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若い頃は浮気ばかりで、家族から嫌われていたのに…90代でもニコニコと楽しく暮らせる人の共通点

プレジデントオンライン / 2023年3月11日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Cecilie_Arcurs

高齢になってもニコニコしている人にはどんな共通点があるのか。精神科医の和田秀樹さんは「大切なのは『これがしたい』という意欲だ。この意欲がある人は明るく活発的で、愛される老人になれる。一方、我慢を続けてきた人は、不平不満の多い愛されない老人になってしまう」という――。

※本稿は、和田秀樹『90歳の幸福論』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

■「これがしたい」を失うと一気に老け込む

高齢になっても、楽しそうに生きている方々にはひとつの共通点があります。

それは、「好きなことをやっている」ということ。「健康に気遣い、細心の注意を払って生きてきた」というよりは、「やりたいことをやって生きていたら、気が付けば90代になっていた」という人のほうが圧倒的に多いのです。

多少腰が曲がっていても、車いすであっても、楽しそうな高齢者は自分の意思で活発に動き、いつも明るく朗らかで、ニコニコしています。

本書でも詳しく解説していきますが、数多くのお年寄りを見れば見るほどに、つくづく高齢者にとって何より大切なのは「これがしたい」という意欲だと強く思います。

よく会社を退職した方や子育てが終わった方がおっしゃるのが、「やることがなくなってしまって、心にぽっかりと穴が空いてしまった気がする」という一言です。また、このように意欲を失ってしまった方ほど、外出する意欲などが減ってしまうからなのか、老け込むのも早くなります。

その一方で、「こう見えても忙しいのよ」「毎日やることがあって、一日がすぐに終わってしまう」とつぶやく方もたくさんいます。こういう方ほど、いつまでも元気に見えます。

これは何も気力のせいだけではないと私は思います。毎日何かしら予定が入っているので、体を動かすし、頭もフル回転させるので、心身共に老け込みづらいのでしょう。一方で、目的がなくぼんやりと家の中で過ごしている人は、頭も体も使わないので、その機能がどんどん衰えてしまうのだと思います。

■40~50代になると始まる「感情の老化」

定年前は「老後はあれをしよう」「これをしよう」と決めていたのに、いざ時間ができると、どうしても腰が重くなってしまうもの。気が付けば、リタイア後にやりたいことをたくさんリストアップしたのに、いざリタイアしてから何年経っても、まだひとつも達成できていない……なんて人も決して少なくありません。

これが老いの怖いところで、どんなに体が元気であっても、意欲が衰えてしまえば体は動きません。どうして人は老いると意欲がなくなってしまうのでしょうか。

その原因は、感情の老化です。外部からの刺激に反応しづらくなるので、自分の心にワクワクした気持ちや「これをやりたい!」といった強い気持ちが起こりづらくなるのです。

なぜ、感情が老化するのかというと、脳にある前頭葉という部位に要因があります。

前頭葉は感情や創造性などを司る脳の部位で、唯一人間の脳だけで特別に発達した器官として知られています。ところが40〜50代になると、前頭葉の萎縮が徐々に始まってしまいます。中年になると、「若い頃よりもやる気がなくなった」「どこかに行きたいという気持ちがなくなった」という人が増えていくのは、前頭葉の萎縮が原因だと考えられています。

黒板に描かれた人間の脳のイラスト
写真=iStock.com/eli_asenova
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/eli_asenova

■前頭葉を刺激して、活発化させる方法

ただ、前頭葉が萎縮すればその機能が必ずしも低下するかというと、そういうわけではありません。刺激を与え続ければ、機能低下を防ぐことはできるのです。

前頭葉を刺激するのに大切なのは、「やったことがないことにチャレンジすること」「ワクワクするような楽しいことをやること」という二つです。

食べたことのない食べ物を食べたり、行ったことのない場所へ行ったり、話したことがない人と話したり、やったことのないスポーツに挑戦したり。苦手なことであっても、初体験の高揚感から意外と楽しめることも多いです。すると、前頭葉が刺激を受けて活性化されます。

高齢者になったからこそ、「新しいこと」にどんどん挑戦してみてほしいと思います。

■家でゴロゴロしていると心身がどんどん衰える

「老後になったら、家の中でゆっくりしたい」
「歳を取ったら、ひっそりと静かに暮らしたい」 

そんな老後の理想を抱く人もいるかもしれません。けれども、「永遠の休みをあげる」と言われたら、意外と困ってしまうものです。

たまにゴロゴロして休むのは楽しいですが、毎日その状態が続いていたら飽きてしまうはず。また、家の中で寝っ転がってばかりいては身体機能が低下するし、やる気もどんどん衰えてしまいます。

そのまま90代を迎えたら、脳や体の機能低下がどんどん進んでいくことは間違いありません。

とはいっても、幸せな90代を過ごすためとはいえ、「毎日1万歩歩く」「1時間散歩する」「脳トレをする」などのルールをつくると、楽しくないので、次第にやりたくなくなります。

■「つまらないこと」を続けても効果は微妙

さらに、何事も「つまらないなぁ」と思いながらやっていては、意欲は落ちます。また、脳は、退屈なことや自分が本当は嫌がっていることをやるときは、なかなか活性化しません。

嫌いなことを勉強してもなかなか身につかないのに、好きなことを勉強するとぐんぐん吸収するのと同じことです。だから、「体のため」「頭をぼけさせないため」といって義務感でやっているものは、せっかく頑張っても、あまり効果がないのです。

自分にとってつまらないことを「楽しい」と思うのは至難の業。だから、高齢になればなるほど、自分にとって「楽しい」と思えることをどんどんやることが肝心なのです。

「やりたいこと」「好きなこと」は何も立派なことでなくても大丈夫です。「え、こんな些細なことでもいいの?」と思うことでも、きちんと取り組めば、頭も体もたくさん使います。

■料理や家庭菜園、釣り、旅行…なんでもいい

たとえば、「これまでに作ったことのない料理を作ってみたい」というアイデアが浮かんだとします。その場合、まずはレシピを調べて、材料をリストアップする必要があります。買い物に行って、材料をはかって、切って、煮たり焼いたりといった調理も必要です。その間にお鍋やフライパンなどを洗ったりすることもあるかもしれません。料理ができたら、食器を並べて、おいしそうに見えるように盛りつけて……。

どうでしょうか? 「作ったことのない料理を作る」という一見簡単なことでも、非常にたくさんの作業が必要になることに気付くでしょう。

以前からやってみたかったことだったら、なんでもいいのです。ワクワクするようなことはなんだったのかを、じっくりリストアップしてみましょう。

家庭菜園や釣り、旅行、音楽、美術館巡り……。自分がやってみたいと思うことに、思う存分挑戦してみてください。 

新しい刺激を受けて前頭葉が活性化すると、ストレスもなくなるし、気持ちも元気になります。また、新しいことに挑戦すれば体も疲れるので、ぐっすり眠れます。

■愛されるお年寄りと愛されないお年寄りの壁

幸せそうに暮らしている90代は、ほぼ例外なく周囲の人から好かれる「かわいいおじいちゃん」「かわいいおばあちゃん」だと思います。

愛されるお年寄りは、ちょっとぼけていても、いつもニコニコしていて幸せそうです。素直に人の助けも借りることができるので、車いすを押してもらったり、食事などの介助をしてもらうときも喜んで受け入れます。

反対に、愛されないお年寄りは、何をするにも不平不満ばかり言っていたり、「自分でやりたい」「触らないでほしい」「年寄り扱いするな」といって拒絶反応を示しがちです。

心を閉ざしがちなシニア男性を心配する介護士
写真=iStock.com/Goodboy Picture Company
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Goodboy Picture Company

こうした差はどのようにして生まれるのでしょうか。私自身が長年数々のお年寄りを観察してみた結果、若い頃から我慢を重ねてきた人のほうが、高齢者になったときに人へのあたりが厳しくなる傾向があるようです。

■周囲に迷惑をかけても「憎めない」理由

以前、老人ホームで働く介護関係者の知人から聞いたのが、いつもスタッフに文句ばかり言っているきついおばあさんの話でした。常に人に当たり散らしてばかりいるので、スタッフの間ではあまり好かれていません。

では、昔からその人が、人から嫌われる人だったのか……というと、決してそんなことはありません。実はこの方は良妻賢母で子どもも立派に育てたようなしっかりした方だったのだと聞かされました。

一方、そのホームには、いつもニコニコしていてスタッフに愛されているおじいさんがいました。この方は、時々介護者に悪戯をするなど、とんでもないことをしでかす人だったそうですが、いつも笑顔で明るいため「憎めない」として、施設内でも人気者だったそうです。

そのおじいさんの若い頃の話を聞いてみると、浮気ばかりして、子どもたちからは全く好かれていなかったとか。ところが、かなり認知症が進んだ現在でも、いつもニコニコして多くの人から好かれていたのです。

■真面目でしっかりしている人ほど要注意

この話を聞いたとき、私が抱いたのは、「人間は我慢しないで生きてきた人のほうが、歳を取ったときに憎まれない人になるのだろうか」という感想でした。

和田秀樹『90歳の幸福論』(扶桑社)
和田秀樹『90歳の幸福論』(扶桑社)

真面目な人やしっかりしている人は、ルールや決まり事に厳格で、「こうあるべし」という考え方に陥りがちです。特に、90代くらいになると、感情をコントロールする前頭葉をはじめとする認知機能などの影響もあるのか、その人本来が持っている性格がより一層強く出るようになります。

だからこそ、嫌われ者のおばあさんのように「いいお母さんであろう」「いい妻であろう」と我慢に我慢を重ねて生きてきた人は、歳を取ったときもその考えが脳に染みついているので、本格的に歳を取って、いざ楽ができるタイミングになってからも、自分や周囲に厳しい態度が表に出てしまうのでしょう。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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