「同じ問題集をやり続ける」は非効率…現役で東大理IIIに合格した僕が「初見の問題を解く」にこだわった理由
プレジデントオンライン / 2023年3月15日 13時15分
※本稿は、ベテランち『やる気ゼロでも灘→東大理III 他力本願勉強法』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■「聞いたことがある」だけでは知識とは言えない
「勉強法」というと「どうすれば知識を効率的にインプットできるか」が語られている印象ですが、僕は勉強においてインプットと同じかそれ以上にアウトプットの質が重要だと考えています。
というのも、情報を得たとき、「ああ、それ聞いたことある、知っているかも」と思っているだけでは、その情報の本質については理解しておらず、「なんとなく知っている」だけの状態であることが多いです。これではまだ知識とは言えません。たとえ試験でそれについての問題が出ても、解答するのは難しいでしょう。
アウトプットが重要なのは、「聞いたことがある」程度のことを、試験で解答できる「知識」にするためです。当たり前のことですが、自分が知識を使えるかどうかは、実際にアウトプットしてみて確かめるしかないからです。そのため、情報をたくさんインプットした際には、今度はアウトプットできるかを、確認する作業をしなければなりません。
■模試の点数が悪くても、まったく問題ない
この後、実際にアウトプットの方法を具体的に紹介していきますが、その前に前提としてお伝えしておきたいのは、「結果」はさほど重要ではないということです。
例えば模試で「点数が低かった」「答えが間違っていた」などは、その場では悔しい、恥ずかしいかもしれませんが、受験の目標は本番で正しくアウトプットできることです。
受験勉強に必要なのは「なぜ点数が低かったのか」「なぜ答えが間違っていたのか」など、アウトプットに至るプロセスを見ることです。むしろ、こういった振り返りの材料を作り出すことこそがアウトプットの本来の目的ともいえます。
そのため、アウトプットしているときは、悩み過ぎず、わからないならわからないと問題を飛ばし、現在の自分の状況が正しく書き起こせるように心がけましょう。受験生は解いている問題を、「倒したら終わりのモンスター」のようにとらえがちです。
しかし、実際はそうではありません。むしろ、今の自分の状態を知る、病院の問診票のようなものです。ただの“ツール”です。わざわざ病院へ健康診断に行って、「自分は健康です」とアピールして嘘の問診票を書く人はいません。それを無理して「デキるアピール」するのは、健康診断前だけ痩せようとする人と同じです。答えが合っていても合っていなくても、それが今の状態。重要なのは、出てきた結果をもとに正しく次の戦略を練っていくことです。
■「同じ問題を何度も解く」はやってはいけない
アウトプットの基本的かつ最も重要な方法は、当然ですが、問題を解くことです。
僕が受験生だった時には、特に「とにかく初見の問題をひたすら解く」ということを重視していました。何周もしている問題集は、ページ数や、過去の自分の書き込みから、解き方や答えを思い出してしまう場合があるためです。
「どの手段を使えば問題を解けるか」と考えることは、これまでインプットした知識をかき集めアウトプットするということです。
「これは、もしかしたらあの問題と同じ手法で解けるのではないか? いや、違うな……そもそもあの問題の解き方はこうでよかったか……?」
となれば、「あの問題の手法」について自分が実は理解していなかったことに気がつけます。あとは「あの問題の手法」を再度インプットし直す作業に戻って、また問題を解いて、を繰り返せばいいのです。
インプットばかりして、アウトプットをせず「俺、数学は大丈夫」などと、わかった気になっている状態が、受験にとっては一番危険です。初見の問題をたくさん解き、自分のなかに、使える知識がしっかり蓄積されているか、確認作業を行う必要があります。
■思考プロセスを「フィードバックノート」にまとめる
ここからは具体的に、僕が初見の問題をどのように解いてアウトプットしてきたかを紹介します。僕は、数学の場合、東大の過去問を実際の試験時間150分を測りながら解いていました。できるだけ本番に近いかたちで解き、1回1回の答案用紙、計算用紙は必ずすべてとっておきました。
![マークシートの上の鉛筆や時計](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/c/1200wm/img_1c158fa47c3fcca7b81461866b3d0a75152992.jpg)
それをもとにあとで「フィードバックノート」というものを作っていました。これがとても重要です。この数学「フィードバックノート」は、解いた過去問一問一問、解説と照らし合わせて、どのように解いたのか、解けなかったのか、解答用紙のサイズと同じB4サイズの紙に書き込み、そのときの問題・答案・計算用紙と一緒にクリアファイルに綴じていました。
6問分をやりきったら、その総評も自分でつけます。
「この問題から解き始めたけど、ここで時間を食われたから、先に解きやすそうなこっちの問題をやっておいた方がよかった」
「ここで満点取れてるけど、これは最悪できなくてもいいから、こっちの問題の方が本当はできないとおかしい」
などです。
■自分の弱点は「ただの計算ミス」にこそある
また、計算間違いで不正解となっていた場合でも「ああ、計算ミスか」とただ思うだけではありません。どの部分のどの計算で間違ったのかまで把握して記入しておくようにしていました。「この積分の式をいちいち計算してミスしていたけど、よく見たら簡単な式にできたな。簡単な式だったらミスしなかったってことだな。あえて自分で式を難しくして失敗していた」など、普段は気づかない発見が計算ミスの裏には実はかなり潜んでいます。
逆に「本当はひとつずつ計算しないといけないのに、楽しようとして省略して間違えていた」ということもあります。とにかくミスはできるだけ細かく特定して記録していくべきです。
さらにこのフィードバックノートにまとまったものを後で振り返ると、問題の解き方のコツと本番で使える実践的な戦略が詰まったものになっています。特に受験直前の時期は、問題を無理に解かず、このフィードバックノートを見て自分の弱点を効率的に把握することが大切です。
150分で解いて、60分解答を見ながら振り返って、このノートをつけるまでが僕にとっての「過去問をやる」のワンセットのイメージです。
■自分を客観的に見られる仕組みをつくる
ここまでアウトプットのことを紹介してきたのは、自分で自分を客観的に見られるようになる必要が受験生にはあるからです。アウトプットの結果を振り返るときには、自分を客観視できていることが理想です。そのために、自分の「受験勉強マネージャー」になるようなイメージを持つ必要があります。
![ベテランち『やる気ゼロでも灘→東大理III 他力本願勉強法』(KADOKAWA)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/a/1200wm/img_7af03babc5f4a18edd3c1c34f9eb2a56116129.jpg)
アスリートには、その人を客観的に見て、その強み弱みを把握したコーチや監督がいるように、強い人には、自分を客観的に見て修正してくれる他人がいるのです。
受験の場合も、そういう他人がいてくれればいいですが、なによりも、自分が自分のマネージャーになってしまうのが、一番効果的です。
そのために先ほどのフィードバックノートが役立ちます。「この計算、ミスしやすいから、本番では必ずダブルチェックしよう」「この分野の問題をできるようになりたいって言ってるけど、でもこっちの分野の方が弱いから、まずこっちから始めよう」などなど、情報がつまったノートを見ると、優秀なマネージャーのように客観的に自分を分析できて、自分を修正する手掛かりになります。
■「受験勉強マネージャー」の仕事にリソースを割く
大学受験では、試験問題が解けるように必死に勉強することが大事だと思われがちです。
しかし、極端なことをいえば、受験のプレイヤーとしての自分を鍛える時間よりも、このマネージャーとしての自分を構築する方にリソースを割いた方が効率的だといえます。
だから、「目標を決めて」「道筋を決めたら」マネージャーとしての自分の能力を高めていくことを第一に考えた方がいいのです。ただがむしゃらに勉強だけを続けるより、1冊の赤本30周するより、「数学はできるようになってきたから、今はそこに集中させよう。地理はあとでいい」「飽きっぽいから予備校ひとつだけじゃなくて、夏期講習は他のところに行こう」など、常に考えながら勉強することが大切なのです。
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東大医学部生・YouTuber
1998年生まれ。灘中学校・灘高等学校を経て東京大学理科III類に合格するも、現在2留中。2020年、リモート授業でできた空き時間を活用し、YouTubeへの動画投稿を開始。東大生とは思えないほどの怠惰な性格と現実的な物言いを活かした動画づくりで人気を集め、2022年12月現在、チャンネル登録者数は14万人を超える。著書に『やる気ゼロでも灘→東大理III 他力本願勉強法』(KADOKAWA)がある。
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(東大医学部生・YouTuber ベテランち)
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