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「役職定年」と「早期退職」は、むしろラッキーである

プレジデントオンライン / 2023年3月10日 10時15分

50代になると、迫りくる「役職定年」と「早期退職」のプレッシャー。しかし、悲観することなかれ! 逆に利用すれば、人生を豊かにする素晴らしい制度であることが判明した。「プレジデント」(2023年3月31日号)の特集「『定年』の新常識」より、記事の一部をお届けします――。

■ガッカリするのはもったいない!

企業が早期退職者を募ったり、役職定年制度を定めたりするケースは、よくあります。早期退職とは読んで字のごとく、定年を待たずに退職を促すことです。多くは早期退職インセンティブを退職金に上乗せします。役職定年は、企業が定めた年齢になると管理職を解く制度で、大企業に多く導入されています。一般的に55歳を役職定年とする企業が多い印象です。中には、53歳くらいから58歳くらいまで、課長や部長などの職位ごとに段階的に役職定年を設ける企業もあります。

最近では一律に年齢で区切るのではなく、個々人の能力に応じて柔軟に処遇する例も出始めていますが、役職定年になると管理職から平社員になり、年収も下がることが一般的です。

役職定年も早期退職も、会社側の新陳代謝願望や賃金節約の意図が見えますが、日本は簡単に従業員を解雇できませんので、公募の形を取って退職を促しているのです。また、企業の業績が悪化したときに人件費を減らす目的で退職者を募集するケースもあります。いわゆるリストラです。

新卒入社から会社に尽くし、40年前後にわたり勤め上げてきた人にとって、役職定年は受け入れがたい人も多く、特に男性はガッカリするようです。「やっと部長になったのに、あっという間に部下に戻るのかよ」と。おまけに給料まで下がるので、ダブルでガッカリです。長く会社員だった人は、会社の中での職位が自分のプライドと密接に繋がっているため、職位が下がることで、プライドが傷つけられます。それは、給料が下がることより辛い現実かもしれません。ただ、ガッカリしてしまうのは、職位が上がることがキャリアアップであり、定年がキャリアのゴールだと捉えているからだと、私は考えています。

■定年は人生の通過点にすぎません

今は人生100年時代。定年後も働き続ける時代です。キャリアのゴールを60歳とせず、それ以降の人生プランを考えれば、定年は人生の通過点にすぎません。定年したら働かず、悠々自適に遊んで暮らすという考えもいいでしょう。ですが、そのうち暇になったり、家に居たら邪魔者扱いされるなどして再び働き出すケースもあります。それならいっそ、役職定年や早期退職を利用して、60歳以降の人生に向けた準備を始めることをお勧めします。

大企業を役職定年すると、定年までは部下の立場になって働くことになります。定年して会社を去った後は、仕事の選択肢は大きく2つに分かれます。1つは、中小企業に転職するパターン。もう1つは、自営業やフリーランス、小さな会社をつくるなど、独立開業するパターンです。いずれの場合も、大企業と違い、企画や営業、場合によっては経理も自分で担当する必要があります。大企業から中小企業へ転職すれば管理職に返り咲けるかもしれませんが、中小企業では管理職もプレイングマネジャーである場合がほとんどです。

フリーランスや自営業を選んだ場合は、それこそゼロから自分の力でつくり上げなければいけません。大企業でのマネジメントスキルだけでは通用しなくなるのです。長く管理職としてマネジメントに徹してきた人が、定年後に突然、営業や開業の実務ができるかといったら、かなり難しいでしょう。また、役職を解かれた人は部下だった人と同じ立ち位置になるはずなのに、いつまでも上司時代の感覚で部下に指示をしてしまう人がいますが、それも独立したら通用しませんので、命令ぐせは取り除かなければいけません。

そこで、管理職を解かれ平社員になる現実をピンチではなくチャンスと捉え、実務を一から学び直し、定年後に活かしてほしいのです。給料をもらいながら定年後の働き方の予習ができるわけですから、チャンスとしか言いようがありません。大企業に勤めていれば、給料が下がったとしても市場相場から見れば高いはずです。大企業で課長・部長職だった人は、多くが年収1000万円以上だと思います。役職定年になって、年収が300万円下がったとしても、まだ700万円はあります。

一方で、日本の約9割にも及ぶ中小企業で働いている人の多くは年収700万円に届かず、年功序列でもありません。日本人の平均年収は400万円台です。そういう意味でも、役職定年になっても高い給料がもらえて、役割や仕事があり、退職後の準備もできるのは恵まれていますよね。

50代以上はキャリアデザインの意欲がやや低い!

定年後の働き方を豊かにするためには、なるべく早くから準備を始めるに越したことはありません。私がインタビューをした方で、グローバルメーカー在職中の56歳で美容師資格をとり、58歳で早期退職し転身された人がいます。50歳頃から第二の人生は人の役に立ちたいと考えていたようです。

■50代のうちに準備すべき2つのこと

さて問題は、定年後に何をするか。「あなたのやりたいことはなんですか?」と聞かれて、あなたはすぐに答えられますか? これまで会社が求める仕事で成果を上げてきた会社員にとって、「退職後は好きな仕事をしていいよ」といきなり言われても、何をしていいかわからないものです。普段からゴルフや映画、旅行などの趣味があればそれを活かす手もありますが、特にやりたいことがない場合は困ります。結局、会社員時代の仕事を続けるしかないと思う人もいるでしょう。もちろん、今ある専門スキルを活かして独立するのもいいと思います。

また、退職する前に会社のリスキリング制度を利用して学び、新たな分野で働くのも一手です。定年・退職後の労働時間は自由に決められますから、とにかく難しく考えず、やりたいことをマイペースで始めればいいんです。会社員でなければ、就業規則は自分ファースト。1日何時間働こうと、何曜日に休もうと、誰からも叱られません。年金に加えて退職金や企業年金基金があればなおさら、あくせくと働く必要はないでしょう。好きなことをマイペースで仕事にできるのが、定年後の働き方の魅力です。

まずは定年後に何をしたいかを決め、定年までの間、働きながら営業や企画、事務などを学んでいきましょう。会社は学びの宝庫。定年までしっかり学び尽くし、使い倒しましょう。定年までの間を定年後の人生の準備期間だと思えば、役職を解かれ平社員になり、実務をするのも楽しくなります。むしろ、独立後の幸せなキャリアに直結するわけですから、これまでよりさらに自分ごととして仕事ができるかもしれません。

準備として、最後に私からお勧めしておきたいことが2つあります。1つは、営業経験がない人は退職までの間に営業を経験しておくこと。のちに独立や開業をすると、新規客は自分で見つけなければいけないからです。今まで管理職として指示命令をしてきた自分が自ら営業するなんて……とプライドが許さない人もいるかもしれませんが、定年後に会社の看板がなくなったら、もう肩書は通用しません。

もう1つ、会社村から脱出して仕事以外の新たなコミュニティをつくり、肩書など関係ない、一個人として付き合える人間関係をつくりましょう。共通の趣味を持つ友達、資格受験や学びの友達、セミナー参加、商工会議所、同窓会などで得た新たなコミュニティが、定年後の心強い仲間になり、孤独な時間をなくしてくれます。

幸せな第二の人生の扉は、もう目の前にあるのです!

どうする!? 役職定年との向き合い方

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前川 孝雄(まえかわ・たかお)
FeelWorks代表/青山学院大学兼任講師
人材育成コンサルティング会社経営。リクルートで編集長を務めたのち、2008年に起業。「上司力Ⓡ研修」「50代からの働き方研修」などで400社以上を支援。著書に『50歳からの逆転キャリア戦略』『部下全員が活躍する上司力 5つのステップ』ほか。

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(FeelWorks代表/青山学院大学兼任講師 前川 孝雄 構成=力武亜矢 図版作成=大橋昭一 イラスト=前田はんきち)

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