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60代になると転職も起業もできない…「会社に残るか辞めるか」を見極めるために今すぐ書き出したいリスト

プレジデントオンライン / 2023年3月7日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

定年延長が義務化され、継続雇用が努力義務の時代、どのタイミングで新しいことを始めたらいいか。経済ジャーナリストの荻原博子さんは「60歳を間近に会社に残るか辞めるかを決めるのでは遅い。なるべく早く会社にいることのメリット・デメリットを1枚の紙に書き出して状況を把握しておくべきだ」という――。

※本稿は、荻原博子『知らないと大損する老後の「お金」の裏ワザ』(SB新書)の一部を再編集したものです。

■20代、30代が簡単に正社員を辞めてしまう理由

今の年金受給者の中には、戦後の高度成長期からバブル期にかけて、日本経済が右肩上がりの中で生きてきた方が多くいらっしゃいます。

入社した時には給料は低かったものの、高度成長の波に乗って給料も右肩上がりに上がり、役職定年などもなかったので高い給料を基準に退職金をもらい、年金ももらっているので、悠々自適な生活を楽しんでいるという方も多いことでしょう。

しかも、まだ地価も安かったので、買ったマイホームが値上がりして資産になったという方もいるかもしれません。

ところが、バブルの頃に就職した今の50代は、バブルがはじけて給料が右肩下がりになっただけでなく、年功序列で上がつかえているのでなかなか出世できない。やっと出世したと思ったら、50歳を過ぎると役職定年の嵐が吹き荒れて給料が下がる。

60歳で定年になると、下がった額を基準に退職金が支給され、60歳から雇用延長を申し込むと、その時点でさらに給料が下がる。そして、下がった給料をベースに年金が支給される。

しかも、まだ地価の高い時に長期のローンを組んでマイホームを購入しているので、人によっては年金生活をしながら、住宅ローンを支払わなくてはならない人もいます。

かなり大変な50代に比べて、その子供たちはどうかといえば、すでに年功序列も終身雇用もない世代で、雇用の流動化も進んでいます。

あまり固定観念に縛られず、正社員で就職しても、辞めて派遣社員として働く、フリーランスで働くという人も多くなっています。

しかも、20代、30代は、インターネットなどのスキルを持っている人が多いので、自分1人食べていくならなんとかなりそうだと思っている人は多い。

また、女性がかなりしっかりと働いていることでダブルインカムになっているので、父親が1人で稼ぐ親世代よりも余裕がある人たちもいます。

ただ、だからといって、親を養うゆとりまではない。内閣府の「高齢者の現状及び今後の動向分析についての調査報告書」(平成22年)では、親への仕送りをしている人は、全体の約1.4%と、かなり少数派でした。

■「70歳まで働く」ことがあたりまえになる日も近い

2021年4月から、従業員が望めば70歳まで働ける会社が出てきています(改正高年齢者雇用安定法)。

現在は、本人が希望したら、会社は65歳まで雇わなくてはならない義務があります。ですから、会社員の場合には、希望すれば65歳までは働けることが保証されています。

ただし、給料に関しての規定はないので、多くの会社では60歳になると給料がかなり下がることは覚悟しておかなくてはならないでしょう。

会社が従業員を65歳まで雇うというのは義務ですが、2021年4月から、ここにさらに努力義務として「できれば70歳まで雇用してくださいね」というのが加わりました。

これは、今のところは「努力義務」なので、本人が希望すれば必ず70歳まで雇わなくてはならないということではありませんが、いずれこの「努力義務」も「義務」になっていく可能性が高いので、40代、50代で会社勤めを続けるなら、70歳まで働くことを視野に入れておいたほうがいいかもしれません。

また、年金をもらいながら働く場合、60歳から65歳まで働く人は、以前は月の給与の額が1カ月28万円を超えると年金が一部カットになっていました。

これが、2022年4月からは47万円を超えるまでカットされないことになったので、ほとんどの方は稼げるだけ稼いでも年金はカットされないようになっています。

加えて、65歳以上の人が厚生年金保険料を支払いながら年金ももらって働く場合、払った保険料が、すぐに年金額に反映されることになりました。

こうした状況を見ると、高齢者になっても働き続けられる環境が整いつつあるということです。つまり、働けるだけ働きましょうということです。

その裏には、現在65歳の年金支給年齢が、70歳まで引き上げられるかもしれないという厳しい現実もあります。こうした現実に、今からしっかり備えていきましょう。

人々が行きかう連絡通路で一人たたずみ風景を見るシニア男性
写真=iStock.com/stockstudioX
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/stockstudioX

■会社を辞めるか、残るかは早めに決めておく

今、会社にこのまま残って働いたほうがいいか、それとも会社を辞めて新しいことを始めたほうがいいか、迷っている人は多いのではないでしょうか。

多くの人は、60歳が近づくと慌てて「会社に残るか辞めるか」を考えはじめますが、時間がないとより良い選択ができなくなる可能性があります。

ですから、早めに決めて、第二の人生の準備をしておきましょう。

その際にしっかりと考えておいたほうがいいのは、現実的な観点から、この会社にいたほうがトクなのか、辞めて新しいことを始めたほうがトクなのかということです。

まず、会社にいることのメリットとデメリットを、1枚の紙に書き出してみましょう。なぜ、1枚の紙かといえば、1枚に書くと、状況が見えやすくなるからです。

《会社に残るメリット例》
・仕事を失うリスクがなくなり、収入が確保できる
・「厚生年金」「健康保険」に加入できるので、社会保障が手厚い
・有給休暇や各種休暇など、勤続年数で取れる休みがたくさんある
・慣れた仕事の延長で、今のスキルでやっていけるので楽だ
・企業が有名企業なら、娘が結婚する時や金融機関からお金を借りるのに有利

《会社に残るデメリット例》
・役職定年などで、先付け給料が下がる
・役職定年で、かつての部下の下で働かなくてはならなくなるかもしれない
・会社が傾いたら、会社と一蓮托生(いちれんたくしょう)の人生になる危険性がある
・調子のいい嫌いな同僚が、自分よりも出世していくのがたまらなく嫌だ
・50代なら転職できても、60代になると転職も起業もできなくなりそうだ

一例ですが、こうやって実際に書き出してみると、漠然と考えているよりも現状認識がしっかりできて、自分が本当はどうしたいのかが見えてくるはずです。

■会社にいるうちに得意なスキルを鍛え直しておく

会社を辞めて、第二の人生に進みたいと思った場合、後先を考えずに辞めても、今よりいい待遇が待っているとは限りません。

中途採用する側は、即戦力となる高い技術を身に付けた人を求めています。

ですから、会社勤めの人は、会社を辞める前にしっかりとスキルを身に付け、採用されやすい人材になっておかなくてはいけません。

スキルを身に付ける時に考えなくてはいけないのは、今まで自分はどんなことをしてきて、何が得意かということ。

得意なことをバージョンアップし、身に付けた技術を鍛え直すほうが、新しいことを一から始めるよりも、短時間で高いスキルを身に付けられるからです。

そのために、会社員でいるうちに「教育訓練給付制度」を上手に使いましょう。

「教育訓練給付制度」とは、国に一部受講費用の負担をしてもらいながら、厚生労働大臣指定の教育訓練講座でスキルが身に付く制度。簿記の資格を取るとかITの技術を身に付けるとか、内容はかなり多岐にわたっています。

どんなスキルが身に付けられるのかは、詳しくはハローワークで調べていただくといいですが、受講してこれを修了すると、受講にかかった費用の20%(4000円以上、上限10万円)を戻してもらえます。

たとえば、簿記の資格を取るために20万円かかったとしたら、受講後に領収書と教育訓練修了証明書を発行してもらってその他書類とともにハローワークに申請すれば、20%にあたる4万円が支給されます。

この制度は、通算で3年間以上雇用保険に加入していれば使えます。ただし、はじめて使う方は、雇用保険に1年以上加入していれば使えます。

次からは、3年に一度は使えるということです。また、会社を辞めても離職後1年以内なら利用することができます。

■かかった費用の最大70%が支給される制度も

「教育訓練給付制度」の対象となっている資格は、どちらかというと多くの人が取りやすいものになっています。

ですから、もっと専門的なスキルが身に付けたいという場合には、専門的なコースもあります。

より専門的なコースには「特定一般教育訓練」があり、介護支援専門員など特定の職種の資格を取ると、受講費用の40%(上限20万円)が支給されます。

さらに、2014年10月からは、従来の制度のほかに「専門実践教育訓練」というコースができました。

これは、さらに専門的な知識を身に付けるためのコースで、年間56万円を上限に、かかった費用の最大70%(※)が支給されます。

※ 雇用保険の被保険者となる就職をした場合

しっかり会社勤めしながらこのコースで資格を取るというのは難しいですが、最近は、会社も週休3日制や、中には週休4日などというところも出てきています。

また、長い間会社に勤めているという人なら、有給休暇もかなり利用できるのではないでしょうか。

こうしたものをフル活用しながら、ゆくゆくは専門家としての技術をしっかり身に付け、会社を離れても大丈夫なようにしておきましょう。

まずは、現在の自分が持っている技術を見直し、プランを練ってみましょう。

詳しくは、最寄りのハローワークへ問い合わせてください。

【図表】教育訓練給付制度の種類と給付率
出典=『知らないと大損する老後の「お金」の裏ワザ』

■甘い言葉に惑わされず、着実な副業を

今まで日本では、長い間多くの会社で副業が禁止されていました。

けれど、終身雇用や年功序列がなくなりつつある中で、給料も上がっていかない時代に突入しています。

こうした状況の中で、会社以外で働いて収入を得ることを解禁する企業や、奨励する企業も出てきています。

国も2018年1月から、国の「モデル就業規則」から副業禁止を削除し、会社での副業を容認しています。

会社員の副業として手頃なのは、インターネット上の副業です。副業を勧めるサイトもたくさんあります。

ただ、気を付けなくてはいけないのは、こうしたものの中には「副業詐欺」も少なくないこと。LINEやTwitter、Instagramなど、SNSを使って儲けを前面に打ち出すような詐欺です。

避けたいのは、最初に登録料などを取るもの。現金と交換できるポイントがもらえる仕組みも、ポイントがいつまでも換金できないケースがあるので注意しましょう。

また、「スマホでクリックするだけで数万円」などという甘い言葉で誘うものの多くは、詐欺だと思ったほうがいいでしょう。

荻原博子『知らないと大損する老後の「お金」の裏ワザ』(SB新書)
荻原博子『知らないと大損する老後の「お金」の裏ワザ』(SB新書)

メールやYouTubeなどで「月商1億円の稼ぎ方を教えます」などとやたらに高額をアピールするサイトがありますが、メールアドレスなどの個人情報を教えてしまうと、5万円も10万円もする高額セミナーを売りつけてくるものも少なくありません。

副業と似た言葉に「複業」があります。

「複業」の場合には、副業のように本業があってサイドで稼ぐのではなく、メインもサイドもなく、仕事をいくつか掛け持ちします。

ちなみに、2022年1月からは、65歳以上なら、「複業」でいくつかの会社に勤める場合、1社では雇用保険の加入条件が満たせなくても、2社合わせて条件をクリアすれば、雇用保険に加入できるようになっています。

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荻原 博子(おぎわら・ひろこ)
経済ジャーナリスト
大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。

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(経済ジャーナリスト 荻原 博子)

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