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お客の「何とかしてくれ」にはどう対応すべきか…できる営業が当たり前のように使っているテクニック

プレジデントオンライン / 2023年3月16日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/itakayuki

お客の無理難題にはどう応えればいいのか。プロセスコンサルタントの山田和裕さんは「『決まりですから』と拒否するわけにはいかない。すべてルール通りですめば営業は要らない。できる営業は、いざという時に備えて準備しているものだ」という――。

※本稿は、山田和裕『1000人のトップセールスをデータ分析してわかった 営業の正解』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■お客が求めているのは「柔軟で融通がきく営業」

「申し訳ありませんが、そういう決まりですから……」。社内規定やルールを理由に、お客様の何とかならないかという要望を慇懃(いんぎん)無礼に断る営業をよく見かけます。

せめてダメもとでも、社内で相談する姿勢を見せるだけで、お客様は納得してくれることもあるのですが……。面倒くさいのかその手間すら端折ろうとします。「決まり通りで何が悪い」「ルールを破ると自分が叱られる」。そういった営業の心の声が聞こえてきそうに感じる時もあります。

しかし、すべてルール通りですむのであれば、営業は要りません。ものごとはルール通りにはいかないものです。特にビジネスにおいては、ルールは一つの線引きにすぎません。状況にあわせて見方を変えれば、ルールの解釈も変わります。

白黒がハッキリしているところまで無理に対応する必要はありませんが、グレーなところについて「何とかしてほしい」という意図をくみ取って柔軟に対応できると「この営業はよくやってくれる」とポイントが上がります。

逆に融通のきかない「頭の固い営業」は、「この営業に頼んでも杓子(しゃくし)定規でダメだな」と見切られてしまいます。柔軟で融通がきくことは、お客様が営業に求める要素の一つです。決して、ルール通りの役人のような営業になってはいけません。

ここが「できる営業」と「できない営業」の差が大きく出るところの一つです。

■融通をきかせるには演技力も必要

とはいっても、細かいところまでルールが決められているわけではないので、判断が難しい場面もあります。しかしそういう場合でも、「なぜルールがあるのか」という基本を理解していれば、柔軟に対応しやすくなります。

普段から意識して上司や先輩に「なぜこのルールが作られたのか?」聞いてみることです。ルールが作られた経緯や減らしたいという声があることを知れば、ルールを多少外れても大丈夫な範囲がわかります。柔軟に対応したケースについても聞いてみてください。前例があれば、心配なく柔軟に対応できます。

何も考えずに決まりだからと「思考停止している営業」は、こういった質問をすることにも頭が及ばないようです。

柔軟な対応を求められることが最も多いのは、やはり価格相談でしょう。

値引きについては、社内で基本ルールがあると思います。それとは別に「できる営業」はどのくらいなら、社内で値引きが可能かだいたいの線がわかっています。部署全体の予算が厳しい締めの時期など、タイミングも頭に入れています。

例えば、お客様から値引きを求められた時に、本当はその場でOKできるレベルであっても、わざと難しそうな顔をして「なかなか厳しいレベルですので、上と相談します」と言って、いったん持ち帰るふりをします。

そして、時間を少しおいてから、「苦労しましたが、何とか社内の了解が出ました」と報告をしてお客様を喜ばせます。

あまりほめられないテクニックかもしれませんが、柔軟な対応ができることを示すために、ひとり芝居を演じていたりします。

ガラス張りの建物で電話する若いビジネスパーソン
写真=iStock.com/somethingway
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/somethingway

価格相談はクロージングの山場ですが、「柔軟に対応できる営業」にとっては腕の見せどころでもあります。

柔軟に対応できるようにルールのグレーゾーンを把握しておき、いざという時には社内を説得できるよう、社内決裁ルートの関係者ともよい関係を築いておく。

「できる営業」が当たり前のように使っている賢いテクニックの一つです。

■社内関係者と良好な関係を築いておこう

「できる営業」は結果を出すために、社内関係者との連携を意識しています。

社内連携が必要ということに対して反論する人はあまりいないと思いますが、実態は逆というケースがよく見受けられます。うまく連携ができていない(仲が悪い)ことは、顧客にはバレています。本人たちは意識しなくても、知らないうちに言動に出ているのです。

「できる営業」は、そのことを反面教師にして抜かりがありません。顧客に悪い印象を与えてしまうからです。結果的に案件を失いかねません。

「できない営業」は、社内でよい関係が築けていません。「うちの技術は困ったもので……」といった感じで、つい愚痴をこぼしています。

社内連携ができない会社に顧客は頼みたくありません。何かあった時に、組織的な対応をしてもらえるのか、不安があるからです。

連携が特に大切な3部門では、以下のようなことが起こりがちです。

■連携が求められる3部門

【技術】

ダメな組織では、営業と技術の関係がよくありません。お互いに悪口を言い合っています。

特に技術側からの不満をよく聞きます。営業のどこがよくないのか技術者に聞くと、次のような答えが返ってきます。

「簡単なことで呼んでほしくない。最低限の技術的なことは営業も勉強して欲しい」「確度の高い案件かと思って同行したが、まだ検討初期段階で、技術者が出るタイミングではない」「技術的な要望やポイントがぜんぜん聞けていない」「営業が相手のキーマンと関係ができていない」などです。

営業にも言い分があります。「技術の説明がわかりにくいので、顧客が納得してくれない」。例えば、技術力はあるが、客前に出せない技術者もいます。技術者の中にはビジネスより技術的な正しさの方に重きをおくタイプがいるのです。

顧客が理解できるかどうかは気にせず、難しい専門用語を使い、自分の言い分を譲らず、ひどい場合は顧客を怒らせてしまいます。

「できる営業」は、「できる技術者」に適切なタイミングで同行を依頼し協力してもらいます。

営業レベルを超える技術的な話の場合は、「できる技術者」を連れていき、素人でもわかりやすい言葉を使って説明してもらうのです。顧客は安心して商談を進めることができます。

「できる技術者」は、相手が理解できるやさしい言葉で難しい技術の話を説明できます。そういった「できる技術者」のことを“歌って踊れる技術者”と呼ぶ会社もあります。「できる営業」はこの歌って踊れる技術者と信頼関係を結び、技術的な説明が必要な場面で協力をあおぎます。

一方で、「できない営業」と同行する技術者はしぶしぶです。普段から信頼していないので、打合せでも何となく伝播してしまいます。顧客は自然と気づくものです。

これまでのヒアリングから、「営業と技術の仲の悪い組織は業績が伸びない」という法則も分析できています。

【生産】

メーカーの営業が負ける要因の代表的なものに、価格・納期・仕様があります。

ですから、「できる営業」は生産部門に気を遣っています。信頼関係があれば、少々の無理な値引き、納期短縮、仕様変更にも応じてもらえます。クレームもうまく伝えることで、スペック改善や継続注文にもつなげ、生産部門からも感謝されます。

逆に不正確な情報ばかり伝え、迷惑ばかりかけている「できない営業」は信頼されず、頼みごとをしても聞いてもらえません。顧客の要望に応えることができず受注を逃す、という悪いスパイラルに陥りがちです。

失注要因として価格・納期・仕様ばかりを挙げる営業は要注意です。顧客との関係構築と同じくらい、社内の生産部門との関係も重要です。よい条件を生産部門から引き出せないようでは「できる営業」とはは言えません。

【マーケティング】

営業とマーケティング部門(以下“マーケ”)は、本来は連携して一心同体で協力して動くべきなのですが、あまり仲が良くないケースも見受けられます。

営業は「もっといい顧客や案件を開拓してほしい」と文句を言い、マーケは「せっかく潜在ニーズを提供しているのに、営業がちゃんと育てないから売上が伸びない」とお互いに相手のせいにします。

最新のマーケティング理論を学んでいるので、営業を下に見てバカにしているマーケ担当者もいます。そういう気持ちは自然と相手に伝わるものです。

営業は「現場の泥臭さも知らず理論だけで営業ができれば苦労はない」と、マーケが立案する施策を信じていません。「使えない机上の空論」くらいにしかとらえていないので、徹底しようとしないのです。

山田和裕『1000人のトップセールスをデータ分析してわかった 営業の正解』(かんき出版)
山田和裕『1000人のトップセールスをデータ分析してわかった 営業の正解』(かんき出版)

営業とマーケの連携がうまくいっていないと、案件開拓がうまくいかず、顧客満足度も下がります。

顕著に表れるのがセミナー後のフォローです。リストがすぐ営業に共有されているか。営業はリストを受け取ったあとのフォロー(担当の割り振り、フォロー対応等)ができているのか。このあたりは営業とマーケがしっかり打合せをして詰めておくべき基本です。

連携がとれていないと、グレーゾーンなのでお互い相手がやるものと考え、対応が遅れ気味になっているというケースがよくあります。

顧客の要望に柔軟に対処し、各部署との連携を意識する、この2つを意識して、“できる営業”を目指しましょう。

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山田 和裕(やまだ・かずひろ)
プロセスコンサルタント
株式会社フリクレア代表取締役。総合商社丸紅での船舶ファイナンスからIT業界へ転身。「プロセス見える化」と「プロセス評価」を連携させた“プロセス主義”を提唱。特に営業の見える化を得意とし、業種・業界にとらわれず、100社以上の大手・中堅企業のプロセス改善・営業強化に貢献。1000人以上のトップセールスに行ったヒアリングと分析をもとに、「できる社員」の勝ちパターン=成功特性を標準化して「見える化ツール」にまとめる独自の“3次元プロセス分析法”を開発。著書に『1000人のトップセールスをデータ分析してわかった 営業の正解』(かんき出版)などがある。

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(プロセスコンサルタント 山田 和裕)

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