「デキる営業」は資料のパクリを躊躇しない…資料をゼロから作るマジメな営業マンが結果を出せないワケ
プレジデントオンライン / 2023年3月15日 9時15分
※本稿は、山田和裕『1000人のトップセールスをデータ分析してわかった 営業の正解』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■できる営業は上司に頼る
すべてを自分一人でやるのが「できる営業」という勘違いに気をつけなければなりません。真面目で自尊心が高いタイプほどこの罠にはまりやすくなります。
「できる営業」は、仮にすべて自分でできたとしても、上司を巻き込み助けてもらうことで、自分の実績アップにつなげます。結果的に評価も上がります。
今の課長クラスはプレイングマネージャー化しているので、部下の一人ひとりに細かく目配りするのが難しくなっています。若手を育てることもマネージャーの仕事の一つですが、現実的には人財育成に割ける時間は多くありません。
「上司をマネジメントするように」という教えもありますが、これはなかなかの上級編です。知識も経験も上回る上司をコントロールすることは簡単ではありません。
上から目線ではなく、上司をうまく立てながら活用できる現実的なテクニックがあります。上司の「俺をうまく使ってくれよ」という気持ちを活用することです。
手取り足取り教える時間がなくても、営業同行を頼まれて断る上司はほとんどいません。ポイントはそのタイミングです。
適切な上司同行のタイミングはいつだと思いますか? 普通は案件がうまくいったタイミングで「そろそろ、上司もご挨拶」、もしくは、「クロージングで危なくなった時」が頭に浮かぶのではないでしょうか。
■上司同行の最適なタイミング
実は上司同行のおすすめのタイミングは「初回訪問」です。初回訪問で上司も連れて行くと伝えると、普通に配慮できる相手であれば、先方の上司も同席してくれます。
最初から上司同席であれば、担当だけでは聞けないレベルの話も聞きやすくなり、受注確度が上がります。そして、ここで面識ができていれば、何かあった時に上司から直接連絡を取ってもらうことが可能になります。
最悪なのは、クロージングで負けそうになった時に、はじめて連れて行こうとすること。営業担当が危ないと気づいた時は、ほとんど負けが確定している場合が多いものです。そのタイミングでまだ会ったこともない上司を連れて行くと言われても、用件がわかっているので先方も会いたくありません。すでに他に内定している場合、決定を覆すのは難しいので、適当な理由をつけて断られてしまいます。
初回から同行してもらっている場合は、すでに面識があるので上司からも電話やメールで状況を確認してもらうなど、援護射撃を無理なく受けることができます。
■初回の上司同行で受注確度が2倍にアップ
大手メディア系G社の受託商品を販売する部署では、初回の上司同行をルール化しました。若い営業担当Sさんは最初は半信半疑でしたが、だまされたと思って言われた通りにやってみたところ、先方の上司も出てきてくれ、案件がうまく進みました。
![名刺を渡す男](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/e/c/1200wm/img_ec443791381a12a5f5232dd7c7a66f8d394163.jpg)
すぐ効果が実感できたので、その後も可能なかぎり、初回訪問での上司同行を習慣化したところ、受注確度の高い案件の数が2倍に増えたと喜んでいました。
初回からの上司同行には他にもメリットがあります。まず、最初から上司を巻き込むのでその案件に関して、その後も気にかけてもらいやすくなります。自分が関与した案件は上司も気になるものなのです。
もちろん初回だけでなく、その後もポイント・ポイントで同行してもらう機会をつくることで、自然とコミュニケーションが増えます。接する時間が増えると、他の案件のアドバイスももらえます。進捗の芳しくない案件の相談などもできるので、受注確率が高まります。
さらに、上司の顧客への気配り、セールストークや細かい対応テクニックなども自然と覚えられるので、一石四鳥くらいの効果も期待できます。
自分ですべて一通りできるのが「できる営業」の基本ではありますが、プラスして、上司をうまく活用できるのも大切な条件です。
■できる営業はできる限りパクる
「できる営業」は、資料をゼロから自分でつくろうとしません。提案の時も、いきなりパワーポイント(以下“パワポ”)をつくり始めません。まず、何かベースにできそうな既存資料がないか探します。過去似たような提案をしていれば、それを参考にした方が早いからです。簡単にいうと、できるだけパクろうとします。
「できない営業」は、類似提案を探そうとしません。なぜかゼロからつくりたがります。そのくせ放っておいて、期限ギリギリにやろうとします。直前に慌ててつくった資料はすぐわかります。ちゃんと準備できていない提案は底が浅く刺さりません。
「パクる」というと語感は悪いですが、スポーツなどその道の達人の常道です。質を担保しながら効率化する賢い工夫の一つ。学ぶの語源は真似ぶ(まねる)です。芸の道における学びの基本は「習+守破離」。まず型を習う(真似する)ところから始まります。「イノベーション」もパクリの一種です。
創造的といっても、すべてゼロから創造するわけではありません。イノベーションは新結合、すなわち、既存の知識や技術をくっつけて新しい価値を生み出すことです。
提案であれば、よい提案を基本の型としてパクる。案件ごとの背景や条件に合わせて言葉を変え、少しオリジナリティを出す。これが時間と手間をかけずに、それなりの提案の質と効率を両立させる「できる営業」の提案テクニックです。
受注のためにはよい提案が必要ですが、提案書作成は営業のメインの仕事ではありません。あまり時間をかけずに効率化を図りながら、それなりの提案レベルを目指します。
![資料を説明するビジネスパーソン](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/4/c/1200wm/img_4c74b9f9c33147476be5585c8b0f894e394042.jpg)
■東京との時差を利用したFさんの例
全国で支店を展開する大手旅行会社J社のFさんは、地方の仕事は“時差商売”で十分いけると言います。大手とはいえ、Fさんの支店は数人しかいないので提案の専門家はいません。そこで、東京本社の提案情報が集まる部署にいる同期に電話してよい資料がないか相談し、参考になりそうな資料をメールしてもらうそうです。
東京では新鮮味のない使い古されたネタでも地方とは情報格差があるので、この「時差商売(時差提案)」でほとんどカバーできると言います。上手なパクリ方です。
■パクるときには礼儀を忘れない
東京でなくても、地域のハブになる部署などに、情報源となる人を見つけて普段から仲良くしておくことです。「提案ができる人」は内心そのことを自負しているものです。教えたがり屋タイプもけっこういます。「教えてください」と素直に下手に出れば、すんなり教えてくれることも多いです。
ただし、その人に助けてもらったこと(情報元であること)は周囲に伝え、お礼の気持ちとして協力してくれた人のプライドをくすぐることは忘れないでください。
同じ会社ですが悪い例もあります。地域は別ですが、本人の許しもなく勝手に資料を拝借してしまい、自分でつくったふりをした不届きな営業がいました。苦労した資料を無断で盗まれたので、相手の人は二度と教えてくれなくなりました。噂はすぐ広まり、社内での提案情報の共有化がその後難しくなった時期があったそうです。
![山田和裕『1000人のトップセールスをデータ分析してわかった 営業の正解』(かんき出版)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/e/1200wm/img_2e2945936ca1eeb699c340b3904c555d308208.jpg)
「提案ができる人」の提案やノウハウは大切な知的資産です。社内とはいえ著作権と同様の敬意をはらい、オリジナルの作成者や参照先を明記するなど、リスペクトを持って知恵をお借りするのが人としての礼儀です。
正しい作法に従った提案書の社内再活用は、立派なナレッジ・マネジメントです。既存の提案ベースに新たな要素を加えることで、さらに提案レベルの底上げを図ることができます。
反対に、礼を欠いた盗作はやめてください。「これぐらいいいだろう」と軽く考えるかもしれませんが、ルール違反です。お互い疑心暗鬼になり情報共有が難しくなります。信頼を築くには時間がかかりますが、失うのはあっと言う間です。一度切れた情報共有のチェーンをつなぎ直すのは容易なことではありません。
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プロセスコンサルタント
株式会社フリクレア代表取締役。総合商社丸紅での船舶ファイナンスからIT業界へ転身。「プロセス見える化」と「プロセス評価」を連携させた“プロセス主義”を提唱。特に営業の見える化を得意とし、業種・業界にとらわれず、100社以上の大手・中堅企業のプロセス改善・営業強化に貢献。1000人以上のトップセールスに行ったヒアリングと分析をもとに、「できる社員」の勝ちパターン=成功特性を標準化して「見える化ツール」にまとめる独自の“3次元プロセス分析法”を開発。著書に『1000人のトップセールスをデータ分析してわかった 営業の正解』(かんき出版)などがある。
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(プロセスコンサルタント 山田 和裕)
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