「株価が安いから買いだ!」そう考える人は必ず失敗する…株投資で「チャート」を見るべきではない理由
プレジデントオンライン / 2023年3月14日 9時15分
※本稿は、チョン・ソニョン『お金で大切なことはすべて、父がメッセージアプリで教えてくれた』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■最安値で買って最高値で売るのは「投機」である
「父さん、僕は株の勉強してみようと思う。そこでまず、財務諸表の見方を教えてください」
君はそう言ってきたね。私は感心した。
なぜなら、株の勉強してみようと思うという言葉の後に、「財務諸表の見方を教えてください」と続いたからだ。
初めて株取引をする人は、たいていの場合「オススメの銘柄を1つだけ教えてくれませんか」と尋ねてくるものだ。もし、君が「どの株が良いのか、情報を教えてください」などと言ってきたら、株には手を出すなと答えていた。
その質問の根底には、最安値で買って最高値で売ろうという目的がある。このような株取引は投機であり、投資ではない。
ところが、君は感心することに、会社の財務諸表の見方を聞いてきた。父はそれが嬉しい。
■株式という概念がどのように生まれたか知っているか
株式投資は、投資する会社の財務状態を把握するのが何より先だ。
だが、財務諸表の前に、株式とは何かという原点を知ってみるのも良いだろう。
まず、株取引で扱う株または株券とは、株式会社がほかの企業や個人から出資してもらったときに発行する証券のことをいう。なぜ株式会社が出資を集める必要があるかというと、事業を行なうためには多くの資金が必要だからだ。集めた資金で製品を作ったり、事業に必要な機材を買ったりするだけでなく、新しい事業を立ち上げたりすることに、その資金は使われる。
昔も今もあらゆる事業には危険が潜んでいる。株式という概念が初めて発生した17世紀の大航海時代は、今よりさらに危険でいっぱいだった。
当時、人々はどのように危険を分散させつつ、海上貿易で高い利益を得ることができるか悩んだ。そこで作り出した方法が、株式という証書だった。複数の人が航海に必要な資金を少しずつ出し、証書を受け取る。証書の条件は、失敗すれば証書はただの紙切れになり、成功すれば配当を受け取ることだった。
■会社に対して権利を持つために株を買う
海上貿易は危険性が高く、すべての資金を1人で賄うのはリスクが高すぎる行為だった。だが、多くの人から少しずつお金を集めれば、莫大な資金確保も可能であり、危険も分散される。そして、利益が発生したら、出資金に応じた分配を受けられる。
このようにして株式が生まれた。株式がなかったら資本主義は今のように発展できなかっただろう。
さて、その事業に出資した人……つまり株券を購入した人のことは株主といい、持株に応じた権利や義務を持つ。代表的な権利に配当や議決権がある。
資本主義という制度の中においては、会社は株主のものである。
この権利を得るために株を買うことを株式投資という。
株の値上がりを期待して、株価が下落したときに買うのは投機であり投資ではないというのはこういうことだ。
■財務諸表を読まないのは相手を知らずにお金を貸すのと同じ
株式とは、株式会社が株式会社として資本を成すための必要な要素なのである。株式投資をする上でのポイントは、資本をなす単位として1株ごとに株価がつけられているという点にある。
株式投資では、その単位につけられている金額を投資する(※)ことになるが、対象が誰なのかを知ることが重要だ。
※韓国では株を1株単位で購入できるが、日本では100株が1単位となっている。
簡単にいえば、お金を貸すときには、相手の能力や資本状態を詳しく調べるものだ。株式投資も同じである。投資をする際には、相手の能力や資本状態を詳しく調べなければならない。
相手の能力や資本状態を知るということが、財務諸表を読むということなのだ。
投資先の会社の財務状態を知らないということは、どんな人なのかも知らずに、お金を貸すのと同じだ。
人は少ないお金のことは几帳面にチェックするが、制度に組み込まれた巨大な規模のお金に対しては手薄になる。それで本質を見逃す場合が意外に多い。結果的に、チャートだけを見て株を買うという投機行為になってしまう。
■財務諸表を読むときのポイントは「売り上げと営業利益」
しかし、ここで1つ問題がある。
財務諸表を読むのは、簡単ではない。見ても理解が難しい。だが、「財務諸表=難しい」という考えは、半分は正しいが半分は間違っている。
というのも、財務諸表は、会社の状態を正確に示すために、堅苦しく書かれているだけなのだ。ポイントを押さえて理解すれば、株式投資をする際の一番率直な友達になってくれるだろう。知れば知るほど、その本質には温かい論理が隠されている。
財務諸表と友達とのように付き合うために、ポイントとなるのは見る順序だ。まず、見るべきなのは、「売り上げと営業利益」だ。
売り上げは、その会社の大きさを示し、営業利益からはその会社の成果が把握できる。
![ノートパソコンで為替取引をしている男性の手元](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/2/1200wm/img_a2df5841005b7dcef223d81f8d51a820479322.jpg)
財務諸表を見れば、事業規模がどの程度なのか、そして事業を通じて利益をどれだけ出しているのかがわかる。この2つを把握して、その会社の時価総額と比較すればいい。
シリコンバレーの超優良企業であるAppleの営業利益率は、毎年20〜30%台である。韓国の超優良企業サムスン電子は、毎年10〜20%台の営業利益率を出している。
ところが、わずか1%という驚くほど低い営業利益率の企業もある。なぜこのような株の流れになっているのだろうか。社会的状況、決算ごとの株価の変動等を確認して原因を深く探る必要がある。
財務諸表の観点から見た専門家のレポートなども目を通して行くと、財務状態を正確に知ることができるようになっていく。
■株価指数を見ることでマクロな観点が身につけられる
ここまでは個別の株式についての説明をしてきた。これは株式投資において、いわば木の説明である。
株式投資には、森の視点もある。
![チョン・ソニョン『お金で大切なことはすべて、父がメッセージアプリで教えてくれた』(KADOKAWA)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/9/1200wm/img_59e9a66b78ae51b3eaff9e7598a5e79d269657.jpg)
それは株価指数だ。株式を売買する行為が行われる場所は株式市場である。つまり証券取引所のことだ。そこでは上場している株式の銘柄が取引されている。
韓国だけではなく、米国、日本、イギリスなど、各国に証券取引所があり、それぞれの国で株価指数というものが発表している。
それぞれの指数は特徴がある。指数が出している数字の意味を正確にしておこう。そうすれば、株式の森を理解することができる。
その結果、どのようなことができるだろうか。個別の企業の財務諸表を見ることがミクロな観点での株式取引だとすると、指数を見ることはマクロな観点での株式投資を行うこととなる。
例えば、パンデミックで落ち込んだ景気を上げるために量的緩和政策が実施されれば、今後も株式に投資がされると予想することができる。つまり指数が上がり続けるだろうと予測を立てられる。このようにして経済の流れを予測するのだ。
■長期的な成長可能性に資本を投資することこそが本質
株式市場の森を知り、上場株式のチャートを見れば、流れを見極めるのは難しくない。
株式投資を正しく学び、産業や経済の流れを理解できる見識を持ってほしい。
最後に株式投資について2つだけアドバイスしておこう。
【株式投資のポイント】
(1)必ず財務諸表を見ること
1週間かかっても良いから、その会社の財務諸表に目を通し、将来の成長の可能性を見極めてから投資をしよう。
(2)長期的にバリュー投資をすること
株式には、そもそも会社の長期的な成長可能性に資本を投資する目的がある。株式の本質的な目的に合致する投資を行ってほしい。投機的な短期投資をしてはならない。どうか心得ておいてくれ。
資本主義の花は株式会社だ。
資本主義は、家計、企業、政府という3つの主体がある。株式は、まさに資本主義の主体を互いに連結する輪だ。
どうせ学ぶのであればしっかり学んでほしい。マクロ経済の流れと、君が投資した会社の成長を見極める、厳しい目を持つことに力を注いでほしい。
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慶煕大学校食品生命工学科卒業。ロッテマートHMR部門長(常務)等を務め、2020年に退職。ネイバーカフェ「不動産スタディ」で「息子よ、経済の勉強をしよう」シリーズの連載を始める。書籍化され、韓国で10万部超のヒットとなり、日本語版『お金で大切なことはすべて、父がメッセージアプリで教えてくれた』がKADOKAWAより2023年2月に発売された。
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(実業家・資本家・元ロッテマート常務 チョン・ソニョン)
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