちによる歓待です。

その歓待ぶりは、空港に到着したときから始まります。

税関を済ませ、到着ロビーに出た瞬間、名前入りの大きな垂れ幕や豪華な看板を用意して迎えてくれるのです。

サプライズは、その後もまだ続きます。

宿泊先のホテルに着くと、「台湾へようこそ!」というメッセージカードと共に、フルーツの盛り合わせが届くこともあります。さらに打ち合わせのために先方のオフィスに向かうと、わざわざ玄関で出迎えてくれるのです。

大企業や市政府などを訪問すると、会社案内やその地域を紹介したプロモーションビデオを見ることがあります。そのビデオには、日本語字幕や日本語吹き替えがしっかりと挿入されており、こちら側への気遣いを感じさせてくれます。日本語だけでなく、来客者の母語に対応できるように多言語での字幕や吹き替えがあるようです。

■組織のトップが直々にお茶を淹れてくれる

会議室に入ると、会社名や肩書が印字された会議用席札や、日本と台湾の旗がクロスした置物を机の上に用意してくれたりもします。

プロジェクターのスクリーンに「○○社ご一行様ようこそ弊社へ」という文字が映し出されたりすると、ついつい驚いてしまいます。事前にこちら側にコンタクトを取り、失礼がないように座る位置について相談してくれたりもするのです。こうした細やかな気遣いは、日本人の感覚に近いと言っていいでしょう。

帰国する際も、訪台メンバーの1人ひとりに豪華なおみやげを用意してくれるので、いつも頭が下がります。こうした気遣いは、企業に限ったことではなく、市政府などの政府機関、協会や団体などでも共通して見られます。

台湾では、組織のトップが率先しておもてなしをしてくれるため、何かと恐縮するばかりです。会社の応接室や社長室に招き入れられると、そこにはたいてい立派な茶器が用意されており、これを使って社長が直々にお茶を淹れてくれます。

■忘年会では自社株や海外旅行、ボーナス、車などが当たる

社長が率先して行動するのは、来客時だけに限ったことではありません。例えば、会社で忘年会(尾牙・ウェイヤー)を行う際は、社長自らが忘年会会場を選び、社員たちを慰労するためのホスト役に徹します。その姿を初めて目にしたとき、あまりにも日本の状況と異なるので、非常にびっくりしました。

台湾で行われる会社の忘年会は、日本で行われる忘年会よりはるかにゴージャスです。余興として、自社株や海外旅行、ボーナス、車などが当たる抽選会も行われ、そのときは特に大きな盛り上がりを見せます。

ワイングラスを乾杯する陽気なガールフレンド
写真=iStock.com/PRImageFactory
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PRImageFactory

忘年会の豪華さによって、その会社の景況感が如実にわかるので、内容が豪華であればあるほど社員には肌感覚として業績の良さが伝わるのと同時に、豪華な忘年会を取り仕切る社長に対する評価にもつながっていくようです。

また、尾牙では社員の催し物タイムがあり、社員数が多い大企業では、自分の顔と名前を売り込むことができる絶好のチャンスでもあります。

■お礼をする立場だったのに、豪華なお土産をプレゼントされる

台湾を訪れるたびに、私はいつも現地の人たちのおもてなしに感銘を受けます。なかでも世界的な自転車メーカーとして知られるジャイアント(GIANT)を訪れたときのことは忘れられません。ジャイアントは世界ナンバーワンの年間650万台のロードバイク生産台数を誇る企業です。

ジャイアントは、2011年の東日本大震災発生直後、復興のために1300台もの自社製自転車を岩手県に寄付しています。それらの自転車は、「瓦礫でふさがれて車が通れない道での物資配送や、家族や知人の安否を確認する人たちの足として本当に役立った」と陸前高田で被災した友人から聞きました。

それから2年が経過した2013年、東北の企業を中心に全国20社ほどが集まり、台湾にお礼をするためのツアーを企画しました。このとき私は訪問先のアレンジと案内役を担当しました。

日本の訪問団を連れて最初に足を運んだのは、ジャイアントでした。

日本側は震災時の支援に対するお礼をするために訪れたのにもかかわらず、ジャイアントでは社長が自ら出迎えてくれたうえに、立派な台湾のお菓子と自社のロゴマークが入ったマグカップを23人の訪問メンバー全員にプレゼントしてくれました。

このときのツアーでは、ジャイアントのほかに、高雄市政府やパソコンメーカーのエイサー(Acer)などにも表敬訪問し、お礼の気持ちを伝えています。

元々はこちらがお礼をする立場だったのに、どこに行ってもロゴ入りのマグカップやタンブラー、パソコンのマウスやボールペンなどをプレゼントしてもらいました。

■訪問先への手土産には気を遣ったほうがいい

こうした状況なので、台湾を訪れると、帰国時にはいただいたおみやげでスーツケースがいっぱいになります。帰国後はそれらをオフィスで使っていますが、おかげで身の回りのものは一気に台湾企業品に変わりました。

おみやげに限らず、ジャイアントやエイサーなど大手メーカー企業になると、本社の入り口にアンテナショップを構え、自社商品はもちろんのこと、関連グッズやノベルティなどを展示販売しています。つまり、自社ブランドのファン作りへの意識が徹底されているのです。

台湾を訪問予定のビジネスパーソン向けのアドバイスとして私がお伝えしたいのは、訪問先へのおみやげには心配りをしたほうがいいということです。

行きの空港で手早く購入した菓子折りを手みやげとしたところ、そのお返しとして何倍もの豪華なおみやげをもらい、恥ずかしい思いをしたという話を私は何度も聞いてきました。かくいう私も、かつてそうした経験をしています。

最近の日本の風潮からすれば、こうした贈り物文化を経費の無駄使いと考える向きもあるでしょう。しかし、こうしたおもてなしは台湾では礼儀として捉えられているのです。であれば、「郷に入っては郷に従え」(=中国語で「入境随俗」)を実践するしかありません。

■お客に「できたてで温かいものを」と考える

台湾人のおもてなし精神が最大限に発揮されるのは、食にまつわるときと言っても過言ではないでしょう。台湾の人たちは、来客者に対し、常においしいものをご馳走したい、できたてで温かいものを食べさせたいと考えているように感じます。

例えば、以前にこんなことがありました。

台湾南部の台南市を訪れ、ある企業の社長と商談をしていたときのことです。

そのときにふと、ある食べ物の話題になり、私はそれを食べたことがないと答えました。すると、「えっ!? 食べたことないの? せっかく台湾に来てくれたんだから、すぐにデリバリーを頼もう」と言い、その場ですぐに注文してくれたのです。

その食べ物とは、台南市で養殖されている虱目魚を材料としたスープでした。虱目魚はサバヒー(英名:ミルクフィッシュ)とも呼ばれ、台湾では養殖池で育てられます。たんぱくな味わいの身にはニシンのような小骨があるのが特徴で、台南市の名産として知られる魚です。

■外国人だから特別にしているわけではない

同じく南部の高雄市の会社を訪問し、会議をしていたときにも似たような経験をしたことがあります。

このときも会議の途中で「台北の麺よりもここの味付けはたんぱくでおいしいよ」という話になり、会議が終わったあとにご馳走してくれたのです。

台湾に通うようになった最初のころは、こうしたおもてなしは私が外国人だから特別にしてくれるのだろうと思っていました。

ところが、台湾人同士の付き合いを見る機会が増えてくるにつれて、こうしたおもてなしは彼ら同士でもよく行われているのがわかってきます。北部の台北から南部の高雄に訪問者があれば、高雄の名物でおもてなしをしますし、高雄の人が台北に行けば、台北の名物料理で歓待します。このように、「美味しいものを食べてもらうのが最上のおもてなし」という文化が台湾には深く根付いているのです。

■たった3日間の旅行で3キロも太った

その証拠に、私の両親が台湾を訪れた際には、台湾の友人が台湾グルメツアーを企画してくれたことがありました。朝食から夜食まで、B級グルメ、点心、台湾デザートなどを堪能する内容で、あちこちに大移動しながらの見事な食い倒れツアーでした。たった3日間の旅行でしたが、私の父は3キロも太ったほどです。

御堂裕実子『成長戦略は台湾に学べ』(かんき出版)
御堂裕実子『成長戦略は台湾に学べ』(かんき出版)

日本のクライアントのアテンドで台湾を訪れると、食べ物でのもてなしが続くので、クライアントの人たちは常にトイレの場所が気になって私に確認してきます。一方で、もてなす側の台湾の人たちは「日本のお客様」が食事に満足しているかどうかが気になり、日本のクライアントの反応を私に確認するというのがいつものパターンです。

日本人の多くは、自分たちこそが「おもてなし」の最たる実践者だと考えているかもしれません。しかし、台湾の人たちのおもてなし精神のレベルも相当なものです。

そんな彼らのおもてなしの方法を知ることで、新たなおもてなしのヒントを得られるような気がします。

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御堂 裕実子(みどう・ゆみこ)
日台ビジネスコンサルタント
1979年東京生まれ。明治学院大学卒業後、日本での広告代理店勤務を経て、台湾国立政治大学へ留学。帰国後2008年に日本企業の台湾進出サポート事務所、合同会社ファブリッジを立ち上げる。2017年には台湾Fabridgeを設立。日本の地方自治体のアウトバウンド支援や、食品会社、不動産企業、教育事業など様々な業界の台湾進出を手がけ、支援企業は200社を超える。

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(日台ビジネスコンサルタント 御堂 裕実子)

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