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サラリーマンは「iDeCo」をやってはいけない…荻原博子が老後の資金づくりにおすすめする"もう1つの選択肢"

プレジデントオンライン / 2023年3月8日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yusuke Ide

老後のお金を賢くつくるにはどうすればいいか。経済ジャーナリストの荻原博子さんは「自営業者・サラリーマンに『iDeCo』はおすすめできない。まずは退職金代わりになる『小規模企業共済』を検討すべきだ」という――。

※本稿は、荻原博子『知らないと大損する老後の「お金」の裏ワザ』(SB新書)の一部を再編集したものです。

■自営業者・サラリーマンにiDeCoがおすすめできない理由

「iDeCo(イデコ)」は、積立型の投資で運用したお金を、60歳になったらもらうという個人年金制度。金融庁の「iDeCo」のページを見ると、「『人生100年時代』が到来し、長期化する老後にそなえ、まず、ご自身の公的年金の状況を確認し、さらに、退職金や企業年金も含めて老後の資金を考えてはいかがでしょうか」と書かれています。

そこで登場するのが「iDeCo」で、3つのメリットが書かれています。

①掛金が、全額所得控除になる
②利息・運用益が非課税で再投資される
③受け取り時も、一定額まで税金の優遇がある

ただ、メリットばかりの金融商品などはありません。

実は、「iDeCo」には、しっかりと押さえておかなくてはならない大きなデメリットが2つあります。

①60歳になるまで、引き出せない
②投資商品なので、目減りする可能性がある

節税効果が大きなメリットなので、節税する必要がない専業主婦や収入が少ない人には関係ありません。

「60歳になるまで、引き出せない」という大きなデメリットがあるので、今は儲かっていても、いつ不況が来てお金が必要になるかわからない自営業者には、あまりお勧めできません。

また、不況になると給料が減ったりクビになったりする可能性があるサラリーマンも、辞めたほうがいいでしょう。

「iDeCo」で最も大きなメリットを受けるのは、60歳まで収入減や解雇の心配がなく、給料も高い方でしょう。

この条件にあてはまるのは、公務員。ちなみに、国家公務員の平均年収は約650万円。地方公務員は約600万円から700万円なので節税効果もあります。

■自営業者は「iDeCo」よりまず「小規模企業共済」の検討を

サラリーマンと違って自営業者には、退職金がありません。その代わり、定年退職もなく、自分が仕事を辞めると決めるまでずっと働き続けられる人が多い。

ただ、自営業者であっても、仕事を辞める時に退職金のようなものがあったら安心だという人は多いでしょう。

自営業者の方が老後の資金づくりをしたい時に勧められるのが「iDeCo」と「国民年金基金」。どちらも儲かっている自営業者には節税対策となり、将来は国民年金に上乗せしてもらえるものです。

ただ、こうしたものに加入する前に、自営業者ならまず検討したいのが「小規模企業共済」です。

「小規模企業共済」は、個人事業主や従業員20人以下の会社の経営者や役員などが加入できる制度で、仕事を廃業したら、その時に「退職金」代わりにもらうことができます。

ちなみに、定年退職後にシニア起業した方や、フリーターでも使うことができます。

■収入から年84万円控除でき、掛金の減額も容易

「小規模企業共済」のメリット①

「iDeCo」は投資商品なので、運用次第で増えるかもしれませんが、目減りの可能性もあります。また、投資ですから、「iDeCo」では、必ずリスク商品を選ばなくてはならなくなります。

もちろん、リスクのない預貯金もありますが、運用期間中に最低でも年間約2000円、多い金融機関だと年間7000円近い手数料を支払わなくてはならないので、預貯金を「iDeCo」で預けるのはナンセンスです。

一方、「小規模企業共済」は、月々1000円から7万円までの間で預け入れができ、「iDeCo」と同じように、預けたお金が全額所得控除になります。しかも、加入手数料や金融商品買付手数料、管理手数料などがかかりません。

年間に84万円まで預けられ、その分、実際の収入から控除で差し引くことができるので節税になります。もし、収入が減ったら、掛金を減額することも容易にできます。

また、投資ではないので、預けたお金を確実に1〜1.5%で増やせます。

■倒産・廃業ならいつでも元本割れせずに戻ってくる

「小規模企業共済」のメリット②

自営業者は会社員と違って、不況で資金繰りがつかなくなったり、思わぬことでお金が必要になったりすることがあります。そうなっても、「iDeCo」は60歳から、「国民年金基金」は65歳からの受け取りしかできません。

一方、「小規模企業共済」は、年齢と関係なく、廃業や事業を引き渡した時に、何歳からでも受け取ることができます。フリーだったら、仕事を辞めた時です。

「小規模企業共済」は、退職金のない自営業者が退職金を用意するための制度なので、会社が倒産したり仕事を廃業した場合には、何歳であっても預けたお金は元本割れせずに戻ってきます。

また、廃業せずに仕事を続けている場合でも、15年以上加入し続けていて65歳以上になっていれば、いつでもやめてお金を引き出すことができますが、この場合も、元本割れはしません。

ただし、倒産や廃業ではなく、仕事は続けているのに自分の都合で65歳になる前にやめるという場合には、加入して20年未満だと戻ってくるお金が元本割れします。

この制度は、あくまで小規模事業者のための退職金づくりの制度なので、仕事もやめないのに途中で共済をやめるとペナルティがあるということです。

リビングで電卓片手に金融の計算をする男性
写真=iStock.com/Pekic
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Pekic

■銀行より安い1.5%程度で掛金の7〜9割の融資

「小規模企業共済」のメリット③

「iDeCo」や「国民年金基金」と最も違うところは、貸付制度。

自営業者は、コロナ禍のようなことになるとお金に困るケースも出てきます。

「小規模企業共済」には貸付制度があるので、掛金の7〜9割の範囲で融資を受けることができます。貸付利率も、1.5%程度なので銀行で借りるより安い。返せなくなっても、自分が預けているお金と相殺されます。

自分のお金を出せないという不便さを、ある程度まで解消できるということです。

このように、投資なので将来どうなるのかわからない「iDeCo」よりも、確実に預けたお金が積み上がっていく「小規模企業共済」を先に検討すべきでしょう。

■「NISA」をやるならデメリットも把握する

「NISA(ニーサ)」とは、金融商品ではなく、「NISA口座」という金融口座の名前です。

通常の証券口座での取引は、投資商品を売って利益を得ると、利益に対して20%の税金(所得税・住民税)がかかります。さらに、2037年までは、ここに復興特別所得税0.315%もかかります。

けれど、この口座に入っている金融商品は、売って利益が出ても税金がかかりません。ですから、銀行や証券会社で買った株や投資信託を入れておくのです。

たとえば、100万円の株を買って、これが150万円まで値上がりしたので売ったとします。利益が50万円出るので、通常の口座に入っていると利益の約20%、つまり約10万円が税金として引かれます。

けれど、「NISA口座」に入っていれば、利益が出ても課税されないので、50万円が丸々手取りになります。

ただ、投資商品は、値上がりすることもありますが、値下がりすることもあります。

では、100万円で預けた株が50万円に値下がりしたらどうなるでしょうか。

「NISA口座」は、基本的には投資商品を5年で引き出さなくてはなりません。そして、引き出した時の株価が取得価格となるので、100万円で買った株が引き出す時に50万円だと、50万円で株を買ったということになります。

ですから引き出した後、株価が100万円に戻ったら、50万円で買った株が100万円に値上がりしたとみなされて、増えた50万円に対して約10万円の税金を払わなくてはなりません。

もともと100万円で買った株を100万円で売るので利益はないはずですが、税金を10万円も払わなくてはならない。つまり、「NISA口座」は、株が上昇していればおトクかもしれませんが、値下がりすると損をする可能性があるということです。

「NISA」には、少額を積み立てていく「つみたてNISA」もありますが、「つみたてNISA」は選べる商品が少なく、選んだ商品を途中で他のものに切り替えることができません。いったん売却して他のものを買うことになり、そこで節税効果も消えます。

もし投資するなら、こうしたデメリットも知っておきましょう。

ちなみに、2024年からは新NISA制度が始まり、内容が少し変わります。

■「預金」は銀行にとってリスク、預ける人にはノーリスク

退職金が銀行口座に振り込まれると、今まで会ったこともない銀行員から、「私が○○様の担当になったので、ご挨拶に伺いたいのですが」などという電話がきます。

銀行は、みなさんの口座を預かっているので、誰が、いつ、どこから、どれくらいのお金を振り込まれたかを知っています。

そのままにしておくと、他の金融機関に預け替えられてしまうか、そのまま「預金」として預け続けられてしまう可能性があるので、すぐに連絡を入れ、現金で投資商品などを買ってくれるように誘導します。

実は、「預金」というのは、銀行にとってはリスク商品です。こう書くと、「預金は預けておけば利息が付くことはあっても目減りすることはないのだから、ノーリスクじゃないか」と思う方もいらっしゃるでしょう。

でもそれは、私たち側から見た「預金」です。

銀行側から見ると、「預金」はリスク商品。なぜなら、「預金」を預かると、銀行はそのお金を管理しなくてはならないだけでなく、微々たるものでも必ず利息を付けて預金者に返さなくてはなりません。

そのためには、運用で増やさざるを得ません。ところが、低金利なので運用先がなく、少しでも増やそうと思ったらリスクを覚悟しなくてはなりません。

もちろん、預かったお金を運用してうまくいけばいいのですが、もし運用に失敗したら、損した上に預金者には利息を付けて返さなくてはならないことになります。

ですから、できればみなさんから「預金」を預かりたくない。そこで、「預金」ではなく投資信託などで「投資」をしてくださいと言ってきます。

「投資商品」は、買う私たちにはリスクがありますが、売る側の銀行には、売れば売るほど確実に手数料が入ってくるノーリスクの金融商品です。

価格が上がったり下がったりするリスクは買い手であるみなさんが負うのであって、銀行はその仲介をするだけだからです。

ノーリスクで、売れば売るだけ銀行に手数料が入ってくる「投資商品」は、銀行にとっては、最も確実に儲かる商品なのです。

■過去最高の100兆円突破「タンス預金に潜む罠」

年配の方の中には、銀行が破綻すると怖いから、お金を銀行には預けずに家に置いておくという人もいるようです。いわゆる「タンス預金」です。

荻原博子『知らないと大損する老後の「お金」の裏ワザ』(SB新書)
荻原博子『知らないと大損する老後の「お金」の裏ワザ』(SB新書)

日本では、1997年から98年にかけて、多くの金融機関が破綻しました。北海道拓殖銀行などという大手銀行の一角にあった銀行までもが倒産したので、銀行不信に陥った方も多かったようです。

さらに、史上空前の低金利となり、銀行にお金を置いておいても増えないので、家に現金を置く「タンス預金」が増え、過去最高の100兆円を突破しました。

ただ、今は政府もそんなに簡単に銀行を倒産させないし、もし倒産したとしても、「預金保険機構」で、銀行(信用金庫なども含む)1行あたり、預金1000万円プラス利息までは確実に守られることになっています。

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荻原 博子(おぎわら・ひろこ)
経済ジャーナリスト
大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。

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(経済ジャーナリスト 荻原 博子)

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