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「人生に一度はフリーランスを経験せよ」人材のプロが掲げる老後も働き続けるために必要な条件

プレジデントオンライン / 2023年4月17日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Edwin Tan

人生100年時代、老後のリスクを最小限に抑えるには、何が必要か。人材マッチングプラットフォームを運営する岡本祥治氏は「私は生涯リスクを回避するために、フリーランスを経験することを提唱しています。もし今、安定した(と思える)職場に勤めているとしたら、特別な下準備や大きな覚悟はいりません。『副業』から試してみてください」という――。

※本稿は、岡本祥治『LIFE WORK DESIGN』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■「好きを仕事に」が必要不可欠な時代

あなたの「好き」は何ですか?

あなたが時間を忘れてのめり込むほど「好き」なことは何でしょう?

ここで「ライスワーク」と「ライフワーク」の定義を確認しておきたいと思います。

「ライスワーク」とは、自分や家族が生きるために必要な糧を稼ぐための、生命をつなぐための仕事のことです。

一方の「ライフワーク」とは、人生を賭けるに足る(と感じられる)生きがいとしての仕事のこと。「自分はこの仕事のことが好きだ」「この仕事を一生やっていきたい」と心から思える喜びを生じさせる仕事のことです。長い人生を生きるうえで、特に初期のころは「ライスワーク」が仕事の多くを占めるものですが、それを徐々に「ライフワーク」にシフトしていくことが、「仕事」において幸せを感じられる1つの道であることを述べてきました。

そして、「ライスワーク」から「ライフワーク」にシフトするうえで、一番大切になってくるのは、「好き」という感情です。

「好きを仕事に」などと言うと、青二才の世迷い言のように響くかもしれません。でも、食べるためだけの仕事ならいざ知らず、人生にやりがいや使命感を求めるならば、「好き」は必要不可欠です。そのことに私自身、ある時点で気がつきました。

■「やりたいことが特にない」人生を変える

「起業しよう!」と思い立った当時のこと。

私自身「起業」を思いついたのはいいけれど、何か強烈に「これをやりたい!」「これが好き!」と熱望するものがなかったのです。

でも、考えればそれもそのはず、「そこそこ勉強して、そこそこ知名度の高い会社に入って、そこそこいい年収を得る」というくらいの漠然とした目標しかなかったのだから当然です。改めて自分の「好きは何だろう」と考え始めても、最初は何も思い浮かびませんでした。

いろいろな業界の人と会ったり、自宅でゆっくりくつろいだりしながら、過去の子ども時代も振り返り、「自分の好きだったものは何だろう」と考えました。試験で頑張っていい点を取り、有名大学に進学し、誰もがその名を知る大企業に就職する――。かつてそれは「勝ち組」人生スタートのゴングのようなものでした。

しかし、人生何が起こるか分かりません。心や体の健康を崩して、その会社を辞めることになるかもしれませんし、人間関係のトラブルで嫌気がさすこともあるでしょう。そもそも「これは自分のしたいことではなかった」と気づく人もいるでしょうし、思わぬ“転機”がやってくるかもしれません。

大学名も、企業名も取り払った後に残る、自分は一体「何が好きな人間なのか」。こう自ら問いかける時間は、私の人生で貴重なひとときとなりました。

ビジネスパーソン
写真=iStock.com/whyframestudio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/whyframestudio

■3つの掛け算で「ライフワーク」を見つける

考え続ける中で、見えてきたことがありました。それは、人生を賭けるべきライフワークには、3つの掛け合わせが大切だということです。

①「自分の好きな(興味のある)こと」
②「自分ができること」
③「自分にとって“社会的意義がある”と感じられること」

この三者が交わる領域で仕事ができ、なおかつ自分や家族が食べていけるだけの収入を得られたら、きっと幸せになるだろうと気づいたのです。

実は、みらいワークスを立ち上げる前、「“環境問題”を解決するための仕事はどうだろう?」とアイデアを持ったこともありました。ちょうど東日本大震災や福島第一原発事故が起きた時期で、世の中の人の助けにもなるし、社会的意義のある仕事がしたいと考えていた時期です。実際に東日本大震災の直後のゴールデンウィークには、チェルノブイリ原発にも足を運び、原発と自然、サステナブルな社会について、現地で体感してきました。

しかし、この視点は、③「社会的意義」は大きかったものの、①と②の視点が抜け落ちていました。つまり「社会的意義は大きい」けれども、環境問題を大学で学んだわけでもなく、放射能に詳しいわけでもない自分に「できること」は少ないと気づいたのです。ましてや、「自分が好きな興味範囲」でもありません。チェルノブイリの荒れ果てた光景に心を痛めはしたものの、「これは自分が起業してどうこう」という領域ではない。ここに興味を持つ人に任せるべきだと感じてしまったのです。

■結局は「好き」があるから続けられる

世の中に社会企業家は数多くいますし、「人々の助けになる、社会的インパクトの大きい起業」というのも、素晴らしいと思います。ただし、そういう活動をしている人も、結局は根底に「好き」という思いが横たわっているのではないでしょうか。

「好き」という言葉がふさわしくないなら「どうにかしたい」「とても気になる」「それに関わっていると時間を忘れる」などの心的状況です。そうした熱意・情熱があるからこそ、人は没頭してその仕事にまい進することができるわけです。

自分にもそうした領域が、必ずあるはずだと、さらに思考を巡らせました。

①「自分の好きな(興味のある)こと」で、なおかつ②「自分ができること」③「社会的意義のあること」とは何だろう。グルグル考え続ける中で、たどり着いたのが、「地方創生」「中小企業支援」「海外とのつながり」の3つに取り組みたいフリーランスの人材をサポートすることでした。

オフィスでビジネスを議論
写真=iStock.com/imtmphoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/imtmphoto

■自分の「好き」を仕事にするための方法

このような自分なりの答えに出合うまでは、迷いながら歩き続ける期間も必要でした。

わざわざ飛行機に乗りチェルノブイリにまで飛んだり、鉄道や船を乗り継ぎ日本全国47都道府県を巡ったりする中で、ようやく出合えたのが、自分なりの「ライフワーク」のヒントだったのです。どんなに考えても「自分の『好き』が分からない」としても、焦る必要はありません。そう簡単に「好き」は見つからないものですから。

「昔から旅好きだったから、日本と世界を結ぶ仕事に就きたい」「機械が好きだから、製造の仕事に関わりたい」「ファッションが好きだから、アパレルに関する仕事をしたい」、そんな「好き」から始まるのが理想的なライフワークですが、自分の「好き」が分からないなら、まずは第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

「好き」は意外なところに隠れているもの。自分でも知らなかった「好き」と巡り合うまで、私のようにリアルに旅をするのもいいかもしれませんが、よりお勧めなのは、仕事をしながら探すこと、つまり「副業」なのです。

■最初の一歩は超「スモールステップ」でいい

本書のテーマは、「リスクを冒してフリーランスになろう」ではなく、「生涯リスクを回避するために、フリーランスも経験しよう」です。もし今、安定した(と思える)職場に勤めているとしたら、何も最初から大股で「転職」「フリーランス化」といった大転換にチャレンジする必要はないのです。最初の一歩は、超「スモールステップ」でいい。

特別な下準備や大きな覚悟もいりません。気軽に始められる一歩で十分です。むしろ、いきなり独立や起業を目指すことは、さすがの私もお勧めしません。まずは気負わず「副業」から試してみてください。

もし、「副業」もちょっと……という様々な事情がある場合には、「ボランティア」から始めても構いません。本当はお金をもらってやってみるのが一番いいのですが、勤め先の事情もあるでしょう。私自身、最初に勤めた会社は「副業禁止」だったので、「ボランティア」として無給のお手伝いからスタートしました。

まずは試してみて、「思ったより面白かった」「やりがいがあった」「充実感を得た」と思えたら、次の一歩に進めばいいのです。

打ち合わせ
写真=iStock.com/Yagi-Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yagi-Studio

■「好きな仕事」に好きなだけ没頭できる

「好きなこと」って、いくらでも没頭できますよね。子ども時代、昆虫にハマった人なら、いくらでも野原で虫を追いかけて走り回っていたはずですし、読書好きな人は、いくらでも本を読み続けることができたはずです。

「好き」という感情は、人間の労力・時間・体力・気力を駆動する、とてつもないエネルギーになります。

ところが、「好き」を仕事にすると、困った事態も発生します。その「好きなこと」に寝食忘れて没頭するのが、法律で制限されるからです。

もちろんブラック企業は考えものですが、本人がある程度のグラデーションから選べるのが一番望ましいのではないでしょうか。

貪欲に「学びたい!」時期、短期間で「成果を出したい!」時期、学び直しに「挑戦したい!」時期、「家族との時間を優先したい!」時期など、いろいろありますよね。それらを自分で取捨選択できる人生こそ、まさに理想的ではないでしょうか。

最近では「ホワイト職場」を目指すあまり、上司が若手社員に遠慮しすぎて叱れず、若手は「学びにならない」と意欲低下につながっているという話も聞きます。「もっと鍛えてほしい」と若者が望んでいるのに、シニアやミドル層が遠慮してしまうという、逆の構図も浮かび上がっているのです。

■「めちゃくちゃハードに働いた経験」が未来の財産になる

これは大きな声では言えませんが、人生のある時期、「めちゃくちゃハードに(ブラックに)働いてみる」という経験も必要なのではないかと、私自身は思っています。

岡本祥治『LIFE WORK DESIGN』(プレジデント社)
岡本祥治『LIFE WORK DESIGN』(プレジデント社)

今はどこの職場も非常にホワイトです。長時間労働禁止、パワハラなどもってのほか。労働者のライフワークバランスを尊重する視点は大変重要ですが、正直、自分自身を振り返ってみても、20代の頃のめちゃくちゃ密度の濃かった働き方がなければ、今の自分はいないはずだと感じています。

研究開発や新規事業開拓に携わる人からも、同様の声は届いてきます。時には根を詰めてゴリゴリに成し遂げたい事案もあります。それこそ社会を変えるような偉業を成し遂げたメガベンチャーも、初期メンバーはみんな、オフィスに寝袋を持ち込んで働いていたなどのエピソードに溢れています。

これは完全に余談の夢物語ですが、もし、地方自治体に「がんばる特区」なんてものをつくって、「平日も休日も好きなだけ仕事していいですよ!」とPRを打ったら、おそらく、日本中からたくさんのスタートアップ企業・ベンチャー企業や人材が集まるのではないでしょうか?

■働く時間も場所も柔軟に調整できる

その点、フリーランスの場合は、誰も働く時間を管理してくれないからこそ、休息や体力回復の時間もすべて自分で調整しなくてはなりませんが、逆に言えば「今はこれを集中してやりたい」時期には、思いっきり没頭できる特権があります。「今はこの作業が乗っているから、今夜は深夜までやって仕上げてしまおう」「週末は旅行に行くから、今週はオーバーワーク気味だけど金曜までに終わらせよう」「先週はずっとハードワークだったから、今週は少しのんびり働こう」こんな風に、自分なりに働き方を調整できるのが、「フリーランス」としての働き方のいいところです。

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岡本 祥治(おかもと・ながはる)
みらいワークス代表取締役社長
1976年生まれ。神奈川県出身。慶應義塾大学理工学部を卒業後、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)株式会社に入社。金融、通信業界などのプロジェクトに参画した後、ベンチャー企業の経営企画部門へ転職。海外・日本47都道府県などの旅を通じて「日本を元気にしたい」という想いを強め、2007年に起業、2012年に株式会社みらいワークスを設立。働き方改革やフリーランス需要の拡大とともに急成長し、2017年に東証マザーズへの上場を果たす。現在は、独立プロフェッショナルのためのビジネスマッチングサービス『フリーコンサルタント.jp』、転職支援サービス『プロフェッショナルキャリア』、都市部人材と地方企業をマッチングする副業プラットフォーム『Skill Shift』、地方創生に関する転職マッチング・プラットフォーム『Glocal Mission Jobs』などを運営するほか、45歳以降のセカンドキャリア構築を支援する『HRソリューション』、企業・自治体のオープンイノベーションを支援する『イノベーション・サポート』といったソリューションを展開するなど、事業を通じて「『人生100年時代』を生き抜く為の社会インフラ創造」「東京一極集中の是正」「人材流動性の向上」といった社会課題の解決に取り組む。

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(みらいワークス代表取締役社長 岡本 祥治)

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