あえて成功を目指さない…「Fラン大学」出身で人事評価トップ5%になった人が共通してやっていた"3つのこと"
プレジデントオンライン / 2023年3月14日 9時15分
■来年度に向けた就活がスタート
来年春の大学等卒業予定者を対象にした企業のエントリー受付がスタートしました。就活が始まると、「学歴フィルター」の有無に関する話題が上がります。
かつては、就職試験前の選考段階で大学の入学難易度別の選定が行われることは、就職情報誌でも紹介されていました。「指定校」制度をとる大企業が存在し、国立九大学(旧帝大に一橋大、神戸大)など指定大学の出身者には推薦人数の制限を設けなかったり、筆記試験を免除したりするなどの優遇をしていたのです。
その後、「学歴差別だ」との批判の声が高まり、指定校制度は公(おおやけ)にはなくなりました。しかしいまでも「学歴フィルターは実在するのか?」「どのレベルまで大学名でふるい落とすのか?」といった言葉が毎年聞かれます。
学歴が高いほうが内定を取りやすいのか、競い合って内定をもらった人の学歴が結果的に高かっただけなのか、それはわかりません。タイミングや、企業が求める人材としてのスペックなど、さまざまな変数が絡むからです。
■Fラン大学から5%社員になる人々
しかし、その一方で、出身大学の偏差値ランクが低くても、その後、仕事において活躍し、各企業の人事評価のトップ5%社員(以下、5%社員)になる人がいることは間違いありません。
その中には、いわゆる「Fランク」と格付けされる大学を卒業し、30代以降にトップ5%の人事評価を得るまでになる人もいます。それが大企業であっても中小企業であっても、同じように実在するのです。
もっとはっきり言えば、SランクやAランク大学出身の同期を押しのけて、その企業で高い評価を得る人々です。
クロスリバーでトップ5%社員の行動習慣について調査を進めると、自発的に学歴についても教えてくれる人がいます。
そのような方々にインタビューを進めたところ、いわゆるFラン大学の出身で、5%社員になるような方々には“共通点”があることに気づきました。共通する行動指針があり、20代のうちはそれに則って経験ポイントを蓄えていたといえるのです。
■学閥の恩恵がないから「社外人脈」
その共通点は主に3つあります。
1つ目は、社外の人脈を築いていたことです。
同じ大学の出身者で構成される社内のネットワークが存在する企業があります。いわゆる学閥です。この閉ざされた社内ネットワークで懇親会や情報交換が行われ、異動や昇格に影響することもあります。
こうした学閥の恩恵を受けることがないFラン大学出身の5%社員は、20代のうちは社外に目を向けて人脈を構築していました。取引先の役員や、行きつけの整体院の先生、フットサルで知り合った先輩など、公私で積極的に多種多様な人脈を築いていました。
IT企業でトップ5%入りした30代社員は、次のように語ってくれました。
「社会保険が充実している日本では、健康とお金はある程度、国が保証してくれる。人脈だけは自分でゼロから築くしかない」
■30代以降は「生きた人脈」がものを言う
コロナ禍でリモートワークが普及しましたが、20代社員の孤立化は深刻になっています。
チャットで自分から声をかけたり、オンライン会議でビデオをONにしたりしないと、周囲から気にかけてもらえません。そうした環境下で、閉塞(へいそく)感や無力感を感じて心を壊す20代が増加しています。
ITツールが普及して、リモートワークをはじめ一人で仕事がしやすくなったのはよいのですが、周囲とよい関係性を構築すべく、自分から動かないと孤立してしまうのです。
20代で5%社員になる人は、リモートワークでも能動的に動いていました。興味のありそうなウェブセミナーやオンライン読書会に参加して社外の人脈を構築していました。
高学歴に油断して社内人脈しか築かなかった人、特定の上司に気に入られて、そのことにあぐらをかいていた人は、30代にもなると、積極的に行動して広いネットワークを構築してきた人とのあいだに大きな差がついてしまいます。そうした中で、Fラン大学出身者に逆転されることも実際に起こっているのです。
■自分とは異なる人との付き合い方に特徴
2つ目の共通点は、周囲との衝突を避け、その一方で摩擦は歓迎していたことです。
20代から70代までが混在する会社の中には、年齢だけでなく、国籍や文化的背景が異なる多様な社員が存在しています。さまざまな価値観の人々が、互いに完全に分かり合えることはまずありません。
![越川慎司『29歳の教科書』(プレジデント社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/3/5/1200wm/img_35dfe853690cb7e3e4e4474f1e00fd17109808.jpg)
その一方で、「自分とは異なる人」との付き合い方で、未来のキャリアが左右されます。
30代で突出した成果を残し、要職に抜擢され、40代以降で出世、転職、起業によって年収1億円以上を稼ぐ人たちがいます。彼らの多くは、20代で一般社員だった頃は、周囲から見て「異質」な存在でした。
しかし彼らの多くは、もともとの環境であるとか、上司や先輩に迎合するのでなく、市場に目を向けて「新しい稼ぎ方」を必死に学んでいました。社外で人脈を築いては、所属する会社の看板に頼らずに生き抜く方法を模索していました。
かといって、社内でぶつかり合っていたわけではありません。「社内調整は単なる手段だ」と割り切り、各部門のステークホルダーと衝突するのはエネルギーの無駄だと考え、業務はそつなくこなしていました。
衝突は回避しますが、摩擦は歓迎していました。異なるバックグラウンドを持つ人との議論を深めて、それまでにない新たなアイデア、新たな取り組みを創り出そうと動いています。
■「異質の組み合わせ」が成功を呼ぶ
5%社員は、20代の頃から社外の目線で自社を見る意識があり、所属する組織を俯瞰(ふかん)的にとらえています。
たとえば、定例会議を3時間行っていること、報告書のフォーマットがExcelであることなど、その会社の独自ルールに疑問を感じます。しかし、だからといって一方的に否定して上司やベテラン社員と衝突することは避けます。
20代の自分が社内でコントロールできる範囲は限定的であることを理解し、できもしない理想像を振りかざして周囲と衝突することは控えます。
社内では「多くの人から信頼を得るゲーム」を進めている感覚で、ムダなエネルギーを使いません。尖った意見を述べて上司に反発してもメリットが少ない、と考えるようです。
しかし、前述の通り摩擦は避けません。むしろ異質との摩擦を歓迎します。摩擦の先にイノベーションがあると知っているのです。
ある流通業の女性5%社員は、「ダイバーシティは女性の役員を増やすことが本質ではなく、異質を避けない文化をつくることだと思う」と笑顔で発言してくれました。
異なる経験、異なるバックグラウンド、異なるアイデアを避けないことで、結果的に異質なものの組み合わせが実現して、業務改善や事業開発に役立つというのが彼らの考えです。
■反対意見に対しては「ありがとう」
イノベーションの父である経済学者シュンペーターは、著書の中で「新結合」という言葉を使ってイノベーションの概念を初めて提唱しました。
ハーバード大学のクリステンセン教授も、著書の『イノベーションのジレンマ』で「イノベーションは異質な事柄を結びつける思考」と表現しています。異質を避けていると同質だけになってしまい、イノベーションが起こりにくくなるというのです。
5%社員は、社内にいる「異なる意見を言う人」をまず受け入れます。自分とは反対意見の人が発言している時に、頷(うなず)きながら聞くのが特徴的です。
まずは否定せずに聞いて、聞いていることが相手に伝わるようにしっかり頷きます。異なる意見を出してくれてありがとう、という感謝の意味でそうしているのです。
「反対意見を実際に採用するかどうかは、聞いたあとに決める」と、通信業の5%社員が発言していました。「聞くこと」と「決めること」をはっきり分けているようです。
反対意見を一方的に遮断してしまうと、同質な人だけで集まり、同調圧力が強くなり、よき摩擦が起きにくいと考えているのでしょう。
■やる気がなくても成果を出すルーティンを作る
3つ目の共通点は、「やる気」をあてにしないことです。
上位20%社員は成果を出すことを目指し、5%社員は成果を出し続けることを目指しています。やる気が溢(あふ)れている時だけ仕事に集中するのでは成果にムラが出る、と5%社員は考えています。
そのため20代で5%社員になる、少なくない割合の人が、リモートワーク時でも出社時でも、小さなルーティンを作って、やる気がなくても自然に仕事を始める習慣を作っていました。コーヒーを飲み終えたらパソコンの電源を入れる、観葉植物に水をやったらチャットを確認する……といった具合に。
日常の習慣に「仕事を開始するスイッチを押す」習慣を組み合わせて、自然に作業を開始するような小さなルーティンを作っていたのです。
■成功は目指さない
また、成功を目指さないことも5%社員の特徴だといえます。
変化が激しく不確実なビジネス環境では、成功か失敗かの二者択一ではありません。むしろ、失敗・失敗・失敗の先に成功があります。すぐに成果が出ることはなく、同時に、行動を継続しないことには成功に到達しません。
失敗する度に落ち込んでいては、前に進めなくなります。失敗しても落ち込まないようにするには、ストレスを発散する習慣を身に付けたり、そもそも短期的な成功を目指さない心構えを持ったりすることが必要です。
製造業の若手5%社員は、「最初はうまくいかないことが当たり前で、失敗を重ね、攻略法を模索し、何度もトライしていました」と話してくれました。
![ゲームステージに立つビジネスマン](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/c/1200wm/img_5c69d4408b02ec60f0b953e8619dd456430005.jpg)
■仕事と実社会はRPGのようなもの
成功を目指してしまうと、失敗が怖くなり、行動を起こすことができなくなってしまいがちです。
しかし5%社員は、行動実験することを目的に行動していくので、IQの高い同期入社メンバーよりも圧倒的に行動量が多いのです。
たとえばRPGゲームを想像してみてください。ダンジョン(洞窟)に入って迷ったら、何もせずにじっと考えているよりも、歩き回って行き止まりを知ったほうが、出口へ近づくことができると思います。
![【イラスト】やってみる⇒気づきを得る⇒修正する](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/c/1200wm/img_1c8e7d51b768c5f256d20cc5bf85babb309421.jpg)
5%社員の多くは、ある種のゲーム感覚で鍛錬を積むことを楽しみ、社内の人間関係のストレスから逃れるとともに、社外の仲間を増やしています。そして、互いに助け合える関係性になっていくことで、30代40代になってブレイクしているのです。
こうした5%社員は、上記3つの行動習慣を積み重ねることで、学歴にかかわらず社内外で成果を出していきます。その結果、社内で抜擢されたり、転職して高給取りになったり、起業して成功したりしているのです。
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株式会社クロスリバー代表
元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約6万人が受講し、満足度は98%を超える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『29歳の教科書』(プレジデント社)がある。
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(株式会社クロスリバー代表 越川 慎司)
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