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「自分はもっとできるのに」と不満を垂れる"青い鳥症候群"のビジネスマンにこそ勧めたい転職以外の選択肢

プレジデントオンライン / 2023年4月3日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/itakayuki

今の会社では自分の望むキャリアを歩めないと思ったら、どうすればいいか。フリーランス人材マッチング等に携わる岡本祥治氏は「今いる職場が気に入らないから『転職する、フリーランスになる』という人は、たとえ次のステップに進めたとしても、うまくいく可能性は低い。『自分の望むキャリアを、会社が叶えてくれない』という人にはやりたい仕事を副業で挑戦することをお勧めする」という――。

※本稿は、岡本祥治『LIFE WORK DESIGN』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■「やりたい仕事」は、本業ではなく副業で

大人になると、誰しも100%望む人生を歩めるとは限りません。特に仕事に関しては、「本当は○○がやりたいのに……」「本当は○○の部署でキャリアを積みたかったのに……」という失望感を抱くこともあるでしょう。

せっかく会社に勤めているのに、自分のやりたいことに挑戦できない。そんなときには副業でのチャレンジがお勧めです。

ここで一例を紹介します。不動産系の会社でIR関係の仕事に勤めていた人が、「副業」でマーケティング・ブランディングビジネスに従事するようになったエピソードです。きっと、皆さんのキャリアとかけ離れた夢物語ではないことに、気づいてもらえると思います。

30代の山本さん(仮名)は、日本を代表する総合不動産デベロッパー企業のグループ会社で働いていました。主な仕事はIR関係で、日々の仕事はやりがいも大きく、充実した日々を過ごしていました。一方で、山本さんの大学時代の専攻はマーケティングで、いずれはその方面にキャリアチェンジしていきたいとの思いも抱いていました。社内でも希望は出していましたが、なかなか通りません。そこで山本さんは発想を変え、副業でマーケティング分野を募集している企業を探し始めたのです。

■地方の中小企業で希望の職種に

縁あって副業を得たのは、鳥取県の中小企業でした。“中小”とはいえ、そこはM&Aを繰り返すことで企業規模をかなり大きくしてきた会社でした。ただ、多様な企業を吸収合併したことで、グループ全体のブランドがぼやけてしまい、「改めてブランディングを見直したい」「地元に対してもきちんと企業価値を発信していきたい」と、ブランディングのプロを副業枠で募集していたのです。

オフィスで働くキャリアウーマン
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

山本さんは応募者18倍の競争を勝ち抜き、見事、副業としてのブランディング担当の地位をゲットしました。本業と職種が異なることは応募段階での懸念材料ではありましたが、大学でマーケティングを専攻していたこと、本職でのキャリアもしっかりと評価されたこと、なにより山本さんご自身の真摯な人柄とコミュニケーション力が功を奏して、無事18倍の難関を突破することができたのです。

■本職を辞めるつもりはない

その後も山本さんと企業の関係は良好で、すでに1年を経過していますが「副業」は順調に継続しています。おそらく副業での経験は今後、本職でも活かされていくことでしょう。次に社内でキャリアチェンジを望むとき、「外部の企業でこれだけマーケティングやブランディングの仕事をしてきました」と実績を示せば、社内異動でもご自身の希望に近いポジションが見込めるはずです。

また、山本さんが特徴的なのは、本職を辞めるつもりはないということです。本業である会社の待遇も給与も福利厚生もすべてにおいて、山本さんは満足しています。ただ、自分の中の選択肢を増やすことで、漠然とした将来の不安もだいぶ解消されました。もし将来的に、会社で実力を発揮できない立場になったなら、50代、60代で独立して、フリーランスのブランディング・コンサルタントとして活動もできるはずです。生きるための選択肢が増える。こんな実感を持てるのは、「副業」経験者ならではの大きなメリットです。

■「会社のせいで」は成長を止める口癖

山本さんの例で学べることは、もう1つあります。それは「○○のせい」という他責の念を捨て、自責で生きるということです。本来、マーケティングをやりたかったのに、ずっと違う分野で働いてきた違和感を拭いきれなかった山本さんですが、「会社のせい」にしなかったことが見事でした。転職支援の現場にいると、自社の悪口を延々と繰り返す人も、よくいるんです。そうした人の転職・独立動機は極めて単純です。「自分の望む生き方を会社が叶えてくれないから離職する」という動機です。これは山本さんの副業動機とは、似て非なるものです。

会社と個人の関係は、ギブ&テイクです。会社から報酬や成長の機会を与えてもらう代わりに、仕事の成果を返す。それが本来の関係性であるべきなのに、後者のテイクを提供せず、会社からのギブだけを待っている間は、社内でも社外でも活躍できる人材とはなりません。

今いる職場が気に入らないから転職する、フリーランスになる。こういう人が次のステップを求めても、大抵うまくいきません。次の職場ではまた新たな文句を羅列して、「自分はもっとできるのに」と自説を繰り返すことでしょう。今いる場所で、自ら成長の機会を求めることなく、ただただ評価してもらうことだけを求めている、「青い鳥症候群」の特徴です。

人生100年時代に欠かせないのは、自分の人生を自分の足で歩む覚悟です。人生にレールは敷かれておらず、自ら1本1本敷いていかなくてはならないのは、仕事においても同じことなのです。

■ステップアップにつながらない副業

しかし、社外に出さえすればなんだっていい、というわけでもありません。ざっくりと社外に出る方法の優先順位をつけるとすると、以下のようになります。

①フリーランス >  ②「ホワイト副業」 > ③ボランティア

ここで1つ注意をしておきたいのは、まったく自分の専門外の分野で副業などをしても、ステップアップには結び付かないという点です。例えば、自分はメーカーに勤めているのに、副業として簡単な動画編集や飲食店の出前的なギグワークをやってみようという人がいます。単純に「お金を稼ぎたいから」なら、それでもいいのかもしれません。

でも、将来的に第二の人生を歩むためのスキルアップを目指すなら、自分の領域を広げたり深めたりする仕事でなければ、意味がありません。自分しかできない価値を提供できるような「副業」「プロボノ」「ボランティア」を選ぶべきなのです。

スマホを見て喜ぶ女性
写真=iStock.com/tun723
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tun723

その際、報酬の多い少ないは、関係ありません。むしろ大切なのは、自分の専門分野のスキルを提供することで、「誰かが喜んでくれる体験」を持つことです。自分が主体的に動きアイデアを出すことで、誰かを幸せにできたら、それはかけがえのない喜びになるはずです。

■少しでもいいから「お金をもらう」

特に今、大企業の歯車として動いているにすぎないという感覚を、もしあなたがお持ちなら、ぜひそういう体験を一度でも味わってほしいのです。本来「人を幸せにする」ために働くのが仕事であるべきなのに、そんな根源的な動機を失いつつある人にとっては、重要な原点回帰になるはずです。

そしてボランティアですが、できることならば、無償のボランティアより、少しでもいいから報酬を得ることを私はお勧めしています。「無料」はどうしても、アウトプットに妥協が生じがちだからです。技術提供する側は、「無料なんだから、この程度でいいだろう」と甘えてしまうし、依頼する側も「無料なんだから、これ以上を求めるのは申し訳ない」と遠慮が発生してしまう。当然、成果もクオリティが一段低いものとなりがちです。もちろん「純粋な好意から支援をしたい」という意味でのボランティアならばいいですが、もし、キャリアアップを意識して力試し的に行うのであれば、対価が発生しないと、真剣さやヒリヒリ感を味わいにくい。少額でも「仕事」として引き受ける責任感と、達成感を、どうか味わってほしいのです。

アジアの女性ビジネスウーマン説明
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

■社外に飛び出せばスキルは“宝石”になる

「ボランティアと言ったって、そもそも誰かに提供できるようなスキルなんてないよ」と、敬遠する人もいるかもしれません。しかし、これは皮肉でもなんでもありませんが、“大企業の歯車”としての体験でさえ、小さな企業では貴重な知見になることは多いのです。

岡本祥治『LIFE WORK DESIGN』(プレジデント社)
岡本祥治『LIFE WORK DESIGN』(プレジデント社)

プロジェクトの工程管理、各部署の調整事、スケジュール管理、これだけで1つの職として成立するほど重要なスキルです。そう、企業で働いている人たちはみんな、気づかぬうちに、様々な場所で人を幸せにする能力を、すでに持っているのです。

この記事を読んでいる人の中には、現在の仕事に、やる気や熱意を失っている人もいるかもしれません。さらには、「自分の仕事(実力)など大したことない」「会社からも評価されていない」と感じている人もいるのではないでしょうか。

でも、「ある企業から『不要』とみなされた能力・スキル・経験も、場所を変えれば『喉から手が出るほど欲しい』能力・スキル・経験になりえる」というのが、私が人材マッチングの事業を通じて、得た実感です。

すなわち、今まであなたが身に付けてきたスキルは、実は、見つけて磨きさえすれば、光り輝くことのできるポテンシャルを秘めている「原石」なのです。

本書では、その方法を皆さんにしっかり伝えたいと考えています。

どうかあなたの持つ技術・発想・ノウハウを1社のみで埋没させるのではなく、複数の企業・組織・土地に伝えていってください。「取るに足らないスキル」と思い込んできた「ただの石」が、ところ変われば「宝石」に転じる可能性は大いにあるのですから。

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岡本 祥治(おかもと・ながはる)
みらいワークス代表取締役社長
1976年生まれ。神奈川県出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)株式会社に入社。金融、通信業界などのプロジェクトに参画した後、ベンチャー企業の経営企画部門へ転職。海外・日本47都道府県などの旅を通じて「日本を元気にしたい」という想いを強め、2007年に起業、2012年に株式会社みらいワークスを設立。働き方改革やフリーランス需要の拡大とともに急成長し、2017年に東証マザーズへの上場を果たす。現在は、独立プロフェッショナルのためのビジネスマッチングサービス『フリーコンサルタント.jp』、転職支援サービス『プロフェッショナルキャリア』、都市部人材と地方企業をマッチングする副業プラットフォーム『Skill Shift』、地方創生に関する転職マッチング・プラットフォーム『Glocal Mission Jobs』などを運営するほか、45歳以降のセカンドキャリア構築を支援する『HRソリューション』、企業・自治体のオープンイノベーションを支援する『イノベーション・サポート』といったソリューションを展開するなど、事業を通じて「『人生100年時代』を生き抜く為の社会インフラ創造」「東京一極集中の是正」「人材流動性の向上」といった社会課題の解決に取り組む。

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(みらいワークス代表取締役社長 岡本 祥治)

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